9月24日、AMDはAthlon 64ファミリーを発表したが、同時にNVIDIAやVIA Technologiesといったチップセットベンダから、Athlon 64に対応するチップセットも発表された。 Athlon 64にはデュアルチャネルをサポートするAthlon 64 FX-51(2.20GHz)とAthlon 64 3200+(2GHz)という2製品があるが、中でもAthlon 64 FX-51はクロックが2.2GHzとAthlon 64ファミリーの中で最高を実現しているほか、デュアルチャネル構成を実現しており、シングルチャネルのみのAthlon 64に比べて高い処理能力を発揮する。 Athlon 64 3200+とAthlon 64 FX-51の差はクロックが200MHz違うこととデュアルチャネルメモリだけだが、価格にすると約4万円近い開きがある。前回のAthlon 64 FX-51とPentium 4 Extreme Edition(Pentium 4 XE)の比較では、シングルチャネルとデュアルチャネルの比較ができなかったが、本記事では、Opteron-144(1.80GHz)とnForce3を利用してシングルチャネルとデュアルチャネルの性能差について探っていくほか、チップセットであるnForce3の機能などについても触れていきたい。
NVIDIAが発表したnForce3は、デスクトップPC用として4つのモデルが用意されている。nForce3 Professional 150、nForce3 150、nForce3 250、nForce3 250Gbの4つがそれだ。詳しくは別記事に譲るが、ProfessionalがついているモデルがSocket940用、それ以外はSocket754用で、250のモデルにはSerial ATAコントローラが2ポート内蔵され、250GbにはGigabit Ethernetコントローラが内蔵されている。現在市場に出回っているのは、nForce3 Professional 150とnForce3の2モデルで、Serial ATAおよびGigabit Ethernetに対応した250や250Gbのモデルは第4四半期中に出荷される予定となっている。 nForce3の特徴は、ノースとサウスが一緒になったシングルチップであるということだ。VIAのV8T800、SiSのSiS755などがいずれも従来通りAGPへのブリッジとなるノースブリッジとI/O関連のサウスブリッジという構成をとっているのに対して、nForce3ではそれらの2つを合体させて1チップとしている。 これは、K8世代(Athlon 64 Opteron)では、メモリコントローラがCPU側に統合されているという事情も影響している。このため、ノースブリッジには事実上AGPしか接続されていないため、1チップにしてしまえばコストも削減できる、というのがNVIDIAの基本的な考え方だ。 K8で1チップ化に取り組むのはNVIDIAだけではない。ULi(ALi)も現行世代(M1687)こそ2チップ構成だが、次世代のM1689やPCI Expressベースの次々世代チップセットなどではnForce3と同様に、1チップ構成のチップセットとなるロードマップを持っている。
今回のテストに利用したNVIDIAのnForce3 Professional 150は、Socket940マザーボード用のチップセットで、ボード上には4DIMMが搭載されている。メモリモジュールを2枚1組で利用することでデュアルチャネル構成で利用できる。 サポートするメモリはDDR400を搭載したPC3200だが、Registeredモジュールのみに対応する。Registeredメモリは、ECC用の追加メモリチップが搭載されていることが多いため、一般的なデスクトップPC用で利用されるUnbufferedのものよりも高価にならざるを得ないが、安定性が重要視されるワークステーションではむしろECCが必要とされることが多い。 このほか、nForce3 Professional 150は、PCIバス(6スロット)、Ultra ATA/133、USB 2.0(6ポート)、Ethernet(100BASE-TX)、AC'97オーディオという仕様になっており、Opteron/Athlon 64用マザーボードとしては十分な仕様となっている。 ただ、nForce2でサポートされていたデジタルオーディオ機能である「Audio Processing Unit」(APU)の機能は搭載されていない。おそらく、APUを統合すると、nForce3のダイサイズが大きくなりすぎてしまうためだろう。NVIDIAは今後、nForce2でカバーしていたハイエンドのみならず、メインストリーム市場も狙っていると見られており、APUが落ちたのはコストとのトレードオフであると考えられる。
それでは、実際にnForce3 Professional 150の性能をチェックしていこう。ただし、現時点ではシングルのSocket940搭載マザーボードは、ほとんどがnForce3搭載製品ばかりで、他のチップセットと比較するのが難しい。そこで、今回はnForce3 Professional 150上でメモリの構成をシングルチャネルとデュアルチャネルに切り替え、比較を行なってみた。また、参考までにPentium 4 3.0GHz+Intel 875Pの結果も掲載している。 ビデオカードには、ワークステーション用ということで、NVIDIAのQuadro FXを搭載したビデオカードを利用した。環境は以下の通りで、結果はグラフ1~グラフ7の通りだ。 【テスト環境】
■ベンチマーク結果
結果を見てわかるとおり、メモリの帯域幅のテストは別として、デュアルチャネルとシングルチャネルの差はさほど大きくないなという印象だ。 例えば、グラフ1のキャッシュ帯域幅、グラフ2のメモリ帯域幅といったメモリの性能を計測するベンチマークでは差が出ているが、グラフ3のBusiness Winstone 2003、グラフ4のTMPGEncによるエンコード、グラフ5~7の3D系のベンチマークテストなどではほとんど差がない状況となっている。もちろん、どのテストでも確実な差はでており、効果があるとは言えるだろう。
こうした結果を見ると、コストパフォーマンスを重視するコンシューマユーザーにとっては微妙なところだろう。そこそこの処理能力とコストパフォーマンスを両立したいというユーザーであれば、シングルチャネルのAthlon 64を選択する方が理にかなっている。 しかし、確実に性能差はでており、PCの性能が高いほど仕事の能率に大きな影響を与えるプロユースのユーザーでは意味があるといえる。 あるいは、やはり少しでも性能が高いことに意味を見いだすことができるPCゲームユーザーにとっても意味があるだろう。そうした意味で、AMDがワークステーション向けのOpteronや、PCゲームユーザー向けのAthlon 64 FXでデュアルチャネルを採用したのは正しい選択だといえるだろう。 なお、nForce3 Professional 150を搭載したマザーボードは、いずれもシングルCPUのSocket940マザーボードとなっているが、今後NVIDIAはデュアルCPUに対応したnForce3 Professional 250を市場に投入する計画がある。実際、COMPUTEX TAIPEIでは、nForce3 Professional 250を搭載したデュアルOpteronマザーボードが公開されており、今後はDPワークステーション市場にも採用される可能性があり期待したいところだ。 □バックナンバー(2003年10月10日)
[Reported by 笠原一輝]
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