エプソンダイレクトの「Endeavor NT300」は、12.1型液晶パネルを搭載した1スピンドルモバイルノートであり、重さ約1.34kgという携帯性に優れたボディとPentium M搭載による高いパフォーマンスを両立させていることが魅力だ。今回は、Endeavor NT300の製品版を入手したので、早速レビューしていきたい。 ●1kg台前半の1スピンドル機としては珍しく通常版Pentium Mを搭載 Endeavor NT300は、重さ1kg台前半の1スピンドルノートPCとしては、珍しく通常版Pentium Mを搭載していることが特徴だ。同じ12.1型液晶を採用していても、重さ1kg後半の2スピンドルノートPCでは、通常版Pentium Mを搭載している製品はあるが、このクラスの1スピンドルノートPCでは消費電力の小さい超低電圧版Pentium Mを採用している製品が一般的である。例えば、NECの「LaVie J LJ700/7E」や松下電器産業の「Let'snote LIGHT T2」、前回レビューした東芝の「dynabook SS SX」シリーズなどは、全て超低電圧版Pentium M 1GHzを搭載している。 超低電圧版Pentium Mは消費電力と発熱が小さいという利点があるが、その代わりに動作クロックが低く、現時点での最高クロックは1GHzにとどまる。それに対し、通常版Pentium Mでは、最高1.70GHzで動作する製品がリリースされている。 Endeavor NT300は、通常版Pentium Mを採用することで、コンパクトなボディながら、フルサイズノートPCに匹敵する処理性能を実現している。さらに、BTOに対応しているので、CPUをPentium M 1.40GHz~1.70GHzの間で選択できることも嬉しい。 チップセットとしては、最新のグラフィックス統合型チップセットIntel 855GMEを採用している。Intel 855GMEは、Intel 855GMの後継製品で、PC2700 DDR SDRAMをサポートしたほか、内蔵グラフィックスエンジンの動作クロックが200MHzから250MHzに向上している。 256MBのメモリをオンボードで実装しているほか、MicroDIMMスロットを1基装備しており、BTOで384MBあるいは512MBに増設したモデルも選択できる。HDD容量は、30/40/60GBの中から選択可能だ。底面のHDDカバーを外すことで、HDDにアクセスできるので、HDDの換装も比較的容易である。基本仕様については、十分満足できるといえるだろう。 なお、今回試用したモデルは、CPUとしてPentium M 1.40GHzを搭載し、メモリ容量は512MB、HDD容量は60GB(日立製DL23EA-60)となっていた。 ボディのデザインは比較的シンプルで、万人受けしそうである。質感や細部の仕上げについても満足できるレベルだ。ディスプレイは、12.1型TFT液晶パネルが採用されている。いわゆるツルツル液晶ではなく、通常の液晶で発色の派手さはないが、外光の映り込みが小さいので、モバイル用途には適している。 ●数字キーの大きさには不満が
キーボードのキーピッチは19mm、キーストロークは2.35mmであり、スペック上は十分なのだが、「む」や「け」など右側の一部のキーのキーピッチは狭くなっている。また、気になるのが、数字キーの大きさだ。通常のキーボードでは、数字キーはアルファベットキーと同じ大きさなのだが、Endeavor NT300のキーボードは、数字キーの縦ピッチがファンクションキーとほぼ同じになっている。 つまり、数字キーの縦ピッチがかなり縮められているわけだ。実際に計測してみたところ、アルファベットキーの縦ピッチは19mmあるのに対し、数字キーの縦ピッチは13mm程度しかない。数字キーは記号入力などにも頻繁に使われるので、縦ピッチが狭いとかなり入力しにくい。 ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを採用。パッドの面積はやや小さめだが、操作性については特に問題はない。 ●インターフェイス類も充実 Endeavor NT300は、インターフェイス類も充実している。USB 2.0×3とIEEE 1394(4ピン)、モデム、Ethernet、外部ディスプレイの各ポートに加えて、PCカードスロットと3-in-1カードスロットを装備している。3-in-1カードスロットは、SDカードとMMC、メモリースティックに対応したスロットで、デジカメなどとの連携に便利だ。PCカードスロットのフタは、観音開き式に中に倒れ込むタイプになっているので、フタをなくしてしまう心配はないが、3-in-1カードスロットのフタはダミーカード方式なので、フタをなくしてしまう恐れがある。 冷却用ファンの排気穴は左側面にある。ファンの回転数は、CPU温度によって自動的に制御されるので、通常使用時にはあまりファンの騒音も気にならない。 通信機能も充実しており、100BASE-TX Ethernetとモデムに加えて、IEEE 802.11b/g準拠の無線LAN機能も搭載している(BTOで無線LANなしも選択可能)。