●4つの新チップセットが来年5-6月に登場 Intelは来年第2四半期後半に投入するFSB(フロントサイドバス) 800MHz版のPentium 4に合わせて、チップセットも一新する。新チップセットは、「Canterwood(キャンターウッド)」、「Springdale-PE(スプリングデールPE)」、「Springdale-G」、「Springdale-P」の4つ。主な機能の比較は次のようになる。
つまり、新要素であるFSB 800MHzとDDR400に対応するディスクリート(単体)チップセットがCanterwoodとSpringdale-PEの2つ、同様の機能を持つグラフィックス統合チップセットがSpringdale-G、既存のFSB 533MHzとDDR333までの対応となるのがSpringdale-Pとなる。いずれも、デュアルチャネルDDRメモリインターフェイスを備える。 スペック的にはCanterwoodとSpringdale-PEが並んでいるが、両者には機能差がある。そのため、位置づけとしては次のようになる。
また、既存のIntel 845ファミリも、少なくとも2003年第3四半期頃まではサポートされる。その一方で、Intel 850Eチップセットは事実上の終焉を迎える。 ●FSBとメモリの組み合わせが異なるチップセット群 Intelはもともと来年第2四半期に、デスクトップPC向けにSpringdale-PとSpringdale-Gを投入するはずだった。その時の仕様は、どちらもFSB 667MHzとDDR333サポートだった。だが、IntelはFSB 800MHz化に合わせて、Springdaleの仕様を変更、3つのバリエーションに分化させた。さらに、シングルCPUワークステーション向けチップセットだったCanterwoodを、ハイエンドデスクトップ向けチップセットとして降ろしてきた。ちなみにCanterwoodも、もともとはFSB 667MHzとDDR333サポートの仕様だった。 こうした経緯があるため、Springdale系はいずれも同じ設計だが、Canterwoodは別設計のチップセットということになる。4つのチップセットの違いはFSBとメモリのサポートの違いだ。Springdale-GとSpringdale-PEは、基本的に内蔵グラフィックスのオン/オフのみの違いで、メモリとFSBに違いはない。そのため、大まかには以下のような違いになると推定される。
これを見るとわかる通り、FSB 800MHzとDDR400は不可分となる。つまり、FSB 800MHzサポートのチップセットのみがDDR400もサポートする。FSB 800MHzをサポートしないSpringdale-PからはDDR400も抜けている。そのため、必然的にDDR400は、新しいPentium 4 FSB 800MHzだけのものになる。 FSB 800MHzとDDR400をセットにしたのは、まず、FSBとメモリの周波数の同期と帯域の合致のためだ。DDR400は、ベース周波数が200MHzでデュアルチャネル時に帯域は6.4GB/secとなる。そして、FSB 800MHzもベース周波数が200MHzで帯域は6.4GB/secだ。数字の上では、もっとも効率がよいことになる。ちなみに、FSB 800MHz時にはDDR333は320MHz(ベース160MHz)で動作させることになっている。これは、FSBとの同期のためで、FSBとメモリを1対0.8の比で動作させることになる。もっとも、周波数と帯域をマッチさせたのは性能追求のためだけではなく、マーケティング上の戦略もあると思われる。つまり、“大きな数字の方がいい”という、チャネル市場(自作やホワイトボックスなど)の現実に合わせたように見える。 ここで最大の疑問は、CanterwoodとSpringdale-PEとの差で、じつはこれはまだよくわかっていない。今のところ推定される、両者の違いはインターフェイスの構成と“turbo mode”という正体不明のモードにある。ある業界関係者によると、Intelは「turbo mode」については、FSB 800MHzとデュアルチャネルDDR400に最適化したと、あいまいな説明しか受けていないという。ただ、ある程度推測はつく。
●Springdaleはシングルとデュアルの両対応 業界関係者からの情報によると、Springdale系チップセットのメモリインターフェイスはシングルチャネルとデュアルチャネルの両対応だと言う。つまり、現行のi845系チップセットと同じように、シングルチャネルメモリで2DIMMのマザーボード設計も可能なのだ。そのため、シングルチャネルにすれば、メモリ帯域は半分になるものも、Springdaleベースで省スペース設計も可能になる。 それに対して、Canterwoodのメモリインターフェイスは、デュアルチャネルだけの対応と言われている。だとすれば、デュアルチャネルのみにすることで、チップセット内部のディレイをより抑えて、メモリアクセスが若干高速化されている可能性はある。 だが、それ以上に大きな違いがあると指摘する声もある。COMDEXで会ったある業界関係者は「CanterwoodはDDR400をデュアルチャネルでサポートするが、SpringdaleではDDR400のサポートはシングルチャネルのみとなる。SpringdaleでのデュアルチャネルメモリはDDR333までしかサポートされないと説明を受けた」という。