システムバス533MHzに対応したPentium 4 2.53GHzと
Intel 850Eマザーボード



 5月6日(米国時間、日本では5月7日)に、Intelは最新CPUとなるPentium 4プロセッサの2.53GHzを発表し、同時にシステムバスのデータレートを533MHz(133MHzのクアッドパンプ)に引き上げたことを明らかにした。また、同時に533MHzのシステムバスをサポートしたプラットフォームとしてIntel 850Eチップセットを発表した。本レポートではそうした最新のIntel製品のパフォーマンスを、ベンチマークなどから検証していきたい。


●533MHzに対応しシステムバスの帯域幅は4.2GB/Secへ向上

 今回発表されたのは、システムバスのデータレートが533MHz(133MHzのクアッドパンプ)に引き上げられた新しいPentium 4プロセッサ。クロックグレードは2.53GHz(133MHz×19)、2.40GHz(133MHz×18)、2.26GHz(133MHz×17)の3つで、1,000個ロットあたりの単価は、2.53GHzが85,060円、2.40B GHzが75,050円、2.26GHzが56,480円。

 なお、呼び方だが、400MHz版が存在しない2.53GHzや2.26GHzはともかくとして、400MHz版については、当初はOEMメーカーに対して“B”をつけた2.40B GHzと呼ばれるとアナウンスされていたのだが、これは直前に変更された模様で、“Pentium 4 2.40GHz with 533MHz system bus”という、長ったらしい呼び方に変更されている。本コーナーでは特に区別する必要がある場合には2.40GHz/w533と省略して表示したい。

Intel D850EMV2

 データレートが533MHzに引き上げられたメリットは、システムバスの帯域幅が上がることだ。従来の400MHz時にはシステムバスの帯域幅は3.2GB/Secだったのだが、533MHzに引き上げられたことで、帯域幅も4.2GB/Secへと引き上げられた。これにより、大量のデータを一度に処理するようなアプリケーションにおいてパフォーマンスの向上が期待される。

 システムバスのデータレートが引き上げられた以外は、従来のNorthwoodコアのPentium 4プロセッサと変わっていない。L2キャッシュは512KB、コア電圧(Vcc)は1.5Vとなっており、特に変更はない。ステッピングは、従来のコアがBステップのコアとAステップのコアが混在していたのに対して、2.53GHzはBステップのコアのみとなっている。



●tRAC=40nsのPC800-40を必要とする新しいIntel 850Eプラットフォーム

 データレート533MHzのシステムバスに対応するチップセットが、同時に発表されたIntel 850E、そしていまだ未発表ながら既に秋葉原などでは流通が開始されているIntel 845E、Intel845Gチップセットだ。3製品の違いは、後藤氏のコラム“SpringdaleはAGP 8X/Serial ATA/Gb EthernetプラスDDR333?”( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0225/kaigai02.htm )に詳しいので、こちらを参照していただきたい。

 今回は、同時に正式発表されたIntel 850Eを搭載したマザーボードIntel D850EMV2を入手したので、これを利用してテストしていく。

 さて、Intel 850Eのスペックは以下の通りだ。

【表1】
Intel 850Intel 850E
システムバスP4バスP4バス
クロック100MHz100/133MHz
データレート400MHz400/533MHz
ピーク時帯域幅3.2GB/Sec4.2GB/Sec
メモリDirect RDRAMDirect RDRAM
クロック300/400MHz300/400MHz
データレート600/800MHz600/800MHz
最大容量2GB2GB
ピーク時帯域幅3.2GB/Sec3.2GB/Sec
tRAC45ns40ns
AGP2X/4X2X/4X
ピーク時帯域幅1GB/Sec1GB/Sec
ICHICH2ICH2
IDEUltra ATA/100Ultra ATA/100
USBv1.1、4ポートv1.1、4ポート
AC'97
Ethernet

 最も大きな違いは赤で強調した部分で、システムバスのクロックとtRAC(Row Access TimeないしはCore Access Timeと呼ばれる)が高速化され40nsへとスペックアップされている点だ。tRACはメモリセルのRowにアクセスする時間のことで、その値が小さいほどメモリの読み出しにかかる時間は短くなる。SDRAMのCASレイテンシと同じようなことを意味する数字だと考えてよい。このtRACの数字が小さければ小さいほどメモリのレイテンシは少なくなり、メモリセルにあるデータをより高速に読み始めることができるため、システム全体のパフォーマンスが向上する。

