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NVIDIA GeForce MX 440を試す
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先週のもっともホットなトピックと言えば、なんといってもNVIDIAがリリースした最新グラフィックスチップのGeForce 4ファミリーだろう。ハイエンドデスクトップ向けのGeForce4 Tiシリーズ、メインストリームデスクトップ向けのGeForce4 MXシリーズ、モバイル向けのGeForce4 GOシリーズがラインナップされている。
発表されてすぐに、GeForce4 MXシリーズ3種のうち、真ん中のグレードとなるGeForce4 MX 440を搭載したビデオカードが一斉にPCショップの店頭に並びだした。本記事ではそのGeForce4 MX 440を取りあげ、パフォーマンスにせまっていきたい。
●ビデオメモリの帯域幅が倍になったGeForce4 MX
GeForce4 MXシリーズは、460、440、420という3製品がラインナップされている。各製品のスペックは以下の通りだ。
グラフィックスコア | ビデオメモリ | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
コアアーキテクチャ | パイプライン/パイプラインあたりのテクスチャユニット | コアクロック | フィルレート | メモリクロック | メモリ | メモリバス幅 | メモリ帯域幅 | 最大メモリ容量 | |
GeForce4 MX 460 | NV17 | 2P/2T | 300MHz | 1.2Bテクセル/sec | 275MHz | DDR SDRAM | 128bit | 8.8GB/sec | 128MB |
GeForce4 MX 440 | NV17 | 2P/2T | 270MHz | 1.1Bテクセル/sec | 200MHz | DDR SDRAM | 128bit | 6.4GB/sec | 64MB |
GeForce4 MX 420 | NV17 | 2P/2T | 250MHz | 1Bテクセル/sec | 166MHz | SDRAM | 64bit | 2.7GB/sec | 64MB |
上位2モデル(460、440)の違いは、コア/メモリクロックのみで、下位モデルとなる420はビデオメモリのバス幅が64bitに制限されているという違いがある。
さて、GeForce4 MXシリーズの前モデルと言えるGeForce2 MXとの違いは、以下のようになっている。
コア | NV11 | NV17 |
---|---|---|
ブランドネーム | GeForce2 MX/GO | GeForce4 MX/GO |
ハードウェアT&Lエンジン | ○ | ○ |
レンリングパイプライン | 2P/2T | 2P/2T |
Lightspeed Memory Architecture II | - | ○ |
Accuview Antialiasing | - | ○ |
マルチディスプレイ | TwinView | nView |
DDR SDRAM時のメモリバス幅 | 64bit | 128bit |
最大メモリ | 64MB | 64MB |
トランジスタ数 | - | 2700万 |
製造プロセスルール | 0.18μm | 0.15μm |
パイプライン、テクスチャユニット数は2パイプライン+2テクスチャユニットとなっていて、GeForce4 MXとGeForce2 MXで大きな違いはない。GeForce4 MXがGeForce2 MXに対して強化されているのは、表の中のオレンジと赤の部分だ。
Lightspeed Memory Architecture II、Accuview Antialiasing、nView(マルチディスプレイ)は、GeForce4 Tiシリーズにも採用されている新機能だ。Lightspeed Memory Architecture IIは、ビデオメモリの帯域幅をより効率よく使うための機能で、GeForce3に採用されていたLightspeed Memory Architectureを改良したものだ。たとえば、3Dでは影になっていて実際には表示されない部分も計算したりするが、こうした技術を利用することでそうした必要のない部分を計算しないようにして、ムダなメモリ帯域幅の消費をおさえる。このような技術は、最近のグラフィックスチップの流行になっており、ATIもRADEONでHyper Zという同様の技術を導入している。
このような技術を導入する背景には、ビデオメモリの帯域がグラフィックスチップの性能を決めるといっても過言ではない状況がある。グラフィックスチップは、テクスチャなどのデータをビデオメモリに展開し、処理を行なう。解像度が上がれば上がるほど、あるいは後述するFSAAなどでサンプリング数が増えれば増えるほど、処理するデータ量は増える。3Dではすべてをリアルタイムに処理する必要があるため、データをメモリからグラフィックスチップへ送る速度が、グラフィックスチップがそれらを処理する速度よりも遅ければ、そこがボトルネックになってしまい、グラフィックスサブシステム全体の性能低下につながる。
こうした事態をさけるためには、一度に沢山のデータを送れるようにする、つまりビデオメモリの帯域幅を上げればよい。ビデオメモリの帯域幅を上げるには、メモリバスのバス幅を広げるか、メモリのクロックを上げればよい。GeForce2 MXでは、DDR SDRAMを利用した場合、メモリバスは64bitに制限されていた。このため、GeForce2 MXの最上位モデルであるGeForce2 MX 400は、メモリクロック166MHzで2.7GB/secの帯域幅と、他のグラフィックスチップにくらべれば充分ではない。この部分がボトルネックとなって、処理するデータ量が非常に多い高解像度やFSAAを有効にした状態で大きな性能低下を招いていた。
そこで、GeForce4 MXでは、DDR SDRAM利用時にもメモリバス幅を128bit対応とし、メモリクロックをMX 460で300MHz(DDRで600MHz)、MX 440で200MHz(DDR 400MHz)とすることで、それぞれ帯域幅は8.8GB/sec、6.4GB/secを実現しており、大きな性能向上につながっている。
●FSAAを有効にすることで描画クオリティを大幅に向上させる
