大塚商会が、東京飯田橋に本社を移転した。 とはいえ、現段階では、社長室をはじめとするスタッフ部門などの一部が入居しているだけで、まだ、什器がまったく入っていないフロアもあるほど。3月17日までの間に、毎週末、約300人ずつの移転作業が行なわれ、最終的には1,500人の体制となる。 取引先などの関係者のトップに社内が公開されるのは2月26日の予定だが、今回、それに先駆けて、特別に社内を公開してもらった。 創業者である大塚実会長が、自ら携わった同社関連施設として、ちょうど30棟目にあたる建物といわれ、まさに会長自身が思い入れを持った新本社といえるものだ。その新本社ビルを紹介しよう。 ●飯田橋の再開発エリアに誕生
新本社ビルは、旧JR貨物 飯田町駅跡地に再開発された「アイガーデンエア」にある。JR飯田橋駅と水道橋駅のちょうど中間地点にあり、首都高速5号線の横になる。近隣には、ホテルメトロポリタンエドモンド、シニアワーク東京のほか、日建設計、日立マクセル、東京レジデンスそして大塚商会の4棟が中層型のビルとして同じ高さの自社ビルを建設。さらに高層ビルとして、アイガーデンテラス、ガーデンエアタワーの2つのビルが建設中。ガーデンエアタワーには、KDDIが入居する予定で、6,500人規模の社員が移動してくると見込まれている。また、JR貨物本社、大和ハウスなどのビルも、この近くに新たに建設された。まさに、新たなビジネス街が創出された格好だ。 ●40周年記念事業の総仕上げ
創業40周年事業として、東証一部への上場と、新本社建設の2つの事業に取り組んだ同社。今回の新本社の稼働でいよいよそれが完了する。 創業者である大塚実会長が、若い時に丸の内を歩きながら、「いつかは自分もこんなビルをもてるようになりたい」と夢見ていたというが、今回の新社屋はそれが現実のものになったという。創業者の思い入れが詰まったものであるのは間違いない。 地上12階、地下2階。敷地面積は3,225平方m、延べ床面積は23,543平方m。建物の高さは64.55m。 新社屋のコンセプトは、代表的なSIerとして有数な大塚商会が入居するにふさわしい高機能性を備えたインテリジェントビル、環境保善(大塚商会では保全ではなく、保善と呼ぶ)を目指した省エネ、省資源を実現したビルであること、そして、地域の住民や周辺地域との調和を考えた設計となっていることだ。
特注の大型ガラスをビルの全面に取り入れた外観をもち、1階スペースには、地域の人々が自由に入れるスペースを用意した。1階中央部に受付を置き、西側には、一般の人々が利用できるオープンスペースを配置。キャッシュディスペンサーやカウンターを用意する予定。カウンターには電源もあり、ここで自由にパソコンや携帯電話を充電することもできそうだ。また、東側には、会社の歴史などを紹介するコーナーが設置される。これも現時点では、26日の公開を目指して急ピッチで準備が進んでいる。 1階から3階は、接客対応機能を集中させている。
2階には、中小19室の応接室、会議室を用意。今後、取材などもこのスペースで行なわれることになる。3階には、430人収容の大会議室を設置しており、ここで大規模な講演会などが可能。稼働式の観覧席もあり、用途に応じて、会議室を2つに分割できる。同社の保養施設である千葉県上総一宮のシーサイドオーツカでも同様の大会議室が用意されており、これを大型化して、新本社に持ってきた印象だ。 また、3階には、ショールーム「ソリューションガーデン」が設置される。これまでにも、旧本社近くの水道橋地区に設置されていたものを移転したもので、同社が商談やデモストレーションの際に活用するスペースとなる。 ●国内最大規模の無柱空間
4階から10階まではオフィススペースとなっている。 ここでの最大の特徴は、21.6m×52.2mの約1,100平方mが、なんと無柱空間となっていること。南側が全体のビルを支える「片側コア形式」を採用したことで、この無柱空間を実現。この手法を採用したものとしては、国内最大規模の無柱空間となっている。これにより、フレキシブルなオフィスレイアウトが可能となっており、床下10cmのOAフロア構造により、配線も楽にしている。
入室に関しては、セキュリティカードで管理されるため、社員以外は中には入れない。従来の本社施設にはなかった仕組みで、それに伴って、本社を利用する社員のための顔写真入りのIDカードを新たに作成した。 同本社に収容されるのは、本社スタッフ部門のほか、販売促進部門、一部の営業部門、ソフト開発部門などの1,500人。基本的には各フロアとも同じオフィスレイアウトが採用され、常務以上の役職者には個室が与えられる。ちなみに、社内は禁煙。東西のリフレッシュコーナーで喫煙ができる。
