このレビューが始まって半年近くたつが、第1回目がMinolta DiMAGE A1だった。コニカとミノルタが完全統合する直前の製品で、CCDシフト手ブレ補正が大きな話題を呼んだ。 今回とりあげるA2は、そのA1を500万画素から800万画素に高画素化し、電子ビューファインダー(EVF)も高精細化して、動画機能を充実させたもの。ほかにもさまざまな改良が加えられている。ちょうどキヤノン PowerShot Pro1、ニコン COOLPIX8700、オリンパス CAMEDIA C-8080、ソニー サイバーショットDSC-F828などと競合する製品だ。 ●たしかにきれいになったEVFだが このA2のデザインは大筋でA1と同じだ。6面写真を見ても、それほど大幅は変更はない(写真A)。ちょっと見ただけではA1と区別がつきにくいほどだ。当分の間、A1も併売されるという。もう少しデザインを変えて、高画素機であることを強くアピールしたほうがよかったのではないか。
ボディ上面右側にはモードダイアルがあり、露出モード(シーンセレクタを含む)を選ぶことができる。液晶パネルの後方には拡大再生ボタンと再生表示切り替えボタンがある(写真B)。このあたりは、新しいユーザでもとまどうことはないだろう。 背面右側には十字キーを中心に上下に操作ボタンが並ぶ(写真C)。いちばん上にはメインスイッチと兼用した撮影/再生/動画の切り替え。その下は露出補正ボタン、EVFと液晶ディスプレイの切り替え。その下にはクイックビューと削除ボタン、MENUボタン、手ブレ補正オンオフボタンがある。DiMAGE独自の操作系だが、それほどわかりにくいということはない。
EVFはA2の特長のひとつで、92.2万画素という圧倒的に高精細なもの。たしかにのぞいてみると、「これがEVF?」と思うぐらい、きれいになった。これでマニュアルフォーカスもほぼ問題がなくなったと言える。 まだ、光学式一眼レフの明快さには及ばないが、EVFにこれだけ力を入れたデジカメは初めてだ。EVFはリアルタイムで画像を見られるという良さがある半面、見え方や動体追従性などで劣ってきた。ところが、このA2のスーパーファインEVFはそれを一挙に挽回した感じだ。 ただ、この高精細モードではリフレッシュレート(書き換え速度)は30fpsと今までのEVFと変わらない。このため、動体を追いかけるのには不向きだ。その場合にはなめらかモードにすると60fpsにできるが、A1の23.5万画素EVFと変わらなくなってしまう。被写体の動きによって使い分けられる良さはあるが、EVFはまだ発展途上であることも確かだ。 ボディの左側面にはISO感度(最低感度がISO100から64に広がった)、ホワイトバランス、ドライブモード、測光モード、カスタム機能などを設定するファンクションダイアルが上にある(写真D)。その下にシンクロソケット、エフェクトダイアル、カスタムホワイトバランスボタン、フォーカスモード切り替えがある。 AFはさらに高速化され、合焦までの時間がフルタイムAF時にA1の0.2秒から、0.18秒へとさらに速くなった。像面AFとしてこれだけ速いのは、以前からこのAFにこだわってきたDiMAGEシリーズの力と言えるだろう。ただし、像面AFの宿命であるコントラスト検出方式の欠点(大きなボケに弱いなど)は相変わらずである。普段は11点測距で、十字キーを押し続けると、FFP(フレックスフォーカスポイント)で任意の位置にピント合わせができるのは非常にいい。 EVFはDiMAGE 7シリーズからそうだったが、上方90度までのフリーアングルで、地面すれすれから見上げるローアングル撮影などが可能だ(写真E)。
内蔵ストロボはA1と基本的に大きな差はない(写真F)。ポップアップの高さももう少しあってもいいと思うが、レンズ固定式だから、フラッシュ光がレンズにジャマをされる「ケラレ」はほとんどない。ただし、赤目現象が出ることがある。 記録メディアはCFカードのType1/2で、これまでと同じ(写真G)。カードの挿入方向はニコンと同じで、裏面を手前に向ける方式。
電源も従来と同様で、専用リチウムイオン電池を使う(写真H)。 液晶モニタには大きな変更はない。普通の再生(写真I)のほかに、ヒストグラムや撮影情報を表示させることもできる(写真J)。
メニューは5つに分かれているため、内容は豊富だ。ただ、とっさに設定変更をしたい場合に面倒だ。このうち4つの画面を掲載しておこう(写真K1~K4)。
