昨年は、DVD-R/RWドライブやDVD+RW/Rドライブなどの記録型DVDドライブの普及が一気に進んだが、記録型DVDドライブは依然としてハイペースで進化を続けている。 今回紹介するバッファローの「DVM-R88FB」は、DVD+RとDVD-Rの両方のメディアで8倍速書き込みを実現した、現時点最速の記録型DVDドライブである。
バッファローから2月上旬に登場予定のDVD±R/RWドライブ「DVM-R88FB」は、DVD+RとDVD-Rの両方のメディアへの8倍速書き込みをサポートしていることがウリだ。 記録型DVDには、DVD-R/RW/RAMとDVD+RW/+Rの合計5種類の規格が存在するが、最初に8倍速書き込みを実現したのは、DVD+RWアライアンスが推進するDVD+Rである。DVD+Rへの8倍速記録の規格は2003年7月に策定されており、2003年9月には、DVD+R 8倍速書き込み対応ドライブの第1弾として、プレクスターの「PX-708A」が発売されている。PX-708Aは規格が正式に策定される前に、独自にDVD+Rへの8倍速書き込みを実現し、その後公開されたファームウェアのバージョンアップにより正式規格へ対応した。 DVDフォーラムが推進するDVD-Rについては、2003年12月に8倍速記録の規格が策定され、アイ・オー・データ機器の「DVR-ABN8」など、DVD+RだけでなくDVD-Rへの8倍速書き込みを実現した製品が登場している。 今回レビューするDVM-R88FBは、ドライブとしてパイオニア製の「DVR-107D」を採用している。DVR-107Dは、パイオニアから2月下旬に発売予定の「DVR-A07-J」のOEM品であり、基本的なスペックは同一である。 DVM-R88FBは、DVD-R、DVD-RW、DVD+R、DVD+RWの4種類のDVDメディアへの書き込みをサポートしているほか、DVD-RAM(カートリッジ入りは不可)の読み出しもサポートしている(DVD-RAMへの書き込みはできない)。ちなみに、パイオニア製ドライブで、DVD-RAMの読み出しをサポートしたのは本製品が初めてとなる。最大書き込み速度は、DVD-RとDVD+Rが8倍速、DVD+RWとDVD-RWが4倍速となっている。 ●内周部の書き込み速度を高速化し、DVD-Rへの世界最速記録を実現
記録型DVDメディアへの書き込み速度は、等倍速→2倍速→4倍速→8倍速と高速化されてきたが、8倍速書き込みの場合は、メディアの内周部から外周部まで全て8倍速で記録されるわけではなく、内周部から外周部へ行くにしたがって、段階的に書き込み速度を向上させるゾーンCLV方式が採用されている。そのため、同じ8倍速対応ドライブでも、内周部の書き込み速度が遅かったり、書き込み速度の切り替えタイミングが遅いと、記録に必要な時間が長くなる。 DVM-R88FB(DVR-107D)は、内周部への書き込みを6倍速でスタートし、8倍速書き込みへの切り替えのタイミングも早いため、4倍速→6倍速→8倍速と3段階で速度を向上させる製品(アイ・オー・データ機器の「DVR-ABN8」に採用されているNEC製ドライブ「ND-2500A」など)よりも、短い時間で書き込みを終了する。バッファローのリリースによれば、DVD-Rへの書き込みにおいては世界最速を達成しているという。 DVM-R88FBは、ATAPI対応の内蔵型モデルであるが、IEEE 1394/USB 2.0両対応の外付けモデル「DVM-R88IU2」も同時に発売される予定だ。付属アプリケーションも充実しており、CD/DVDライティングソフトの「B's Recorder GOLD7 BASIC」とCD/DVDパケットライトソフト「B's CLiP5」、DVDオーサリングソフトの「MyDVD Ver.5」、画像管理ソフト「Photoshop Album Mini」、バックアップソフト「CloneDVD体験版」が付属する。
●書き込みは高速だが、8倍速書き込みを行なうには対応メディアが必要