同じ情報は、別なPC業界関係者からも来ている。 これが本当だとすると、ハイエンド向けのデュアルチャネルボードでは、CanterwoodはDDR400をサポート、Springdale-G/PEはDDR333までが正式サポートと明確な線が引かれることとなる。turbo modeもそれを指している可能性がある。 しかし、この件に関しては、相反する情報もある。あるPC業界関係者は「明確に問い合わせたわけではないが、SpringdaleのDDR400がシングルチャネルだけとは聞いていない。そもそも、Springdaleではシングルチャネルのバリデーションは間に合っておらず、来年の立ち上げ時点ではデュアルチャネルでいくしかないと聞いている」という。別なPC業界関係者も「少なくともIntelから提示されたスペックではDDR400もデュアルチャネルでサポートとなっている。DDR400だけがデュアルチャネルで難しくなる理由はそれほど考えられない」という。 もっとも、SpringdaleはDDR400がシングルチャネルだと聞いたというPC業界関係者も、理由は技術的なものではないだろうという。「IntelはCanterwoodをハイエンドに据える。その差別化のためにSpringdaleのDDR400のサポートを限定すると思う。チップセットの機能としてサポートできないとは思わない」と語る。 これらの情報の食い違いは、地域的なものを反映している可能性もある。例えば、日本と台湾と米国といった、地域によってIntel側の説明に違いがあるのかもしれない。 ●現実的にはDDR400はCanterwoodベースに もっとも、この問題はそれほど大きな意味はなさない可能性が高い。というのは、現実問題としてDDR400は来年中盤の段階ではかなり限られた量しか供給されないと見られるからだ。量も限られるし、価格も割高となる可能性が高い。そうすると、DDR400はPCベンダーではごく一部のハイエンドモデルのみの話で、DDR400へと流れるのはチャネル市場のパフォーマンス重視のセグメントということになる。そして、Intelの今回の位置づけの結果、最高性能デスクトップシステムはCanterwoodベースということになる。そうすると、自然と購入層はCanterwood+DDR400へと向かう可能性が高い。 もちろん、Canterwoodマザーボードの価格が非常に割高になるなら、Canterwoodの購入層は限定される。Canterwoodは、現在のワークステーション向けチップセット「Intel E7205(Granite Bay:グラナイトベイ)後継製品だが、IntelはGranite BayよりはデスクトップPC市場に適した形で提供するらしい。あるPC業界関係者は「Canterwoodの価格は50ドル程度で、最初の頃のIntel 850と同程度。マザーボードは4層で可能になると聞いている。そのため、Granite Bayよりはマザーボード価格は安くなるだろう」という。 ちなみに、Springdale-PEは、Canterwoodより15ドル程度安くなる見込みだという。原理的には、同じ4層マザーボードならCanterwoodマザーボードとSpringdale-PEマザーボードのコスト差はその程度に収まるはずだ。通常、IntelのPentium系向けチップセットは、ハイエンドで40ドル台、その下のランクが30ドル台で、ローエンドが20ドル台後半となっている。 ●まだ見えないSpringdaleの省スペースデスクトップ それよりもPCメーカーにとって大きな懸案は、Springdaleのシングルチャネルサポートだ。デュアルチャネルのメモリインターフェイスはマザーボード上で面積を食い、メモリスロットも4基となる。そのため、日本のようなスモールフォームファクタ(SFF)デスクトップが主流の市場には適合しない。また、コスト的にも高くつくため、デュアルチャネルはローエンドのPentium 4システムにも向かない。 先月までの計画のように、Springdaleが最初はハイエンドだけだったら、最初はデュアルチャネルだけでスタートしたとしても問題はなかった。メインストリームのデスクトップPCへと降りてくる来年後半にシングルチャネルのデザインが間に合えばよかったからだ。しかし、今回のロードマップ変更で、IntelはSpringdaleを一気にメインストリームのデスクトップPC全体へと普及させる戦略に変えた。そのため、OEMベンダーはシングルチャネルのデザインがすぐに必要となっている。 もちろん、OEMベンダーにはIntel 845系チップセットという選択肢もあるが、現実的ではない。というのは、新しいPentium 4のHyper-Threading+FSB 800MHz、それにICH5のSerial ATAという新フィーチャがサポートできないからだ。つまり、Springdaleのシングルチャネルが間に合わないと、省スペースデスクトップや低価格Pentium 4系デスクトップには、Hyper-ThreadingもFSB 800MHzもSerial ATAも来ないということになってしまう。 もっとも、あるPC業界関係者は、Springdaleのシングルチャネルのデザインは間に合うと聞いているという。このあたりがどうなるかは、まだ不鮮明だ。
□関連記事 (2002年11月28日) [Reported by 後藤 弘茂]
【PC Watchホームページ】
|
|