■多和田新也のニューアイテム診断室■ GatewayのBTXタワー「Gateway 705JP」レビュー |
2001年8月に一度は日本市場を撤退したGatewayだが、この年末に日本市場への再参入を表明した。同時に発表された国内向けモデルのうち、ミドルタワーモデルである「Gateway 705JP」は12月10日に発売されたフラグシップモデルで、価格は119,800円。BTX仕様PCという点でも注目ができる。このBTXタワーの仕組みなどを中心に、本製品についてレビューしてみたい。
●目新しい外観レイアウト
【写真1】GatewayのミドルタワーPC「Gateway 705JP」 |
「Gateway 705JP」は、12月10日に販売が開始された同社のミドルタワーPC(写真1)。外見からは、極めて一般的なミドルタワー機という印象を受けると思うが、内部はATX仕様ではなく、Intelが新たなフォームファクタとして提唱するBTX仕様となっているのが特徴だ。
まずは本製品の外観から見てみよう。前面部はBTXを感じさせるレイアウトにはなっていない(写真2)。確かにBTX特有のデッドスペースは存在しているのだが、この点については後述することにする。
最上部には光学ドライブが装着されている。このドライブは、NECの16倍速DVD±R/RWドライブ「ND-3500A」にオリジナルのベゼルを装着したもの(写真3)。5インチベイは1段空きスペースがあり、その下にはCF/スマートメディア/SDメモリーカード/メモリースティックに対応するカードリーダと、USB2.0ポートが備えられている(写真4)。
このカードリーダの外観に見覚えがある人も少なくないと思うが、これはeMachinesのミニタワー機などに採用されているものと同じである。eMachinesは今年2月にGatewayに買収されており、こうしたコンポーネントからもその事実を感じさせる。
ちなみに、このカードリーダ、マイコンピュータ上では各カードスロットごとに別々のアイコンが割り当てられており、メモリカードを装着すると色付けされるという演出があり、分かりやすい仕組みになっている(画面1、2)。
【画面1】メモリカードスロットのドライブアイコンは、メモリカードをイメージしたもので分かりやすい | 【画面2】メモリカードが装着されたドライブアイコンは着色される |
前面最下部にはIEEE 1394×2と、ヘッドフォン出力、マイク入力の端子を備える(写真5)。つまり、フロント部にあるUSB 2.0端子は写真4に示した1ポートのみ。IEEE 1394よりもUSB2.0の機器のほうが利用頻度が高い現状において、実情にそぐわない感がある。
さて、背面部に目を向けてみると、BTXらしさが表れてくる(写真6)。従来のATXだと、本体向かって左側にインターフェイス類が配置され、PS/2ポートが最上部にくるレイアウトだった。本機では、このレイアウトをそっくり回転させた格好で配置されることになる。以前にBTXをレポートしたときは、横置きを前提としたケースを使ったこともあり戸惑いは少なかったが、タワー型の製品に触れてみると違和感がある。慣れるには少々時間を必要としそうだ。
BTXらしさは側面パネルからも感じられる。ATXの場合は前方から向かって左側(後方から見て右側)の扉を開けてメンテナンスを行なうミドルタワーが主流であったが、BTXでは前方から見て右側の扉を開けることになる。本製品ではローレットスクリューを1つ外し、レバーを引くだけ簡単に扉が開けられる仕組みなっており、後々の拡張を考える上で好感を持てる(写真7)。
●大きなダクトが目を引く内部構造
【写真8】本体内部。3.5インチベイは上部に2段、下部に3段あるが、上部はカードリーダに占拠されている |
それでは、内部を覗いてみたい(写真8)。使用されているマザーボードはmicroBTXフォームファクタの製品で、ボード上の印刷からIntel製の「D915GSE」であることが確認できる。このマザーはエンドユーザー向けにはリリースされていないモデルのため、詳細な仕様は不明だ。
分かる範囲では、チップセットにIntel 915G+ICH6を搭載。PC3200までのDDR SDRAMに対応したスロットを4本装備するほか、PCI Express x16×1、PCI Express x1×1、PCI×3の各スロットを装備。IEEE 1394や、Marvell製「88E5050」によるGigabit Ethernet、Realtek製「ALC860」による8chサウンド機能をオンボード搭載といったスペックだ。
拡張ボードのスロットは本体向かって右側にレイアウトされる。ATXでは左手でブラケット部、右手でカード末端部を持つスタイルだったのも逆になるわけで、ATXに慣れたユーザーではこのあたりも最初は違和感を覚えることだろう。
内部でもっとも目立つのが、CPU上に設けられたダクトだ。写真9、10に示したとおり、ダクト内には12cmファンを装備しており、背面の12cmファンへかけて一直線に空気が流れるBTXらしい仕組みとなっている。動作中の稼動音は極めて小さく、平常時は他の電気製品が動作していない深夜でもない限り気になるレベルではない。一番うるさいのは光学ドライブだが、これもドライブにメディアが入っている場合のみである。
