ソニー、新バイオノート505速報レビュー
~Pentium 4+コンボドライブ内蔵で2kgを切るサブノート



ソニーの新しいバイオノート505となるPCG-V505

 ソニーがInternational CESで展示した新しいバイオノート505は、Pentium 4、そしてDVD-ROM/CD-RWのコンボドライブを内蔵していながら、12.1型液晶を搭載したサブノートクラスを実現した注目の製品として大きな注目を集めた。

 1月16日にはソニーより正式に発表され、製品名がPCG-V505となり、重量も2kgを切るというスペックが明らかになった。本レポートでは、バイオノート505の試作機を利用して、その魅力に迫っていきたい。なお、本レビューは試作機を利用しているため、実際の製品と異なる場合がある可能性があることをお断りしておく。



●サブノートPCクラスながらモバイルPentium 4 1.80GHz-Mを搭載

 今回取り上げたのは新バイオノート505の最上位機種であるPCG-V505R/PB(以下本製品)で、CPUにモバイルPentium 4 1.80GHz-Mを搭載し、Office XP Personalが標準でバンドルされている。これまで、14型や15型の液晶を搭載した2スピンドルのシン&ライトと呼ばれるA4ノートPCにモバイルPentium 4-Mが搭載された例はあったが、本製品のような12.1型液晶を搭載した、いわゆるサブノートPCに搭載された例はほとんどなかった。

 そうした製品が難しかった最大の理由は、モバイルPentium 4-Mが、従来製品のモバイルPentium III-Mに比べて発熱量が大きく、A4ノートに比べて小さい筐体に納めることが難しかったことだ。モバイルPentium III-M(通常版)を搭載したマシンでは、CPUが最大25W発熱することを前提に設計するのだが、モバイルPentium 4-Mではそのターゲットが35Wとなっており、より熱設計が困難になっているのだ。

 しかし、V505では2つの理由からそれがクリアされている。1つは、後述するが光学ドライブを内蔵している2スピンドル構成となっているため、従来のサブノートに比べてやや厚くなっており、このため若干放熱面で余裕ができたことだ。

 2つ目の理由は、熱設計技術の改良だ。ソニーによれば、本製品ではCPU、チップセット、グラフィックスそれぞれが独立した放熱機構を採用したり、そのほか様々な改善を行なったということだ。こうした2つの理由により、放熱機構の体積的には前モデルとなるR505に比べて30%少なくなっているということなのだが、放熱効率は40%も改善しているという。ちなみに、モバイルPentium III-Mの設計ターゲットだった25Wを1.4倍してみると35Wになり、おそらくV505は最大で35W程度まで許容できるように設計されていると推測できる。

 なお、本製品に搭載されているモバイルPentium 4-M 1.80GHzの熱設計に利用する消費電力の値(TDP)は30Wとなっており、前述の推定が当たっているとすれば、まだ若干の余裕がある可能性が高い。そのためか、ソニースタイルでは、モバイルPentium 4-M 2.20GHz(TDPは35W)を搭載した特別モデルも用意されており、おそらく35Wあたりがターゲットというのはあながち間違った推測ではないと言えるだろう。

 なお、IntelはOEMメーカーに対して、すでにリリースされた2.40GHz、第2四半期にリリース予定の2.50GHz、第3四半期にリリース予定の2.60GHzはいずれもTDPが35Wであると説明しており、今後はよりハイパフォーマンスの製品のリリースも期待できる。

底面の蓋をはずすと見えるCPU部分。HDDの上にあるクーラーの下にモバイルPentium 4-Mが隠されている。CPUの熱はヒートパイプでヒートシンクに送られ、ファンを利用して排出される メモリの増設はキーボードをはずすことで行なえる。標準で256MBのDIMMが1枚ささっているので、それを取り外して512MBのSO-DIMM2枚を利用して最大で1GBまで増設可能


●9.5mm厚のDVD-ROM/CD-RWコンボドライブを内蔵

内蔵されている9.5mm厚のDVD-ROM/CD-RWコンボドライブ。ソニーのCRX950Eというドライブが採用されている。ツートンカラーのデザインを採用しているため、見た目では薄く感じる。書き込みはCD-Rが8倍、CD-RWが4倍、読み込みはDVD-ROMが8倍、CD-ROMが24倍となっている

