Intelは、800MHzのシステムバスに対応したPentium 4 3GHzと、新しい800MHzのシステムバス、デュアルチャネルDDR400をサポートするチップセットのIntel 875Pをリリースする。 ここでは、発表に先立ち入手したPentium 4 3GHzとIntel 875Pマザーボードを利用して、そのパフォーマンスに迫っていく。なお、今回の評価はベータ機によるものであり、実際の製品とは結果が異なる可能性があることをあらかじめお断りしておく。
今回発表されるPentium 4 3GHzは、クロック周波数こそ11月に発表されたPentium 4 3.06GHzに比べて劣っているが、システムバスは533MHzから800MHzに引き上げられている。また、チップセットも、従来のPentium 4 3.06GHzでは、533MHzのシステムバスをサポートするIntel 850EないしはIntel 845GE/PEなどが用意されていたが、Pentium 4 3GHzには、開発コードネームCanterwoodことIntel 875Pチップセットが用意される。 システムバスと新しいチップセットが用意された以外は、Pentium 4 3GHzは、従来のPentium 4 3.06GHzと同じNorthwoodコアを採用している。L1キャッシュは12KμOps+8KBデータキャッシュ、L2キャッシュは512KB、Hyper-Threading テクノロジ(以下HTテクノロジ)サポートなど、マイクロアーキテクチャレベルでの改良等は特にない。 ただし、ステッピングは上がっている。Pentium 4 3.06GHzではFamily/Model/Stepping IDが15/2/7であったのに対して、Pentium 4 3GHzでは15/2/9となっていることがわかる。15/2/7がCステップであったので、15/2/9はDステップである可能性が高いと言える。なお、熱設計の仕様だが、以下のようになっている。 【Pentium 4 3GHzの熱設計仕様】
なお、最近のPentium 4は複数のVID(基準電圧)を持つ仕様に変更されており、表に示したVIDの他にも、1.525V、1.5V、1.475Vなどの基準電圧のコアが存在している。 熱設計消費電力は81.9Wと、Pentium 4 3.06GHzの81.8Wとほとんど変わっていない。Tcaseは若干あがって摂氏71度(3.06GHzは摂氏69度)となっており、熱設計の点では従来の3.06GHzとほぼ同じ仕様だと考えてよい。
Intel 875Pチップセットは、800MHzのシステムバスをサポートし、デュアルチャネルDDR400というメモリ構成をサポートする。これにより、システムバス、メモリとも6.4GB/secの帯域幅を実現し、Intel 850E+PC1066(デュアルチャネル)の組み合わせの帯域幅である4.2GB/secを上回る帯域幅を実現しているのが大きな特徴といえる。現時点では、Intel 875P以外には、800MHzのシステムバスをサポートするチップセットはないので、Pentium 4 3GHzを利用するには、Intel 875Pを搭載したマザーボードが必要条件となる。 なお、Intelは、Springdaleのコードネームで呼ばれる別バージョンを用意しており、Intel 875Pにやや遅れて発表される予定となっている。Springdaleは、基本的にはIntel 875Pの廉価版で同じダイが利用されている。 大きな違いは、Intel 875PがSpringdaleの選別品であることで、DRAMコントローラにおいてレイテンシを2クロックほど削減することで、3~5%の性能向上を実現している。Intelではこの機能をIntel Performance Acceleration Technology(PAT)と呼んでいる。 また、Intelのメインストリーム向けチップセットとしては初めてAGP 8Xをサポートしている(E7205は厳密に言えばワークステーション向けチップセットだ)。 ユニークな点はCSA(Comunication Streaming Architecture)と呼ばれる、ギガビットEthernetの専用バスが用意されていることだろう。といっても、物理層自体は、ノース・サウス間のバスであるハブ・インターフェイスと同じになっており、イメージ的にはノースブリッジにハブ・インターフェイスが2チャネル用意されていて、1つがギガビットEthernet専用になっていると考えればいいだろう。従って、帯域幅は266MB/secと、ハブ・インターフェイスと同じになる。 また、サウスブリッジはICH5と呼ばれる新しいバージョンに変更されている。大きな特徴は新たにSerial ATAコントローラが内蔵されたこと、またUSBのOHCIコントローラが4コントローラに増やされ、8つのUSBポートが装着できるようになっている。また、ICH5/Rと呼ばれるオプションバージョンではSerial ATAを2つ利用してRAID0(ストライピング)構成が可能になっている。 なお、Intel 875P自体の詳細なレポートは、後日掲載する予定だ。
