いわゆるA4フルサイズノートPCは、デスクトップPCの代替として使われることが多いため、携帯性よりも性能を重視した製品が多い。最近のフルサイズノートPCは、CPU性能などでは、デスクトップPCと比べても遜色はないが、表示解像度についてはまだまだ不満もある。 デルコンピュータから登場した「Inspiron 8500」は、1,920×1,200ドット表示が可能なWUXGA液晶を搭載したハイエンドノートPCであり、こうした不満を解決してくれる製品だ。
Inspiron 8500は、デルコンピュータの個人向けノートPC「Inspironシリーズ」の最上位に位置するモデルである。Inspiron 8500の最大の特徴は、15.4型ワイド液晶を搭載したことである。液晶解像度はBTOによって、1,920×1,200ドット(WUXGA)、1,680×1,050ドット(WSXGA+)、1,280×800ドット(WXGA)の3種類から選択できるが、やはり注目は1,920×1,200ドット表示が可能なWUXGAモデルであろう。 CPUとしては、モバイルPentium 4-Mが採用されており、クロックは、1.90GHz/2GHz/2.40GHzから選べる。メモリとして、PC2100 DDR SDRAMを利用しており、SO-DIMMスロットを2基装備しているので、最大2GBまでの増設が可能だ。HDD容量は30GB/40GB/60GBから選択でき、光学ドライブ(着脱式)は、CD-RWドライブ、DVD-ROMドライブ、CD-RW/DVD-ROMコンボドライブが用意されている。 今回試用したモデルは、WUXGA液晶とモバイルPentium 4 2.40GHz-Mを搭載し、メモリ容量は512MBであった。また、HDD容量は60GBで、光学ドライブとしてはCD-RW/DVD-ROMコンボドライブが搭載されていた。なお、FDDは内蔵されていないので、構成としては2スピンドルノートPCとなる。
まず、Inspiron 8500の最大のウリである高解像度ワイド液晶についてレビューしよう。デスクトップPCでは、利用したい解像度が表示できるディスプレイをユーザーが選択できるが、ノートPCでは、搭載されている液晶ディスプレイを交換することはできない。 現在のノートPCでは、XGA液晶(1,024×768ドット)が主流だが、ハイエンドノートでは、より解像度の高いSXGA+液晶(1,400×1,050ドット)や、UXGA液晶(1,600×1,200ドット)を装備した製品も増えてきている。 Inspiron 8500のWUXGA液晶は、Wide UXGAを意味しており、縦の解像度はUXGA液晶と同じ1,200ドットだが、横の解像度が320ドット多い、1,920ドットとなっている。一般的なXGA液晶と比べると、一度に表示できる情報量は約3倍にも達する。 超高解像度液晶を搭載したノートPCとしては、2,048×1,536ドット表示(QUXGA)が可能なNECの「VersaPro VA20S/A」があるが、Inspiron 8500のWUXGA液晶は、それに次ぐ情報量を誇る。VersaPro VA20S/Aは企業向けモデルであり、価格も45万円(ベースモデル)と高価であったが、Inspiron 8500は、最小構成なら20万円以下でWUXGA液晶モデルを購入可能である。 Inspiron 8500の液晶サイズは15.4型であり、ノートPCに搭載されている液晶としては大型な部類に属するが、1,920×1,200ドットということで、やはりドットピッチはかなり小さくなる。 Windows XPでは画面のプロパティで、ディスプレイの精細度(DPI)を指定できる。通常は96dpiに設定されているが、高精細ディスプレイ用として120dpiの設定が用意されている。Inspiron 8500でも、デフォルトで120dpiに設定されている。 精細度が120dpiの状態では、スタートメニューに表示されている「マイ コンピュータ」という文字列の横幅が約18mmになる。12.1型XGA液晶の場合、「マイ コンピュータ」の横幅は約19mmなので、12.1型XGA液晶よりもやや文字は小さいが、視認性は十分である。 ただし、精細度を96dpiに指定すると「マイ コンピュータ」の横幅は約15mmになり、かなり文字が小さくなってしまう。やはり、通常は120dpiで使ったほうがいいだろう。もちろん、96dpiに設定したほうが、全体的にフォントが小さくなるので、たくさんの文字を一度に表示することができる。 Inspiron 8500のWUXGA液晶は、XGA液晶を横に2つ並べた感覚で利用できる。Webブラウザを2つ横に並べても、快適に閲覧可能だ。また、広大なワークシートの編集なども効率よく行なえる。液晶の発色や反応速度、視野角についても不満はないレベルだ。
Inspiron 8500のWUXGA液晶モデルでは、1,920×1,200/1,680×1,050/1,600×1,200/1,280×1,024/1,280×800/1,024×768/800×600ドットの7種類の解像度を選べる。解像度によってはアスペクト比が液晶のアスペクト比(16:10)と異なるが、その場合でも、常に画面一杯に拡大表示される。つまり、アスペクト比が異なる場合は、横に延びた表示になるわけだ。 映画などのDVD-Videoタイトルは、16:9のアスペクト比で収録されているものが多い。通常のノートPCの液晶ではアスペクト比が4:3なので、アスペクト比を保ったまま表示すると、液晶の上下がかなりあいてしまうが、Inspiron 8500ならアスペクト比をかえずに、画面の大部分を使って表示できる。実際に、DVD-VideoタイトルをInspiron 8500で再生してみたが、映像が大きく表示されるので、迫力のある再生が楽しめた。
