880gのA5ミニノートPC
「Mebius MURAMASA PC-CV50F」



シャープ「Mebius MURAMASA PC-CV50F」

 シャープの「Mebius MURAMASA PC-CV50F」は、最近では数少なくなったミニノートPCに属する製品で、7.2型液晶ながら1,280×768ドットという高解像度表示が可能なワンダーピクス液晶を搭載していることが特徴だ。

 また、著名プロダクトデザイナー、トム・シェーンヘル氏の手によるスタイリッシュなボディも魅力の1つになっている。

 今回、Mebius MURAMASA PC-CV50Fを試用する機会を得たので、早速レビューしよう。


●なめらかでスタイリッシュなボディを実現

 シャープのMebius MURAMASAシリーズは、同社のノートPCの中でも、携帯性を重視した製品である。今回発表された「Mebius MURAMASA PC-CV50F」(以下PC-CV50F)は、A5サイズ、重さ880gという、Mebiusシリーズとして最小・最軽量を実現したミニノートPCであり、高い携帯性が魅力だ。

 なお、今回試用したのは試作機であり、ベンチマークテストは行なっていない。また、量産品とは細部が異なる可能性があることに注意してほしい。

 PC-CV50Fの本体サイズは255×158×30.1~31.1mm(幅×奥行き×高さ)で、VHSテープを一回り大きくした程度である。

 ボディのデザインは、著名プロダクトデザイナー、トム・シェーンヘル氏の手によるもので、中央部に向かってなめらかに盛り上がっていくフォルムが印象的である。ボディの材質にはアルミとプラスチックが使われており、光沢感のある仕上げが美しい。

 液晶パネル部分とその周囲の額縁部分に継ぎ目のないデザインも、なかなか高級感がある。ただし、液晶パネルの周囲の額縁部分が大きく、キーボードの左右にも大きな空きがあるのは、スペース的にもったいない気がする。なお、ボディカラーは、今回試用したブラックモデル(PC-CV50F)の他にホワイトモデル(PC-CV50FW)も用意されている。

ボディ上面は、中央に向かってなめらかに盛り上がるデザインになっている。表面は光沢仕上げである 底面も中央部にかけてなめらかに盛り上がっている。標準バッテリは内蔵で取り外しができず、メモリスロットカバーもないため、底面はすっきりしている
DOS/V POWER REPORT誌とのサイズ比較。横幅、奥行きともにDOS/V POWER REPORT誌よりもはるかに小さい VHSテープとのサイズ比較。VHSテープよりも一回り大きい程度である

●CPUとしてEfficeon TM8600 1GHzを搭載

 PC-CV50Fは、CPUとしてTransmetaのEfficeon TM8600 1GHzを搭載している。Efficeonは、Crusoeの後継となるモバイル向けCPUである。VLIWの命令長がCrusoeの2倍の256bitになったことで、性能が大幅に向上し、消費電力、性能の両面で超低電圧版Pentium Mに十分渡り合える製品となっている。

 今回は試作機を試用したため、ベンチマークテストは行なっていないが、Efficeon TM8600 1GHzを搭載したほかの製品でのテストでは、超低電圧版Pentium M 900MHzとほぼ同等の性能という結果が出ており、このクラスのミニノートPCとしては十分な性能といえる。

 メモリは標準で256MB実装している。ユーザーの手による増設はできないが、有料のメモリ増設サービス(税込25,600円)によって、512MBに増設することが可能だ。

 HDDは、サイズと重量を重視して1.8インチタイプが使われており、容量は20GBである。容量的にはやや不満があるが、ライバルと見られる「VAIO type U」でもHDD容量は同じなので、現状では仕方がないだろう。また、ビデオチップとしてはMOBILITY RADEONを搭載している。

●精細度200ppiを超える高精細液晶を搭載

 PC-CV50Fの最大のウリは、7.2型ながら1,280×768ドット表示が可能な高解像度液晶パネルを採用していることだ。この液晶パネルは、ワンダーピクス液晶と呼ばれているもので、シャープ独自の高開口率技術が採用されている。