RIMMモジュールの表記。現在市場で流通しているのはPC800-45で、PC800-40はほとんど流通していないので注意が必要

 tRACの数値は、RDRAMのモジュール上に数字で書いてある。「800-45」とか「800-40」とか書いてあると思うが、800-45と書いてある場合は、PC800でtRACが45nsであることを意味し、800-40と書いてある場合にはPC800でtRACが40nsであることを意味している。Intelが公開したIntel 850Eのデータシート( http://developer.intel.com/design/chipsets/datashts/290691.htm?iid=ipp_chpst+prod_ds_82850& )によれば、Intel 850EではtRACは40nsが標準で、IntelリファレンスマザーボードといってよいD850EMV2も自動でtRACは40nsに設定されてしまう。このため、IntelのWebサイト( http://www.intel.com/technology/memory/rdram/valid/rmvalid.htm )では、Intelのリファレンスマザーボードで動作確認されたメモリモジュールが公開されているが、Intel 850Eで公開されているのは、tRACが40nsのメモリモジュールだけとなっている。つまり、Intel 850Eを使うためには、PC800-40のメモリモジュールが必須となるのだ。

 だが、現状ではPC800-40のメモリモジュールはほとんど流通していないし、既にRDRAMのモジュールを持っているユーザーにとっては買い換えるコストも気になるところだろう。今回筆者もtRAC=40のPC800-40を入手できなかったため、40nsでも十分動作するとして提供されたPC800-45で代用している。この例のように、実際のところPC800-45でも動いてしまうことはあると思うが、それは保証される環境ではないということは覚えておこう。保証される環境で利用するには、今後メモリモジュールベンダより提供されるであろうPC800-40のメモリモジュールを待ったほうがいいだろう。


●文句なくNO.1のパフォーマンスをもたらすPentium 4 2.53GHz

 今回は、Pentium 4 2.53GHz、2.40GHz/w533の2つのクロックグレードを入手したので、早速テストしていきたい。比較対象として用意したのは、Pentium 4 2.40GHz~1.3GHz(1.80A GHzと1.60A GHzはのぞく)とAthlon XP 2100+~1600+で、チップセットはシステムバス533MHzのPentium 4がIntel 850E、それ以外のPentium 4がIntel 850、Athlon XPがApollo KT266Aとなっている。メモリはIntel 850EがPC800-40(シルク上はPC800-45だが、40として動作)、Intel 850がPC800-45、KT266AがPC2100 CL=2(2-2-2)で、いずれも容量は256MBとなっている。ビデオカードはNVIDIAのGeForce3を搭載したProLinkのMVGA-NVG20A(64MB、DDR SDRAM)、ハードディスクはIBMのDTLA-307030(30GB)を利用し、基本的にはCPU、チップセット、メモリ以外は同じ環境となっている。

【テスト環境】
CPUPentium 4 with 533 system busPentium 4Athlon XP
チップセットIntel 850EIntel 850VIA Apollo KT266A
マザーボードIntel D850EMV2Intel D850MDLEPoX EP-8KHA+
チップセットドライバ3.10.1008(2001/10/8)3.10.1008(2001/10/8)4in1 v4.38
メモリDirect RDRAMDirect RDRAMDDR SDRAM
メモリモジュールPC800-40PC800-45PC2100(2-2-2)
容量256MB
ビデオチップNVIDIA GeForce3(64MB、DDR SDRAM)
ビデオドライバNVIDIA Detonator XP(v28.32)
ハードディスクIBM DTLA-307030
フォーマットNTFS
OSWindows XP Professional

 利用したベンチマークは、本コーナーで標準のベンチマークとして使っているMadOnion.comのPCMark2002に含まれるCPU Tests、BAPCoのSYSmark2002に含まれるInternet Contents CreationとOffice Productivity、MadOnion.comの3DMark2001 Second Edition、id SoftwareのQuake III Arena、BAPCoのWebMark2001の6つだ。PCMark2002のCPU Tests(グラフ1)のみは、デバイスベンチだが、それ以外の5つは実際のアプリケーション環境における差を計測するアプリケーションベンチになっており、

