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Pentium 4 2.40GHzを試す
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IntelからPentium 4プロセッサの最新モデルとなるPentium 4 2.40GHzが発表された。このPentium 4 2.40GHzは、システムバスが400MHzのPentium 4としては最高クロックの製品となる。
先月のCeBITでは、AMDがAthlon XPの最新モデルとなるAthlon XP 2100+(1.73GHz)をリリースしており、両社の最高クロックモデルが出揃ったことになる。本レポートでは、ベンチマークなどの結果を基に、両CPUの性能を考えていきたい。
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Pentium 4 2.4GHz | Athlon XP 2100+ |
既に何度かレポートしているように、Pentium 4のシステムバスは5月に533MHzに切りかわる。OEMメーカー筋の情報によれば、IntelはPentium 4 2.40B GHz、2.26GHzを5月に追加する予定で、両製品ではシステムバスのクロックが533MHzになるという。
3月に開催されたCeBIT 2002( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/link/cebit02_i.htm )では、システムバス533MHzに対応したチップセットであるIntel 850E、Intel 845G、Intel 845Eを搭載したマザーボードが展示( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0320/cebit11.htm )されており、これらを搭載したマザーボードも、533MHzベースのPentium 4と同じようなタイミングで登場することになると言う。
今回発表されたPentium 4 2.40GHzは、533MHzへ切りかわる直前のタイミングに登場したシステムバス400MHzの製品となる。CPUコアは1月に発表されたPentium 4 2.20GHzや2A GHzでも利用されていた0.13μmプロセスのNorthwoodコアに基づいている。
さらに今回は300mmウェハという、より大型のウェハで製造されているという。CPUのダイ(要するにチップそのものだ)は、ウェハと呼ばれる円盤を切りわけることで製造されている。これまでは200mmウェハを使って製造されていたのだが、それが直径にして1.5倍となる300mmウェハという、より大型のウェハを利用して製造する工程に切りかえられたというわけだ。
半導体メーカーにとってウェハのサイズを大きくすることは、コストの削減につながる。というのは、300mmウェハにすることで、ウェハあたりにとれるダイ数は240%増、ダイ1つを製造するのにかかるコストは30%減、さらにダイ1つを製造するのに必要な電力や水などは40%も削減できるという。一度に沢山のダイが作れて、1つを製造するのに必要なコストはすくなくて済むというわけだから、半導体メーカーにとっては非常に美味しい。
ただし、300mmウェハで製造するには、既存の200mmウェハのラインを300mmウェハ用の機材で置きかえる必要があり、実際には300mmウェハ用に新しい工場を建設する必要がある。このため、初期投資は膨大で、実際には量産効果がでなければ、あまりメリットがでない。300mmウェハになったからといって、半導体の値段が劇的に下がったりするわけではないので、ユーザーに今すぐメリットがもたらされる話ではない(その証拠に今回のPentium 4 2.40GHzも1,000個ロット時の価格は74,820円と決して安くない)。ただ、将来的にはより高性能なCPUを安価に作れるようになるはずであり、そういう意味ではメリットがないわけではない。
さて、今回からCPUの評価に利用するベンチマークを切りかえることにした。前回、Pentium 4 2.20GHz、Athlon XP 2000+を評価したときまでは、BAPCO( http://www.bapco.com )のSYSmark2001、MadOnion.comの3DMark2001、id SoftwareのQuake III Arena(timedemo demo1)などを利用していたが、これらのバージョンアップなどにともないSYSmark2001をSYSmark2002へ、3DMark2001を3DMark2001 SE(Second Edition)へ変更し、さらに新たにMadOnion.comのPCMark2002、BAPCOのWebMark2001を追加することとした。
