NVIDIAが9月末にリリースしたのが、これまでNV28、NV18のコードネームで呼ばれてきたGeForce4 Ti4200 with AGP 8XとGeForce4 MX440 with AGP 8Xの2製品だ。いずれも、従来製品のGeForce4 Ti 4200、GeForce4 MX440のAGPバスを、新たにAGP Specification 3.0で規定されたAGP 8X(2.1GB/sec)に対応させた製品となっている。 すでに秋葉原でもGeForce4 MX440 with AGP 8Xを搭載した製品がデビューしているので、本レポートではそのパフォーマンスに迫っていきたい。
GeForce4 MX440 /w AGP 8X(以下GeForce4 MX440-8X)とオリジナルのGeForce4 MX440の違いは、大きく言うと2点ある。1つはチップセットとのインターフェイスであるAGPが、オリジナルのMX440ではAGP 4Xモード(1.06GB/sec)であったのに対して、GeForce4 MX440-8Xでは、この秋に新しく規定されたAGP Specification 3.0で規定されているAGP 8Xモード(2.1GB/sec)に対応していると言うことだ。 これにより、PCのメモリからGPUに、一度により多くのデータを転送することができるようになるため、非常にサイズの大きなテクスチャデータなどを転送するタイプのアプリケーションを利用する場合は、大きなパフォーマンス向上を期待することができる。 もう1つの強化点は、ビデオメモリのクロック、さらにはビデオメモリの容量が従来に比べてあがったことだ。従来のGeForce4 MX440はコア270MHz、メモリ400MHz(200MHzのDDR)、最大メモリ容量64MBとなっていたのだが、GeForce4 MX440-8Xでは、コアクロックは275MHz、メモリは500MHzに向上しており、最大メモリ容量も128MBに拡張されている。
だが、EnTech TaiwanのPowerStripで、今回取り上げたProLinkのMVGA-NVG18Aのクロックを表示させたところコア279MHz、メモリ513MHz(8.192GB/sec)と表示された。NVIDIAが公式に明らかにしているスペック( http://www.nvidia.com/view.asp?PAGE=geforce4mx )では、フィルレートが11兆トライアングル/sec、ビデオメモリの帯域が8.0GB/secとなるので、計算上はコア275MHz、メモリ500MHzとなるはずなのだが、実に不思議だ。 他のメーカーはどうなのかと、LeadTek社の製品のWebサイト( http://www.leadtek.com.tw/www/Web_Leadtek/vga/A180_DDRTH_myvivo.asp )を見てみるとコア275MHz、メモリ512MHzとなっていた。ASUSTeKのWebサイト( http://www.asus.com/vga/agpv9180/features.htm )では、コア275MHz、メモリ550MHzとなっており、ここでも実際のスペックとは異なっている。どうもコアクロックに関しては275MHzが正しいスペックのようだが、メモリのクロックに関してはまちまちのようだ。NVIDIAの公式スペックは、いずれのメーカーも上回っており、ユーザーとしてはうれしい誤算だが、いったいどのスペックが正しいものなのか、謎は残る。
すでに述べたとおり、本製品の特徴はAGP 8Xに対応したこととコア、メモリのクロックがあがったこと、さらにはビデオメモリの容量が最大で128MBにあがったことだ。 ここでは、AGP 8Xへとあがったことで、いったいどの程度のメリットがあるのか、実際のベンチマークを利用して計測してみたい。AGP 8Xモードでは、帯域幅がAGP 4Xの倍となる2.1GB/secとなり、GPUに対して一度に大量のデータを転送することが可能になっているはずだ。 利用したのは3Dベンチマークの代表格と言ってよい3DMark2001 Second Editionで、SiS648チップセットを利用して8Xモードにした場合、BIOSセットアッププログラムを利用して強制的に4Xとした場合、そして4XしかサポートしていないIntel 845Gチップセットを利用した場合を試してみた。CPUはPentium 4 2.40B GHz、HDDはIBM IC35L040AVVN07-0(40GB)など、ビデオカード以外の環境はすべてそろえてある。
結果はグラフ1の通りだが、見てわかるとおりほとんど差がなく、誤差程度であると言ってよい。ただ、これをもってAGP 8Xが意味がないというかというと、そんなことはない。おそらく原因は、3DMark2001 SEがAGPに対して4Xで十分な設計がされているためだろう。 もともと3DMark2001 SEは、AGP 4Xの時代に設計されたソフトウェアで、GPUの性能を正しく計測するためにAGPがボトルネックになるような設計がされているとは考えにくい。つまり、AGP 4Xでも帯域幅としては十分で、8Xにして帯域幅を広げたとしても効果がでないと考えることができる。 ただ、今後登場する3Dアプリケーションなどでは、非常にサイズが大きなテクスチャデータをロードするものも増える可能性がある。ATIがRADEON 9700 PROを発表した時のセミナーで、ATIのエンジニアが「DOOM3などでは、非常に大きなテクスチャデータをロードするので、AGP 8Xの効果がでてくる」と説明していた。そのため、いずれは意味がでてくる可能性が高く、将来への投資と考えるといいだろう。
それでは、ベンチマークプログラムを利用して、他のメインストリーム向けグラフィックスカードと比較していきたい。比較対象として用意したのはGeForce4 MX460、Xabre 400、RADEON 9700 PROのメインストリーム向け3製品と、参考までにハイエンド向けのGeForce4 Ti4600、RADEON 9700 PRO、RADEON 8500の3製品の結果も同時に加えてある。環境は以下の通りで、結果はグラフ2~5の通りだ。 【テスト環境】
また、Quake III Arena(グラフ4)、Comanche4(グラフ5)でも同じ傾向が見て取れる。Quake III ArenaではGeForce4 MX460/64MBとあまり変わらないが、Comanche 4では解像度があがるごとに相対的な性能が向上していることがわかる。
以上のように、GeForce4 MX440-8Xはメインストリーム向けとしては高いパフォーマンスを発揮しており、ベンチマークによってはRADEON 9000 PROを上回るパフォーマンスを発揮することは特筆してよい。 ただ、課題となるのは価格だろう。128MBのビデオメモリを搭載した本製品は、実売価格で1万5千円から1万7千円程度で、あと少し足せばGeForce4 TiファミリーのローエンドであるGeForce4 Ti4200が買えてしまう価格だ。GeForce4 Ti4200の128MB版の中には2万円を切っているものもあり、ユーザーとしてはどちらを買ってよいか迷うところだ。 その場合には、バーテックスシェーダやピクセルシェーダの有無を選択の基準にするとよい。GeForce4 Ti4200にすれば、バーテックスシェーダやピクセルシェーダも利用可能であり、これらが必要であればTi4200を、それらが必要でないというのであれば、GeForce4 MX440-8Xを選択するというのが1つのガイドラインとなるだろう。 □関連記事 (2002年10月25日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]
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