山田祥平のRe:config.sys

パソコンを使う理由




 かつて、スタンドアロンだったパソコンは電話回線などを通じて外部とつながったことで、コンテンツを創造するマシンから、他人の作った膨大な量のコンテンツを再生するマシンとなり、その役割は大きく幅を広げた。けれども、そのことは、受け身のマシンになったことを意味する。もういちど、創造のマシンに戻らなければ、パソコンを使う用事は一気に減ってしまう。

●主力環境レシピ

 つい先日、仕事に使うメイン機を一新し、スクラッチから組み立てた。作業に要した時間は約半日だ。

 具体的には、OSとしてWindows XP Professional with SP2をインストールしたあと、マザーボード付属のCDでinfとドライバ類をセットアップし、ビデオカードのドライバを入れ、さらに、Microsoft Office Professionalを入れて、MSN Messenger 7.5とWindows Media Player 10をインストールした状態で、Microsoft Updateをかけて最新状態にアップデートする。

 そして、プリンタドライバとマウスドライバをインストール、さらに、アドビのスウィートAdobe CS2を入れ、音楽ソフトとしてiTunes、百科事典としてMicrosoft Encarta、米国地図のMicrosoft Street & Trips、Canopusのテレビ録画ソフトFEATHER、そして、日本語入力ソフトのATOK 2005。それに、ニコンのデジカメ用ユーティリティNikon ViewとNikon Capture(このソフトの最新状態へのアップデートは常用ソフト中、もっともやっかいだ)、コダックのデジカメ用ユーティリティPhotoDesk、グラフィックスブラウザのMuseViewer Proと、テキストエディタの秀丸をインストール、DVD再生ソフトとしてInterVideoのWinDVDと、DVD書き込みソフトのB's Recorder Goldをセットアップする。

 ここまで入れたところで、すべてのソフトウェアがうまく動くかどうかを確認し、セキュリティ対策としてNorton Internet Securityを入れておしまいだ。あえて言っておくとすると、キーボード左側のCaps LockとAltを入れ替えるために、Windows Server 2003用リソースキット付属のユーティリティRemapkeyを使って設定を変える。

 データはすべて別のパソコンにある。それらのデータを格納したフォルダをネットワークプレースとして登録し、そこをオフラインフォルダとして指定、データを同期してネットワークが切れても使えるようにしておく。

 この状態で、MSNツールバーとGoogleツールバーを入れる。MSNツールバーにはWindowsデスクトップサーチが含まれるので、インストール直後にネットワークプレースを追加設定する。この状態で、Outlookのデータ同期とデスクトップサーチのインデクシングのために半日ほど放置すれば、常用主力環境ができあがる。

 壁紙は使わない。ウィンドウ内は白なので、背景とのコントラスト差があまり高くならないように白に近い状態に色を変える程度だ。タスクバーはデスクトップ上部に移動、Internet Explorerのデフォルトフォントを明朝系に変更し、稼働している別のパソコンからお気に入りをコピーして完了といったところだろうか。これらすべての作業がマウスの数クリックでできれば便利は便利だが、まあ、年に何度もやる作業ではないことと、各ソフトのアップデート状況もあるので、それらを確認しながら、せっせと手作業で環境を整える。

 入力系のデバイスは別のパソコンにまとめてある。こちらは、フィルムスキャナとしてニコンのSUPER COOLSCAN 5000EDと、ドキュメントスキャナとしてPFUのScanSnap fi-5110EOX3が使えるようになっていて、そのデータ記録先のフォルダを共有設定し、メインのパソコンから覗けるようにしてある。

●記憶やひらめきをカタチに変える

 たいしたことはないと思っていたが、こうして列挙すると、けっこうな量のソフトウェアをインストールしていることがわかる。けれども、これらのソフトを毎日使っているかというと決してそうではなく、普段は、ブラウザで情報を集め、メールを送受信し、スケジュールを管理しつつ、エディタで原稿を書き、予約録画したビデオを見るくらいだ。仕事の性格もあるのだろうけれど、ぼくの場合、WordやExcelは毎日使うソフトではない。せいぜい月に一度請求書の発行のために10年前に作ったAccessのデータベースを開くくらいか。Officeファミリーの中で、もっとも頻繁に使うソフトはPowerPointだが、それとて、毎日使うものではない。

 記者会見や打ち合わせなどから戻ってきたら、もらってきた紙の資料のうち、残しておく必要があうものをスキャンしつつ、ノートパソコンをネットワークに接続して、取材メモのファイルを同期する。

 整理は決して得意な方ではなく、リアルな机や部屋は、もう人にお見せするのも恥ずかしいような散らかり状態だが、数台のパソコンでできあがっている環境内は、優れたユーティリティの力もあって、過去に蓄積したデータや、ウェブサイトから、望みの情報はすぐに見つかる。それらの情報と、頭の中のひらめきやアイディアを混ぜて原稿を書く。それが普段のぼくのパソコンの使い方だ。

