数あるPCの周辺機器の中でも、注目を集めているのが、DVD-R/RWドライブやDVD+RW/+Rドライブといった記録型DVDドライブである。記録型DVDドライブは、フォーマットが乱立していることが難点であったが、1台で複数のフォーマットに対応したマルチドライブが登場してきたことで、そうした問題も解決されつつある。 今回は、メルコから11月に発売予定の記録型DVDドライブ「DVM-4222FB」の試作機を入手したので、早速その性能を検証してみることにしたい。
CDでは、記録可能なメディアがライトワンスタイプのCD-Rと書き換えが可能なCD-RWの2種類しかないので、話はわかりやすいが、DVDの場合、記録可能なメディアは、DVD-RAM、DVD-R、DVD-RW、DVD+R、DVD+RWと5種類ものフォーマットが存在する。 このうち、DVD-RAM、DVD-R、DVD-RWは、DVDフォーラムが規定したフォーマットであるのに対し、DVD+RとDVD+RWは、DVD+RWアライアンスが規定したフォーマットである。それぞれのフォーマットは互いに互換性がないため、そのフォーマットに対応したドライブでないと、書き込むことはできない(ただし、DVD-RAMを除けば再生互換性は比較的高い)。 当初の記録型DVDドライブは、DVD-RAMドライブやDVD-Rドライブ、DVD+RWドライブのように、1種類のメディアしかサポートしていなかったが、その後、DVD-RAM/RドライブやDVD-R/RWドライブ、DVD+RW/+Rドライブのように、2種類のメディアをサポートする製品が登場してきた。 メディアによって得意不得意があるが、複数のメディアに対応したドライブなら、用途に応じてメディアを使い分けることができる。こうした複数メディアをサポートした記録型DVDドライブが手頃な価格で登場したことによって、記録型DVDドライブが一気に注目を集めるようになった。 1台で複数のメディアをサポートするというトレンドをさらに推し進めたのが、以前紹介したアイ・オー・データ機器のDVDマルチドライブ「DVR-ABH2」に代表されるDVDマルチドライブである。DVR-ABH2は、DVD-RAM/DVD-R/DVD-RWの3種類の記録型DVDメディアとCD-R/RWメディア、CD-ROM/DVD-ROMメディアの合計7種類のメディアに対応したことで、人気を集めた。 今回紹介するメルコの「DVM-4222FB」は、4種類の記録型DVDメディア(DVD-R、DVD-RW、DVD+R、DVD+RW)とCD-R/RWメディア、CD-ROM/DVD-ROMメディアの合計8種類のメディアをサポートした“超”コンボドライブである。ちなみに、DVM-4222FBでは、ソニー製のドライブを採用していることが表明されている。ソニーからは、やはりDVD-R/RWメディアとDVD+RW/+Rメディアへの書き込みをサポートした「DRU-500A」という製品が発売されており、ハードウェア的にはDRU-500Aとほぼ同等と考えてよいだろう。
下の比較表を見ればわかるように、DVM-4222FBは、DVR-ABH2に比べて、対応メディアの種類が1種類多いだけでなく、記録速度についても有利である。中でも注目されるのが、DVD-Rメディアへの4倍速書き込みとDVD-RWメディアへの2倍速書き込みを実現した点である。DVR-ABH2に比べて、それぞれ書き込み速度が2倍になっているので、同じ量のデータを記録するのに約半分の時間ですむことになる。 CD-Rドライブでは、最大40倍速や最大48倍速といった超高速書き込みが実現されているため、メディア一杯にデータを書き込んでもわずか数分で終了するが、記録型DVDドライブでは、2倍速書き込みでも35分以上かかるので、4倍速書き込みをサポートしたことは高く評価できる。ただし、詳しくは後述するが、DVD-Rへの4倍速書き込みやDVD-RWへの2倍速書き込みは、従来のDVD-RメディアやDVD-RWメディアでは利用できず、高速記録に対応した専用メディアが必要になる。 【DVM-4222FBとDVR-ABH2の対応メディアと記録速度の比較表】
なお、今回試用した製品は正式出荷前のサンプル品であり、ファームウェアや付属アプリケーションのバージョンなどが、製品版とは異なる可能性がある。そこで今回は、主に記録速度の検証を中心に行ない、オーサリングソフトを中心とした付属アプリケーションの詳しい紹介については、製品版が発売され次第、改めて行なうことにしたい。