 一般的なXGA表示(1,024×768ドット)に比べて、横方向の解像度が25%広くなっており、一度によりたくさんの情報を表示することが可能だ。精細度は207ppiに達し、現時点でノートPCに使われている液晶パネルの中ではトップクラスの精細度となる。精細度が高いと、それだけドットピッチが狭くなるため、同じポイント数の文字ならより小さく表示されることになる。輝度やコントラストは高く、視認性は高いのだが、視力の弱い人にはやや厳しいと感じるかもしれない。

 ただしPC-CV50Fでは、Fn+F2キーを押すことで、解像度を1,024×600ドットにワンタッチで切り替えることができる(もう一度押すと1,280×768ドットに戻る)。1,024×600ドットなら、文字も大きく表示されるので、状況に応じて使い分けるとよいだろう。

 ただ、液晶表面と周囲の額縁部分が光沢のあるパネルで覆われているため、外光の映り込みがやや気になることもある。なお、バックライトの輝度は16段階に変更可能。

7.2型WXGA液晶を搭載。液晶パネル周囲の額縁部分は大きい。液晶の左側に電源スイッチが用意されている 「コンピュータの電源を切る」ダイアログボックスに並ぶアイコンの横の長さは約4.5mmである

●キーボードやポインティングデバイスにはやや違和感がある

 PC-CV50Fは、本体サイズが小さく、さらにキーボードの左右にも大きなスペースが空いているため(実測では左右それぞれ約20mm)、キーボードにはかなりしわ寄せが来ている。公称キーピッチは約14mmだが、右側の一部のキーのキーピッチは10.5mm程度である。

 また、縦ピッチは約12mmで、キートップが横長の長方形になっているので、慣れるまでやや違和感がある。手の大きな人ではかなり窮屈に感じるであろう。また、Fnキーが右側にあるのも変則的である。

 ポインティングデバイスとしては、パッド型デバイスが採用されている。パッド自体の操作性は悪くないのだが、クリックボタンがパッドの左右に配置されていることが気になった。通常、この種のデバイスではクリックボタンがパッドの下側に配置されているため、慣れるまで、左クリックをしようとして、ボタンのないパッドの下部をつい押してしまった。

公称キーピッチは約14mmだが、縦ピッチは約12mmで、キートップは長方形になっている 右側の「れ」や「け」「む」などのキーのピッチは10.5mm程度である。Fnキーが右側にあるのもやや変則的だ
筆者の手はそれほど大きいわけではないが、それでもやや窮屈な印象を受けた。キーボードの左右がかなり空いているので、横幅一杯までキーボードを大きくしてくれれば、さらに入力しやすくなったであろう クリックボタンがパッドの左右に配置されているため、慣れるまで違和感がある

●無線LAN機能を搭載するが、モデムや有線LANは非搭載

 PC-CV50Fは本体のサイズが小さいため、インターフェースや通信機能はある程度の割り切りが感じられる。拡張ポートとしては、USB 2.0×2、DirectHD接続(後述)、マイク入力、ヘッドホン出力(リモコン接続端子も兼ねる)、外部ディスプレイ出力(専用形状なので、利用には別売りの変換ケーブルが必要)のみが用意されている。

 カードスロットとしては、CFカードスロットとSDメモリーカードスロットが用意されているが、PCカードスロットは装備していない。CFカードスロットのフタは、カバー方式ではなくダミーカード方式になっている。

 通信機能として、IEEE 802.11b準拠の無線LAN機能を装備しているが、モデム機能や有線LAN機能は搭載していない。無線LAN機能のON/OFFはFn+F1キーで行なえ、無線LANインジケータも用意されている。

 無線LANがIEEE 802.11bのみ対応というのは、IEEE 802.11b/g対応製品やIEEE 802.11a/b/g対応製品が増えている現状ではやや見劣りするが、ホットスポットサービスなどで使われているのはIEEE 802.11bが主流なので、運用上は特に問題にならないだろう。

 DirectHD機能は、Mebius MURAMASAシリーズ特有の機能で、本体内蔵HDDをほかのPCから外付けHDDとしてアクセスするための機能である。もちろん、PC-CV50Fの動作中にはDirectHD機能は利用できないようになっており(PC-CV50Fが利用しているファイルを書き換えられると困るため)、PC-CV50Fの電源を切った状態で、付属の専用ケーブル経由で他のPCに接続することで、DirectHD機能が利用できる。

