三浦優子のIT業界通信

ラオックスが中古パソコン販売の旗艦店をオープンした理由


 12月4日に秋葉原にオープンした「PC EXPOT」は、ラオックスとピーシーデポコーポレーションの提携によって生まれた新店舗である。ラオックスにとっては、中古パソコン販売の旗艦店という位置づけとなる。ラオックスが中古販売の旗艦店舗を作った狙いとはどこにあるのだろうか。


●ピーシーデポのノウハウが生きた「過激なチラシ」

 ラオックスとピーシーデポコーポレーションは9月に業務提携し、ピーシーデポの中古パソコン店の経営ノウハウをラオックスに導入していくことを発表していた。

 11月21日には埼玉県川越市にあったラオックス川越店を「PC DEPOT川越店」としてリニューアルオープン。提携が初めて具現化した店舗となった。

 PC EXPOT秋葉原は、業務提携による2つ目の店舗だが、PC DEPOT川越店はピーシーデポのフランチャイズ店であるのに対し、PC EXPOTはピーシーデポのノウハウを活用してはいるものの、あくまでもラオックスの直営店舗。しかも、1階から5階まで売り場面積600平方メートル、パソコンからジャンク品、PDA、デジタルカメラまで中古製品をこれだけ大量に扱う店舗を作るのはラオックスとしても初めてのことになる。初の本格的な中古製品を扱う店舗が、これだけ規模の大きなものとなることについて、リスクはなかったのだろうか。

PC EXPOT 松波道廣ストアマネージャー

 この疑問に対し、PC EXPOTの松波道廣ストアマネージャーはこう答える。「ザ・コンピュータ館、ASOBITCITYと旗艦店舗を作ってきたラオックスが、中古販売の店だけは小さい店ということは、戦略的にもできなかった。ラオックスが本格的に中古販売を開始したことを大きくアピールするためにも、旗艦店を秋葉原地区に開設する必要があった」

 現在のところ、PC EXPOTは好調な滑り出しを見せている。開店は12月4日、平日の17時からという時間だったにもかかわらず、300人が行列を作った。12月7日の日曜日の開店時には100人の行列ができるなど、好調な滑り出しとなっている。

 「テレビやラジオで宣伝を行なったわけではないが、秋葉原の駅前や店舗の前などで配布した5万枚のチラシの効果が大きかったようだ」と松波ストアマネージャーは笑顔を見せる。

 実はこのチラシ、「OPEN期間中 買取額15%UP ソ○○ップさんよりも高く買います!」というあおり文句が並ぶ。このように競合店を名指しで比較するあおり文句はラオックスでは通常使うことがないのだが、「このチラシはピーシーデポさんで作ったものだから」と松波ストアマネージャーは苦笑する。実は当初は○の数は1つだけで「ソフ○ップ」だったが、過激すぎるということで○の数をひとつ追加したのだという。

秋葉原駅前などで配布されたチラシ

●スピードを重視し独自ではなく業務提携を選択

 意外な部分にまで業務提携効果があらわれている格好だが、店舗としても、パソコン販売についてもラオックスの方がピーシーデポよりも先輩である。にも関わらず、ラオックスがピーシーデポのノウハウを活用することを選択したのはどういう理由からだったのだろうか。

 「理由は簡単。中古パソコンの買い取り、販売については、ピーシーデポの方がずっと先行している。ラオックスが独自に中古パソコンビジネスのノウハウを修得するというのもひとつの選択だったわけだが、スピードを考えると自社でノウハウを蓄積していくよりも、ピーシーデポのノウハウを使う方が得策だと考えた」

 スピードを優先したのは、今年10月からパソコンもリサイクル対象商品となり、パソコンの買い取り需要が増加することが予測されていることに加え、ピーシーデポをはじめ中古パソコンを取り扱う店舗の売り上げが順調に伸びていることも影響したのだろう。

 だが、中古製品の買い取りといった面ではピーシーデポのノウハウが生かせるものの、ピーシーデポがこれまで展開してきたのは郊外であり、秋葉原に店舗を出した経験はない。秋葉原の店舗運営、それも秋葉原での中古販売店としてラオックスは新しいスタイルを作り上げなければならない。

 「秋葉原にある他の中古販売店とは違い、清潔感をもった店舗とすることを心がけた。ピーシーデポの野島社長から、『少しすっきりしすぎているんじゃないか』という助言も受けたが、これまでの秋葉原の店舗とは異なり、女性のお客さんも取り込めるような、そんな店舗を目指した。中古パソコンの販売店というとマニアユーザーのものと思われがちだが、マニアユーザーから、これまで全く中古パソコン販売店には足を向けたことがなかったという人まで取り込めるような店とすることを狙っている」と松波ストアマネージャーは強い調子でアピールする。

店舗内の様子。清潔感のある店舗を心がけたという

●悩みは商品確保

 もっかのところ、最大の悩みはどうやって商品を確保するか。パソコンをもっている人が古いパソコンを売ろうとする場合、「やはり自分の住居の近所にある郊外の店に持っていくというのが一般的で、わざわざ秋葉原まで持ってくる人は少ない」のが現実である。

 ラオックスの郊外店で買い取り事業を行なっているものの、「買い取りを行なうためには、査定に時間がかかり、ノウハウ修得も必要となるだけに、今のところ上手に回転しているとはいえない状況になっている。これをなんとか、うまく回転させていかなければならない」と、郊外の店舗側にもインフラを作る必要があるという。

 新品であればメーカーから100台の商品を集めることは容易ではあるものの、「中古パソコンの場合、そんなに簡単に100台のパソコンを集めることはできない」のが現実でもある。

 それだけに、ラオックスとして中古販売店をすぐに拡大していくという計画は今のところはない。当面は、「PC EXPOT秋葉原を軌道に乗せて、1年で黒字転換するのが目標」となっている。


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【12月4日】ラオックス、中古PC専門大型店「PCEXPOT秋葉原本店」をオープン
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1204/laox.htm
【9月3日】ラオックスとPCデポが業務提携。中古販売を強化
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0903/laoxpc.htm

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(2003年12月10日)

[Text by 三浦優子]


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