松下電器産業のLet'snoteシリーズは、携帯性に優れたモバイルノートPCとして高い人気を誇る。Let'snoteシリーズは、10.4型液晶を搭載した1スピンドルノートPCのLet'snote Rシリーズに始まり、12.1型液晶を搭載した1スピンドルノートPCのLet'snote Tシリーズ、12.1型液晶とコンボドライブを搭載した2スピンドルノートPCのLet'snote Wシリーズと、展開を広げてきた。 今回新たに登場したLet'snote Y2は、Let'snote Wシリーズの兄貴分にあたる製品で、14.1型液晶搭載2スピンドルノートPCとしては世界最軽量となる1.499kgを実現したことがウリだ。今回は、Let'snote Y2の試作機を試用する機会を得たので、早速紹介していきたい。
Let'snote Y2(CF-Y2)は、SXGA+表示が可能な14.1型液晶とCD-RW/DVD-ROMコンボドライブを搭載しながら、重さ1.499kgを実現したモバイルノートPCである。Let'snote Y2の最大の魅力は、その高い携帯性にある。 SXGA+表示が可能な14.1型液晶を搭載した2スピンドルモバイルノートPCとしては、NECのLaVie RXやソニーのバイオノートZが存在するが、前者の重量は約2.3kg(光学ドライブ装着時)、後者は約2.1kgであり、Let'snote Y2はそれらに比べて600g~800g以上も軽いことになる。 一回り以上小さな12.1型液晶を搭載した2スピンドルノートPCでも、重さ1.5kgを切る製品は少ないことを考えても、Let'snote Y2の軽さがいかに驚異的なものかがわかるだろう。もちろん、14.1型液晶搭載の2スピンドルノートPCとしては、現時点で世界最軽量である。 Let'snoteシリーズは、毎回そのクラスでの世界最軽量を実現しており、そのたびに驚かされてきたのだが、今回のLet'snote Y2の軽さにも本当に驚いた。14.1型液晶を採用しているので、フットプリントは今までのLet'snoteシリーズよりも一回り以上大きいが、持ってみると非常に軽く感じられる。ノートPCのヘビーユーザーは、このサイズのノートPCならこのくらいの重さであろうという予測を無意識にしがちだが、その予測を大きく裏切る軽さなのだ。 ●筐体や液晶パネルのガラスの厚さを極限までスリム化Let'snote Y2のサイズは309×243×33~46mm(幅×奥行き×高さ)で、LaVie RX(315×258×29.7~37mm)やバイオノートZ(316×247.4×23.8~39mm)に比べるとやや厚いが、重さは格段に軽いので、常に携帯しても苦にならない。 Let'snote Y2が大幅な軽量化を実現した秘密は、筐体や液晶パネルのガラス、基板などの厚さを極限まで薄くしたことにある。筐体には、マグネシウム合金が採用されている。筐体の成型は、金型に溶けたマグネシウム合金を流し込んで行なうのだが、面積の大きなLet'snote Y2では、途中でマグネシウム合金が冷えてしまい、そのままでは均一の厚さに流れてくれない。そこで、サイドカバーとボトムカバーを分割して成型し、樹脂製パーツを使って組みあわせることで、大面積ながら厚さ0.6mmという薄肉筐体を実現している。 また、液晶パネルのガラスは従来1mm厚であったが、Let'snote Y2では0.6mm厚にすることによって、400gから265gという大幅な軽量化を実現した。プリント基板についても、10層基板から8層基板に変更され、軽量化が図られている。 光学ドライブとして、Let'snote W2と同じく、カバー部が上に開くオープントップ式シェルドライブ(CD-RW/DVD-ROMコンボドライブ)を搭載していることも特徴だ。オープントップ式シェルドライブでは、ドライブのカバーがパームレストと一体になっているため、通常のトレイ式ドライブに比べて、重量が大幅に削減できる。なお、Let'snote W2では、キーボードの左手前側に光学ドライブが配置されていたが、Let'snote Y2では、右手前側に変更されている。 