改良版Thoroughbredコアを採用したAthlon XP 2600+登場!
~Athlon XP 2600+ vs Pentium 4 2.53GHz



Athlon XP 2600+

 CPUメーカーのAMDは、Athlon XPの最新グレードとなる2600+(実クロック2,133MHz)を追加した。6月に発表されたAthlon XP 2200+の後継となる製品で、同じように製造プロセスルール0.13μmのThoroughbredコアを採用し、モデルナンバーで一挙に400+分も性能が向上しているという。

 今回は、このAthlon XP 2600+のエンジニアリングサンプルを入手したので、早速ベンチマークなどを利用してパフォーマンスをチェックしていきたい。



●改良版Thoroughbredコアを採用したAthlon XP 2600+と2400+

 今回、AMDが発表したのは、Athlon XP 2600+と2400+で、実クロックは2.133GHzと2GHzとなっている。基本的には、6月に発表されたAthlon XP 2200+に利用されている、製造プロセスルールが0.13μmのThoroughbred(サラブレッド)コアに基づく製品で、L1キャッシュは128KB(命令64KB+データ64KB)、L2キャッシュは256KBと大きく変わっていない。パッケージも従来通りで、駆動電圧は1.65VとAthlon XP 2200+と変わっていない。

 だが、実際には同じThoroughbredコアながら、ステッピングが変更されており、ダイサイズも従来の80平方mmから84平方mmへと変更されている。AMDは、このステッピング変更により、従来より高いクロックを実現できると説明しており、2200+(1.8GHz)から、一挙に2600+(2.133GHz)、2400+(2GHz)へと大幅なクロックの上昇が実現されたのだ。

 AMDはOEMメーカーに対して、この改良版Thoroughbredコアにより2.66GHz程度まではクロックがあげられる見通しであると説明しており、今後より高クロック版を実現することが可能になるという。

 コアが改良されたため、Athlon XP 2600+の熱設計消費電力(TDP)は68.3Wと2200+(旧Thoroughbredコア)の67.9Wからほとんどあがっていない。ダイ温度(Tdie)は85度で同じなので、ケース内温度を摂氏45度と仮定して熱抵抗値を計算すると、前者は0.586、後者は0.587となり、ほぼ同じとなる。

 熱抵抗値がほぼ同じということは、熱設計の難易度がほぼ同じと同義であるので、新Thoroughbredコア/2.133GHzのAthlon XP 2600+は、旧Thoroughbredコア/1.8GHzのAthlon XP 2200+と熱設計の難易度ではほぼ同じということになる。このため、CPUクーラーもAthlon XP 2200+に利用可能なものは、そのままAthlon XP 2600+で利用することが可能だ。

【表1:Athlon XP 2600+とAthlon XP 2200+の比較】
 Athlon XP 2600+Athlon XP 2200+
実クロック2.133GHz1.8GHz
コアThoroughbred(改良版)Thoroughbred
プロセスルール0.13μm
トランジスタ数3,760万
ダイサイズ84平方mm80平方mm
L1キャッシュ128KB
L2キャッシュ256KB
コア電圧1.65V
熱設計消費電力68.3W67.9W
ダイ温度摂氏85度
熱抵抗値(ケース温度摂氏45度)0.5860.589


●対Intelで大きな意味を持つ改良版Thoroughbred

 この改良版Thoroughbredコアは、今後AMDの強力な武器となる可能性が高い。すでに、Intelはロードマップを大幅に前倒ししており、第3四半期中にPentium 4 2.80GHzを出荷する計画があることを明らかにしているし、第4四半期にはHyper-Threading Technologyに対応したPentium 4 3.06GHzも計画されている。

 IntelがこのようにCPUのロードマップを前倒し、前倒しで加速している背景には、Intelの0.13μmプロセスの順調な歩留まりの向上がある。Intelは歩留まりがどの程度かは公開していないが、OEMメーカーには、かなり好調であり、そのためロードマップを前倒しするという説明がされている。

