ラオックスの大型店舗、秋葉原「AsoBitCity(アソビットシティ)」が4月11日で閉店することとなった。 全国でも最大規模のエンターテイメント専門店として、2002年10月に鳴り物入りで開店してからわずか1年半余り。今回の閉店の背景には、果たしてどのような事情があったのか。
●「アソビットは軌道に乗っていた」とラオックス
そして、「総合エンターテイメントショップとして、AsoBitCityの認知が高まり、2003年夏時点では月間60万人、12月には月間80万人の来場者を獲得するなど、来場者の数が安定してきたタイミングだった。この時期に店舗を閉鎖することはラオックスとしては非常に残念」と、ビジネスが軌道に乗り始めた時期の閉店が本意ではなかったと説明する。 3月中に移転先を決定し、「閉店後、できるだけ間をおかずに、新店舗での営業を開始したいと考えている。場所は、秋葉原になるが、具体的な場所等は、現在交渉を進めている段階であり、3月末になれば明らかにできるだろう」という。 すでに1月29日に、アニメ&アダルト専門の小規模店舗「AsoBitCity 3番館」がザ・コンピュータ館裏にオープンしているが、「アダルトソフトや、ディープなフィギュアといった製品の販売であれば、3坪から、4坪程度の小さな店舗で営業を行なった方がはるかに効率もよいビジネスができるだろうが、本来、AsoBitCityが目指していたのは、総合エンターテイメントショップ。これを実現するためには、3番館のような通りの裏の狭いスペースの店舗よりも、ある程度のスペースが必要」と話す。
だが、AsoBitCityの入っているビルは、秋葉原で最大規模であり、この規模の店舗は探そうにも存在しないことも事実。そこで、「しばらくは、機能を分散して店舗作りを行なうことも検討中」だという。3月に移転する店舗が決まった段階で、どういったスタイルの店舗を何店作るのかといった詳細が明らかになる。
●大型エンターテイメント店はいずれも短命
「すでに郊外8店舗で、AsoBitCityの名を冠したエンターテイメントコーナーが存在している。エンターテイメントショップを運営するためのノウハウは資産として残すことができた」とラオックスではプラス効果を強調するものの、新しいタイプの店を作ることが容易ではないことをうかがわせる。 エンターテイメントショップといえば、2002年3月にエンターテイメントの大型店舗として、アキハバラデパート3階に誕生した「フジヤマ」も、一部のフィギュア製品販売スペースを残し、規模を大幅に縮小している。
「秋葉原は、もはや電気街ではなく、アニメやアダルトなどのエンターテイメントショップの街だ」という指摘もある。だが、エンターテイメント関連の商品はパソコンや家電製品に比べると単価が低く、大型店舗で販売するには適さない商材だと分析するショップ関係者もいる。店舗規模の小さいエンターテイメントショップは、今後も増加していくことになるだろうが、大型のエンターテイメントショップを運営していくためには、周到な戦略とノウハウが必要ということだろう。
●閉店が相次ぐ秋葉原中央通り
実はAsoBitCityが誕生する前、このビルにあったT・ZONE本店の閉店が決まった段階で、カメラ量販店が借り受けることを前提に、店舗を視察に来たことがあったそうだが、「やはり、秋葉原地区にカメラ量販店の進出はまずいということで、話がそれ以上進まなかった経緯があった」(関係者)という。 今後、AsoBitCity退店後、ビル自体がどうなるのかについては確定していない。目立つ場所にあるビルだけに、パチンコ店など、異業種の店舗が入ってくると、秋葉原全体の雰囲気が変わる可能性が高い。それだけに、ビル自体の動向が気にかかるところだ。 実は、ラオックス以外にも、秋葉原中央通りでは店舗の閉鎖が続いている。OAシステムプラザ東京本店は2月15日に閉店が決定、ショップではないものの、秋葉原を訪れる人やショップ店員に休憩所の定番だった喫茶東洋も1月12日に閉店した。
来年にはヨドバシカメラの秋葉原の新店舗がオープンするだけに、秋葉原電気街としては各店舗と街全体の元気をアピールしたい時期だが、まったく逆の状況となってしまっている。その意味で、AsoBitCityの閉店は、ラオックス1社にとどまらず、秋葉原全体に影響を与える大きな出来事といえるだろう。
□ラオックスのホームページ (2004年2月4日)
[Text by 三浦優子]
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