前回に続いて、今週もノートPCの話題。前回取り上げたLaVie JはシングルスピンドルのモバイルノートPCだったが、ここで取り上げるのは富士通のFMV-BIBLO MG75Gだ。13.3型のXGA液晶パネルを採用した2スピンドルノートだ。 ●モバイル2スピンドルノート 特徴は2スピンドルでありながら2kgを切る重量で、モバイル性を備えること。バッテリを内蔵し、光学ドライブを搭載した状態での重量は1.86kgに過ぎない。今回は表1に2スピンドルで重量2kg以下のノートPCをまとめてみたが、軽量化に爆走する(暴走する?)Let's Noteの2機種を除けば一番軽量かつ大画面、ということになる。大画面で比較的軽量の2スピンドルノートということでは、NECのLaVie RXシリーズも念頭に浮かぶところだが、カタログの2.1kgはウエイトセーバー搭載時のもの。光学ドライブを内蔵すると2.3kgとなりThinkPad Tシリーズなどと同じクラスとなるため、表1からは除外した。 また表2には、BIBLO MG75Gとは若干カテゴリの異なるワイド液晶搭載2スピンドルモバイルノートPCをまとめてみたが、重量という点ではなかなかいい線をいっているのではないかと思う。 【表1】重量2kgを切る2スピンドルノートPC(画面が4:3のもの)
*2 バッテリおよび光学ドライブ搭載時の重量
*2 バッテリおよび光学ドライブ搭載時の重量 重さのみならずサイズ的にもなかなかコンパクトで、実は前回取り上げたLaVie Jとそれほど極端に違うものではない。奥行きはほぼ同じ(実際には1.5mmほどLaVie Jの方がむしろ大きい)で、幅の違いも2cm程度大きいだけだ。 さすがに横から見ると、ウエッジ(くさび)状に前が薄くなっているLaVie Jに対し、光学ドライブを搭載したMG75Gの厚みがほぼ一定であることが分かる。この差は手に持ってみても明らかなのだが、それでも2スピンドルノートPCとしては頑張って小さくまとめようとしていることは間違いない。現在ではマイナーな存在になってしまった感のある13.3型液晶を採用した利点が、コンパクトな筐体サイズに現れている。
写真3は本機の底面にあるアクセス可能なパネルをすべて開き、光学ドライブをベイから引き出したところだが、これだけコンパクトにまとめながら、メモリ(DIMMスロット)やハードディスクに底面から簡単にアクセスできる点を評価したい。反面、これだけ筐体に開口部を作ったせいか、PCを握ったときに若干きしむ感じがするのも事実。強度に優れるのは開口部を設けないバスタブ型の筐体だろうが、それだとハードディスクやメモリへのアクセスは悪くなる。一長一短というところだろうか。 ●やや大きめの動作音 電源を投入してまず気づくのは、冷却ファンの音だ。ファンは電源投入直後に最大回転数に達し、システムの起動とともにACPI対応BIOSならびにOSによる回転数制御が有効になるため、ずっと盛大に(最大レベルの)騒音を撒き散らしているわけではない。実際、システム起動後は止まっていることも少なくない。 システムへの負荷によって回転数が変動するため、騒音レベルも変動するが、筆者が仕事で使う状況でどの程度のレベルになるのかは、まだ出張に連れ出していないので何とも言えないところだ。少なくとも30分程度DVD-Videoを再生したくらいでは、冷却ファンが回りだすことはなかったが、キーボードの左側がほんのり暖かくなる。 ファン以外のノイズ源ということでは、ディスクドライブの騒音が問題になりがち。本機が内蔵するHDDは東芝製(MK8025GAS)だったが、決してうるさいドライブではない。それでも、LaVie Jに使われていた富士通製の80GBドライブの方がより静かだったのを思うと、なんとも皮肉に感じてしまう(ただし全製品に同じドライブが使われているのかどうかは分からない)。HDD以上にうるさいのは内蔵の光学ドライブだが、ノートPCに使われる薄型ドライブには騒音対策を施す余地はほとんどない。やむを得ないところだろう。 とはいえULV Pentium Mを使ったLaVie Jが静かだったのは間違いない事実。前回掲載した表にあるシングルスピンドルノートPCはULV Pentium Mばかりだった。しかし、2スピンドルノートでULV Pentium Mを採用しているのはLet's Note W2くらい(ワイドタイプも含めればソニーのPCG-TR3/Bも)で極端に少なくなる。どうやら2スピンドルの利便性と、静音性はトレードオフの関係にあるようだ。 ●ゆったりとしたキーボード