 実際、0.13μmプロセスのNorthwoodをリリースしてから、順調に2.20GHz、2.53GHz、そして第3四半期中に2.80GHzと快調に製品がリリースされてきている。これに対して、AMDはこれまで0.13μmプロセスの製品はAthlon XP 2200+(1.80GHz)を6月に出しただけで、やや劣勢な印象は否めなかった。

 だが、この改良版Thoroughbredコアにより、今後歩留まりが大幅に向上するとみられており、今後もIntelと対等に戦うことができるようになる可能性を秘めている。実際、今回のAthlon XP 2600+により、Pentium 4 2.60GHz(実際にはまだ存在していない)に(AMD自身の主張によれば)対等かそれ以上の性能を発揮するCPUを出せるようになったわけで、対Intelという意味では大きな意味を持っているといえるだろう。


●ベンチマークによってはPentium 4 2.53GHzを上回るパフォーマンス

 Athlon XP 2600+を評価するにあたり、今回は比較対象としてPentium 4 2.53GHzを用意した。本連載では、Pentium 4のプラットフォームとしてDirect RDRAMをサポートするIntel 850Eを利用してきた。だが、今回はDDR266をサポートするIntel 845Gを利用した。

 筆者としては、両プラットフォームで最もパフォーマンスの高いチップセットを利用して比較するというポリシーで、Pentium 4にはIntel 850+RDRAM、AthlonではApollo KT333+DDR SDRAMという組み合わせチョイスしてきたが、すでにPentium 4でもDDR SDRAMがかなり浸透したと判断し、今回からRDRAMによる結果とDDR SDRAMによる結果を併記することにした。ただ、今回は記事作成時間の都合で、新しい環境におけるRDRAMのテストが間に合わなかったため、Intel 845G+DDR266の結果のみを掲載した。次回のレポートでは、Pentium 4に関してはRDRAMとDDR SDRAMの両方の結果を併記していきたい。

 また、ベンチマークテストに関しても、今回から若干見直して、いくつかのテストを追加した。すでに採用していたSYSmark2002のOffice ProductivityとInternet Contents Creation、3DMark2001 Second Edition、Quake III Arenaの3つに、新たにOpenGLベンチマークのSPEC Viewperf 7.0、DirectX 8.1対応ゲームのCommanche 4、ビデオエンコードソフトウェアのTMPGEncの3つを追加した。

 今回は、Pentium 4 2.53GHzとAthlon XP 2600+の比較が眼目なので、結果を一目瞭然にわかるように、両者の数値を相対化し、グラフ1にした。グラフ1はバーが右に伸びて行っている場合、Athlon XP 2600+が上回っていることを示し、バーが左に伸びて行っている場合はPentium 4 2.53GHzが上回っていることを示している(グラフ2~5は通常のスコア形式のグラフだ)。結論から言えば、SYSmark2002のInternet Contents Creationをのぞけば、勝ったり負けたりという結果であり、すべてではないがPentium 4 2.53GHzと同等程度のパフォーマンスを持っているといってもいいだろう。

【テスト環境】
CPUAthlon XP 2600+Pentium 4 2.53GHz
チップセットVIA Apollo KT333Intel 845G
マザーボードEPoX EP-8KA3+Intel D845GBV
チップセットドライバVIA 4in1 V4.42Intel 4.00.1013
メモリDDR SDRAM
メモリモジュールPC2700(2-3-3)PC2100(2-2-2)
容量512MB
ビデオチップGeForce3(64MB DDR)
ビデオドライバNVIDIA Detonator XP V30.81
ハードディスクIBM IC35L040AVVN07-0
フォーマットNTFS
OSWindows XP Professional


■ベンチマークテスト結果

【グラフ1】 【グラフ2】


【グラフ3】 【グラフ4】


【グラフ5】




●SYSmark2002のInternet Contents Creationでは大きな差がついたが……

 ただ、SYSmark2002のInternet Contents Creationのスコアで劣っているのは事実だ。以前、このコラムでも指摘した通り、SYSmark2002はSYSmark2001とスコアの計測方法が異なっており、SYSmark2001に比べてAthlon XPに厳しい結果がでるのは事実だ。このため、AMDは未だにモデルナンバーの判定にSYSmark2001を利用している(今回のAthlon XP 2600+でもそうだ)。どのベンチマークを選択するかは、ベンチマークを行なう人の、いわば哲学であり、AMDがSYSmark2002を使わず、SYSmark2001を使うというのもありだろう。