 本製品の、モバイルPentium 4-M搭載と並ぶもう1つの大きな特徴は、DVD-ROM/CD-RWのコンボドライブを内蔵していることだろう。しかも内蔵しているのは、2.5インチドライブの一般的な厚さである12.5mmではなく、9.5mm厚のドライブだ。このため、本製品の厚さは33.5mmと2スピンドルノートPCとしては割と薄くなっている(もちろん、1スピンドルの12.1型液晶マシンと比較すれば、やや厚め)。

 利用しているドライブはソニーのCRX950Eで、CD-Rは8倍、CD-RWは4倍という書き込み速度、DVD-ROMは8倍、CD-ROMは24倍という読み込み速度になっている。なお、内蔵されているハードディスクは60GBで、標準でCドライブ30GB、Dドライブ30GBとなっており、ハードディスクリカバリは特に用意されておらず、付属のリカバリCDを利用してリカバリを行なうことになる。

【お詫びと訂正】記事初出時、DVD-ROMの読込み速度を4倍と表記しましたが、8倍の誤りでした。ご迷惑をおかけしました関係者の皆様にお詫びするとともに、訂正させていただきます。

 厚さ33.5mmなどと数字で書くと、やや厚い印象を受けるかもしれない。確かに、最近の12.1型液晶搭載サブノートPCは薄い製品が多く、それと比べると確かにスペック上は厚い。しかし、実際に目の前にしてみると、実のところあまり厚くは感じない。そのマジックを実現しているのは、ユニークなツートンカラーデザインだろう。

 本製品のボディは、シルバーがかった紫とブラックのツートンカラーとなっており、ボディは紫と黒の部分を貼り付けたようになっている。このため、紫の部分だけが厚みのような印象を受け、あまり厚く感じない。もちろん、実際に持ち上げてみたり鞄に入れてみると“厚いな”という印象は持つと思うが。

 余談だが、今回も“VAIO”ロゴは彫り物となっている。ここをシールとか塗装にすればコストもかからず安価だと思うのだが、相変わらずコストのかかる作りになっている。筆者個人の趣味の問題かもしれないが、IBMのX30Limited Editionやi Series s30のようにピアノ調の塗装など、特別感を出すような処理は決して嫌いではない。筆者にとってはこのVAIOロゴもその1つであり、ぜひ今後も続けて欲しいものだ。


●贅沢だけど……グラフィックスはもう少し3D描画能力が高いのが欲しい

 本製品が採用しているチップセットは、モバイルPentium 4-Mということもあり、12.1型液晶を搭載した1スピンドルサブノートPCのほとんどが採用しているIntel 830ファミリーではなく、Intel 845MPとなっている。現在モバイルPentium 4-M用チップセットと言えば、グラフィックスコアを内蔵しているIntel 852GMを採用しているものが多いが、あえて単体型のIntel 845MPを採用しているのだ。

 Intel 852GMは内蔵しているグラフィックスはPortolaのコードネームで知られるグラフィックスコアで、Intel 830M、Intel 845G/GEなどに内蔵されているものとほぼ同等のコアだ。

 ただし、Intel 852MGは利用できるグラフィックスは内蔵されているグラフィックスのみで、AGP接続の外付けチップは利用できない。しかし、サウスブリッジはICH4-Mとなっており、USB 2.0が利用できる。

 これに対して、Intel 845MPは、単体型のチップセットなので、外付けのAGPグラフィックスチップが利用できるというメリットがある。ただし、サウスブリッジはICH3-Mとなるので、USB 2.0は利用できない。

 本製品では、すでに述べたようにIntel 845MPを採用しており、USB 2.0の実装より、高い3D描画能力を実現できる外部チップを選択したといえる。グラフィックスコアとして採用されたのはATI TechnologiesのMOBILITY RADEON(ハードウェアT&Lなし、1パイプライン×3テクスチャユニット)で、ビデオメモリは16MBとなっている。

 ただ、個人的には、USB 2.0を捨ててまでも、外付けグラフィックスチップにするのなら、もう少し3D描画性能が高いチップにして欲しかったところだ。

 確かにMOBILITY RADEONは、Intel 830Mファミリーや(おそらく)Intel 852GMに内蔵されているPortolaコアよりも高いのではないかと思う(今回は試作機なのでベンチマークはできなかった)。だが、Intel 830Mも最新ドライバを利用すれば、MOBILITY RADEONと性能的にはあまり変わらないというところもあるし、ハードウェアT&Lも搭載していない(DirectX 8.1のバーテックス/ピクセルシェーダとまでは言わないが、今時ハードウェアT&Lぐらいは欲しいものだ)。

