塩田紳二のPDAレポート

COMDEXで見たFossilのWrist PDA with PalmOS



 先週、米国で開催されたCOMDEX/Fall 2002において、PalmSourceとFossilは2003年中頃に出荷予定の腕時計型PDAを発表した。

 「Wrist PDA with Palm OS」というのが、この製品の正式な名前。Fossilはすでに、住所録やスケジュールデータの表示が可能な「Wrist PDA」という製品を出しているので混同しやすいのだが、Wrist PDAとWrist PDA with Palm OSは違うものだ。ちなみにWrist PDAは、TimexのDataLinkと同じく、PCなどからデータを転送して表示が可能な時計。

●Palm OSマシンを腕に

 表1がWrist PDA with Palm OSのスペック。簡単にいえば、Palm OS 4.1マシンをそのまま腕時計サイズにまで小さくしたものだ。実際の開発は、シンガポールのEMS企業であるFlextronicsが行なうとのこと。来年中頃に出荷されるのは英語版だが、その後、日本語版、ヨーロッパ言語版の開発も予定しているそうだ。

【表1:Wrist PDA with Palm OSのスペック】
CPUDragonball VZ 33MHz
メモリRAM 2MB+フラッシュメモリ 2MB
表示160×160ドット、16階調グレースケール表示
インターフェースUSB、IrDA
バッテリ寿命約4日間
バッテリ充電可能なリチウムイオン電池
サイズ35×51×12.5mm(幅×奥行×高さ)
重量5.7オンス(161.6g)
OSPalmOS 4.1

 採用されているCPUは、Dragonball VZ 33MHzと、従来のPalm機と比較してもかなり高速な部類に属する。

 本体は小さいが、液晶の解像度も標準のPalm機と同じ160×160ドット。ただし、グラフティエリアがなく、また、液晶も小さいために、専用のPalm OSが作られるという(記者会見では、Small Display用のGUIを作ると言っていた)。

 広報用に配布している写真ではアイコンが4つだけ表示されているが、発表会場に持ち込まれた試作機(モックアップのようだ)はホーム画面に12のアイコンが表示され、現行のPalm OSそのものだった。試作機の画面をよく見ると画面上のバッテリ表示が充電状態になっているので、作られた画面のようである。

 同一スペックの製品をFossilブランドとAbacasブランドの2つで販売し、両者ではデザインが若干違う(これはカジュアルとビジネス用というデザインの違いだという)。

Abacusブランドで販売される予定のWristPDA with PalmOS Fossilブランドのもの

●ボタンとロッカースイッチで操作。もちろんタッチパネルも

 Wrist PDA with Palm OSには、3つのボタンとロッカースイッチがあり、ボタンは、ページ送り(前、後ろの2つ)とBackボタン(メイン画面に戻る)で3つ(通常のPalm OSマシンのようにスケジュールなどを呼び出すボタンはないようだ)。

 ロッカースイッチは、前後の行送りと実行の機能を持つ。つまり、スクロールするような画面ではページ送りボタンで画面単位で動かせ、行ごとのカーソル移動などはロッカースイッチで行なう。このあたり、ソニーなどの機種が持つジョグダイヤルに似ている。本製品用のPalm OSは、こうした操作を加え、小さなディスプレイ向けにアイコンを拡大して表示するなどの機能を付け加えたものになると思われる。

 なお、Wrist PDA with Palm OSはグラフティ領域を持っていない。グラフィティ領域は、ソフトウェアで表示されるようになるとのこと(クリエNX70/60や、Handeraで採用されている)。

 金属ベルト部分に小さなスタイラス(というよりもプラモデルのゼンマイを巻くような形のもの)が仕込まれており、これを使えば細かい操作もできそうだ。

 バンドは金属で、総重量は約162gと通常のPalm機並み。たとえば、国内でも販売しているm515が約139g、米国で発売を開始したTungstenTが約159gである。ちなみにカシオの腕時計G-SHOCKシリーズのうち、金属ケースのMR-Gでも110~130gぐらいなので、時計としてはかなり重い部類に入ると思われる。

 本体前部にIrDAポートがあるため、これで名刺交換したり、スケジュールを受け取ったりすることが可能になる。PCとの接続にはUSBを使う。Wrist PDA with Palm OSは充電式なので、おそらくはクレードルが附属すると思われる。

会場に持ち込まれた試作機。本体左側にBackボタン、右側にページ送りボタンとロッカースイッチがある 本体前部にあるIrDAの受発光ポート。時計を見るように腕を曲げると、この部分が正面を向くようになる

●時計モードで4日間の動作

 内蔵アプリケーションは、「Address Book」、「Date Book」、「To Do List」、「Memo Pad」(テキストメモ)、「Note Pad」(手書きメモ)、「Calculator」と「時計」。アナログ、デジタル表示の切り替えやカスタマイズが可能な時計プログラムが付属し、普段は時計表示にしておくことができるとのこと。貰ったドキュメントには「PDAモードでないときには時計表示が可能」という表現がある。

 Wrist PDA with Palm OSのバッテリ寿命は約4日となっているのだが、現行のPalmでは、たとえ時計だけとはいえ4日間も動かし続けることは難しい。さらに小さな筐体では電池容量もそれほど大きくないと思われるので、時計機能には省電力で動作する特別な仕掛けがあるのかもしれない。あるいは消費電力の関係で、普段はスタンバイ状態で、ボタンを押すと時計が起動されるようになっているのかもしれないが、そのあたりは不明だ。

 Palm OS 4.1マシンは、Pocket PCなどに比べると簡単なハードウェアで実現可能なので、こうした製品も可能になるのだと思われる。逆にいうと今のままのPocket PCを時計にするのは難しい(もっとも、Microsoftのことなので、Wrist PCなんてのを考え出すかもしれない)。

 このWrist PDA with Palm OS、2003年の最も欲しいアイテムとなりそうな予感がする。

□Fossilのホームページ(英文)
http://www.fossil.com/
□製品情報(英文)
http://www.fossil.com/tech/default.asp?Tier1=tech

バックナンバー

(2002年11月28日)

[Text by 塩田紳二]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp 個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2002 Impress Corporation All rights reserved.