ラオックスでは、4月11日にエンターテイメント専門店「AsoBitCity」が閉店するのにともない、秋葉原地区にある店舗の再編を実施する。 AsoBitCityがこれまでの1つの大型店舗から4つの建物に分散する館体制となり、逆にザ・コンピュータ館は、これまで分散していた店舗が集約され、パーツ類、Windows、Machintosh製品、書籍などパソコンと関連製品を集めた総合店舗となる。 エンターテイメント店舗の分散と、パソコン販売店舗の集中、ラオックスがこの店舗再編で狙うものとは何か。
●ADOBITCITY再編で自然に大きな店舗再編に
「今回、秋葉原の複数の店舗がリニューアルするのは、大きな狙いがあってというよりも、AsoBitCityを各店舗に分散するにあたり、変化がある店舗が増えてしまっただけ」ラオックス広報室の山下巌部長はこう説明する。既報の通り、AsoBitCityが入った建物は売却されることが決まっている。買い主については、大手家電店、カメラ量販店、パチンコ店、飲食店など色々と噂にはのぼっているものの、決定しているわけではない。ただし、売却先が決定していない状況であっても、AsoBitCity自身は4月11日で閉店することにはかわりない。 ただし、エンターテイメントショップという事業はラオックスの中にしっかりと根づいたと山下部長は指摘する。 「当社の取り扱い商品は、家電、パソコンなどの情報機器、その他と大きく3つに分類できる。エンターテイメント商品は、その他という分類に入るが、AsoBitCityと名前のついた店舗が秋葉原で増えた上、9つの郊外店の中にインショップという形態でAsoBitCityという名前のついた店舗もできている。当社にとって、AsoBitCityという店舗形態が、大きな柱となる事業へと成長したことは間違いない」 新たにスタートする新店舗は、以下の通りになる。 AsoBitCity 1番館=4月15日オープン予定。現ザ・コンピュータMAC館として利用されている店舗で、地下1階にアダルト、1階は書籍、2階はテレビゲーム、3階はDVD、4階はホビー、5階はPCゲームという店舗構成で、売り場面積は582平方メートル。 AsoBitCity 2番館=現在は、HOBBY館として運営されている店舗を、AsoBitCity 2番館に名称変更を予定しているが、現段階では店舗名称変更がいつになるのかは未定。地下にアダルト、1階に書籍、2階にテレビゲームとDVD、3階と4階はホビー製品、5階と6階に鉄道模型売り場を置き、売り場面積は929平方メートル。 AsoBitCity 3番館=今年1月29日に既に開店済み。1階ではアニメと映画、2階ではパソコン用アダルトソフト、3階はアダルトDVDを販売、店舗面積は104平方メートル。 AsoBitCity 4番館=旧PC・DO Shopとして利用していた店舗をリニューアルオープン予定だが、現段階では期日は未定。1階にエアガンとシューティングレンジ、2階には制服などミリタリー関連製品を販売予定で、店舗面積は225平方メートル。
ニュースリリースなどを見ても、現店舗にあるイベントスペースについては、新店舗に設けられていない。しかし。「現在、エンターテイメント製品の他店との差別化は、かつてのような店舗オリジナルのグッズを添付する方式から、イベントへの招待券を配布する方式へと変化してきている。エンターテイメントショップにとって、イベントスペースは不可欠な存在であり、なんとか、1番館にイベントスペースを設けることができるよう準備を進めている。新店舗オープンと同時は難しいかもしれないが、しかるべきタイミングでイベントスペースもオープンしたい」と、イベントスペース設置も予定している。 ●省スペースで収益性は向上
店舗数は1つから4つへと増えるものの、売り場面積は4店舗を合計しても、現在の店舗の4,465平方メートルと比べ、3分の1に縮小することになる。 「現店舗が余裕をもたせた作りとなっているのに対し、新しい4つの店舗は専門に特化した、密度の濃い店舗としていく」と、スペースが狭くなった分、店舗ごとの特性にあわせた店作りを行なう。 また、アダルトから子供向け商品までトータルで扱う大型店は、子供連れの顧客からは、「子供を連れて、行きにくい」といった声もあがっていた。そうした事実を考えると、「店舗を分散した方が、売りやすい商品もある」という。 また、AsoBitCityの従業員数も、店舗分散により現在の約半分程度となる予定で、「オープン期日が決定していない店舗もあるため、具体的な売り上げ目標は固まっていないが、売り場面積や従業員数の減少により、収益率は向上する」と、利益率向上には寄与する体制となりそうだ。 ●一度は分散した店の出戻りで「ないものはない」ザ・コンが復活
AsoBitCity移転の影響を受けるように、ザ・コンピュータMAC館が、ザ・コンピュータ館本体に吸収される。すでに、昨年6月に閉店したPC・DO Shopが地下に、11月にはザ・コンピュータBOOK館が6階へ吸収されている。ザ・コンピュータ館から分離独立していた店舗の吸収は、今回のMAC館で3つ目となる。 新しいザ・コンピュータ館の売り場構成は、1階がノートパソコンとブロードバンド、2階がPCアクセサリー、3階がパソコンソフトと書籍、4階がデジタルカメラ、ディスプレイ、周辺機器、5階がデスクトップパソコン、プリンタ、ビジネスフロア、6階がMachintosh関連製品となる。 「スタート時点のザ・コンピュータ館のコンセプトであった、『パソコンに関する商品で、ないものはない』といえる総合店舗に戻ったようなスタイルとなる」と山下部長は話すが、ラオックスに限らず、多くの販売店が、「パソコンの販売が冷え込んでいる」と名指しする時期である。店舗の統合は、パソコン販売の厳しさを示しているように見える。 「ザ・コンピュータ館自身の売り上げは、現在でも当社の店舗の中で、1位、2位を占める大きなものであることに変わりはない。しかし、ザ・コンピュータ館から分離した店舗については、分離して独自の売り上げにより、1店舗を維持していくのが難しい状況になりつつあるのは確か。ただし、今回、MAC館が本体に統合されるといっても、展示商品の数が減ってしまうというわけではない。MAC館の中にあるアップル製品以外のプリンタなどはWindowsと共通の商品がほとんどで、ザ・コンピュータ館でもすでに販売しているものが多い。スペースは小さくなっても、商品数が少なくなるわけではない」 ザ・コンピュータ館自身のコンセプトも、ビジネス向け商品を強化するなど、ここ数年は揺らぎがあったようにも見える。 これに対して、山下部長は、「確かに、中小企業向けソリューション販売については、客を待つスタイルでビジネスを行なう店舗で展開するには難しいとの判断から、ソリューション販売スペースを圧縮している。だが、そのノウハウ自体は、法人向けビジネスを担当する部隊に定着するなど、プラス効果も大きかった。販売スペースという風呂敷は無くなっても、包んでいた中身はきちんと残った」と、こうした揺れもノウハウという点ではプラスだったと説明する。 ザ・コンピュータ館自身で扱う商品も、開店当時のパソコンの総合店舗という基本に戻りながらも、「携帯電話やADSLサービスなど、パソコン以外の情報機器も増加しており、ザ・コンピュータ館という名称ながら、実は情報機器の総合店舗となった」と、実は開店当時よりも幅が広がっている。 秋葉原の街を歩いていると、新しいビルの建築工事も目立つかわりに、店終いをした店舗も目立つ。 ラオックスの大型店舗は、ラオックス1社のビジネスのみならず、秋葉原に人を集客する旗艦店でもあった。その2つの店舗の分散と集中が、秋葉原のビジネスにどういう影響をもたらすのだろうか。 □関連記事 (2004年3月19日)
[Text by 三浦優子]
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