仕事に利用する上で、騒音レベル以上に気になるのは、キーボードやポインティングデバイスの使い勝手である。13.3型液晶ディスプレイを採用したA4ファイルサイズの本機は、キーボードサイズにも余裕があるため、特にいびつな形状のキートップというものはない。 キーボードの右側はDVDマルチドライブが収められたドライブベイがあるせいか、強度的に少し弱くなっている(上から押すと若干たわむ)が、筆者にはそれほど気にならなかった。むしろ、左右で打鍵音が若干異なる(下に空洞を抱えた右側は、キーボードを叩くとパシャパシャいう傾向がある)方が気になるようにも思うが、これも夜中のホテルで原稿を書いてみないとハッキリとしたことは言えない。 キーボード以上に気になったのはポインティングデバイスのパッドだ。筆者がホームポジションに手を乗せると、両方の手の親指がパッドの上に乗ってしまう。パッドを操作するには、パッドを操作しない方の親指をパッドの上から意識的に外さなくてはならず、結構気を使う。 一方、出力デバイスの液晶ディスプレイだが、いわゆるツルピカ液晶といわれるタイプ。コンシューマー用のノートPCではこの種の液晶がポピュラーになっており、中には鏡のようにユーザーの顔を映し出すものさえある。幸い本機の液晶は、外光の映りこみを比較的カットしており、自分の顔をマジマジと見つめることにはならないで済む。 ただ、加齢を重ねた筆者の目は、チラつきやフリッカー、外光反射といった要件に極端に敏感で、本機の液晶でさえやや負担を感じる。 ●BIBLOシリーズに属する不幸
さて、電源を投入後システムが起動して気になったのは、本機のデスクトップだ。FMV-BIBLO MG75Gという型番が示すように、本機は量販店の店頭等で売られるコンシューマーモデルである。そのため、様々なソフトがバンドルされ、デスクトップには様々な案内(バナー広告)さえ見られる。画面は起動後のデフォルトデスクトップだが、ごちゃごちゃした印象が否めない。 特に、初めてPCを購入するというユーザーであれば、手元に蓄積されたソフトウェア資産などないから、バンドルソフトが必要だというのは分かる。ひょっとすると、バナー広告まがいの案内だって、あった方が良いという人もいることだろう。だが、本機がターゲットとするのはそういうユーザー層なのだろうか。本来、そうしたユーザー層向けに富士通が売りたいPCはNBシリーズなのではないかという気がする。ハッキリ言って筆者は、こうしたバンドルソフトは要らないし、リカバリディスクで初期状態に戻した状態は、OSとドライバだけのクリーンなものであって欲しい。 画面2はリカバリCDからリカバリした直後のもので、まだ余計なバナー(ボタン)もないシンプルな状態だ。しかしメニューには、必ず実行してください、というアプリケーションが登録されている。これを実行すると画面3が表示され、なにやらゴソゴソと作業が行なわれる。終了するとシステムを再起動するよう求められ、再起動すると画面4のようになる。この演出では、まるで1年保証と引き換えにバナー広告を受け入れさせられたようで気分が悪い。
もちろん、実際にはこうしたバナーを消すことは可能だし、バナーを表示しているアプリケーションそのものをアンインストールすることもできる。リカバリディスクに付属する「FMかんたんインストール」と呼ばれるツールを使用するとバンドルソフトのインストールやアンインストールを行うことが可能だ。ちなみにリカバリディスクには、リカバリデータとバンドルアプリケーションのインストーラ以外に、個別のドライバも収められており、筆者はちょっと感心したのだが、この種のマシンでは、極力ユーザーの自由裁量に任せた方が印象がよくなるのではないかと思う。最近、個人向けにもデルのPCがシェアを伸ばしていると聞くが、余計なものがないことが、2台目、3台目のPCを求めるユーザーに受け入れられているように思えてならない。 この種のマシンに求められるのは、お仕着せの親切さよりも、ユーザーが何かアクションを起こそうとした時に、簡単に目的物を見つけられることだろう。そういう点では、本機のリカバリディスクに、ちゃんと個別のドライバが収録されており、インデックスも用意されていることには好感が持てる。できれば、リカバリディスクだけでなく、Webからのダウンロードも可能にしておいて欲しいし、1つ前の世代のOS(この場合ならWindows 2000)と次の世代のOSについてはBIOSとデバイスドライバのサポートを行なって欲しい。 日本IBMのThinkPadシリーズがベテランユーザーに支持され、中古になっても値崩れしにくいのは、結局こうした部分に関してきちんとサポートされていることと、きちんとサポートされているだろうという信用がユーザーの中に築かれているからではないだろうか。BIBLOというブランドでそれが難しいのなら、別のブランディングも検討した方が良いのかもしれない。今のBIBLOシリーズの製品展開では、MGシリーズのようなマシンは埋没しかねないのではないかと、ちょっと心配になる。 【お詫びと訂正】初出時に一部、存在しない写真番号を指定しておりました。お詫びして訂正いたします。
□関連記事 (2004年3月26日) [Text by 元麻布春男]
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