 そういった意味では、もう少し3D描画性能が高い、例えばMOBILITY RADEON 7500などを搭載して欲しかったところだ。

 もちろん、モバイルPCにはそんなに高性能の3Dグラフィックスチップはいらないという意見があるのも十分判る。しかし、本製品はモバイルPentium 4 1.80GHz-M、DVD-ROM内蔵と、A4ノート顔負けの豪華スペックとなっている。外出先でもゲームしたいという用途にも十分使えるはずで、そうした時に3D描画性能は高いほどよいはずだ。そうした意味では、ぜひとも次期モデルでのパワーアップを期待したいところだ。

 なお、液晶ディスプレイは割と明るめで、視認性に優れており、特に不満を感じるようなことはないだろう。


●細かな使い勝手に配慮した各種の設計

 本体のポート類だが、右側面に光学ドライブ、メモリースティックスロット(MG対応、PRO対応は後日ソフトウェアのバージョンアップで)、USB、モデム、Ethernetのポートなどが用意されている。

右側面にはEthernet、モデム、USB、DVD-ROM/CD-RWコンボドライブ、メモリースティックスロットが用意されている

 メモリースティックスロットはユニークで、メモリースティックを挿入してアクセスすると、メモリースティックロゴの右側にあるインジケータがオレンジ色にフラッシュしてスロットにメモリースティックが入っていることをユーザーに通知する。

 ただ、モデム、Ethernetの蓋はやや使いにくかった。というのも、はずすのが大変だったのと、ケーブルの下に蓋がくる形で、ケーブルが太いと蓋がじゃまなのだ。筆者個人の経験上は、こういうポートの蓋はどうせ壊してしまう可能性が高いし、無くてもゴミなどが詰まったことはあまりない。そうしたことからも、別に無くてもよいのではないかと思うのだが。

 本体の前面にはスイッチ類が用意されている。用意されているのは2つのスイッチで、1つは本体の電源スイッチで、もう1つが無線LANのアンテナのスイッチだ。

 ところで、液晶を閉じた状態で、外側にスイッチがある場合には、輸送中に誤って電源が入ってしまうことが心配になるが、本製品では液晶が閉じた状態ではスイッチが入らないようにロックされる。細かいことだが、日々の使い勝手に影響することだから、素直に褒めておきたい。

 また、無線LANアンテナのスイッチが用意されている点も褒めておきたい。本製品のようなサブノートPCは、日々様々なところに持ち運んで利用することが多い。飛行機の中、病院など電波を出してはいけないところで利用するケースも少なくないだろう。そんな場合にも、無線をオフにするスイッチが1つあれば、精神安定上好ましいのは、モバイルユーザーなら同意して頂けるのではないだろうか。

“メモリースティック”ロゴの隣には、インジケータが用意されている 電源スイッチは前面に用意されている。液晶を閉じている時には、スイッチを押しても電源は入らないように工夫されている 無線LANのスイッチ。電波を出してはいけないところでは、スイッチで一発オフにすることが可能

 本体の左側面には、オーディオ入出力、IEEE 1394(i-Link S400)、USBポート、PCカードスロット(Type 2)、外部ビデオ出力、ACアダプタポートなどが用意されている。

 おもしろいのはACアダプタで、ACアダプタが電源に接続されている時には、ACアダプタのコネクタ部分が緑に光り、通電状態にあることを示すしくみ。本人はACアダプタにつないで充電しているつもりでも、実は先が抜けていたという事態を防ぐための機能だという。

 個人的にはあまりそういう事態に陥ったことがないのだが、そういうトラブルを経験したことがあるユーザーであれば一目で確認できるインジケータは便利な機能だと言える。

 なお、本製品は標準で付属するバッテリパックSでJEITAバッテリ動作時間測定法(Ver.1.0)で3.5時間、オプションのバッテリパックLで同7時間の動作が可能となっている(メーカー公称値)。2スピンドルのノートPCとしては十分なバッテリ駆動時間と言えるだろう。

 キーボードのピッチは約18mmとなっており、一般の人よりも指が太いと思われる筆者の指でも快適に入力することが可能だった。キートップは文字のプリントがしてある部分とキートップの下部が別の色になっており、視認性に優れている。

