PalmOS 5.0を搭載したソニーのPalmOS機「クリエ PEG-NX70V」が、19日に発売となった。今回は、NX70のソフトウェアを中心にPCG-NX70のレポートをお届けする。 PEG-NX70V(以下NX70V)は、PalmOS 5.0を採用し、従来機種のNR70Vなどと同じく320×480ドットのTFT液晶ディスプレイを装備している。ハードウェアの概要については、前回記事などを参照いただきたい。 ●ソフトウェアの互換性 入手してから時間が短いのであまり多くのソフトを試してはいないのだが、はっきりとPalmOS 5.0対応となっているソフトウェア以外では、エラーにより動作しないものや表示が乱れて利用できないものがいくつかあった。 もっとも後者は、PalmOS 5.0だけが原因ではなく、ハイレゾリューション画面への対応という問題があるのかもしれない。起動直後にエラーが出てまったく使えない場合もあったが、特定の条件(たとえば、入力したデータを再編集しようとしたときなど)でエラーを起こすものものある。場合によっては、エラー表示後、画面が反応せず、ソフトリセットが必要となることもあった。「概ね互換性はあるものの、個別に試してみないとわからない」といった感じだ。 特に傾向があるわけでもなく、市販アプリケーションでも古いものが動くのに、最近のものが動作しないといったこともあるし、PalmOS 5.0以前にハイレゾリューション対応ソフトとして作られていても動作しないことがある。特定条件でエラーとなることがあるため、アプリケーションが動くかどうかは、多少念入りにチェックしてみる必要がありそうだ。 なお、「Hack」と呼ばれるPalmOS側のフックを使うアプリケーションは、PalmOS 5.0では動作しない(OS自体はARMアーキテクチャのコードで動作しているため)。また、アプリケーション動作中に起動可能な小さなプログラムである「DAソフト」は、DAラウンチャーがPalmOS 5.0に対応していれば、利用可能だ。 ●本体に標準搭載されるソフトウェア 本体に標準で装備されているのは、ハイレゾリューション表示に対応した個人情報用ソフトウェア(予定表、アドレス帳、メモ帳、ToDOなど)に加え、ソニーで用意した音楽再生ソフト、録音ソフトや内蔵カメラによる撮影ソフトなどである。標準状態で結構な数のアプリケーションが入っているのだが、さらに付属CDにはWebブラウザ(NetFront)や電子メールソフト(CLIE Mail)、Office文書表示(Document To Go)などのアプリケーションが用意されている。付属ソフトの一覧は別表にまとめた。 ただし、本体内蔵メモリには、予定表や住所録、メモなどのデータも置かれるために、メモリースティックを併用しなければすべてをインストールすることは実際上不可能で、現実的には必要なもののみを組み合わせてインストールすることになる。 内容的には盛りだくさんだが、音楽や映像、静止画といったメディア関連のソフトウェアが中心で、どちらかというと個人で楽しむ製品といった傾向。携帯型のパーソナルAV製品の一種というイメージを強く感じる。 CLIE ViewerやAudio Player、Movie Playerなどはメモリースティック上にあるJPEGやMP3、MPEGファイルを直接扱える(ただし、特定のフォルダにないとアプリケーションがファイルを認識できないが)。再生も素早く始まり、さすがはXScaleプロセッサを採用しているだけのことはある。また、NX70Vの液晶は表示品質が良い方なので、デジタルカメラで撮影した画像の確認などにも利用できる(外部メモリがメモリースティックだけというのが気になるが……)。 ●本体メモリは16MBでは不足 本体内蔵のメモリは初期状態で11MBしか残っておらず、5MBがPalmOSなどですでに使われている。PalmOS 4.1の場合、16MB内蔵のTreo 90では初期状態で空き領域が15.7MBあったことを考えると、OSが必要とするメモリはかなり増えている。それに、似たようなスペックのPocket PC機では、少なくとも32MB、最近の機種では64MB以上のメモリを搭載し、価格的にも同程度ということを考えると、もう少しメモリが多くてもいいのではないかという気もする。 なお、大量にメモリを消費するマルチメディア系のアプリケーションは、メモリースティック上にもデータを置けるために、本体メモリ残量にかかわらず、利用が可能。ただ、現時点ではメモリースティックの最大容量が128MBとSDやCFに比べると小さく、今後がちょっと気になるところ。