●アップデートは順調に終了
3月31日ソニーは、かねてからの公約通り、PSXの2度目のファームウェアアップグレードを実施した。 1回目同様、今回もアップグレードはインターネット経由でのオンラインアップグレードと、CD-ROM送付によるアップグレードの2種類。CD-ROMによるアップグレードは無償だが、まだ送付申し込みの受付が開始されたばかりで、発送は4月21日からとなる。したがって、現時点で最新のファームウェアを入手できるのはPSXをブロードバンド接続しているユーザーだけ、というわけだ。 筆者もさっそく、インターネット経由でファームウェアアップデートを行なってみた。実施したのは3月31日の午後。初日であったため、接続できないなどのトラブルがあることも覚悟していたが、データの転送にやや時間がかかったように思われたものの、何の問題もなく接続とファームウェアの更新が完了した。 なお、第1回目のアップグレードを実施していないユーザーも、この第2回目のアップグレードを実施することで第1回目のアップグレード内容も合わせて実施され、アップグレード後のバージョンは1.20となる。 ●新たにDVD+RWをサポート 今回のアップグレードの中核とされる機能は 1. DVD+RWメディアへの録画と再生 の3点だが、ほかにも2カ国語音声の記録(HDDおよびDVD-RWのVRフォーマット)、市販DVD-Video再生時に30倍速の早送り/早戻しが可能、番組表上での予約情報の修正対応、その他のバグフィックスが含まれる。 この中で最も注目されるのは、発売当初から後日のファームウェアアップグレードで対応するとされてきたDVD+RWメディアのサポートが加わったことだろう。 DVD+RWのサポートにより、PSXが対応する記録可能メディアはDVD-R、DVD-RW、DVD+RWの3種となった。この3種が、PSXの仕様として明記されている「記録可能メディア」のすべてであり、CD-RやCD-RW、メモリースティックなどは再生のみが可能なメディアという扱いとなっている。 これらはハードウェア的なサポートの問題というよりは、ソフトウェア的な制約なのだろうが、一度PSXの内蔵HDDに吸い上げた写真や音楽データをバックアップする方法はないから、その点に注意が必要だ。通常、機材故障による修理等ではデータは保証されないので、すべてのデータが失われる可能性がある。なお、DVD+Rに関しては、記録可能メディア、再生可能メディアのいずれにも含まれていない。 PSXの記録可能なメディアにDVD+RWが加わることの最大のメリットは、4倍速記録が可能になったということだろう。PSXの書き込み速度はDVD-RとDVD+RWが4倍速であるのに対し、DVD-RWは2倍速どまりとなる。表は、今回のファームウェアアップグレード実施後に、30分の番組(編集後25分/約2.2GB)を3種類のメディアにダビングした際に要した時間をまとめたものだ。 【表】元30分/編集後25分/HQモード/約2.2GBのデータの書き込み時間
DVD-RWメディアは記録フォーマットをビデオモード(DVD-Video互換)とDVD-VRモードから選べるため、表の項目は4つとなる。フォーマットに時間を要するためトータルではDVD-Rに及ばないが、DVD+RWの書き込み時間はDVD-Rと変わらない。ファイナライズが不要なことと併せて、見た後で消すということを前提にした使い方-たとえば別の部屋のDVDプレーヤーで再生し、終わったら消す-には最適なメディアということになるだろう。 本来DVD+VRには、追記や簡単な編集をしてもDVD-Videoとの互換性が保たれるというメリットもあるのだが、PSXでは追記はサポートされていない。また、追記するだけでなく、メディア上の特定のタイトルを消すということもサポートされておらず、消去はメディア単位で行なわなければならない。 たとえば複数のタイトルを書き出しておいて、見終えたものから消していくようなことはできないし、実際には書き込むたびにメディア全体がフォーマットされるため、表にあるフォーマット時間が毎回必要になる。 一方、DVD-RWは2倍速であるため、記録時間が長い上、VRモードではファイナライズに長時間を要する(ファイナライズに要する時間は書き込むデータ量により変動する)。同じDVD-RWメディアでもビデオモードとVRモードで書き込み時間に差があるのは、ビデオモードでは編集した後のデータ(約25分間)が書き込まれるのに対し、VRモードでは編集前のデータ(約30分間)と編集内容を記録したプレイリストが書き込まれるためだが、いずれにしても見たら消す、という使い方にはあまり向かないようだ。 VRフォーマットには、DVD-Videoとの互換性を失うかわりにオンディスクでの編集が可能という利点が本来あるわけなのだが、PSXではこの利点は得られない。