DVM-4222FBは、付属アプリケーションも充実しており、DVD/CDライティングソフト「B's Recorder GOLD5 BASIC」(BHA製)とDVD/CDパケットライティングソフト「B's CLiP5」(BHA製)、DVDオーサリングソフト「MyDVD 4.0」(SONIC製)、動画編集ソフト「ShowBiz」(ArcSoft製)、DVDプレーヤーソフト「CinePlayer」(SONIC製)、静止画・動画管理ソフト「PhotoBase」(ArcSoft製)、静止画編集ソフト「Photo Impression」(ArcSoft製)が付属する予定だ。
DVM-4222FBは、合計8種類ものメディアをサポートしていることと、現時点で最速となるDVD-Rメディアへの4倍速書き込み、DVD-RWメディアへの2倍速書き込みをサポートしていることが魅力である。そこで、DVD-Rメディアへの4倍速書き込みとDVD-RWメディアへの2倍速書き込みの性能を検証するために、アイ・オー・データ機器のDVR-ABH2を検証したときと同じテスト環境で、同じ合計4.17GBのファイル(フォルダ数1,299、ファイル数15,350)を書き込むのにかかる時間を計測した。 なお、DVD-Rメディアへの4倍速書き込みを行なうには、従来のDVD-Rメディアではなく、新たに規定されたDVD-R for General Version 2.0/4X-SPEED DVD-R Revison 1.0規格に準拠したDVD-Rメディアが必要になる。ライティングソフト側でメディアの種類を自動判別して書き込み速度を決めるので、基本的には従来のDVD-Rメディアに4倍速で書き込むことはできない。 ただし、まだ4倍速書き込みに対応したDVD-Rメディアは、あまり出回っていない。ここでは、評価用機材に添付されていた4倍速対応DVD-Rメディアと、執筆時時点で唯一販売されていたパイオニアのビデオ録画用4倍速対応DVD-Rメディアを利用して、テストを行なった(ちなみに、パイオニアの4倍速対応DVD-R/RWドライブ「DVR-A05-J」の登場にあわせて、データ用の4倍速対応DVD-Rメディアの出荷も開始されたようだ)。 また、DVD-RWメディアへの2倍速書き込みに関しても、従来のDVD-RWメディアではなく、DVD-RW Version 1.1/2X-SPEED DVD-RW Revision 1.1規格に準拠したDVD-RWメディアが必要になる。こちらについても、パイオニアのビデオ録画用2倍速対応DVD-RWメディアが販売されていたので、それを利用して検証を行なった。
書き込みは、付属のB's Recorder GOLD5 BASIC(β版)を用いて、オンザフライ方式で書き込んだ(ベリファイやコンペアも行なわない)。その結果は下の表にまとめたとおりである(以前のDVR-ABH2での結果もあわせて載せている)。4倍速書き込みでは、2倍速書き込みの約半分の時間で書き込みが終了していることがわかる。2倍速では30分以上かかっていた書き込みが約17分で終了するメリットは大きいといえる。 また、2.4倍速書き込みが可能なDVD+RメディアやDVD+RWメディアを利用した場合も、DVD-RメディアやDVD-RWメディアへの2倍速書き込みに比べて、短い時間で書き込みが終了している。念のため、4倍速で記録したDVD-RメディアをいくつかのDVD-ROMドライブで読み出してみたが、全てのドライブで問題なく再生が可能であった。 【ファイルの書き込みにかかった時間】
DVM-4222FBは、合計8種類という現時点で最も多くのメディアに対応したドライブであり、DVDメディアへの記録速度も現時点で最速である。スペック面においては、まさに現時点で最強の記録型DVDドライブといってもよい。民生用のDVDレコーダと連携して利用する場合でも、多くのメディアをサポートした本製品は有利だろう。 競合製品としては、アイ・オー・データ機器のDVR-ABH2に代表されるGMA-4020B採用製品のほか、今週出荷が開始されたパイオニアの4倍速書き込み対応DVD-R/RWドライブDVR-A05-Jが挙げられる。 DVR-ABH2は実売35,000円前後、DVR-A05-Jについては当初から実売3万円を切るという思い切った価格で販売されているため、本製品の実売価格がいくらになるかということも重要である。DVM-4222FBとほぼ同じ仕様のソニーのDRU-500A(実売5万円程度)よりは安くなると予想されているが、現時点では実売価格は未定である。一刻も早く、手頃な価格で発売されることを期待したい。 □関連記事 (2002年11月1日)
[Reported by 石井英男@ユービック・コンピューティング]
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