3DMark2001 SEは3DMark2001のマイナーバージョンアップ版で、新たにAdvanced Pixel Shaderのテストが加わったものだ。特にCPUに関する新しいテストが加わったわけではなく、これはバージョンが上がったのにともない変更しただけで、特に結果に対するインパクトはない。
PCMark2002は、MadOnion.com( http://www.madonion.com/ )がリリースしたベンチマークソフトウェアで、CPU、Windowsの2Dグラフィックス、ハードディスクの転送速度など、PCのサブシステム単位の性能を計測するベンチマークだ。オプションとしてDVDビデオの再生性能などを計測することも可能で、以前MadOnion.comがリリースしていたVideo2000の機能も一部採りいれられている。今回は、このPCMark2002のうち、CPU TESTだけを抜きだして実行した。CPU TESTにはJPEG画像のデコード(JPEG decoding)、ファイル圧縮、解凍(Zlib Compression、Zlib Decompression)、テキスト検索(Text Search)、音楽ファイルの変換(Audio Conversion)、3Dジオメトリ演算(3D Vector Calculation)などの処理をCPUに行なわせ、それぞれのスコアと総合スコアが弾きだされる。以前、Ziff-DavisのWinBench 99に含まれていたCPUmark99に近いテストだと考えればいいだろう。
PCMark2002のCPUテストは主にCPUそれ自体の性能を計測しているが、実際のPCのシステムとしての性能はCPUだけでなく、メモリやハードディスクの性能などによって決まる。特に、現代のCPUはチップセットをぬきにしては語ることはできない。そうした意味では、サブシステム単位での性能を見るベンチマークでは不充分で、システム全体の性能を反映するアプリケーションベンチと呼ばれるベンチマークを利用するのがCPUの評価では一般的となっている。
筆者は、アプリケーションベンチとして、4つのベンチを利用する。それが文書やコンテンツを作成するプロダクティビティと呼ばれるアプリケーションでの性能を示すSYSmark2002、3Dでの性能を示す3DMark2002 SEとQuake III Arena、インターネットを利用する環境での性能を示すWebMark2002の4つだ。3DMark2002 SEとQuake III ArenaはPC Watchの読者にはお馴染みだと思うので改めて説明しない。SYSmark2002に関しては後述するとして、ここではWebMark2001について説明しておきたい。
BAPCOのWebMark2001はユーザーがインターネット環境を利用する場合のパフォーマンスを計測するためのベンチマークで、XML、マクロメディアのFlash、Java、SSL、Quicktime、Windows Media Player、Real Playerなどの代表的なインターネット技術やアプリケーションを実行する場合のパフォーマンスを計測する。テストはB2B(Business-to-Business、企業間のEコマースなど)、B2C(Business-to-Consumer、個人ユーザーが企業のWebサイトに接続してEコマースなどを行なう場合)、Intranet Business(ビジネスアプリケーションをイントラネット環境で使う場合のパフォーマンス)の3つの項目が用意されており、アドビシステムズ、マクロメディア、リアルなどの実在のインターネットアプリケーションを利用して性能を計測し、総合スコアを出す。
最後にSYSmark2002は、PC業界の標準ベンチマークとなったBAPCOのSYSmark2001の最新バージョンだ。SYSmarkの特徴は、バックグランドタスクをベンチマークの動作に取りこんでいることで、単に1つのアプリケーションを実行するだけでなく、実際にユーザーが利用するのに近い環境をつくりだしている。SYSmarkにはインターネットコンテンツ作成系のアプリケーションを実行して計測するInternet Contents Creationと、オフィスアプリケーションを実行して計測するOffice Productivityという2つの結果が導きだされる。
SYSmark2002は、基本的にはSYSmark2001のバージョンアップ版で、SYSmark2001に較べて含まれるアプリケーションが新しくなっている。
SYSmark2001 | SYSmark2002 | ||
---|---|---|---|
フォアグランドアプリケーション | サポートOS | Windows 2000/Me | Windows XP |
メーラー | Outlook2000 | Outlook2002 | |
Officeスイート | Office 2000 | Office XP | |
データベース | Access 2000 | Access 2002 | |
Webブラウザ | Netscape Communicator 6.0 | Netscape Communicator 6.0 | |