ただし、前述のとおり、前面部にファンが設置されているため、3.5インチフロントベイがもてないなど、ベイ数に制限が生じているのが分かる。最近のATXケースで拡張性を重視したものでは、前面部すべてに何らかのドライブを装着できるように設計されているものも多いが、BTXではそうした設計は不可能となるわけだ。以前から指摘があったことではあるが、こうしたウィークポイントはBTX普及の妨げとなる可能性を持っている。
【写真9】冷却機構部を前面よりから見たところ。前面のダクトから背面の12cmファンへかけて一直線上に空気が流れるよう設計されていることが分かる | 【写真10】ダクト内部。前面にも背面同様に12cmファンが使われる。ヒートシンクは全銅製で大きめのもの |
本製品のベイの仕組みはツールレスでドライブの固定ができるユニークなものだ。レバーでロック/アンロックを切り替えられるようになっており、アンロック状態でドライブをはめ込んだ後でレバーをロック状態にするだけでドライブが固定される(写真11)。
ちなみに光学ドライブのベイには1つだけネジ穴が用意されているが、これは光学ドライブのベゼルとフロントパネルの位置合わせのためのもの。本製品ではこのネジもローレットスクリューが採用されているのでツールレスで作業が可能だ。
最後にパーツ構成だが、CPUがPentium 4 550。このPentium 4は「J」モデルではないため、NX機能はサポートしていない(画面3)。メモリは1GB。Samsung製の512MBモジュールが2枚装着される(写真12)。HDDは250GBで、WesternDigital製の「WD Caviar SE(WD2500JD)」となっている(写真13)。価格は119,800円。なお、これらの仕様/価格は販売店/モデルによって若干変わってくる。
●シンプルな付属品とバンドルソフト
続いては付属品やバンドルソフトをチェックしてみたい。キーボードはPS/2接続の109キーボードが付属する(写真14)。ショートカットキーが充実したもので、キーボード左側にカット/コピー/ペースト/電卓起動ボタン、上部に音楽再生などを行なえるマルチメディアボタンやブラウザ/メールソフト起動ボタン。右側にブラウザの戻る/進むなどのブラウザ操作関連のボタンが用意されている。
マウスはシンプルなPS/2接続のもの(写真15)。2ボタン+ホイールを備え、最近ではちょっと珍しいボールタイプなのが特徴的なところである。
また、ステレオスピーカーが付属している(写真16)。サイズは111×139×190mm(幅×奥行き×高さ)と大ぶり。出力の情報はないのだが、製品付属のスピーカーとしては、まずまずの音を出してくれる。本体自体が低価格ということもあり、このレベルのスピーカーが付属するのは嬉しいところだ。
【写真14】付属のキーボード。上部と左右に多くのショートカットキーを備える | 【写真15】付属のマウスはボールタイプ。2ボタン+ホイールのオーソドックスなもの | 【写真16】付属のステレオスピーカー。大きめサイズだが付属スピーカーとしては音もまずまず。ボリューム調整のほか、ヘッドフォン端子も備える |
このほか、PCの初期セッティングの方法が書かれた用紙、PCの基本操作やメンテナンス方法が書かれたユーザーズガイド、リカバリの方法が書かれたシステムの復元説明書といったマニュアル類が付属する(写真17、18)。
【写真17】「コンピュータのセットアップ」と題された用紙が同梱。裏面には本体前面/背面の各端子類の説明が書かれている | 【写真18】基本操作が書かれたユーザーガイド(左)と、リカバリの方法が書かれたシステムの復元説明書(右)。システムの復元説明書にはCD-Rのブランクメディア5枚が一緒にパッケージングされている |
システムの復元説明書と一緒に、ブランクのCD-Rメディア5枚が付属している。本製品では、リカバリCDを自分で作成する仕組みになっており、最初に起動したときに作成を促すダイヤログが表示される(画面4)。この手順に従うことで、CD-RまたはDVD±Rにリカバリディスクを作成可能だ。
ただし、HDD内のDドライブ内にリカバリ用のデータが保管されているので、実際に作業する場合はこちらを利用したほうが短時間でリカバリできる。リカバリCD/DVDは、あくまで緊急用という位置付けと考えて良さそうだ。
なお、リカバリ方法にはHDDのフォーマットを行なわず既存OSに上書きする形でリカバリする方法、フォーマットして完全にリカバリする方法、フォーマットはするがHDD内のデータをMyBackupフォルダを用意して保存してくれる方法、の3種類が用意されている。とくにフォーマットしてもファイルを残す方法が用意されているのはありがたく、良い印象だ(画面5)。
印象といえばもう1つ、サポートの充実も挙げられる。同社Webページ内のサポートのオプションを見ても分かるとおり、24時間対応してもらえる電話/メールといったサポートのほかに、ライブチャットによるサポートが提供されている。