Inspiron 8500は、液晶以外のスペックも充実している。モデムやEthernet、IEEE 1394(4ピン)、外部ディスプレイ、S-Video出力、シリアル、パラレルなどの各ポートを装備しているほか、USB 2.0ポートも2基装備している。 Inspiron 8500では、チップセットとしてIntel 845MPが採用されている。本来Intel 845MPは、USB 2.0非対応のICH3-Mと組み合わされることになっているが、Inspiron 8500では、USB 2.0対応のICH4-Mが利用されている。また、BTOでIEEE 802.11b/g対応無線LAN機能を追加することもできる。無線LAN機能のオンオフは、Fnキーを使ったショートカット操作で可能だ。 キーボードは19.5mmピッチ、キーストローク2.7mmで、余裕がある。キー配列にも無理がない。カーソルキーが一段下に配置されているのも使いやすい。ただし、キーボード中央を押すとたわんでしまい、剛性がやや足りないという印象を受けた。 キーボードの右側には、CD/DVDコントロールボタンが用意されているほか、上部には音量コントロールボタンやミュートボタンが用意されている。 スティック式とパッド式の2種類のポインティングデバイスが装備されていることも面白い。ユーザーが使いやすいほうを利用すればよいだろう。どちらも2ボタンのシンプルなタイプだが、操作性は良好である。 バッテリは11.1V、6,486mAhという仕様で、本体に装着しなくても、LEDインジケータによって残量を知ることができるようになっている。ACアダプタのサイズはやや大きいが、本製品の性格を考えれば、問題にはならないだろう。バッテリ駆動時間は公称で最大約3時間とのことだが、携帯性重視のノートではないので、こちらも十分であろう。
Inspiron 8500は、高性能ビデオチップを採用していることも特筆できる。BTOによって、MOBILITY RADEON 9000(ビデオメモリ32MB)またはGeForce4 4200 Go(ビデオメモリ64MB)を選択可能だ。 どちらも、Pixel ShaderやVertex Shaderを装備したDirectX 8.1世代のビデオチップであり、ノートPC向けビデオチップの中ではトップクラスの性能を誇る。GeForce4 4200 Goはビデオメモリ容量が2倍であるため、こちらのほうが価格が高く、価格差は2万円となる。 今回試用したモデルでは、GeForce4 4200 Goが搭載されていた。ちなみに、MOBILITY RADEON 9000搭載ノートPCは、すでに他社からも発売されているが、GeForce4 4200 Go搭載ノートPCが国内で発売されるのは、Inspiron 8500が初めてとなる。 そこで、いくつかベンチマークを行ない、Inspiron 8500のパフォーマンスを検証してみた。比較対照用として、MOBILITY RADEON 9000(ビデオメモリ32MB)を搭載したLaVie M LM550/5Eのスコアもあわせて掲載する。LaVie M LM550/5Eは、CPUやメモリ容量などは異なるが、参考にはなるだろう。 まず、バッテリ駆動時のパフォーマンスと駆動時間を計測するMobileMark2002だが、パフォーマンスはほぼ同じで、駆動時間はInspiron 8500のほうが1時間ほど短いという結果になった。MobileMark2002は、バッテリ駆動時のパフォーマンスを高めることに注力されているPentium Mに有利なテストであり、IntelもPentium M 1.60GHzのスコアが、モバイルPentium 4 2.40GHz-Mのスコアを約1割上回るとしているので、ほぼ妥当な結果であろう。駆動時間についても、公称値(最大約3時間)にかなり近い値となっている。 SYSMark 2002では、ACアダプタ接続時のパフォーマンスを計測したが、こちらはInspiron 8500が大きく上回っている。特に、Internet Content Creationのスコアには大きな開きがある。マルチメディア系の処理においては、実クロックが高いモバイルPentium 4-Mが有利なのであろう。 DirectX 8.1環境での3D描画性能を計測する3DMark2001 SEのスコアも、Inspiron 8500が圧勝である。GeForce4 4200 Goの高い3D描画性能が発揮されているといえる。また、OpenGLベースの3DゲームであるQuake III Arenaにおいても、Inspiron 8500のほうが高いフレームレートを実現している。特に解像度が高くなるほど、その差は開いている。FINAL FANTASY XI Official BenchMarkは、LaVie Mのほうがスコアが高いが、Inspiron 8500の3,782というスコアも、決して低い値ではない。 GeForce4 4200 Goの3D描画性能は期待通りのものであった。ノートPCで最新の3Dゲームをプレイしたいという人にも、Inspiron 8500のGeForce4 4200 Go搭載モデルなら、自信を持ってお勧めできる。 【ベンチマーク結果】
記録型DVDドライブがオプションとして用意されていないことは残念だが、それ以外の点については、特に不満はない。WUXGA液晶とWSXGA+液晶、WXGA液晶の価格差は、それぞれわずか5,000円なので、Inspiron 8500を買うなら、WUXGA液晶モデルを選ぶことをお勧めする。 なお、Inspiron 8500の姉妹機として、Centrinoを搭載した企業向けモデル「Latitude D800」も用意されているが、本製品はバッテリ駆動時間を重視するモデルではないので、Centrinoのメリットもそれほど大きくはない。 デスクトップPC代わりに使うノートPCを探しているのなら、高解像度液晶を装備し、コストパフォーマンスの高いInspiron 8500は、有力な選択肢となるだろう。 □関連記事 (2003年4月11日)
[Reported by 石井英男@ユービック・コンピューティング]
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