カバーのオープン機構は電気式であり、PCの電源が入っていない状態では、オープンスイッチをスライドしても、カバーが開くことはない。PCの電源が入っている状態で、オープンスイッチを右側にスライドさせると、カバーが1cmほど上に跳ね上がり、その後手でカバーを持ち上げて、光学ドライブにアクセスできる。トレイ式ドライブの場合、ノートPCの周りにトレイを引き出すためのスペースが必要なのに対し、Let'snote Y2では、そうしたスペースが不要である。 なお、Let'snote Y2では、バッテリ駆動時間を延ばすために、光学ドライブの待機電源をオフにできるようになった(オプティカルディスクドライブ省電力ユーティリティによって実現)。光学ドライブの電源がオフになっている状態でも、オープンスイッチを右側にスライドさせてカバーを開くと、自動的に電源が入るので、特に電源のオンオフを意識する必要はない。 光学ドライブの電源は、オープンスイッチを左側にスライドさせることでオンオフが可能だが、一定時間(1分/3分/5分から選択できる)光学ドライブを利用しないと、自動的に電源をオフにすることもできる。 天板は、Let'snote W2と同様に中央が盛り上がったボンネット構造を採用している。ボディの肉厚が薄いため、天板の中央部を強く押すとその部分がたわんで凹むが、力を加えるのをやめると、すぐに元に戻る。これは、外部からの応力を吸収し、液晶パネルにストレスがかからないようにするための工夫であり、中央部が凹むからといって強度的に不足だというわけではない。また、液晶カバー部分を固定するラッチの構造が変更され、指1本でラッチのボタンを押すだけで、カバーを開けられるようになった。
●XGAの約1.87倍の情報量を一度に表示可能なSXGA+液晶を搭載
Let'snote Y2は、Let'snote R/T/Wシリーズよりも一回り以上大きな14.1型液晶パネルを搭載している。液晶サイズが大きくなっても表示解像度が変わらないのでは、文字が大きくなるだけで、一度に表示される情報量は変わらないが、Let'snote Y2では、SXGA+(1,400×1,050ドット)表示が可能な液晶を搭載していることがウリだ。他のLet'noteシリーズやモバイルノートPCで一般的なXGA(1,024×768ドット)表示に比べて、一度に画面に表示できる情報量は約1.87倍にもなる。 解像度が高いので、複数のウィンドウを同時に開いても、快適に作業が可能だ。なお、14.1型SXGA+表示では、画面の精細度が124ppi(ドットピッチ0.205mm)となり、12.1型XGA表示の105ppi(ドットピッチ0.242mm)に比べて、同じポイント数の文字は2割近く小さく表示されることになる。そのため、人によっては文字が小さいと感じられるかもしれないが、10.4型XGA表示でも精細度は124ppiだし、15型UXGA表示なら精細度は133ppiに達する。そのことから考えても、14.1型でSXGA+表示というのは、妥当な精細度であろう。 ●低電圧版Pentium M 1.20GHzとIEEE 802.11b/g準拠の無線LAN機能を内蔵Let'snote Y2は、PCとしての基本性能も充実している。CPUには低電圧版Pentium M 1.20GHzを搭載し、チップセットとしてはグラフィック統合型のIntel 855GMEを採用している。 筐体が一回り以上小さいLet'snote R/T/Wシリーズでは、超低電圧版Pentium M 1GHzを採用しているので、CPUパフォーマンスもLet'snote Y2のほうが上である。Intel 855GMEは、Intel 855GMの後継で、新たにPC2700 DDR SDRAMをサポート(Intel 855GMではPC2100まで)したほか、内蔵グラフィックスエンジンのコアクロックが200MHzから250MHzに向上している(ちなみに、Let'snote R/T/WシリーズではIntel 855GMを採用)。 なお、Let'note Y2では、「パフォーマンス優先モード」と「バッテリ優先モード」の2つの動作モードが用意されており、動作モードによってメモリクロックと内蔵グラフィックスエンジンのコアクロックが変わる。