また、問い合わせる際に必要になる製品型番やシリアルナンバーなどは、本体側面に貼り付けてある(写真19)。こうすることで、問い合わせ時にシリアルナンバーが見つからずに右往左往することがなくなるわけだ。先のリカバリともども、ユーザーの利便性を向上させようという姿勢を感じる一面である。
【画面4】最初の起動後にリカバリCDの作成を促される。付属のCD-RやDVD±Rを使って一度だけリカバリCD/DVDを作成できる | 【画面5】リカバリには複数のモードがあり、HDDをフォーマットしつつデータのバックアップを取ってくれるモードも用意されている | 【写真19】本体側面にサポートを受けるのに必要な情報が書かれたラベルが貼られている。いざというときに心強い配慮だ |
続いてはバンドルソフトについて紹介しておきたい。本製品にバンドルされるのは、
・Norton AntiVirus 2004(期間限定版)
・Cyberlink PowerDVD5
・Roxio EasyCD Creator 6
といったところで、このほかはOSのWindows XP Home Edition Service Pack 2と各種ドライバなどの基本ソフトの類のみと極めてシンプルである。
低価格PCではこうした構成は珍しくないが、現在ではフリーのオフィススイートも出来がよくなっているし、国内のメーカー製PCにバンドルされる多数のソフトの重要性は以前よりも下がっていると思う。以前からそうした意見は根強く、少なくとも一定のスキルを持ったユーザーに取って、こうしたシンプルな構成は望ましい。
●12万円を切るコストパフォーマンスは大きな魅力
最後に、簡単にいくつかのベンチマークを実行してみた。メモリの速度が若干遅いためにアプリケーション周りのパフォーマンスが十分に発揮されていない。このあたりは自作用パーツとメーカー製PCのパーツにおけるBIOSチューニングの違いだろう。3D性能は内蔵グラフィックのため、この程度が限界ではないかと思われる。全体的にいえば、スペック相応の結果が出ている印象だ。
PCMark04 CPU Test |
File Compression | 3.8 |
---|---|---|
File Encryption | 48.2 | |
File Decompression | 33.6 | |
Image Processing | 14.6 | |
Grammar Check | 5.0 | |
File Decryption | 96.7 | |
Audio Conversion | 2,637.3 | |
WMV Video Compression | 50.3 | |
DivX Video Compression | 67.5 | |
Sandra 2004 Cache&Memory Benchmark |
8KB Blocks | 30,067 |
256KB Blocks | 24,066 | |
256MB Blocks | 2,488 | |
SYSmark2004 | SYSmark Rating | 174 |
Internet Content Creation | 192 | |
3D Creation | 183 | |
2D Creation | 233 | |
Web Publication | 166 | |
Office Productivity | 158 | |
Communication | 127 | |
Document Creation | 166 | |
Data Analysis | 187 | |
3DMark03 | 1,024×768ドット | 1,462 |
Unreal Tourment 2003 | Flyby | 73.4 |
Botmatch | 31.2 | |
TMPGEnc 3.0 XPress (FPS) |
MPEG-1 | 35.7 |
MPEG-2 | 19.4 |
12cmファンを2基使った静音性の高さや、完成されたPCとしての手軽さも加味すると、119,800円という価格は、自作機に比べても非常にコストパフォーマンスのよいものだ。
残るはGatewayの顧客に対する姿勢だ。サポートが受けられるのは、自作PCにはないメーカー製PCの特権である。電話/メール/ライブチャットと、満足できるものが用意されている。同社は急な撤退を決定した過去を持ち、日本市場において一度はその信頼を少なからず落としている。ユーザーに対するサポートを充実させることができれば、本製品の魅力もさらに増すことになるだろう。
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【2001年9月3日】【大河原】Gateway日本撤退のもう一つの理由
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010903/gyokai12.htm
【2001年8月29日】米Gateway、再建策を発表、日本撤退へ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010829/gw2k.htm
(2004年12月24日)
[Text by 多和田新也]