音声認識 | Dragon Naturally Speaking 5.0 | Dragon Naturally Speaking 5.0 | |
フォトレタッチ | Adobe Photoshop 6.0 | Adobe Photoshop 6.01 | |
動画編集 | Adobe Premiere 6.0 | Adobe Premiere 6.0 | |
Web作成 | Macromedia Dreamweaver 4 | Macromedia Dreamweaver 4 | |
Webアニメーション | Macromedia Flash 5 | Macromedia Flash 5 | |
動画エンコード | Windows Media Encoder 7.0 | Windows Media Encoder 7.1 | |
バックグランドアプリケーション | 動画エンコード | Windows Media Encoder 7.0 | Windows Media Encoder 7.1 |
ウィルススキャン | McAfee Virus Scan 5.13 | McAfee Virus Scan 5.13 | |
ファイル圧縮 | WinZip 8.0 | WinZip 8.0 |
Athlon XP/2000+ | Pentium 4/2GHz | |
---|---|---|
SYSmark2002 | 213 | 238 |
SYSmark2001 | 195 | 212 |
上昇率 | 9.2% | 12.3% |
Athlon XP/2000+ | Pentium 4/2GHz | |
---|---|---|
SYSmark2002 | 139 | 138 |
SYSmark2001 | 192 | 162 |
下落率 | 27.6% | 14.8% |
Office Productivityの大きなアップデートはWindows XPとOffice XPへの対応なので、Pentium 4、言いかえればSSE/SSE2命令により最適化されているのだろう。
第二に、今回のバージョンアップではWindows XPやOffice XPへの対応がメインで、そうしたバージョンアップを進めた結果、こうなったとも考えることができる。
さて、それでは実際に各ベンチマークの結果を見ていこう。テスト環境では、基本的にCPU、チップセット、メモリ以外のデバイスは同じものを利用している。CPUはPentium 4が1.80A GHz、1.60A GHzを除くmPGA478(いわゆるSocket 478)の全CPU、Athlon XPが2100+~1700+までの各クロック(1.73GHz~1.4GHz)を用意した。
チップセットは、両プラットフォーム共に最高性能を発揮できると思われるものを採用するため、Pentium 4にはIntel 850、Athlon XPにはApollo KT266Aを搭載したマザーボードを用意した。Athlon XPではKT333という選択肢もあったが、プラットフォームがでたばかりでまだ信頼性が確立されていないこと、DDR266でもレイテンシを2-2-2に設定すれば、2.5-3-3のDDR333とあまりパフォーマンスが変わらないことなどを考えて、KT266Aの環境を選択した。
CPU | Pentium 4 | Athlon XP |
---|---|---|
チップセット | Intel 850 | VIA Apollo KT266A |
マザーボード | Intel D850MDL | EPoX EP-8KHA+ |
BIOSバージョン | 10A.86A.0020.P08 | 8khi2304(2002/03/04) |
チップセットドライバ | 3.10.1008(2001/10/8) | 4in1 v4.38 |
メモリ | Direct RDRAM | DDR SDRAM |
メモリモジュール | PC800 | PC2100(CL=2) |
容量 | 256MB | |
ビデオチップ | NVIDIA GeForce3(64MB、DDR SDRAM) | |
ビデオドライバ | NVIDIA Detonator XP(v28.32) | |
ハードディスク | IBM DTLA-307030 | |
フォーマット | NTFS | |
OS | Windows XP Professional |
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グラフ1 | グラフ2 | グラフ3 |
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グラフ4 | グラフ5 | グラフ6 |
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グラフ7 | グラフ8 | グラフ9 |