 だが、筆者個人の意見としては、それは矛盾していると思う。なぜならば、結局ベンチマークを選ぶ基準というのは、ベンチマークの作り手(この場合BAPCo)を信用するかどうかだと思うからだ。

 BAPCoが最新のPCユーザーの動向を検討して、SYSmark2001よりも優れた“物差し”として提供しているのがSYSmark2002だ。もし、SYSmark2002よりもSYSmark2001の方が“物差し”として優れていると主張するのであれば、それを証明しなければいけないのだが、残念ながらそれは作った本人以外には非常に難しい作業だし、今のところそういう話を聞いたことはない。それができないなら、作った本人が前のバージョンより優れているという新しい“物差し”を使わずに、古い“物差し”を利用するということの正当化ができない。

 SYSmarkの優れているところは、単に1つのアプリケーションの結果だけでなく、実際にユーザーの使い方を研究し、できるだけユーザーが実際に利用する環境に近づけたものでテストし、その総合として結果がでてくるというものだ。

 言うまでもなくユーザーの使い方は年々変わるわけで、それを反映した結果、前年のベンチマークとは傾向が違う結果になることが起こるのは、こうしたアプリケーションベンチマークの宿命だ。それを前年のバージョンと傾向が違い、一方に不利になったからといって、前年のバージョンを使い続けるというのが本当にフェアな姿勢であるのかには疑問を感じている。

 筆者は、新しい使い方にどのように対応するのかという部分も含めて性能であると思うので、SYSmark2001のスコアは今のところ参考にする必要はないと考えている(何かほかに合理的な理由が見つかれば話は別だが)。

 ただし、IntelはこれまでBAPCoのメンバーであったのに対して、AMDはメンバーではなかった(先日加盟した)。そういう意味では、現在のSYSmark2002にはIntelが考える現在のPCの使い方というものは反映されているだろうが、AMDのそれは反映されていないと考えるのが妥当であり、その部分は割引いて考える必要があるとは言えるだろう。

 AMDがBAPCoに加盟したということは、エンドユーザーにとって非常に歓迎してよいことだ。AMDなりに今後のユーザーの使い方のトレンドなどを提案し、BAPCoがよりよいベンチマークを作ることができれば、ユーザーにとってよりよい“物差し”となるのは言うまでもない。


●Pentium 4 2.53GHzと同程度のパフォーマンスを実現

 以上のような結果から、確かにInternet Contents Creationでは大きな差がついたが、それをのぞけば、勝ったり負けたりという結果であり、2.6GHzのPentium 4よりも優れた製品であるかと聞かれればわからないが、少なくとも2.53GHzのPentium 4と同等程度のパフォーマンスを持っていると言って良いと思う。

 Thoroughbredコアの改良により、クロックを1.8GHzから2.133GHzに引き上げたことは、対Pentium 4のパフォーマンス競争という点ではかなり意味があると言っていいだろう。

 今回のAthlon XP 2600+も、従来通りSocket Aプラットフォームで利用可能であるので、今後BIOSアップグレードなどにより、既存の環境でも利用することができるようになるだろう。そのため既存のAthlon XPユーザーのアップグレードパスとしてかなり有力であるといえる。

 また、すでに述べたように、改良版Thoroughbredコアは2.66GHzなどかなり高いクロックをターゲットに設計されたコアで、今後もより高クロックのAthlon XPのリリースが期待できる。つまり、今後のアップグレードパスも用意されているわけで、新規に購入するユーザーでも、Hammerが出るまで買え控えをする必要はないだろう。9月にはAthlon XP 2600+を搭載したシステムがOEMメーカーなどから出荷される予定であり、そちらをねらってみるのもよいだろう。

□関連記事
【8月21日】AMD、Athlon登場3周年記念製品、Athlon XP 2600+/2400+発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0821/amd.htm

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(2002年8月21日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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