●やっぱり手ブレ補正があるのはありがたい 実写はいつもどおりだ。まず、ビルの定点撮影だが、広角側の絞り開放(F2.8)ではわずかに前ピンとなった。FFPできちんとピント合わせをしているのだが。しかし、前ピンの程度は少なく、実用上の問題は少ない(写真1左)。ただ、絞り込んでも画質が劇的にアップするわけではない。(写真1右)。800万画素の画像にしてはやや解像感が物足りない。以前にレビューしたソニー DSC-F828と似た描写である。 望遠側ではきっちりと合焦していることもあって、絞り開放(F3.5)から非常にシャープである。これは高画素の威力を感じさせる(写真2左)。ただし、この画角だと絞り込んでも、それほどの変化があるわけではない(写真2右)。また、露出が半絞り変わってしまうのは原因がわからない。
夜景撮影は30秒で、ノイズがかなり出る条件だ。しかし、ノイズリダクションオフでもそれほど目立ったノイズはない。わずかに全体にノイジーで、コントラストが低下しているぐらいだ(写真3左)。ノイズリダクションをかけるとノイズがほぼなくなり、くっきりした画像となる(写真3右)。
特急列車の通過を連写、C(コンティニュアス)AFで追いかけるいつもの撮影だが、RAWでもJPEGでも3コマまでしか連続撮影できない。A1でも3コマまでだったが、バッファの解放が1.5秒と早かった。A2では写真のとおりで、こういう高速動体にはややきびしい(写真4A~4C)。せっかくの高速AFがフルには生かされない。バッファメモリを増やしてもらいたいところだ。
逆光の人物撮影ではFFPによる測距は正確だった。また、描写もなかなかきれいである。わずかにフレアっぽいが、気になるほどではない。ただ、7枚羽根の円形絞りを搭載したにしては、ボケ味があまり良くない。オートホワイトバランスまかせ(写真5左)のほうが、デーライト設定(写真5右)よりよかった。しかし、いつも参考で撮っている斜め光での撮影ではオートホワイト(写真6左)よりもデーライトのほうがいい結果になった(写真6右)。 タングステン光ではオートホワイトでやや中途半端な追尾で、黄色っぽく描写される(写真7左)。白熱電球モードではきれいに補正された(写真7右)。ただし、左手の部分を見ると、白飛びしている。ダイナミックレンジはやや狭いようだ。
蛍光灯ではオートホワイトは黄色っぽく(写真8左)、蛍光灯モードではやや補正過剰になった(写真8右)。この蛍光灯はなかなかぴったり当たる機種がない。きびしいテストになっている。
前回から加えたISO感度の変化による画質の変わりかただが、最低感度のISO64(写真9左)と最高感度のISO800(写真9右)ではノイズの出方に大きな差はない。これは2/3型のCCDで800万画素にしては立派である。ただ、カラーバランスがやや異なってくる。
手ブレテストも定点観測だ。1/13秒と1/15秒という差はあるが、これは実用上まったく差がないスローシャッターだ。手ブレ補正オフだと完全にブレる(写真10A)。しかし、オンにすると手ブレはまったくなく、シャープな画像になった(写真10B)。このような手ブレ補正機構は高倍率ズーム付きのデジカメには絶対に入れて欲しい機能だ。
この手ブレ補正機能のおかげで、三脚撮影禁止の温室で、花を1/25秒で200mm望遠相当で手ブレなしに写すことができた(写真11)。明暗の差が激しい被写体で中間部に露出を合わせてみたが、この場合にはハイライトは白飛びはしていないし、シャドー部も完全にはつぶれていない(写真12)。この撮像素子は条件によってはそれほどダイナミックレンジの狭さを感じさせない。
A2ではRAWとJPEGの同時撮影ができる。800万画素だから、記録メディアは大容量が必要だが、同時撮影はありがたい。同梱のDiMAGE Viewerは画像ビューワーとして(画面1)だけでなく、RAW現像ソフトの機能もある(画面2)。RAW現像が終わると、RGBごとのヒストグラムや撮影情報が表示される(画面3)。JPEGで撮影した画像(写真13左)とRAWで多少パラメータを変えた画像(写真13右)を比較していただきたい。
全体として、コニカミノルタDiMAGE A2は、ファインダーの見えの良さと手ブレ補正で、競合製品からリードしている。レンズ交換式一眼レフとはまたちがう世界ができてきた高倍率ズーム付きデジカメで、頭ひとつ抜け出したバランスのいいカメラである。 □コニカミノルタのホームページ ■注意■
(2004年2月24日)
【PC Watchホームページ】
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