NVIDIAの最新ビデオチップ「GeForce 6800」シリーズは、最上位のGeForce 6800 Ultra、中位のGeForce 6800 GT、下位のGeForce 6800の3モデルが存在する。GeForce 6800 Ultraは、パイプラインを16本装備したフラッグシップモデルであるが、搭載ビデオカードの実売価格は7万円前後もしており、気軽に購入できる範囲を超えている。 そこで今回は、実売4万円台で購入可能なGeForce 6800搭載ビデオカードの性能を、GeForce 6800 Ultraや昨年夏に登場したフラッグシップモデルGeForce FX 5800 Ultraと比較してみることにしたい。 ●パイプライン本数が12本に削減されたGeForce 6800NVIDIAのGeForce 6800シリーズは、現時点で唯一Shader Model 3.0をサポートするなど、先進的な仕様のビデオチップであり、描画性能もATI TechnologiesのRADEON X800シリーズと並ぶトップクラスのパフォーマンスを誇る。GeForce 6800シリーズの特徴やアーキテクチャについては、後藤氏のコラムなどで詳しく解説されているので、そちらを参照していただきたい。 GeForce 6800シリーズは当初、上位となるGeForce 6800 Ultraと下位のGeForce 6800の2モデルのみが発表されたのだが、後に中位モデルのGeForce 6800 GTが追加された。それぞれの仕様の違いについては下の表にまとめたが、GeForce 6800 GTは、GeForce 6800 Ultraの低クロック版という位置づけであるのに対し、GeForce 6800はクロックが低くなっているだけでなく、パイプライン本数が16本から12本に削減されている。 ちなみに、ライバルのRADEON X800シリーズも、上位のRADEON X800 XT Platinum Editionのパイプラインが16本であるのに対し、下位のRADEON X800 PROではパイプライン本数が12本となっている。 また、GeForce 6800 UltraとGeForce 6800 GTでは、ビデオメモリとしてGDDR3メモリを256MB搭載するのに対し、GeForce 6800ではDDRメモリを128MB搭載するのが標準構成とされているのも相違点である。 【GeForce 6800シリーズの仕様比較】
●1スロットしか占有せず、外部電源コネクタも1個
GeForce 6800搭載ビデオカードも数社から発売されているが、ここではエルザジャパンの「ELSA GLADIAC 940 128MB」(以下GLADIAC 940)を取り上げる。また、比較対照用として、同じくエルザジャパンのGeForce 6800 Ultra搭載ビデオカード「ELSA GLADIAC 940 Ultra 256MB」(以下GLADIAC 940 Ultra)と、1年前のフラッグシップモデルであるGeForce FX 5900 Ultra搭載リファレンスカード(以下GeForce FX 5900 Ultra)を用意した。 GLADIAC 940とGLADIAC 940 Ultraは、E.S.C.S II(第2世代Elsa Silent Cooling System)と呼ばれる独自の冷却システムを採用していることが特徴だ。E.S.C.S IIは、1スロットしか占有せず、隣接PCIスロットも利用できるという利点がある。 なお、クロックの低いGeForce 6800搭載ビデオカードでは、GLADIAC 940と同様に1スロット占有型の製品が中心だが、GeForce 6800 Ultra搭載リファレンスカードでは、隣接スロットも占有する設計になっている。そのため、GeForce 6800 Ultra搭載ビデオカードでは、隣接スロットが利用できない製品が多く、1スロットしか占有しないGLADIAC 940 Ultraの利便性は高い。 また、消費電力の大きなGeForce 6800 Ultra搭載ビデオカード(GLADIAC 940 Ultraも同じ)では、外部電源コネクタ(4ピンの周辺機器接続用コネクタ)が2つ用意されているが、GeForce 6800搭載ビデオカードでは、外部電源コネクタが1つですむことも特徴だ。 出力端子としては、GLADIAC 940ではアナログRGB端子、DVI-I端子、TV出力端子がそれぞれ1つずつ用意されているのに対し、GLADIAC 940 Ultraでは、DVI-I×2とTV出力端子×1が用意されている。
●DirectX 8ベースのテストではGeForce FX 5900 Ultraを1~2割上回るそれでは、早速ベンチマークテストを行なってみた。テスト環境は以下に示したとおりで、ディスプレイドライバは、GLADIAC 940の付属CD-ROMに収録されていたForceWare v61.21を利用した。 ベンチマークテストとしては、DirectX 8環境でのパフォーマンスを計測する3DMark2001 SE(Build 330)とUnreal Tournament 2003のFlyby、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 2、DirectX 9環境でのパフォーマンスを計測する3DMark03(Build 340)とAquaMark3を用いた。 3DMark2001 SEと3DMark03、AquaMark3は、1,024×768ドット/1,280×1,024ドット/1,600×1,200ドットの3種類の解像度で、それぞれFSAA無効/FSAA 4X有効/FSAA 4X有効+異方性フィルタリング8X有効(Aniso 8X)という条件で、Unreal Tournament 2003は、1,280×960ドット/1,600×1,200ドットの2種類の解像度で、それぞれFSAA無効/FSAA 4X有効/FSAA 4X有効+異方性フィルタリング8X有効(Aniso 8X)という条件で計測を行なった。 また、FINAL FANTASY Official Benchmark 2については、Lowモード(640×480ドット)とHighモード(1,024×768ドット)の2種類の解像度で、それぞれFSAA無効/FSAA 4X有効/FSAA 4X有効+異方性フィルタリング8X有効(Aniso 8X)という条件で計測を行なった。 なお、コアクロックとメモリクロックを調べてみたところ、GLADIAC 940 Ultraは、コアクロック425MHz(定格よりも25MHz高い)/メモリクロック1.1GHz、GLADIAC 940は、コアクロック325MHz/メモリクロック700MHz(ともに定格と同じ)で動作していた。 【テスト環境1】