DVM-R88FBは、8倍速書き込み対応DVDドライブの中でも最高クラスの性能を実現していることがウリだ。そこでその性能を検証するために、以下のテスト環境で、合計4.17GBのファイル(フォルダ数1,299、ファイル数15,391)を書き込むのにかかる時間を計測することにした。 なお、比較対照用にアイ・オー・データ機器のDVD±R/RWドライブ「DVR-ABN8」(DVD+RとDVD-Rへの8倍速書き込み対応)を用意し、同様に書き込み時間を計測した。ライティングソフトとしては付属のB's Recorder GOLD7 BASICを用い、オンザフライ方式で直接メディアに書き込みを行なった。また、書き込み時間は、セッションクローズの時間も含めて計測している。 なお、今回試用したDVM-R88FBは試作機であり、最終量産品ではないため、製品版では性能が変わる可能性もある(ドライブのファームウェアバージョンは1.05であった)。 記録型DVDドライブを利用する場合は、同じ種類のメディアでも、メディアによって対応している記録速度が異なることに注意したい。例えば、DVD-Rメディアの場合、2倍速対応メディア、4倍速対応メディア、8倍速対応メディアの3種類のメディアが存在する。ドライブによっては、本来4倍速までしか対応していないメディアでも8倍速で書き込める製品もあるが、DVM-R88FBは、記録の信頼性を重視した設計になっているため、8倍速対応メディアを使わないと8倍速で書き込むことはできない。 ただし、8倍速対応DVD+Rメディアは、リコーや三菱化学がすでに発売を開始しており、店頭で入手可能だが、8倍速対応DVD-Rメディアの発売は2月10日(ビクター)や2月25日(日立マクセル)とされており、現時点では販売されていない。そのため、DVD-Rへの8倍速書き込みのテストは、DVM-R88FBの評価用に付属してきた8倍速対応DVD-Rメディア(国産品)を利用して行なった。また、4倍速対応DVD-RWメディアについても、ビクターが2月10日に発売する予定となっているが、現時点では入手できなかったので、DVD-RWについては2倍速書き込みしかテストしていない。 結果は、下の表にまとめたとおりである。まず、DVD-Rへの8倍速書き込みについてだが、DVM-R88FBで8倍速対応DVD-Rメディアを利用して、DVD-Rへの8倍速書き込みを行なった場合、4.1GB超のファイルの書き込みにかかった時間はわずか8分39秒であった。 DVR-ABN8の場合、同じ8倍速対応DVD-Rメディアへの8倍速書き込みにかかった時間は10分5秒であり、1分26秒ほどDVM-R88FBのほうが短い時間で書き込みが完了したことになる。DVD-Rへの書き込み速度が世界最速という売り文句が裏付けられた格好である。 書き込み速度を6倍速に設定すると、書き込み時間はDVM-R88FBでは10分33秒、DVR-ABN8では11分15秒となり、その差は42秒に縮まる。なお、DVR-ABN8では、本来は4倍速対応のDVD-Rメディアであっても、メディアによっては8倍速や6倍速で書き込めるのだが、DVM-R88FBでは前述したように、そうしたことはできない。
DVR-ABN8の製品紹介ページによると、太陽誘電製と三菱化学製の4倍速対応DVD-Rメディアで、8倍速書き込みを確認しているという。そこで、太陽誘電製の4倍速対応DVD-Rメディアを用意して、書き込みテストを行なったところ、DVM-R88FBではやはり8倍速書き込みは選択できなかったが、DVR-ABN8では8倍速で書き込むことが可能であった。書き込みにかかった時間は10分5秒であり、8倍速対応DVD-Rメディアを利用した場合と全く同じである。 次に、DVD+Rへの8倍速書き込みである。三菱化学製の8倍速対応DVD+Rメディアを利用した場合、DVM-R88FBでは9分13秒で書き込みが終了したのに対し、DVR-ABN8では9分43秒であり、DVM-R88FBのほうが30秒ほど短い時間で書き込みが完了している。 ただし、リコー製の8倍速対応DVD+Rメディアを利用した場合、DVM-R88FBではなぜか書き込み速度が4倍速までしか選択できなかった(DVR-ABN8では問題なく8倍速で書き込み可能)。正式に8倍速に対応しているはずのメディアで8倍速書き込みができないというのはおかしいが、今回試用したのは試作機であり、おそらく製品版ではこの問題は解決されているだろう。