出荷時の状態では、バッテリ優先モードになっており、メモリクロックは266MHz(PC2100相当)、グラフィックスエンジンのコアクロックは200MHzで動作する(つまり、Intel 855GM相当で動作する)。動作モードはBIOSセットアップ画面で、変更が可能だ。 メモリは標準で256MB実装しており、MicroDIMMによって最大512MBまで増設が可能だ。HDD容量は40GBだが、直販サイトの「マイレッツ倶楽部」専用モデルとして、HDD容量を60GBに増やした製品も用意されている。HDDは1.8インチに比べて性能面で有利な2.5インチだが、通常の5V駆動品ではなく、3.3V駆動の特注品が採用されている。 インターフェースは、USB 2.0×2や外部ディスプレイ程度で、それほど多くはないが、必要にして十分ともいえる。カードスロットとして、PCカードスロット(Type2×1)のほかに、SDメモリーカードスロット(SDI/Oには非対応)を装備しているので、SDメモリーカードを利用するデジカメなどとの連携に便利だ。 通信機能も充実しており、100BASE-TX/10BASE-TのLAN機能とモデム機能に加えて、IEEE 802.11b/g準拠の無線LAN機能を搭載している。この無線LAN機能は、Intel製のminiPCIカード「Intel PRO/Wireless 2200BG」で実現されており、Centrinoブランドとなる。 無線LANのアンテナは本体両サイドに内蔵されており、受信感度の良い方に切り替えながら通信を行なうダイバシティ方式になっているため、安定した通信が実現できる。ただし、相変わらず無線LAN機能のオンオフを行なうハードウェアスイッチや無線LANインジケータは用意されていない。 なお、Let'snote R/T/Wシリーズの内蔵スピーカはモノラルであったが、ボディサイズに余裕のあるLet'snote Y2では、ステレオスピーカを内蔵している。
●キーボードの設計が一新され、使いやすくなったLet'snote Y2では、キーボードの設計が一新されたことも特筆したい。従来のLet'snoteシリーズのキーボードは、キートップが横長であったり(横ピッチが19mmに対して、縦ピッチが16mm)、右側の一部のキーのピッチが狭くなっているなどの不満があったが、Let'snote Y2ではそうした不満も解消されている。 キーピッチは縦横とも19mmの正方形キートップになり、右側の不等キーピッチもほぼなくなった。また、「半角/全角」キーも「Esc」キーの下側に配置されるようになっているほか、ファンクションキーも4つずつ隙間が空いており、ミスタイプを防ぐのに役立つ。 Let'snoteシリーズのデザイン的な特徴ともなっているのが、円形のホイールパッドである。Let'snote Y2では、ホイールパッドのデザインが従来とはやや変わり、ボタンのクリックがさらにしやすくなった。パッドの周囲を指でなぞることで、マウスのホイール操作が行なえるので、なかなか便利だ。 プリインストールソフトの数はそれほど多くないが、CD-Rライティングソフトの「B's Recorder GOLD7 BASIC」や「B's CLiP 5」、DVDプレイヤーの「WinDVD5」、独自のネット接続設定切り替えツール「ネットセレクター」、フォントサイズ拡大ユーティリティなどの実用的なソフトが付属している。
●6セルバッテリにより最大7.5時間の長時間駆動が可能にLet'snoteシリーズは、携帯性が高いだけでなく、徹底した省電力化によって、長時間駆動を実現していることも魅力だ。Let'snote Y2では、バッテリに新型セルを利用することで、Let'snote W2に比べてバッテリ容量が7%ほど増加している(Let'snote Y2のバッテリは7.4V、7,050mAhであるのに対し、Let'snote W2のバッテリは7.4V、6,600mAh)。 なお、Let'snote Y2ではCPUとして低電圧版Pentium M 1.20GHzを採用しながら、バッテリ駆動時間は、公称最大7.5時間と長い。ACアダプタも非常にコンパクトで、重さも約228g(ケーブル込みの実測値)と軽い。 また、Let'snote Y2シリーズは、他のLet'snoteシリーズと同じくファンレス動作を実現していることも評価したい。動作音も非常に小さく、ファンの経年劣化によって、冷却性能が低下する心配もない。 【お詫びと訂正】初出時、Let'note Y2に搭載されるCPUの駆動電圧について、0.85Vと表記しておりましたが、正しくは通常の低電圧版Pentium M 1.20GHzと同等の0.96Vになります。お詫びとともに訂正させて頂きます。
