2月17日~19日(現地時間)にサンフランシスコで行なわれた「Intel Developer Forum(IDF) Spring 2004」の前の週、サンノゼではPalmSourceの開発者向けイベント「PalmSource Developer Conference(PSDC)」が開催されていた。話題の中心はもちろん、次期OS「Palm OS 6」。Palm OS 6には「Palm OS Cobalt」という名称が付き、さらにPalm OS 5は、「Palm OS Garnet」という名称となって出荷が続けられることになった。 そのPalm OS Cobaltがどんなものになるのかを解説しようと思ったのだが、それには、現行のPalm OS 5マシンであるTungsten T3について触れておく必要がある。というのは、この機種では、内蔵ソフトウェアが大きく変化しているからだ。おそらくPalmOne(旧Palmのハードウェア部門)が出荷するPalm OS Cobaltマシンでは、これをベースにしたものが標準アプリケーションとして採用されるのではないかと思われる。また、次回に紹介するPalm OS Cobaltシミュレータの画面は、T3の画面とよく似ている。 ●伸縮筐体で視認性と操作性を両立 Tungsten T3は、PalmOneの上位機種Tungsten Tシリーズの3機種目にして、最新機種である。同シリーズは、Palm最初のPalm OS 5マシンとして登場した。ただし、1つ前の機種であるT2はまだ現行機種である。T2については以前、簡単なレポートを掲載したので、そちらを見てほしい。 T2とT3は同じシリーズだが、スペックやGUIなどがかなり違う。どちらかというとT2は、Tのバージョンアップ版で、T3は次世代機という感じである。また、T2では黒いプラスチックだった本体上部や下部も、T3では銀色になっており、少し高級感が出ている。 Tシリーズはすべて金属筐体で、本体の下側がスライドして縦に伸張するようになっている。T2では、伸張して表れる部分がグラフティエリアになっている。T3ではその部分は液晶になっており、下側を引き出すと液晶の解像度が変化するようになっている。この部分はソフトウェアでグラフィティエリア(Dynamic Input Area:DIAという)として使うこともできるし、アプリケーションの表示用としても利用可能だ。 高解像度に対応していないアプリケーションでは、この部分は自動的にグラフィティエリアになり、160×160ドット対応の古いアプリケーションを320×320ドットに変換して表示する。
単なるタッチパネルになっているT2ならいざ知らず、大画面の液晶をわざわざ隠して使うなんてなんかヘンと最初は思っていたが、使ってみるとそれほどヘンでもない。縮めた状態ではわりとコンパクトで、ポケットに入れておいても邪魔にならない。この状態でも320×320ドット表示であるため、解像度的にも問題を感じない。高解像度表示や入力が必要なときのみ伸ばして使えばよい。単に予定を見るなんてときには、縮めたままでも十分利用できる。また、本体の伸縮で電源をON/OFFすることも可能だ。 ハードウェアボタンや5Way Navigatonキーにも十分な大きさが割当てられており、小さくて操作しにくいということはない。この5Way Navigatorは、4方向カーソルキーと実行ボタンからなっており、たとえばスケジューラでも1日表示の縦スクロールだけでなく、翌日、前日への移動もカーソルキーで可能だ。 大型液晶に十分な大きさのハードウェアキーを付けてしまうと、筐体が縦に長くなってしまう。Tungsten T3では伸縮式にしたことで、両立することができたわけである。
●シンプルな構成の基板 CPUには400MHzのXScale、メモリは64MBを装備する。ディスプレイは320×480ドット、65,000色表示可能なTFT液晶。 インターフェイスとしては、SDカードスロット(SDIO対応)、IrDA、サウンド入出力(マイク、スピーカ、ステレオヘッドフォンジャック)および、Palm Universal Connector(クレードルや周辺機器との接続に利用)が装備されている。 また、Bluetooth機能を内蔵している。プロファイルとしてはダイヤルアップやシリアル接続を実装しており、携帯電話を使ったインターネット接続やPCとのHotSyncに利用できる。 ステレオ音声出力が可能で、MP3ファイルの再生や動画再生も行なえる。また、内蔵マイクを使ったボイスメモ機能もあり、WAV形式での録音ができる(モノラル4bit ADPCM、サンプリングレート8kHz)。 さて、内部が気になったので分解してみた。内部は、液晶とメイン基板、バッテリなどからなる構成。ほとんどの電子回路は、メイン基板上にある。
背面写真にあるように製造は中国のようだが、メイン基板には、ASUSTeKのロゴがあり、液晶はソニー製、リチウムポリマバッテリは三洋電機製だった。 メイン基板は、液晶側にCPUやメモリが配置され、背面側にはSDカードスロットやBluetoothモジュール、バイブレータ(アラーム時に利用)などが配置されている。基板の大きさは縮めた状態の本体上2/3程度、残り1/3がバッテリになっている。 同じXScaleを使うZaurus SL-700シリーズなどに比べるとかなりシンプルである。これは、液晶コントローラはXScale内蔵のものを使い、メモリも内蔵プログラム用フラッシュメモリとRAMだけというシンプルな構成だからであろう。 ●かなり手が加えられた内蔵ソフトウェア Tungsten T3はPalm OS 5マシンではあるが、内蔵アプリケーションにかなり手が加わっている。Tungsten Cでも、環境設定(Prefs)画面が変更されていたが、今回は、PIMアプリケーションもかなり変更されている。 また、入力エリアが液晶面になったため、画面下には、ステータスバーと呼ばれる領域が置かれ、ここでグラフィティ領域の表示/非表示や各種の状態表示などを行なうようになった。ここでは、次のような機能が実行できる。
グラフィティ領域は、160×160ドット前提の旧アプリケーションでは、自動的に表示されるが、解像度自動対応のハイレゾリューション対応のアプリケーションであれば、表示/非表示が可能になっている。 画面の縦横を回転できるので、表計算ソフト(Document to Goが付属する)の表示なども横長で行なえ、アプリケーションによって使い分けが可能(ただし、ハイレゾリューションに対応している必要がある)。 新しい標準アプリケーションは、「Calendar」、「Contacts」、「Memos」、「Tasks」の4つでそれぞれ、従来の「Date Book」(予定表)、「Address」(アドレス)、「Memo Pad」(メモ帳)、「To Do List」(To Do)に対応している。この変更により、扱うデータ項目が違っているため、Tungsten T3用のHotsyncには、旧機種用とT3用の新しいコンジット(各アプリケーションのデータをPC側と同期させるためのプログラムモジュール)が含まれている。また、サードパーティアプリケーションを使わずにOutlookと同期することも可能になった。
データ的にはOutlookとの互換性が高まったが、表示については従来とほとんど変わらず、もう少し改良を望みたい。これは、これでシンプルでいいという人もいるようだが、せっかくの高解像度なのだから、たとえば予定の週間/月間表示などはグラフだけでなくて、テキストでの表示が欲しいところだ。
□関連記事 (2004年3月9日)
[Text by 塩田紳二]
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