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eMachinesノート「M5315」を試す



eMachines「M5315」

 わが国でeMachinesというと、どうしてもデスクトップPCの印象が強い。

 何といっても初登場時のヨンキュッパという価格のインパクトが強烈だったからだが、虚飾を排したシンプル&ストレートな同社のデスクトップPCは、市場での評判も悪くないようだ。2度ほど紹介した筆者にも悪い印象はないし、こうした「素のPC」を扱ってちゃんと収益を上げられるeMachinesというのもなかなかたいしたものだ、とさえ思っている。今回取り上げるM5315は、そんなeMachinesのノートPCだ。

●15.4型ワイド液晶とDVD±RWドライブを搭載

僚誌DOS/V POWER REPORTとの比較

 現在国内販売されているeMachinesブランドのノートPCは、Celeron 2.50GHz搭載のM5108(税込価格124,800円)、Athlon XP-M 2600+(2GHz/L2 512KB)搭載のM5315(同144,800円)、Pentium 4 3.06GHz搭載のM6414(同184,800円)の3種類。いずれも15.4型のワイド液晶(1,280×800ドット、いわゆるツルピカ液晶ではない)を搭載したモデルである。米国ではAthlon 64搭載モデルも販売されているが、わが国でのリリースは未定のようだ。

 このM5315は、わが国で販売されている現行ラインナップ中の中位モデルということになる。シリーズとして決して高額なノートPCではないものの、デスクトップPCの衝撃価格を思えば、多少スペックを落としても、10万円を切るローエンドモデルが欲しいところ。連日新聞にDellやHPの低価格ノートPCの広告が掲載されていることを思うとなおさらだ。

 さて、M5315のプロセッサ以外のスペックだが、まずノースブリッジがグラフィックス統合型のRADEON IGP320M。サウスブリッジはALi 1535+だ。標準搭載256MBのPC2100 DDR SDRAM(空きSO-DIMMスロット×1、最大768MB)から、最大64MBをディスプレイメモリとして利用する。

 ハードディスクは日立製4,200rpmの60GBドライブ(DK23FA-60)で、アクセスの容易なモジュールとして搭載されている。光学ドライブはDVD±RWドライブ(Pioneer DVR-K12D)で、書き込み速度はDVD+R/RWが最大2.4倍速、DVD-R/RWが2倍速となる(取り外し不可)。MiniPCIカードとしてBroadcom製の無線LANモジュール(IEEE 802.11b/g)を搭載しているほか、Ethernet、56Kモデム(V.92)、AC'97オーディオ、IEEE 1394ポート(4ピン)を内蔵する。ほかにパラレルポート、VGA出力(アナログD-Sub15ピン)、Sビデオ出力、Type2 PCカードスロット×1、USB 2.0ポート×3、マイクおよびヘッドフォンジャックを備えるが、SDカードやメモリースティックといったフラッシュメモリメディア専用のスロットは持たない。

 15.4型液晶搭載ということで、かなり大振りの筐体だが、その大きさからすると内蔵するインターフェイスの種類や数は控えめな印象だ。この大きさだけにキーボードはフルピッチ(19mm)のものを余裕で搭載、内蔵のタッチパッド(専用スクロールエリア付)のレスポンスも悪くない。プリインストールのソフトウェアは、OSのWindows XP Home Editionを除くと、RoxioのEasy CD & DVD creator 6 Basic DVD Edition、CyberLinkのPower DVD5、Adobe Reader 6.0と最小限になっているのも同社らしい。

●堂々とした大振りな筐体

左からLaVie J(NEC)、FMV-BIBLO MG75G(富士通)、本機にそれぞれ添付されているACアダプタ

 このM5315全体から感じられるのは、昔のアメ車に通じるようなおおらかさだ。15.4型液晶ということで、それだけでも筐体のサイズは大きく、本体の重量も重くなってしまうわけだが、本機の場合、それに悪びれることがないというか、堂々とした作りになっている。言い換えると、あそこで10g、ここで20gといった重量削減の努力、といったものはあまり感じない。がっちりとした作りで、ヤワな印象がない反面、重量は3kgと日本人が持ち運んで使うにはちょっと辛い。付属するACアダプタの大きさひとつを考えても、日本人にとってはデスクトップPC置き換え用のノートPCという位置づけになるだろう。