 1つだけ難点をあげるのであれば、ファンクションキーと数字キーの間がほとんどないので、ややファンクションキーが打ちにくいところだろうか。配列も、“半角/全角”キーが左上にくるなど、デスクトップPCに慣れたユーザーでも違和感のないものだった。

 ポインティングデバイスは、パッドタイプを採用しているが、縁が無くボディから自然にパッドに移動できる。クリックボタンも大きなものを採用している。右側のボタンにはスリットが入っており、どちらのボタンをさわっているのかわかるように配慮されている。

左側面には、電源ポート、外部ビデオ、PCカードスロット、USBポート、IEEE 1394、オーディオ入出力などが用意されている ACアダプタにはイルミネーションが用意されていて、ACアダプタがコンセントに接続されている時は写真のように光る


●便利になったSmartNetwork 2.0が使い勝手を改善

 細かなところだが、ネットワーク切り換えツールの“Smart Network”もバージョンアップされ、バージョン2.0となった。従来のR505などにバンドルされていたバージョン1.0に比べて大幅に機能が増えていることは見逃せない。

 Smart Networkは、現在接続されているネットワークのプロファイルを作成し、それを動的に切り換えていくツールで、一度プロファイルを作成してしまえば、それ以降は自動でネットワーク環境を検知し、設定を切り換える便利ツールだ。

 バージョン2.0では、バージョン1.0に用意されていた機能に加えて、設定のインポート/エクスポート、VPNへの対応、PCカードの挿入によるネットワークの切り換えなどの機能が追加されている。

 特に、インポート/エクスポート機能が追加されたことは注目に値する。インポート/エクスポートがあれば、自分の設定を人にあげたり、あるいはバックアップを取りOSをリカバリしても同じ設定を利用することが容易になる。また、V505を企業で一括導入した場合、ITマネージャが1つの設定を作成し、それを全社のV505に配布して使ってもらうという使い方も可能で、TCO削減にも貢献するだろう。

Smart Networkはネットワーク設定が切り替わったときには画面のように通知を行ない、プロファイルを作成するか聞いてくる。作成しておけば、次回は自動でプロファイルの切り替えが行なわれる Smart Networkでは、ウィザード形式で設定を作成することも可能 Smart Network 2.0では新たに設定のインポート、エクスポート、さらにはVPN機能に対応するなど、ビジネスパーソナルユーザー(個人ユーザーでPCをビジネスに使うユーザー)にも使いやすくなっている


●メインマシンを常に持ち歩きたいというユーザー向けのハイスペックサブノート

 以上のように、本製品の肝は、現在サブノートPCのほとんどの製品で採用されているモバイルPentium III-Mに比べて、高い処理能力を持つモバイルPentium 4-M(ただし発熱量が多くサブノートに搭載しづらい)を採用し、さらにDVD-ROM/CD-RWコンボドライブという光学ドライブを内蔵していながら2kgを切るというところだと思う。

 実際、このスペックは1世代前のフルサイズノートPCのスペックそのものだ。例えば、筆者はソニーのフルサイズノートPCであるPCG-GRX71を利用しているが、CPUはモバイルPentium 4 1.60GHz-M、DVD-ROM/CD-RWコンボドライブ内蔵となっており、液晶ディスプレイが16.1型であることを除けば、本製品にかなり近いスペックだ。液晶ディスプレイこそ小さくなっているが、それがこの小さいボディの中に入ってしまっているのだから、十分驚きに値すると言っていいだろう。

 ハイパフォーマンスなCPUを採用し、光学ドライブを内蔵したフルスペックのノートPCを持ち歩きたいが、重さや大きさの問題があり諦めていたユーザーにとって本製品は福音となるだろう。

 また、Smart Netowrkにみるように、ビジネスパーソナルユーザーの使い勝手にも配慮されており、ハイパフォーマンスなサブノートが必要なビジネスパーソナルユーザーにも十分検討する価値があると言える。そうしたユーザーであれば、まもなく(2月1日)発売される本製品を検討してみるといいだろう。

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【1月16日】ソニー、コンボドライブを内蔵した新バイオノート505
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0116/sony1.htm
【1月10日】【CES】ソニー、モバイルPentium 4-M搭載のバイオノートV505と
DVD±RW搭載のバイオノートGRVシリーズを展示
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0110/ces03.htm

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(2003年1月31日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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