まず、DirectX 8ベースのベンチマーク結果から見ていきたい。3DMark2001 SE(グラフ1)のスコアは、GeForce 6800 Ultra>GeForce 6800>GeForce FX 5900 Ultraとなっている。スペックからいって当然ともいえるが、1,024×768ドットモードでFSAAを無効にした状態では、GeForce 6800 UltraとGeForce 6800のスコア差は約8%であり、それほど大きくない。 しかし、高解像度でFSAAや異方性フィルタリングを有効にするなど、ビデオチップへの負荷が大きくなるほど、GeForce 6800 Ultraとの差も大きくなる。今回のテストで最も負荷が大きい1,600×1,200ドット/FSAA 4X/Aniso 8Xでは、GeForce 6800 UltraはGeForce 6800の約1.5倍のスコアを叩き出している。 GeForce 6800 Ultraは、高解像度時にFSAAや異方性フィルタリングを有効にしてもスコアの低下が小さいのに対し、GeForce 6800では、FSAAや異方性フィルタリングによるパフォーマンスペナルティが比較的大きい。また、1年前のフラッグシップモデルであるGeForce FX 5900 Ultraとの比較では、GeForce 6800が1~2割程度高いスコアを記録している。 Unreal Tournament 2003 Flyby(グラフ2)のフレームレートも、3DMark2001 SEの結果と傾向は一緒である。1,280×960ドットモードでFSAA無効にした状態では、上位モデルのGeForce 6800 Ultraとの差はわずかであるが、1,600×1,200ドット/FSAA 4X/Aniso 8Xでは差は約1.9倍にもなっている。 FINAL FANTASY XI Official Benchmark 2(グラフ3)は、GeForce 6800 UltraとGeForce 6800のスコア差があまり大きくないのに対し、GeForce 6800とGeForce FX 5900 Ultraとの差はより大きく開いている。1,024×768ドット/FSAA 4X/Aniso 8Xモードでは、GeForce 6800はGeForce FX 5900 Ultraの約1.24倍のスコアを記録しており、前世代のハイエンドモデルに比べて明らかに性能が向上していることがわかる。
●DirectX 9ベースのテストではGeForce FX 5900 Ultraの最大1.5倍以上に次に、DirectX 9ベースのベンチマークテストの結果を比較してみる。3DMark03(グラフ4)のスコアは、DirectX 8ベースのベンチマーク結果に比べて、各ビデオカード間の差がはるかに大きい。 例えば、1,024×768ドットでFSAAや異方性フィルタリングを無効にした状態でのGeForce FX 5900 Ultraのスコアを基準にした場合、GeForce 6800は約1.47倍、GeForce 6800 Ultraは約2.03倍ものスコアを記録している。 この傾向は、解像度が高くなるとさらに強くなり、1,600×1,200ドットでFSAAや異方性フィルタリングを無効にした状態では、GeForce 6800はGeForce FX 5900 Ultraの約1.54倍、GeForce 6800 UltraはGeForce FX 5900 Ultraの約2.26倍ものスコアを出している。 また、GeForce 6800 Ultraでは、1,600×1,200ドットモードでFSAA 4Xを有効にした場合でも、スコアが35%程度しか落ち込まないのに対し、GeForce 6800では47%もスコアが低下している。高解像度でFSAAや異方性フィルタリングを有効にした場合は、パイプライン本数が多く、コアクロックやメモリクロックも高いGeForce 6800 Ultraのポテンシャルの高さがはっきり現れているといえる。 AquaMark3(グラフ5)のフレームレートについても、傾向は3DMark03とよく似ているが、3DMark03に比べるとビデオカード間の差は小さくなっている。
●GeForce 6800 Ultraに比べ性能は落ちるが、コストパフォーマンスは高いGeForce 6800のベンチマークスコアは、上位となるGeForce 6800 Ultraの6割~9割程度であり、実売価格がGeForce 6800 Ultraの6割程度であることを考えれば、コストパフォーマンスは高いといえる。RADEON X800 PRO搭載ビデオカードの実売価格も5万円前後なので、最新ハイエンドビデオカードとしては、安い部類に属する。 絶対的な性能では、もちろんGeForce 6800 UltraやGeForce 6800 GTには及ばないが、GeForce 6800でもGeForce FX 5900 Ultraを大きく上回る性能を実現しているので、現状のDirectX 9対応ソフトを動かす上で、性能不足を感じることはまずないだろう。 RADEON X800シリーズと比べた場合、GeForce 6800シリーズにはShader Model 3.0に対応しているというメリットがある。Shader Model 3.0対応ソフトが出ていない現状では、その真価を発揮することはできないが、将来性の面では有利であろう。また、GeForce 6800 Ultraに比べて消費電力が小さく、発熱も小さいため、内部の空間が狭いケースで利用する場合にも向いている。 □関連記事 (2004年7月6日)
[Reported by 石井英男]
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