●パフォーマンスも十分で、バッテリ駆動時間も長い参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。なお、今回試用したのは試作機であるため、製品版ではパフォーマンスが向上している可能性もある。 ベンチマークプログラムとしては、BAPCoのMobileMark2002、SYSmark2002、Futuremarkの3DMark2001 SE、id softwareのQuake III Arenaを利用した。 MobileMark2002は、バッテリ駆動時のパフォーマンスとバッテリ駆動時間を計測するベンチマークであり、SYSmark2002は、PCのトータルパフォーマンスを計測するベンチマークである。また、3DMark2001 SEやQuake III Arenaでは、3D描画性能を計測する。MobileMark2002については、電源プロパティの設定を「ポータブル/ラップトップ」にし、それ以外のベンチマークについては、AC駆動時(電源プロパティの設定は「常にオン」)にして計測した。 Let'snote Y2は、バッテリ優先モードとパフォーマンス優先モードの2つの動作モードを持ち、メモリクロックと内蔵グラフィックスエンジンのコアクロックを切り替えることができるので、それぞれのモードで計測を行なった。 結果は下の表にまとめたとおりである。比較対照用として超低電圧版Pentium M 900MHzを搭載したLet'snote CF-W2の初代機(現行モデルでは超低電圧版Pentium M 1GHzを搭載)やPentium M 1.40GHzを搭載したEndevaor NT300とEDiCube S150Hの結果も併記してある。 結果を見ればわかるように、Let'snote Y2のパフォーマンスはなかなか良好である。パフォーマンスは、超低電圧版Pentium Mを搭載するサブノートクラスの製品に比べると大幅に高く、フルサイズノートPCに近い。統合チップセットなので3D描画性能は高いとはいえないが、一般的なビジネスアプリケーションを動かすには、十分な性能を持つ。バッテリ優先モードにおけるMobileMark2002のBattery life ratingは306分で、5時間を超える長時間駆動を実現している。バッテリ駆動時間についても、不満はない。 パフォーマンス優先モードに設定すると、バッテリ駆動時間は多少短くなるが、3D描画性能が大きく向上する。ただし、そうはいっても所詮は統合型チップセットなので、最新ゲームをプレイするには、3D描画性能が足りないだろう。 【Let'snote Y2ベンチマーク結果】
●携帯できるメインマシンとして幅広い用途に対応できる従来のLet'snoteシリーズは、携帯性は非常に高かったのだが、フルサイズノートPCに比べると、画面の狭さやCPU性能は見劣りしていたため、どちらかというとセカンドマシン的に利用されることが多かった。 しかし、SXGA+表示が可能な14.1型液晶と1.2GHz駆動の低電圧版Pentium Mを搭載したLet'snote Y2は、十分メインマシンとして利用できる能力を持つ。フットプリントは大きいが、重量はサブノートクラスの製品にも十分対抗できるほど軽いので、気軽に携帯できる。携帯性と性能の両方を追求するユーザーには特にお勧めしたい製品だ。 □関連記事 (2004年2月6日)
[Reported by 石井英男]
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