5月のGW期間中に開催されたWinHEC 2004では、Longhornをはじめとして今後リリースされる予定の多くのソフトウェアが紹介、解説された。その中で、最も早いリリース時期が予定されているのがWindows XP Service Pack 2(SP2)だ。 すでにSP2についてはRC1版をベースにしたプレビュー版が3月に公開されているが、もう一度、機能を振り返ってみよう。 ●セキュリティ機能の強化が主眼 すでにMicrosoft自身により紹介されている通り、SP2の目玉はセキュリティ機能の向上にある。 それを象徴するようにコントロールパネルに「セキュリティセンター」が追加されている。セキュリティセンターは、複数のコントロールパネルアプレットに分散しているWindowsのセキュリティ機能を一元的に管理しアクセスするためのツールだ。 デフォルトで有効に設定されるファイアウォール機能や自動更新の設定、IEのポップアップブロックの設定などを、ここから直接呼び出すことができる。機能的には、新しい部分も、これまでと大差ない部分もあるが、Windowsの設定のうち、どれがセキュリティにかかわる機能なのか、どこをどう設定すれば分からない、という一般のユーザー向けには、これまでのWindows XPよりも進歩していることは間違いない。
ただし、こうしたセキュリティ機能がデフォルトで有効になることで、これまで動いていたアプリケーションが動作しなくなったり、閲覧できていたWebページの表示がおかしくなる、ということも十分考えられる。 だが、Microsoftはセキュリティ向上の御旗のもと、あえてセキュリティ強化を優先するようだ。Windows XP SP2を搭載したPCを出荷することになるOEMに対してMicrosoftは、SP2を出荷した直後はユーザーサポートが増大するであろうと予測しつつ、その後のユーザーサポート量は今よりも減少するとしている。しばらくの辛抱、というわけだ(本当にそうなるかどうかは、やってみなければ分からないだろう)。 ●CPUのNo eXecute機能と協働 さて、このセキュリティに関連したハードウェアサポートの機能として、NX(No eXecute)機能のサポートがある。NXはメモリのページ単位で、そこに置かれたデータを実行可能かどうか指定するもの。非実行属性のページにおかれたコードの実行を防止することで、いわゆるバッファオーバーフローを使ったコンピュータウイルスの活性化を防止することができる。 すでにAMDのAthlon 64ならびにOpteronプロセッサでサポートされており、AMDはこの機能をEnhanced Virus Protectionと呼んでいる。32bitプロセッサであるAthlon XPでNXをサポートするかどうかも質問してみたのだが、「Athlon 64は32bit OSとも互換であり、そういう観点からすると32bitプロセッサにおけるNX対応はすでに行なわれていると考えられる」という分かったような、分からないような回答ではぐらかされてしまった。なおIntelも、今年後半に出荷されるプロセッサ(Pentium M、Pentium 4、Xeon、Itanium 2)で、この機能(IntelはXDと呼ぶ)をサポートするほか、Transmetaも今年後半でのサポートを表明している。 直接セキュリティに関連しないハードウェアサポートでは、Bluetoothのサポート強化が図られる。新しいプロファイルとしてPersonal Area Network User、Object Push(File push)、Virtual COM portsが加わるほか、システム起動時(OSが完全に起動する前)にBuletoothキーボードを利用することが可能になる。 その一方で、オーディオ関係のプロファイルやBuletoothデバイスによるシステムのウェイクアップ等は、SP2以降の改善に持ち越されてしまった。ただ、IntelもBluetoothをサポートする方針を明らかにしており、今後も改善が期待される。 ほかにもUSBフラッシュメモリを使って無線LAN機器(PC、アクセスポイント等)の設定を行なうWindows Smart Network Key、無線LANユーティリティの改善、Windows Media9/DirectX 9.0b/Movie Maker 2.1の標準バンドルなどがSP2には含まれる。 ●すべてのWindows XP製品に関連 Windows XP SP2は、Webからのダウンロードとして単体で無償提供されるほか、PCへプリインストールされるWindows XPへの適用、量販店等で販売されるパッケージの更新など、すべてのWindows XPに影響を及ぼす。 また、このSP2をベースに、Windows Media Center Edition 2004、さらにはWindows XP Tablet PC Edition 2005も開発される。これらは、単なるService Packとしてではなく、さらなる機能拡張と改良を施されて提供されるため、名称が変更となる。Tablet PCについてはMicrosoftは現行のTablet PCから2005への無償アップデートをMicrosoftが提供するとしている。 一方、Windows Server 2003については、このWindows XP用のSP2より若干遅れたスケジュールでWindows Server 2003 SP1の開発が進行中だ。基本的にはWindows Server 2003 SP1はWindows XP SP2に相当するが、クライアント向けOSとしてのWindows XP 64-bit Edition for 64-bit Extended Systems(AMD64用のWindows XP)については、Windows Server 2003 SP1がベースとなる。 ●今後のWindows製品のスケジュール さて、Windows XP SP2の提供スケジュールだが、WinHECでロードマップが提示された。これによると今月(5月)中にRC2をリリースし、7月下旬に完成(RTM)となっている。ここから35日以内の主要25カ国語向けローカライズ作業完了を見込む。RTMから1週間以内にWebサイトで提供するための準備とCDのオーダー受付を開始し、翌週からダウンロードとCDの出荷が始まる。つまり、現時点ですべて順調にいったとして、SP2のアップデートモジュールが入手可能になるのは8月に入ってからだと考えられる。
ローカライズ版の1つである日本語版については、若干遅れる可能性があるが、大幅に遅れることはないだろう。RTMから約1カ月後に、OPKとOEM版の出荷が始まり、大手ベンダのPCならびにホワイトボックス系PCのプリインストールOSがWindows XP SP2に切り替わる。9月の末には量販店の店頭に並ぶパッケージがSP2ベースに置き換わる予定だ。つまり10月にはほぼすべてのチャンネルでWindows XP SP2が潤沢に出回るものと予想される。 この10月のタイミングで、MicrosoftはWindows XP SP2の大幅なキャンペーンを予定している。このキャンペーンの名前がXP Reloadedで、当初一部で言われたようなWindows XPの次のバージョンの名前ではなかった。このキャンペーンでSP2は、「Microsoft Windows XP Service Pack 2 with Advanced Secrurity Technologies」という、セキュリティを強調した名称で呼ばれることになっているようだが、キャンペーンの詳細については明らかにされていない。 おそらく今年の第4四半期は、このWindows XP SP2がWindowsマーケティングの中心で、次の64-Bit Editionは年越しになると考えるのが順当だろう。すでに日本語版については年内のRTMを目標とすることが明らかにされており、年内に流通する可能性はまずない。 何やかやでSP2のリリースも当初のスケジュールより1年近く遅れてしまったが、一部、今後登場するハードウェアのサポート(NX)まで入っていることを考えればやむを得ないところかもしれない。 ソフトウェアのリリーススケジュールというのは、こうして遅れていくものであり、そういう意味では今回のWinHECでLonghornのリリース時期に言及しなかったのは、正しいことだと筆者は思っている。3年近くも先のことなのだから、本当にリリースされるかどうかが、まず問題ではないだろうか。来年のWinHECでは64Bit版のリリースが完了し、Longhornの最初のベータ版が配布されることを期待したい。
□関連記事 (2004年5月24日) [Text by 元麻布春男]
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