無線LAN機能をON/OFFするための無線LANスイッチがキーボードの左奥に用意されているのも便利だ。 また、エー・アイ・ソフト製のネットワーク切り替えユーティリティ「BB de!!スマートモバイル」がプリインストールされており、複数のネットワーク環境設定をワンタッチで切り替えられる。 ●性能は高いが、標準バッテリでの駆動時間は短い Endeavor NT300の標準バッテリは、11.1V、2,200mAhという仕様で、3セル構成である。標準バッテリでの公称駆動時間は約2.4時間とあまり長くないが、オプションで用意されている6セル構成の大容量バッテリ(11.1V、4,400mAh)を利用することで、約5時間の駆動が可能になる。標準バッテリ装着時の重量は約1.34kgだが、大容量バッテリを装着しても重量は約1.48kgと1.5kgを切るので、携帯性はそれほど損なわれない。
Endeavor NT300は、PC2700をサポートする最新チップセットIntel 855GMEを搭載しているため、従来のPentium M+Intel 855GM搭載ノートに比べて、高いパフォーマンスを発揮することが期待される。そこで、いつもの条件でベンチマークテストを行なってみた。 ベンチマークプログラムとしては、BAPCoのMobileMark2002およびSYSmark 2002、Futuremarkの3DMark2001 SE、id softwareのQuake III Arenaを利用した。なお、統合チップセットのIntel 855GMEはハードウェアT&Lエンジンを搭載していないため、ハードウェアT&Lエンジンを必要とするFINAL FANTASY XI Official BenchMarkは実行していない。 MobileMark2002は、バッテリ駆動時のパフォーマンスとバッテリ駆動時間を計測するベンチマークであり、SYSmark 2002は、PCのトータルパフォーマンスを計測するベンチマークである。また、3DMark2001 SEやQuake III Arenaでは、3D描画性能を計測することができる。 MobileMark2002については、電源プロパティの設定を「ポータブル/ラップトップ」にし、それ以外のベンチマークについては、AC駆動時(電源プロパティの設定は「常にオン」)にして計測した。 結果は下の表にまとめたとおりである。なお、比較対照用に、同じPentium M 1.40GHzを搭載した日本HPのHP Compaq Business Notebook nc4000(以下nc4000)とエプソンダイレクトのEDiCube S150H(以下S150H)のベンチマーク結果もあわせて掲載している。
バッテリ駆動時のパフォーマンスを計測するMobileMark2002のPerformance ratingの値は155で、Pentium M 1.40GHz+Intel 855GMを搭載したS150Hのスコアに比べて約1割高い。やはりメインメモリがPC2100からPC2700に高速化されたことが効いているのであろう。 バッテリ駆動時間を示すBattery life ratingのスコアは115で、1時間55分の駆動が可能ということになる。このスコアは、nc4000の約半分、S150Hの約3分の1程度しかないが、これはバッテリ容量が異なるためである。Endeavor NT300では3セル構成のバッテリを採用しているのに対し、nc4000では6セル構成、S150Hでは8セル構成のバッテリを搭載しているので、この結果も妥当といえるだろう。長時間のバッテリ駆動が必要なら、2倍の容量を持つオプションの大容量バッテリの装着をお勧めする。 AC駆動時のパフォーマンスを計測するSYSmark 2002のスコアも、nc4000やS150Hに比べて約5~28%も高く、Endeavor NT300のパフォーマンスが優秀であることを示している。 3D描画性能を計測する3DMark2001 SEやQuake III Arenaのスコアが高いのも、メインメモリの帯域幅向上と、グラフィックスコアの動作クロックの向上が効いているのであろう。とはいえ、世代的には2~3世代前のコアであり、プログラマブルシェーダはもちろん、ハードウェアT&Lエンジンも搭載していないため、3D性能を重視する人には向かない。 ●質実剛健的なマシンでコストパフォーマンスは高い Endeavor NT300は、特に変わった機能を装備しているわけではないが、基本性能が高く、通常の用途で必要とされる機能やインターフェイスも一通り揃っているため、仕事の道具として使うには適している。BTOで仕様を変更できるので、用途や予算に応じて最適な構成のマシンを手に入れられることや、最小構成では138,000円(無線LANなしでは128,000円)という価格の安さも魅力である。 常に持ち歩いて使いたいが、マルチメディアデータなども取り扱うため、CPU性能はできるだけ高い方がいいという人には、特にお勧めしたいマシンである。 □関連記事 (2003年12月25日) [Reported by 石井英男]
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