それでは、ベンチマークプログラムを利用してPentium 4 3GHzの性能に迫っていこう。今回比較対象として用意したのは、Pentium 4 3.06GHz+Intel 850E+PC1066(デュアルチャネル)という従来のPentium 4の最高環境と、Pentium 4 3.06GHz+Intel 845GE+DDR333という標準的な環境、さらには、Athlon XP 3000++nForce2+DDR333という3つのプラットフォームだ。 ビデオカードはATI TechnologiesのRADEON 9700 PROを搭載したカードを利用し、HDDはIBM IC35L040AVVN07-0(40GB、7,200rpm)、メモリ容量は512MBと各プラットフォームで統一してある。従って、結果の差は純粋にCPU+チップセット+メモリの差ということになる。 なお、今回は、Intel 875P用のIntel Application Acceleratorが評価システムに付属していなかったため、すべての環境でIAAは利用していない。Athlon XP 3000+との比較では若干不利になる可能性があるので、その点はお断りしておく。 オフィス系アプリケーションのベンチマークとしてSYSmark2002のOffice Productivity、Business Winstone 2002、コンテンツ作成系アプリケーションのベンチマークとしてMultimedia Contents Creation Winstone 2003、TMPGEncによるMPEG-1エンコードを実行した。 なお、SYSmark2002のInternet Contents Creationは複数の環境で完走しなかったので今回の結果からは除外した。また、3Dアプリケーションベンチは、Quake III Arena、3Dmark2001 Second Edition、Final Fantasy XI Official Benchmark、Unreal Tournament 2003の4つを実行した。 【テスト環境】
■ベンチマーク結果
グラフ1、グラフ2、グラフ3、グラフ4のようなアプリケーションベンチマークでは、Pentium 4 3GHz+Intel 875Pと、Pentium 4 3.06GHz+Intel 850EないしはIntel 845GEはあまり大きな差はないか、あってもわずかにとどまっている。 これは、こうしたベンチマークプログラムでは、クロック周波数が結果に与える影響が大きいからだろう。0.6MHzほど下がっているPentium 4 3GHz+Intel 875Pがむしろよく健闘していると言ってよい。 これに対して、3Dアプリケーションでは、明確な差がでた。見て判るように、グラフ5、6、7、8のうち、グラフ7のFinal FantasyにおいてAthlon XP 3000+が圧勝した以外は、Pentium 4 3GHz+Intel 875Pが他の環境を上回っている。こうした結果から、システムバス帯域幅やメモリ帯域幅が大きな影響を与える3Dアプリケーションを利用する場合においては、非常に大きな効果があると言うことができるだろう。
以上のように、ビジネスアプリケーションや、クロック周波数が結果に大きな影響を与えるビデオエンコードなどの結果では、あまり大きな効果は望めないが、クロックが下がった割にはほとんど同じか上回る結果を残している。また、3Dベンチマークでは非常に高い処理能力を発揮している。 こうしたことから、Pentium 4 3.06GHzに比べて実クロックは下がっているものの、Pentium 4 3GHzはIntel 875PとDDR400デュアルチャネル環境で利用することで、Pentium 4の最高峰に位置する製品であることは疑いない。 OEMメーカー筋の情報によれば、4月20日に予定されている価格改定時の予価でPentium 4 3GHzは400ドル強(日本円で約5万円弱)となっており、Pentium 4 3.06GHzに比べてやや高めに設定されるという。また、Intel 875Pの価格も50ドルを超えており、マザーボードレベルでは2万円を超える価格設定となることが予想される。 そうした意味では、CPUとマザーボード、さらにデュアルチャネルということでメモリモジュールを2枚購入する必要があることを考えると、コストパフォーマンスに優れているとは言い難い。コストパフォーマンスよりも絶対性能重視のハイエンドユーザーにお奨めということになるだろう。 すでに述べたように、IntelはIntel 875Pの廉価版であるSpringdaleをやや遅れて投入する。Springdaleを搭載したマザーボードはもっと安価になることが予想されるし、さらに3GHz以下のクロックで、システムバス800MHzでHTテクノロジに対応した廉価版のPentium 4の投入も予定されている。このため、コストパフォーマンスを重視するというユーザーであれば、これらの登場を待つというのが正解だろう。 □バックナンバー(2003年4月15日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]
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