左側面には、USB 2.0×2と外部ディスプレイ出力、CFカードスロットが用意されている 右側面には、DirectHD接続端子、SDメモリーカードスロット、マイク入力、ヘッドホン出力、ACアダプタ接続端子が用意されている CFカードスロットのフタは、ダミーカード方式
Fnキーとファンクションキーのコンビネーションでさまざまな操作が可能。Fn+F1キーでは無線LAN機能のON/OFFが行なえる 5つあるLEDインジケータのうち中央が無線LANの動作状況を示すインジケータである

●リモコンでアプリケーションの起動や文字入力が可能

 PC-CV50Fでは、リモコン付きヘッドホンが付属しており、アプリケーションの起動や音楽・動画の再生、文字入力などが行なえる。リモコンでのアプリケーション起動や文字入力は、「ペンタグラム」と呼ばれるソフトを利用して行なう。リモコン中央の再生/停止ボタンを長押しすると、ペンタグラムが起動する。

リモコン付きヘッドホンが付属している。リモコンには特に液晶などは用意されていない リモコン部分のアップ。ペンタグラムのデザインも、このリモコンを模したものになっている

 リモコンには、2つのアクションコントロールボタン(上下に押せるほか、垂直に押し込むことが可能)が用意されており、上のアクションコントロールで、モードや文字種を変更し、下のアクションコントロールで、文字やアイコンを選び、中央の再生/停止ボタンで確定する。予測変換機能も装備している。リモコンを使って、音楽や動画再生時の操作を行なうのは快適だが、文字入力をするのはかなり面倒で、あまり実用的とはいえないだろう。

 また、アイコンやフォントのサイズをワンタッチで切り替えるためのユーティリティ「見やすいコン2」もプリインストールされている。

リモコンでのアプリケーション起動&文字入力を行なう「ペンタグラム」。ランチャーモードでは、アプリケーションを起動することができる ペンタグラムの文字入力モード。まず、行を指定する 行を指定したら、文字を選択する
予測変換機能を装備しているので、最初の数文字を入れるだけで候補が表示される 定型文入力モードも用意されている
中央に表示されているゲーム機のコントローラに似たデザインのユーティリティが「見やすいコン2」。アイコンやフォントのサイズをワンタッチで切り替えることができる(この画面は標準サイズ) アイコンとフォントのサイズを「大」にしたところ。アイコンや文字が大きく表示されるようになる

●標準バッテリで約3.5時間、オプションのアドオンバッテリ併用で約7時間駆動が可能

底面にアドオンバッテリ装着用端子が用意されている。端子は普段カバーで保護されているが、アドオンバッテリを装着するときにはカバーを開けるようにする

 PC-CV50Fでは、標準バッテリは内蔵タイプとなっており、ユーザーが交換することはできない。

 標準バッテリで、公称約3.5時間の駆動が可能だ。3.5時間ではやや不安というのなら、オプションのアドオンバッテリを底面に装着することで、2倍の約7時間駆動が可能になる。

 アドオンバッテリの重量は約160gなので、装着時の合計重量は約1,040gとなり、携帯性はそれほど低下しない。また、ACアダプタがコンパクトで軽いことも嬉しい。


●携帯性と高解像度液晶が魅力だが、入力デバイスはイマイチ

 PC-CV50Fは、重さ880gでA5サイズのボディに、1,280×768ドット表示が可能な高解像度液晶を搭載したミニノートPCであり、携帯性と基本性能については不満はない。

 しかし、デザインを重視したためか、キーボードや液晶の周囲のスペースが大きく、そのしわ寄せがキーボードやポインティングデバイスにきていることが気になる。

 もちろん、キーボードやポインティングデバイスについては、個人の好みもあるので、購入を検討するのなら、実際に店頭で触って確認することをお勧めしたい。

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【5月12日】シャープ、7.2型WXGA液晶でA5サイズノート「MURAMASA」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0512/sharp01.htm

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(2004年6月14日)

[Reported by 石井英男]


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