 旅行や出張の計画をたてる。買い物に行く前にリストを作る。散在する書類や書籍を箱詰めしてナンバリング、その内容を記録してトランクルームに格納といった日常の所作事。何に使うわけでもなく将来役にたちそうなアイディアを思いついた。新聞や雑誌を読んでいて気になる記事を見つけた。電車に乗っているときに吊り広告やポスターでに興味あるものを見つけた。こういうときには、すべてパソコンに入れる。外出時でも、原則として携帯しているノートパソコンを開いてメモにする。

 記者会見や打ち合わせのメモ、案件ごとのアイディアメモなどは、それぞれ具体的なファイル名をつけたテキストファイルを作り、専用のフォルダに蓄積していく。Outlookにもメモ機能はあるが、入力時のキーアサインを変更できないので、多少長いメモを書くときにはストレスがたまるので、もっぱらエディタで処理している。

 なんらかの事情でノートパソコンを使えない場合は、携帯電話で自分宛にメールする。あるいは、携帯しているコンパクトデジカメで対象を撮影する。携帯電話のデジカメ機能はめったに使わない。撮影時に音が出るのがうっとおしいのと、パソコンにデータを持っていくために、ケーブルやmini SDアダプタなどが必要になることが煩雑でめんどう、というのが大きな理由だ。

 紙にメモをとることもめったにない。記者会見の配布資料に書き込むこともまずしない。めんどうでも、要点をテキストファイルに書き込んでおく。これも後の検索のためだ。エディタには、現在日時を挿入するマクロを用意し、ファンクションキーひとつでカーソル位置に挿入できるようにしてあり、随時、手動でタイムスタンプを入れていく。

 暫定的に撮影したデジカメ画像のデータも、後の検索にひっかかりにくいので、要点をテキストファイルにまとめておく。そして、これらのファイルをおいたフォルダのファイルを更新日時順に並べれば、だいたいここ数週間、頭の中で考えていること、継続して考えなければならないことがわかるようになっている。

 大がかりなソフトを使うのではなく、テキストエディタでデータを作り、あとは運用でカバーするのがぼくのやり方だが、人によっては、メモに関してはMicrosoft OneNoteの熱心なファンもよく見かけるし、徹底してOutlookだというユーザーもいる。

 OneNoteに関しては、SP1以降、ウェブカメラをつないで録画ができるようになったので、インタビューやラウンドテーブルなどのときには、メモをとりながら録画するという方法を試し始めているところだ。メモとして文字を入力することが、録画画像にチャプタを打つ作業になるので、録画内容を全部見なくても、重要な部分の頭出しがすぐにできるのが便利だ。これは、もう少しフィールドテストをしてから実践に移そうかと思っている。

 これまで、同様の現場では、録音のための機材を持ち込むこともなく、すべてパソコンへのメモですませてきた。言った言わないのトラブルにも遭遇していないのは不幸中の幸いだが、それは単に運がよかったにすぎず、本来なら、なんらかの手だてを打っておくべきものだと考えるようになったのは、歳をとったせいだろうか。

 いずれにしても、頭の中に浮かぶひらめきや、すぐに記憶から薄れてしまう打ち合わせ内容、取材メモ、TO DOなどのカタチのないものを、デジタル化する道具がパソコンだ。でも、こういう使い方をしていても、パソコンを使っている時間の大部分はブラウザやメーラでデータを読んでいる時間だし、テレビ番組や音楽など、他人が作ったコンテンツを視聴することに費やされている。普段、パソコンを何に使っているかというと、それはもう、まったく大したことには使っていないわけである。

●パソコンで創ろう

 ぼくの場合は、パソコンを使ってこうした運用をしていかないと仕事が進まないという事情があるが、一般家庭で使われているパソコンなら、もっと、外部コンテンツ利用の比率は高いだろう。そもそも、一般家庭でOfficeソフトを使わなければならないような用事はそれほど多くないだろうし、パソコンを持ち歩かないのであればスケジュールの管理もあまり意味がない。

 もし、紙の手帳でスケジュール等を管理しているなら、備忘録やメモなども、そちらにまかせた方が効率的だ。その場合、もし、手帳を無くしたときに、とても困る。せっかくプリンタとスキャナの複合機が一般的になっているのだから、一日の終わりには、その日、手帳に新たに書き込んだ情報に関して、スキャンして保存しておくくらいの対処はしておいた方がいいだろう。あるいは、すべてのメモは携帯で自分のインターネットメールアドレス宛にメールしておき、自宅に戻って受信するというのでもいい。それならあとの検索もラクだ。

 パソコンが担う役割を、こうした方法で確保していかない限り、主たる役割は、どんどんアプライアンスに奪われていく。今、パソコンがなければ困るという状況がどんどん希薄になりつつある。それはそれでいいじゃないかという意見も少なくない。でも、わずかでも、パソコンで創造するという行為が残っている限り、パソコンに代替するデバイスは考えにくい。そしてそこに、ヒトとしてのアイデンティティを支えるパソコンの存在価値があるんじゃないか。

 あなたには今、毎日、パソコンに向かわなければならない積極的な理由はありますか。あなたのパソコンが急になくなったら途方に暮れますか。

バックナンバー

(2005年9月2日)

[Reported by 山田祥平]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp ご質問に対して、個別にご回答はいたしません

Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.