11階は社員食堂である「大塚倶楽部」。旧本社別館地下に設置されていたものを拡張して移設したもので、大きな厨房でコックが腕を振るう。低料金で利用できることから、以前は、昼食時には社員で大混雑していたが、今回1フロアへと拡張したことで、昼食時の混雑も緩和されることになりそうだ。精算もすべてIDカードで行なわれる。西側には来客用の食堂も設置されており、このスペースからは、天気のいい日には富士山もみえる。
12階は会長室および社長室と広報部門などのスタッフ部門が置かれている。会長が東側(高速道路側)、社長が西側(富士山側)で、それぞれに屋上庭園が設置されている。ここにも、いくつかの会議室が置かれており、テレビ会議システムも導入されている。 ●環境配慮にも力注ぐ
新本社は、環境配慮にも力を注いでいる。 ガーデンモールと呼ばれる道を、隣接するビルとともに構成。ここにマロニエとクスノキのシンボルツリーなどを配置して、緑豊かな街づくりを演出している。道路には透水性の高いインターロッキングを使用。降雨水の一部を地下水に還元している。 一方、1階から3階までの内装仕上げ材には、廃アルミと廃ガラスの再生アルミパネルを採用。11階の大塚倶楽部やトイレの床には100%天然材で作られた天然リノリウムを使用している。 照明には、昼光を関知して照度を自動的に制御する機構が設けられているほか、トイレと階段には人感センサーが設置されており、不要な時には消灯する仕組み。トイレでは、厨房用排水、雑排水をトイレ洗浄水として利用している。 空調に関しても、工夫が凝らされている。北側の窓では、外装部分に発熱ガラスを採用した。これはオフィスビルへの本格使用は日本で初めてのもの。発熱ガラスの表面に蒸着している金属皮膜に通電させることで、この熱で外部からの冷気を遮断するという仕組み。一方、東西の窓は、エアーフローウィンドウの採用で、熱や冷気といった75%のエネルギーの侵入を防ぐことができる。この窓の下に設置された自然排気口は、ワンタッチで外気を取り入れることが可能で、春や秋などの快適な季節の空調機器の使用を削減することができる。大型オフィスビルの場合、外気を取り入れることが不可能という例が多いだけに、これにも省エネに向けた工夫だといえる。 さらに、エレベータルームにも外光を取り込む工夫が凝らされ、これも省エネに貢献している。 また、制震構造の採用や、水害対策としての防潮板、非常用発電機、UPSなどの災害対策も万全だ。 ●新たな一歩の象徴的存在 今回の新本社は、創業40周年を迎える同社が、新たな一方を踏み出す象徴的存在となる。 コピー機販売のOA商社として発展を遂げてきた大塚商会が、ソリューションベンダーへと脱皮し、さらに、東証一部へと上場。また、社長が創業者の大塚実氏から創業者の長男である大塚裕司氏にバトンタッチされ、まさに大転換を迎えたこの数年。その総仕上げが、今回の新本社移転だったといえる。 つまり、新生 大塚商会の象徴的な新たな拠点というわけだ。 本誌の読者が注目するであろう個人向けパソコン事業に関しては、先頃、パソコンショップのαランドを今年5月までに完全撤退すると発表。今後は、Web販売であるLAND e-comを通じての取り扱いになる。だが、このLAND e-comも、現在は、αランドと同一の事業部門に配置されていることから、αランド閉鎖とともに別部門に移管される公算が強い。その場合、同様にWeb販売を行なっている「たのめーる」事業を持つ、MRO事業部門への移管が有力だろう。そうなると、必然的にLAND e-comと、たのめーるとの融合という選択肢も出てくるかもしれない。 いずれにしろ、個人向けパソコン事業はWebに統合されるのは明らかである。 そして、今回の新社屋は、個人向けパソコンショップの撤退というタイミングとともに、40周年を迎えての一大転機を迎えた新生 大塚商会のスタート、そして、その中核となるソリューションベンダーとしての事業をさらに加速することを示したものといえる。 大塚商会の新たな一歩のための中核拠点が、まもなく本稼働することになる。 □大塚商会のホームページhttp://www.otsuka-shokai.co.jp/ □関連記事 【2月7日】大塚商会、過去最高の経常利益 ~パソコン専門店αランドは完全閉鎖へ http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0207/otsuka.htm
(2003年2月24日)
[Text by 大河原克行]
【PC Watchホームページ】
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