・コンテンツ作成:Internet Contents Creation(グラフ2)
・文書作成:Office Productivity(グラフ3)
・3D:3DMark2001 Second Edition(グラフ4)、Quake III Arena(グラフ5)
・インターネット:WebMark2001(グラフ6)

を利用する場合のパフォーマンスを計測している。なお、全結果は非常に膨大なので、別ページに掲載してあるので、興味があるユーザーは参照して欲しい。

【グラフ1】PCMark2002のCPU Tests 【グラフ2】Internet Contents Creation 【グラフ3】Office Productivity
【グラフ4】3DMark2001 Second Edition【グラフ5】QuakeIII Arena【グラフ6】WebMark2001

■ベンチマークテスト全結果
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0507/p4533.xls (Excel形式)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0507/p4533.csv (CSV形式)

 結論から言えば、(当たり前の話だが)Pentium 4 2.53GHzは、他のPentium 4やAthlon XPの最高クロックである2100+(1.73GHz)をすべてのテストにおいて大幅に上回っており、現時点で最高性能のCPUであるといっていいだろう。

 気になるのは、システムバスが400MHzと533MHzで違いがあるかどうかだが、グラフ2~6で見ると、Internet Contents CreationとOffice Productivityでは差がない。だが、3DMark2001 SE、Quake III Arena、WebMark2001では若干の差がでている。ただ、思ったよりは差がないというのが正直なところだ。この原因は、Intel 850Eのメモリ帯域幅がIntel 850と同じ3.2GB/Secにとどまっているためだろう。メモリの帯域幅が、システムバスと同じぐらいまであがれば、もっと大きなパフォーマンスアップが期待できるはずだ。

 そうした意味では、Intel 850EでPC1066(1,066MHzのDirect RDRAMモジュール)のサポートがされなかったのは非常に残念だ。ASUSTeK Computerなどのマザーボードベンダの中には、オーバークロックモードとしてPC1066をサポートするIntel 850Eマザーボードを計画しているところもある。より大きなパフォーマンスゲインを期待したいというのであれば、こうしたIntel 850Eマザーボードを待つのも1つの手だろう。


●これから買うならシステムバス533MHzのPentium 4

 以上のように、現時点ではシステムバスが533MHzとなったメリットは、プラットフォーム側の制限のため限定的なものだといえるが、将来メモリの帯域が4.2GBを超えるようなチップセットがリリースされた場合、恩恵を受けることができるのは間違いなく、現時点でも若干のメリットはあるといえる。このため、まだPentium 4のシステムを持っておらず、これから購入しようというのであれば、533MHzのシステムバスをサポートしたPentium 4を買うのがお薦めといえるだろう。

 既にPentium 4を持っているユーザーにとっては、今回はまだ533MHzのシステムバスへ乗り換えるメリットはあまり大きくない。Intel 850ユーザーがIntel 850Eに乗り換える場合には、tRACが40nsのDirect RDRAMを購入する必要があるにも関わらず、パフォーマンスゲインは小さいと思う。今後登場するIntel 845E、Intel 845Gなどを待つという手もあるが、それもメモリの帯域幅に関しては現行のIntel845 DDR版と同じ2.1GB/Secで、Intel 850よりも狭く既にIntel 850やIntel 845 DDR版を持っているユーザーにはあまり魅力的な選択肢とはいえないと思う(もちろんUSB 2.0が欲しいというなら別の議論だが)。そういう意味では、今後もしばらくは現在の所有しているマザーボードで、システムバス400MHzのPentium 4を使い、Granite Bayなどより魅力的なチップセットがでてきた段階で乗り換えるというのが現実的なストーリーといえるだろう。

 さて、こうして見ると、AMDのAthlon XPは2100+で止まったままであるのは、性能面で大きく引き離されてしまった感が強い。Intelが0.13μmの製品を半年前に導入したのに対して、AMDの2100+は未だ0.18μmプロセスにとどまっており、これが引き離されている1つの原因といえるだろう。既にAMDは0.13μmのOEMメーカーへの出荷を既に始めており、そちらでの挽回を期待したいところだ。

□関連記事
【5月7日】Intel、システムバス533MHzのPentium 4を正式発表
~2.53/2.40/2.26GHzの3機種登場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0507/intel1.htm
【5月4日】i845E/Gチップセット搭載Socket 478マザーのフライング販売(AKIBA)
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20020504/i845egmb.html

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(2002年5月7日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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