 ただ、デスクトップPCの置き換えという視点で見ると、性能面が必ずしも十分ではないかもしれない。今回、適当な比較マシンがなかったので、以前このコラムで取り上げた富士通の「FMV-BIBLO MG75G」(Centrino/Pentium M 1.5GHz)と簡単なベンチマークテストで比べてみた(液晶の解像度/アスペクト比が異なるほか、OSも違えば、メモリ搭載量も異なるので、あくまでも参考として考えてほしい)。が、その性能はモバイル性を重視したMG75Gと同等か、若干落ちる(特にグラフィックス)という結果になった。普通にブラウザを使ったり、DVD-Videoを見る分には特に不満もないのだが、筐体から連想するほどのパワフルさはない。

 eMachinesのデスクトップPCがそうであったように、米国においては同社が販売するノートPC(すべてワイド液晶で3kg前後の重量)はメインストリームに分類されるものであり、おそらくモバイル用途にも使われているものと考えられる(逆に言えば、eMachinesのノートPCに採用された時、Centrinoは米国で普及した、と言えるのかもしれない)。実際、IDFやWinHECに行くと、本機どころではない巨大なノートPCを抱えている米国人をよく見かける(B5のシングルスピンドルノートPCなどというものを持っているのはたいてい日本人だ)。モバイル用ノートということであれば、性能的には普通なのかもしれないが、わが国での用途を考えると微妙な気がする。

【表】ベンチマークテスト
 eMachines M5315富士通 FMV-BIBLO MG75G
プロセッサAthlon XP-M 2600+Pentium M 1.5GHz
チップセットRADEON IGP320MIntel 855GME
3DMark 2001 SE
3DMarks1,6092,357
PC Mark 2004
PCMarks2,4412,431
CPU2,8592,829
Memory1,3912,232
Graphics490710
HDD2,2352,274

●ドライなアメリカンテイスト

 また、細部のデザインという点でも、国内ベンダのノートPCのような配慮は期待しない方が良いだろう。たとえば内蔵する無線LANだが、その有効/無効はFnキーを押しながらF2キーを押すことで設定するのだが、どちらに設定されているかを示すハードウェアのインジケーター(LEDなど)がない。よく見るとタスクトレイにあるBroadcomのアイコンで、有効/無効の判別ができる(Windows標準のネットワーク接続のアイコンは、ネットワークに接続しているかどうかを示すものであり、ハードウェア的な有効/無効を直ちに反映したものではない)のだが、システムが起動するまでは判別できないなど、あまり分かりやすくはない。

 筆者は、ノートPCの無線LAN機能については、スイッチのポジションで有効/無効が識別可能なハードウェアスイッチを、フタを閉じた状態でもアクセスできる位置に用意すべきだと思っている。これはバッテリ消費うんぬんだけでなく、誤って航空機の機内等で無線LANの電波を発射させる事態を回避しやすいという理由からでもある。現時点で無線LAN機能が有効になったノートPCを航空機の機内で起動することは、改正航空法に違反する行為だと考えられる。実際、国内ベンダが販売するモバイルPCの多くで、こうしたハードウェアスイッチが用意されている。ACアダプタのプラグがL字タイプ(ノートPC側の電源ジャック破損の危険性を減らす)になっていないのも、昔のアメ車的な印象を受ける理由の1つかもしれない。幸い、冷却ファンのノイズレベルはそれほど大きくなかった。

 個人的には、国内ベンダのPC、特に量販店モデルは、不必要なソフトウェアがゴテゴテとプリインストールされていたり、過剰な配慮が余計なお世話に思えたりするので、あまり好きではない。そういう意味でも、ドライなアメリカンテイストを感じるeMachinesのPCには好感を覚えるのだが、ノートPCに関しては、日本市場の要請からはちょっと離れている気がする。もうちょっとだけ小振りで低価格な機種も期待したい。

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【4月7日】九十九電機、15.4型ワイド液晶搭載eMachines製ノートPCを一新
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0407/tsukumo1.htm

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(2004年6月3日)

[Text by 元麻布春男]


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