DVD-RWについては、現時点で4倍速対応DVD-RWメディアが販売されていないため、2倍速で書き込みテストを行なった。こちらは逆にDVR-ABN8のほうがDVM-R88FBに比べて、1分13秒ほど短い時間で書き込みが完了した。また、DVD+RWへの4倍速書き込みについても、DVR-ABN8のほうがDVM-R88FBに比べて、1分35秒ほど短い時間で書き込みが完了している。DVM-R88FBはサンプル品のため、製品版では性能が上がる可能性があるが、今回テストした限りにおいては、ライトワンスメディア(DVD-RやDVD+R)への8倍速書き込みはDVM-R88FBのほうが高速だが、リライタブルメディア(DVD-RWやDVD+RW)への4倍速/2倍速書き込みについては、DVR-ABN8のほうが高速であるようだ。 【ファイルの書き込みにかかった時間】
●8倍速で書き込む領域が多く、平均7.7倍速書き込みを実現
DVM-R88FBは、同じDVD-Rメディアへの8倍速書き込みでも、DVR-ABN8に比べて、15%ほど短い時間で書き込みが完了している。これは最初に述べたように、内周部の書き込み速度がDVR-ABN8に比べて高速であり、8倍速への切り替えタイミングも早いためである。 そこで「Nero CD-DVD Speed」を用いて、DVD-Rメディアへの8倍速書き込みを行なった際の書き込み速度の推移をチェックしてみた。下のグラフがその結果で、緑色の線が書き込み速度を表し、黄色の線が回転数を表している。 DVM-R88FBの場合は、最初から6倍速でスタートし、600MB付近で8倍速へと切り替わっているのに対し、DVR-ABN8では、まず4倍速でスタートし、850MBあたりで6倍速へ移行、2.2GBあたりで8倍速へと移行していることがわかる。つまり、DVM-R88FBではメディア全体の87%ほどの領域が8倍速で書き込まれるのに対し、DVR-ABN8ではメディア全体の53%ほどの領域しか8倍速で書き込まれていないことになる。Nero CD-DVD Speedによる平均書き込み速度は、DVM-R88FBが7.7倍速であるのに対し、DVR-ABN8では6.8倍速止まりである。
●信頼性と書き込み速度を重視するユーザーにはおすすめ
DVM-R88FBは、DVD-RとDVD+Rへの8倍速書き込みを実現した記録型DVDドライブであり、特にDVD-Rへの実効的な書き込み速度は現時点では最速といってよい。 8倍速で書き込むには、やや高価な8倍速対応メディアが必要となるが、4倍速対応メディアに8倍速で書き込む場合に比べて、信頼性については安心できる。DVM-R88FBの標準価格は26,500円であり、性能を考えれば、コストパフォーマンス的にも魅力がある。頻繁にDVD-Rへの書き込みを行なうヘビーユーザーには特にお勧めしたい。 絶対的な速度よりも、メディアの価格を重視するのなら、4倍速対応メディアに8倍速や6倍速で書き込めるDVR-ABN8も魅力的だが、DVR-ABN8は、DVD-RAMの読み出しには対応していない。DVD-RAMの読み出しをサポートしているDVM-R88FBは、民生用DVD-RAMレコーダーとの連携も可能であり、幅広い用途に対応できる。 □関連記事 (2004年1月30日)
[Reported by 石井英男]
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