COMDEX/Fall 2002の取材ついでに、米国でPalmのTungsten TとWの実物を見てきた。 Tungsten Tは、開いたところの写真をよく見かけるが、縮めるとかなりコンパクトになる。ただ、個人的にはちょっと縦横の比率が従来のPDAと違っていて、ズングリとした印象を受ける。もう少しスマートだとよかったんだが。買おうかどうか迷ったのだが、すでにソニーのクリエ PEG-NX70Vも買ったし、待ってりゃ日本語版も出るだろう、と我慢した。
それで、いま気になっているのが2003年初頭に出荷予定といわれているTungsten Wの方だ。こちらはPalm OS 4搭載機ながら、GSM携帯電話機能を備えている。日本ではGSM方式の携帯電話は使えないので、Tungsten Wはこのままでは日本で発売されない可能性が高い。国内の携帯電話に対応するとしても当分先になるのではないかと思われる。なのでこのTungsten Wはすごく欲しかったのだが、売ってない物は仕方がない。来年米国に行ったときのお楽しみにとっておくことにした。
●気になるのはTungsten W
Tungsten Wは、CPUにDragonball VZ 33MHz、OSにPalm OS 4.1.1を搭載する(Tungsten TはCPUがTexas InstrumentsのOMAP1510、OSがPalm OS 5)。メモリは16MBを内蔵し、SDカードスロットも装備している。充電可能なリチウムポリマー電池を内蔵しており、一回の充電で10時間の通話が可能だという。また、本体下部には、Universal Connectorが装備されており、Palm m500/505/515などと同じクレードルやケーブルが接続可能。本体上部には、IrDA受発光部と無線アンテナを兼用するアラーム用LEDが装備されている。 形は、Tungsten Tに似ているが、Tのようなスライド機構はなく、液晶の下にはフルキーボードが装備されている。グラフティエリアはなく、入力はキーボードからのみ行なう。液晶は、320×320ドットで6万5,000色表示が可能。サイズは、約78×17×120mm(幅×奥行×高さ)で重量は約184gと、Pocket PC機なみ。従来のPalm機よりも液晶の解像度が高くなっているからだろう。 価格は、携帯電話の契約なしで549ドル、2003年の早い時期に出荷開始の予定である。 ●トライバンドGSM機能を内蔵
同様な製品であるHandspringのTreo 270との最大の違いは、Tungsten WがトライバンドのGSM通信機能を持っていること。GSM方式では800/1,800MHzと1,900MHzの3つの周波数帯を使う。このうちGSM方式が運営されている国で、1,900MHzを使うのは米国だけ。それ以外の国は800/1,800MHzのどちらかである。こうしたこともあって、米国で使わなければGSM携帯はトライバンドである必要がなく、デュアルバンドでも問題はない。ノキアなどもトライバンドの携帯電話を出しはじめたのはごく最近である。 Treo 270の場合、電話機能はデュアルバンドで、米国内では800/1,900MHz、ヨーロッパでは800/1,800MHzと2つのバージョンが作られている。米国でTreo 270を購入すると、ヨーロッパでは1,800MHz帯が使えなくなるのがちょっと不便だ。 というのは1,800MHz帯は800MHz帯の混雑を緩和するために使われていることが多く、特に都市部では800MHz帯はつながりにくいことがあるという。また、一部の携帯ネットワークは、1,800MHz帯のみで利用可能な場合もあり、こうしたネットワークで米国版Treo 270は利用できないことになる。実際、今年英国で試しに購入してみたプリペイド端末はOrange Personal Communications Servicesという会社のものだったが、1,800MHz帯のみのネットワークだった。 この点からみるとTungsten Wは、トライバンドで、世界中(日本と韓国を除く)どこにいっても使えるわけだ。Treo 90を購入するとき、Treo 270のことを考えなかったわけではないのだが、このデュアルバンドという点が気になってどうしても手が出ず、GSM機能を内蔵していないTreo 90にしたのである。 ●音声とデータどちらがメイン? もうひとつの違いは音声通話をどの程度考えているかという点。Treoはマイクとスピーカが内蔵されていて、フリップケースを開けるとそのまま通話が可能。また、PDAを操作しながら、通話できるようにハンズフリー機能も付いている。 これに対してTungsten Wは、本体には、マイクやスピーカーは内蔵されておらず、本体上部にあるヘッドホンジャックにイヤホンマイクを装着して利用する。このことからも、Treoが音声通信を重視しているのに対して、Tungsten Wがデータ通信やPDA本来の利用を重視しているのがわかる。 もっとも、COMDEXの会場には、液晶カバーにスピーカーとマイクが組み込まれたTungsten Wがあり、電話機のように持って通話できる(このTungsten Wが置いてあったのは、Palmブース内のサードパーティのブースで、担当者は標準で添付されてるのかどうかについては何も知らなかった。評価用のマシンにのみ付属しているという可能性もある)。しかし、このカバーだと逆に通話中にスケジュールを入力なんてことがちょっと難しそうだ。 デザイン的にはTreo 270のほうが好みだが、Tungsten Wのトライバンドやハイレゾリューションの液晶も捨てがたい魅力。Pocket PCのPhone Editionなども登場してきており、海外では、携帯電話内蔵PDAが増えてきているようだ。PDA単体のものは低価格化路線となり、価格が高い高機能機種は、携帯電話機能内蔵って方向に2極化していくのが来年のトレンドなのかもしれない。 最後に、COMDEX会場で気になったPalm周辺装置を2つほど掲載するのでご覧いただきたい。
□Palmのホームページ(英文) (2002年12月12日)
[Text by 塩田紳二]
【PC Watchホームページ】
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