グラフ2、グラフ3はより詳細なスコアのうちJPEGのデコード(グラフ2)とテキスト検索(グラフ3)、ジオメトリ演算(グラフ4)の結果だ。グラフ2ではAthlon XP 2100+はPentium 4 2.2GHzを上まわったが、グラフ3では逆にPentium 4 1.8GHzも下まわった。このように、同じCPUテストでも得手不得手があるのがわかる。
SYSmark2002だが、Office Productivityでは、Athlon XP 2100+、2000+は、L2キャッシュが256KBのPentium 4 2GHzは上まわったが、512KBのPentium 4 2A GHzは下まわった。こうした結果から、SYSmark2002のOffice Productivityでは大容量のL2キャッシュを効率的に使っていると考えることができるだろう。Internet Contents CreationではAthlon XP 2100+はPentium 4 1.80GHzも下まわった。これは、SYSmark2001の時と同じように、Windows Media Encoder 7.1がAthlon XPのSSE互換機能を認識できないことにも原因がある。
グラフ7(3DMark2001 SE)、グラフ8(Quake III Arena)は3D環境における結果だ。グラフ8(Quake III Arena)においてPentium 4のスコアがよいのは、L2キャッシュの容量が大きいことと、システムバスとメモリの帯域幅がAthlon XPに較べて広いためだ。いわゆる一般的なDirect3Dにおけるパフォーマンスを示す3DMark2001 SEでは、Athlon XP 2100+および2000+はPentium 4 2A GHzを上まわった。
グラフ9(WebMark2001)においてはAthlon XPはあまりふるわなかった。こちらもシステムバスおよびメモリの帯域幅が影響していると考えることができ、こうしたタイプのアプリケーションにおいてはIntel 850のメリットがでていると考えることができるだろう。
すべての結果に共通していることは、ほとんどの結果でPentium 4 2.40GHzが最高性能を発揮しているということだ。Pentium 4 2.40GHzは現時点での最高性能を持つx86プロセッサといっていいだろう。
このように、Pentium 4 2.40GHzは現時点において最高性能を誇っている。だが、既に述べたように5月には同じ2.4GHzながら、システムバスが533MHzとなる2.40B GHzがリリースされる。これは待たなくても良いのだろうか?
実は待つ必要はあまりない。というのも、同時にリリースされるチップセット(Intel 850E、Intel 845E、Intel 845G)のメモリ帯域幅がシステムバスに較べると十分ではないからだ。
Intel 850EはPC800の2チャネルで3.2GB/sec、Intel 845E/GはDDR266の1チャネルで2.1GB/secとなっており、533MHzのシステムバスの帯域幅である4.2GB/secに較べて十分ではない。このため、400MHzのシステムバスである3.2GB/secでも十分なのだ(3.2GBに対して1/3の帯域幅でしかないPC133のIntel 845-SDRAM版が、性能があまり高くなかったことを思いだして欲しい)。
Intelは第4四半期にワークステーション向けにGranite Bayと呼ばれるDDR333が2チャネル(5.4GB/sec)を実現するチップセットを投入する(この他、SiS655、VIAのP4X600とサードパーティも似たような製品を予定している)が、その段階までシステムバス533MHz化のメリットはあまり大きくないのだ。つまり、Granite Bayが登場するまでは、533MHzである意味は将来の投資以外にないわけで、現時点では400MHzベースのPentium 4で特に問題はないだろう。
ところで、今後システムバス400MHzのPentium 4はどうなるのだろうか? 現在のところIntelが公開しているロードマップによれば、第3四半期には2.53GHz(533MHzベース)と2.5GHz(400MHzベース)、第4四半期には2.80GHz(400/533MHzベース)、2003年の第1四半期には3GHz以上(400/533MHzベース)となっており、暫くは並存していくことになりそうだ。そのため、当分は400MHzのプラットフォームでもCPUのアップグレードは可能なわけで、いま買い控える理由は特に見当たらないといっていいだろう。
価格は既に述べたように、1,000個ロット時で74,820円と決して安くないが、少なくとも現時点で最高性能であることは間違いない。最高性能が必要であるユーザーで、予算に余裕があるというのであればPentium 4 2.40GHzはよい選択肢となるだろう。
(2002年4月3日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]