Pocket PCなどでは、複数のアプリケーションが同時に動いているのでメモリカードの差し替えには注意を要するが、PalmOSでは今のところ1度に1つのプログラムしか動かないので、アプリケーションに応じてメモリースティックを差し替えても問題はほとんどない(ATOKの辞書をメモリースティック上に置いていると多少問題があるが)。 ●便利だが少しタルいラウンチャー ソフトウェア的な点では、一番使われると思われるラウンチャーが気になるポイント。特にNX70Vに付属しているCLIE Launcherは、このマシンの顔でもある。実際に使ったところ、ジョグダイヤルを使って片手ですべてのアプリケーションが起動できるのは便利だし、必要ならば12個までは1タップで起動できるアプリケーションを登録できるのも悪くはない。 しかし、残念ながら、ジョグダイヤルの回転だけですべてのアプリケーションの中から目的のものを選択するのは、少しタルい(アプリケーションを表示させないことはできない)。アプリケーションをリング状に並べ、起動したいアプリケーションが来るまでこれを回すのは、クリエのように最初から多くのアプリケーションが登録されている機種ではちょっと大変だ。このため実用という点では、従来のラウンチャーか、他のソフトに置き換えたほうがいいかもしれない。 ●本体の使い勝手その後 前回は入手した直後だったために、さまざまな場面で使う機会がなかったが、あれからしばらく利用したので、使い勝手についても再度レポートしてみよう。クリエは携帯電話のような2つ折り型と、一般的なPDAのようなタブレット型を切り替えて使えるようになっており、ソニーではこれを「ウィングデザイン」と呼んでいる。使用上気になった点は [1]開いた状態では片手で操作が可能なのに、閉じり、開いたりするのには両手を使う必要がある の2つ。2つ折り型で折りたたんだ状態から液晶を開くには、少し力が要り、両手を使う必要がある。開いてしまうと持った手の親指で電源を入れ、バックボタンでラウンチャーを起動、ジョグダイヤルでアプリケーション選択と、片手でほとんどの動作が可能になるのに、開閉だけが片手ではできない。このあたりで少し歯がゆい感じがしてしまう。
また、液晶を回転させて表に来るように畳んだ状態(タブレット型)では、ハードウェアボタンがまったく隠れてしまい、電源オフの状態からすばやくアドレス帳や予定表を起動できない(ハードウェアボタンは電源オフの状態でも動作する)。ここも少し工夫が欲しかったところ。このために従来のPDAと同じ形になるタブレット形態は、ペン操作用のあくまでも一時的な状態となってしまう。 全体として、このウィングデザインは、使い勝手という点でもう少し工夫が必要という気がする。とはいえ、液晶部を裏にして折りたため、携帯時に液晶を保護できるとか、キーボードが内蔵されているといったメリットもあり、従来のタブレット型にはない良さを感じるのも事実だ。 スピードやハイレゾリューション画面、表示の綺麗さに加え、無線LANでインターネットアクセスが可能などのさまざまな魅力を持つNX70V。筆者も日常的に利用するPDAとして採用を検討しているのだが、個人的にメモリースティックを使う機器をほとんど持っておらず、CFかSDメモリーカードを主に使っている点がちょっと問題だ。また、手持ちのアプリケーションを動作させてみたところ、常用している市販アプリケーションのいくつかがエラーとなるために、乗り換えに少し躊躇している。もう少し待てば、PalmOS 5.0に対応するとは思うが、現時点で一番の問題はソフトウェアの互換性というところか。 □ソニーのホームページhttp://www.sony.co.jp/ □クリエのホームページ http://www.sony.jp/CLIE/index_pc.html □製品情報 http://www.sony.jp/products/Consumer/PEG/PEG-NX70V/index.html □関連記事 【10月2日】ソニー、XScaleとPalm OS 5を搭載したクリエPEG-NX60/70V http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1002/sony.htm 【10月21日】塩田紳二のPDAレポート ソニー クリエ PEG-NX70V ファーストインプレッション http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1021/pda.htm (2002年11月5日)
[Text by 塩田紳二]
【PC Watchホームページ】
|
|