大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

今年のキーワードで占うIT業界




 2005年がいよいよ始まった。

 今年も恒例の言葉遊びから1年を占ってみたい。

 今年のキーワードは、スバリ、「あいちはく」である。

 今年3月25日から名古屋で開催される「2005年日本国際博覧会」(愛知万博)に当てはめたキーワードであるのは、おわかりの通りだが、この言葉に今年のIT業界を占う言葉が隠されているのだ。

●「あ」はITの“あ”

 では、まず「あ」からいってみよう。

 「あ」は、ITの「あ」である。

 ITというのはかなり幅広いが、2005年の行方という観点から見ると、IT業界再編という言葉で示すのが良さそうだ。

 年初から暗い話で恐縮だが、いま、IT業界では、多くの企業が収益性に苦しんでいる。

 PCメーカー、周辺機器メーカー、ソフトメーカー、そしてパソコンショップというように、国内における川上から川下に至るまでのすべての企業が厳しい経営環境のなかにある。

 2004年末に、米IBMがPC事業をLenovoに売却したのは、業界内外で大きな話題を呼んだが、国内においても、エレコムによるロジテックの買収、ベンチャーキャピタルによるラオックスへの介入などの動きが見られる。

 大手PCメーカーですら事業売却という手段に打って出たことで、IT業界全体が事業の先行きについて、改めて検討を開始するといった動きも出ている。2005年に業界再編の動きがさらに加速するのは間違いないだろう。

その一方で、IT企業の新たな分野への進出も見られたのが2004年。ソフトバンク、楽天のプロ野球の参入はその最たるものだが、2005年も、こうした元気なIT企業が、世の中を騒がせてくれそうだ。

 一方、ITセキュリティも今年の重要なテーマだ。4月から個人情報保護法の施行によって、企業の顧客情報の取り扱いなどにも法的規制がかかるようになる。

 2004年に相次いだの情報漏洩事件が、今後拡大しないためにも企業努力に注目が集まる。

●「い」は一貫生産の“い”

 「い」は、一貫生産である。

 これは、成長著しいデジタル家電の世界で頻繁に使われている言葉だ。

 薄型・大画面テレビ、DVDレコーダー、デジタルカメラなどに代表されるデジタル家電製品の世界では、日本のメーカーがキーデバイスを持ち、セット製品まで含めた一貫生産体制が、国内メーカーの特徴となっている。シャープの液晶事業における亀山工場での一貫生産、松下電器の茨木第2工場を核としたプラズマ事業を代表例に、CCDや光ピックアップといったキーデバイスも日本が多くのシェアを誇る分野だ。

 いわば、PC、インターネットを成長の中心とした'90年代に苦汁を飲んだ日本の家電メーカーが、自らの力を発揮し、一気に巻き返しを図る分野がこのデジタル家電であり、それを支えるのが、国内における一貫生産体制ということになる。

 2005年には、この一貫体制が本格的に稼働することになり、日本の強みをますます発揮できるようになる、というのが業界関係者に共通した意見だ。

 課題は、こうした先行技術を知財として、しっかり守れるかどうかだ。2004年には海外企業との特許問題もいくつか出ていただけに、日本の企業の対策が注目される。

●「ち」は着うたの“ち”

 「ち」は、先に触れた知的財産権という言葉もあるが、ここでは「着うた」としておきたい。auの着うたが、2004年から「着うたフル」として、楽曲1曲を、携帯電話で聞くことができるようになったことで、音楽ダウンロードがさらに普及するのは間違いないだろう。これにより、第3世代携帯電話を巡る争いも熾烈になるだろう。新たなサービスが各社から登場することも期待したい。

 もちろん、iPodでシリコンオーディオプレーヤーで先行したAppleの動きも見逃せない。今年はiTunes MusicStoreの国内でのサービス開始が期待されるなど、音楽配信を巡る動きは2005年に一気に加速することになりそうだ。

●「は」はハイビジョンの“は”

 「は」は、ハイビジョンである。

 2003年からの地上デジタル放送の開始以降、徐々にハイビジョンが身近なものになってきているが、これが今年はさらに身近なものになる可能性が強い。これまでのようにハイビジョン放送の視聴範囲が広がりを見せるというだけでなく、薄型テレビの普及やハイビジョン対応カムコーダーの登場、PCでも簡単にハイビジョン映像を編集する機能を搭載した製品の登場など、ハイビジョンに対応した機器が続々と登場してくるからだ。

 なかでも注目されるのが次世代ディスクであるBlu-rayおよびHD DVDが、製品投入期に本格的に入ってくることだ。両陣営の争いはこれからが本番といえそうだ。

●「く」は駆動時間の“く”

 「く」は、駆動時間の「く」である。

 いわば、バッテリ連続駆動時間の進化が図られる1年ということになりそうだ。

 デジカメやノートPCも、性能の進化に加えて、連続駆動時間の進化を、製品規格の上で重要な要素のひとつに掲げるメーカーが増えており、各社から長時間駆動(携帯電話ならば、連続待ち受け時間)を意識した製品投入が期待される。モバイル環境、ユビキタス環境の浸透に伴って、バッテリ駆動時間は大きなポイントとなりそうだ。

 そして、駆動時間のキーデバイスとなるのが燃料電池だ。燃料電池を搭載した製品がいよいよ登場するのが2005年ということになる。これによって駆動時間が飛躍的に伸びることになり、PCをはじめとするIT機器が大きく進化することになるだろう。

 こうして見ると、2005年のIT業界は、新たな技術が目白押しだ。このほかにも、ソニー・グループ、東芝、IBMが共同で開発しているCellも、2005年にいよいよ登場することになる。

 こうした技術が果たしてどんな製品として、市場に投入されることになるのか。その点が楽しみな1年となりそうだ。

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【2004年1月5日】【大河原】2004年のIT産業の行方を占う!?
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0105/gyokai81.htm
【2003年1月6日】【大河原】パソコン産業は今年も低迷するのか
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0106/gyokai44.htm
【2002年1月7日】【大河原】今年のキーワードは「BMW」と「AUDI」だ
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(2005年1月5日)

[Text by 大河原克行]


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