前々回の本連載では、NVIDIAのGeForce FX 5900 Ultraを搭載したビデオカードのパフォーマンスについてのレポートをお届けした。 その時点では、ATI TechnologiesのRADEON 9800 PROを搭載したカードが入手できていなかったので両者の比較はできていなかったのだが、その後RADEON 9800 PROを搭載したビデオカードを入手したので、早速その描画性能についてチェックしていきたい。
ATI TechnologiesのRADEON 9800ファミリーは、昨年の7月に発表されたRADEON 9700ファミリーの改良版で、いくつかの点でRADEON 9700に比べて改良されている。 ATIではプログラミング可能なシェーダのことをSMARTSHADERと呼んでいるが、RADEON 9700ファミリーではバージョン2.0だったものが、RADEON 9800ファミリーでは2.1へと拡張されている。 SMARTSHADER 2.1ではバーテックスシェーダの命令数が2.0の1,024命令から65,280命令へと拡張され、ピクセルシェーダに関しても新たにFバッファと呼ばれる手法に対応し、命令数が大幅に増えているなどの改良が加えられている。 また、この他にもアンチエイリアシング機能の“SMOOTHVISION”はSMOOTHVISION 2.1に、Zバッファリングの“HyperZ III”もHyperZ III+へと拡張されるなど、いくつかの改善が加えられている。ただ、性能面に大きな影響を与えるパイプラインの数(8パイプ)やバーテックスシェーダの演算器の数、メモリのバス幅(256bit幅)などには変更はなく、基本的には改良版と考えてよい。 これに対して、コアクロックやメモリクロック、最大メモリ容量は若干変更されている。RADEON 9700 PROではコアクロックが325MHz、メモリが620MHz(310MHzのDDR)となっていたのに対して、RADEON 9800 PROではコアクロックが380MHz、メモリが680MHz(340MHz)となり、メモリの帯域幅は19.8GB/secから21.8GB/secとなり、若干向上している。
今回RADEON 9800 PROを搭載したカードとして取り上げたのは、クリエイティブメディアの“3D Blaster 5 RX9800 Pro”で、128MBのDDR SDRAMを搭載した製品だ。コアクロックは380MHz、ビデオメモリは680MHzとなっている。 なお、すでに先週の金曜日には256MBのビデオメモリを搭載した“3D Blaster 5 RX9800 Pro AGP 256MB DDRII”も発表されており、こちらはメモリが256MBを搭載していること、さらにはメモリのクロックが700MHz(帯域幅は22.4GB/sec)になっていることが大きな違いとなっている。 ボード自体は基本的に他のRADEON 9800 PROを搭載している製品と大きな違いはなく、外部出力のコネクタも、アナログRGB(D-Sub15ピン)、Sビデオ出力、DVI-I(29ピン)という構成になっている。付属するケーブル、コネクタは、DVI-IからアナログRGBへの変換コネクタ、S端子をコンポジットに変換するコネクタ、S端子ケーブル、コンポジットケーブルが付属している。
それでは、実際のベンチマークプログラムを利用して、RADEON 9800 PROとGeForce FX 5900 Ultraの3D描画性能に迫っていこう。テスト環境は、基本的に前々回と同じ環境で、ドライバなどはいずれも最新のものを利用している。環境は以下の通りで、結果はグラフ1~グラフ6だ。 【テスト環境1】
■ベンチマーク結果
グラフ1はDirectX 9ベースのベンチマークテストである3DMark03の総合結果だ。FSAAなし、4X FSAAありの2つの結果を計測している。Patch330を当てる前のGeForce FX 5900 Ultraは、RADEON 9800 PROをいずれの解像度でも上回っているが、Patchを当てたあとは逆にRADEON 9800 PROが上回っている。 ただし、Patch330を当てた後でも、4X FSAAをオンにしてGPUに対して負荷をかけると逆にGeForce FX 5900 Ultraが上回る。これは、前々回の記事でも説明したとおり、ビデオメモリの帯域幅でGeForce FX 5900 Ultraが、RADEON 9800 PROを上回っているため、そしてGeForce FX 5900 Ultraが256MBのビデオメモリとなっているためだろう。こうしたビデオメモリ周りでの余裕が、メモリに負担がかかる高解像度やFSAAオンといった状況で有効に働いているのだ。 同じ事は、グラフ2の3DMark2001 Second Edition、グラフ3のQuake III Arena、グラフ6のUnreal Tournament 2003でも言うことができる。負荷が低い解像度ではRADEON 9800 PROが上回っていることもあるが、やはり負荷が高い、1,600×1,200ドット 32bitカラー FSAA有効、異方性フィルタリング有効などの解像度ではGeForce FX 5900 Ultraが上回っている。
以上のように、GeForce FX 5900 UltraとRADEON 9800 PROの比較という観点では、ビデオメモリの帯域幅の差が結果に与えている影響が小さくないということは言えるだろう。ただ、帯域幅の差が影響に表れるのは、高解像度でFSAAオンや異方性フィルタリングオンなど負荷が高い環境だ。 FinalFantasy XI Official Benchmarkの結果からもわかるように、さほどビデオメモリに負荷がかかっていないような環境ではRADEON 9800 PROに若干のアドバンテージがあるということができる。 また、未だに販売が開始されていないGeForce FX 5900 Ultraに対して、RADEON 9800 PROを搭載したカードは、すでに多数販売されており、入手性の良さという点では優れている。 NVIDIAではGeForce FX 5900 Ultraを搭載したカードが市場に出回るのは6月だとしているが、仮に6月中だったとしても、ボーナス商戦には間に合わない可能性がある。ボーナスで新しいビデオカードや自作PCをという計画があるユーザーであれば、“今ある”RADEON 9800 PROが最もハイパフォーマンスなビデオカードとして検討してみる価値があるだろう。 □関連記事 (2003年6月2日)
[Reported by 笠原一輝]
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