もうひとつDVD-RWには、CPRMに対応しており、コピーワンス信号の含まれたソースの直接録画やムーブが可能、というメリットもあるのだが、PSXではこれらの機能はサポートされない。 現状、PSXでDVD-RWを使う唯一といっていいメリットは2カ国語音声の番組を2カ国語丸ごと記録し、再生時に選択できる、ということがあげられる。ただし、この機能はDVD-VRモードだけであるため、ファイナライズ時間を含めた記録時間の長さを我慢する必要がある。 そもそも2カ国語音声の番組を2カ国語番組として記録する、ということにどのくらいの需要があるのかよく分からないのだが、この2カ国語の録画設定は、メニューの「ビデオの設定」で事前に設定しておかなければならない上、2カ国語のフォーマットでHDDに録画してしまうと、DVD-RWのVRフォーマット以外にダビングできなくなるというリスクが潜んでいる。 たとえばうっかりビデオの設定で2カ国語放送記録音声を「主+副音声」に変更し、戻すことを忘れると、録画したデータをDVD-RやDVD+RWにダビングできなくなってしまうから、注意が必要だ。 ●早見再生とデジカメ対応を強化
早見再生は、通常の1.3倍速で再生する機能。この1.3倍速は固定されており、変更することはできない。また早見再生ができるのはHDDに録画したデータおよびPSXで作成したDVDのみで、市販DVD-Videoの早見はサポートされていないのが残念なところだ。 静止画機能の拡張は、CD-RからJPEG/TIFF/GIF/MPEG-1の静止画や動画を再生したり、HDDに取り込む機能。またソニー製のデジタルカメラであるサイバーショットシリーズの動画フォーマットやGIF形式の静止画のサポートも含まれるが、今までできなかったことが不思議に思えなくもない。 残念ながら今回のアップグレードでは、予定されていたPlayStation BB Navigator機能の追加が見送られ、将来のファームウェアアップグレードで対応されることになっている。その時期等は未定だが、少なくともファームウェアのアップグレードがこれで終わったわけではないことは間違いない。 ただし、CD-ROM送付のコスト等を考えると、将来にわたり永久に無償とは限らないと思う。すでに告知されている機能が実現され、それ以上の機能強化などが行なわれる場合は有償になる可能性もあるだろう。 ●アップデート後のPSXを買うべきか このVer 1.20へのグレードアップでPSXは、ほぼ発表された仕様通りの製品となった。しかし、2回のアップグレードは、いずれも見違えるような改良ではない。追記がサポートされていないこと、ビットレート変換ダビングができないことを含め、DVDレコーダーとしての根本的な不満に対する改善は行なわれていない。そういう性格の製品だと理解するべきなのだろう。 筆者もPSXを3カ月ほど使ってきたが、舞台中継のような長時間番組の録画にPSXを使おうとは思わない。ビットレート変換ダビングがサポートされていないことにより、DVDへ保存する場合に支障が出る可能性があるからだ。 また、3カ月経った今も、PSXの外観デザインが優れているという見方に変わりはないものの、1つのラックに他のAV機器と積み重ねていると、デザイン的な違和感を感じないでもない。ほかのAV機器の多くがLEDや液晶のインジケータを備えているのに対し、PSXが備えていないのもその一因だ。 PSXでは、プログラムのどのあたりを再生しているのかを知るためにも、画面表示を呼び出す必要がある。1人で利用しているのであれば、画面表示をいつ呼び出そうと自由だが、家族で映画を見ているような時に頻繁に画面表示を呼び出されたら文句の1つも出るだろう。本機のGUIがPlaystation 2譲りであることも含め、やはり若い単身者向けという印象は否めない。 また、発売時点におけるPSXのメリットの1つは、価格の割りにHDD容量が大きい、ということだったが、今ではほぼ同じ価格帯で、ほかのDVDレコーダーも同等のHDDを内蔵するようになっている。現在、PSXとスゴ録の量販店における店頭価格はほぼ変わらない(逆にいえばPSXはDVDレコーダーの価格を引き下げる役割を果たしたといえる)。 純粋にDVDレコーダーとして(Playstation 2互換の付加価値を考慮せず)どちらを選ぶか、と言われれば多くの人がスゴ録を選ぶだろう。それを覆すような新機能をファームウェアのアップグレードで実現することは決して容易ではないと思う。 □関連記事 (2004年4月2日) [Text by 元麻布春男]
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