ビデオメモリのバス幅の128bit化、Lightspeed Memory Architecture IIなどによりビデオメモリのボトルネックをこれまでよりも小さくしているメリットは、主に描画性能の向上というメリットの他に、表示品質の向上というメリットをもたらす。その鍵となるのが、FSAA(Full Scene Anti Aliasing)だ。
FSAAは3D画面を表示する時に生じるジャギーにエフェクトをかけ、自然にみえるように処理を行なうことで、3Dの表示品質を上げるための代表的な手法だ。これまでのビデオチップにも、FSAAの機能は搭載されていた。たとえばGeForce2 MX 400もFSAAの機能をもっており、実際有効にすることも可能だった。しかし、現実にはほとんど利用しているユーザーは少なかったというのが、これまでの現状だろう。その理由は、既に述べたようにビデオメモリの帯域幅が充分でなかったため、有効にするとデータ量があまりに増え処理が追い付かなくなり、ゲームに必要な描画性能が出せなくなってしまうからだ。しかし、GeForce4 MXになり、ビデオメモリの帯域幅が充分になったことで、それらの問題は解決され、FSAAを有効にしても充分実用レベルになってきたのだ。
GeForce2 MXでは2x(2つのサンプルを利用してアンチエイリアシングを行なう)、4x(4つのサンプルを利用してアンチエイリアシングを行なう)という2つのモードだけが用意されていたが、GeForce4 MXに搭載されているAccuview AntialiasingではQuincunx(2xモードの拡張版)、4XS(4xの拡張版)というモードがあらたに追加されている。
●GeForce2 MX 400の倍、RADEON7500を上まわるパフォーマンスを示す
今回はGeForce4 MX 440の性能を確認するために、GeForce2 MX 400、RADEON7500というメインストリーム向けグラフィックスチップ搭載ビデオカード、さらにはGeForce3 Ti 500、RADEON8500というハイエンド向けグラフィックスチップ搭載ビデオカードという4つのビデオカードを用意し、FSAAなし、2x FSAA、4x FSAAというFSAAの設定でベンチマークを行なってみた。利用したのはMadOnion.comの3DMark2001 Second Edition、id SoftwareのQuake III Arenaという2つだ。なお、FSAAの設定は各ビデオチップ用ドライバの設定画面で行ない、ドライバは現時点での最新版を利用した。また、解像度は基本的に1,024×768ドット/32bitカラーでテストしている。
グラフィックスコア | ビデオメモリ | |||||||
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ドライバ | コアアーキテクチャ | コアクロック | メモリクロック | メモリ | メモリバス幅 | メモリ帯域幅 | メモリ容量 | |
GeForce4 MX 440 | NVIDIA 27.20(製品添付) | NV17 | 270MHz | 400MHz | DDR SDRAM | 128bit | 6.4GB/sec | 64MB |
GeForce3 Ti 500 | Detonator XP 23.11 | NV20 | 240MHz | 500MHz | DDR SDRAM | 128bit | 8.0GB/sec | 64MB |
GeForce2 MX400 | Detonator XP 23.11 | NV11 | 200MHz | 166MHz | SDRAM | 128bit | 2.7GB/sec | 64MB |
RADEON8500 | ATI リファレンス 6.13.10.6025 | R200 | 275MHz | 275MHz | DDR SDRAM | 128bit | 8.8GB/sec | 64MB |
RADEON7500 | ATI リファレンス 6.13.10.6025 | RV200 | 290MHz | 230MHz | DDR SDRAM/SDRAM | 128bit | 7.4GB/sec | 64MB |
CPU | Pentium 4/1.7GHz |
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マザーボード | Intel D850MD |
チップセット | Intel 850 |
メモリ(容量) | Direct RDRAM(256MB) |
HDD | IBM DTLA-307030 |
OS | Windows XP Professional |
グラフ1 | グラフ2 | グラフ3 |
グラフ4 | グラフ5 | グラフ6 |
グラフ7 | グラフ8 |
ただ、2x FSAAの設定にした場合、明らかにスコアがFSAAなしにくらべて下がっている(つまり負荷はかかっている)のだが、出力された画面を見る限りFSAAの処理がされていなかった。以下の画面は3DMark2001が出力したキャプチャ画面のアップだが、4x FSAAの画面が明らかにアンチエイリアシング処理がされているのに対して、2x FSAAはFSAAなしの画面と同様にジャギーが残っていた。これがドライバのバグなのか、あるいは今回利用した製品の問題なのか原因は不明だが、このあたりはもう少し調べてみる必要があるだろう。
FSAAなしの画面 | 2x FSAAを有効にした画面だが、外灯の部分がFSAAなしとおなじくアンチエイリアシング処理がされていない | 4x FSAAを有効にした画面。アンチエイリアシング処理が行なわれていることがわかる |
●GeForce2 MXから大幅なパフォーマンスアップでコストパフォーマンスに優れる
以上のように、2x FSAA時にアンチエリアシングが効かないという謎は残るが、4x FSAA時でも充分な描画性能を実現し、さらに従来のGeForce2 MX 400とくらべて倍の描画性能を実現する高性能さは充分注目に値する。
価格を考えても、GeForce4 MX 440を搭載したビデオカードは1万円台の後半という価格設定で、RADEON7500とほぼおなじ価格帯であり、それでいて性能で上まわるのだからコストパフォーマンスに優れていると言える。また、GeForce2 MX 400を搭載したカードが、現在64MBメモリ搭載で1万円を切るぐらいであり、価格的には1/2にはなっていないことを考えると、GeForce2 MX 400搭載ビデオカードとくらべてもコストパフォーマンスに優れているということができるだろう。
絶対性能という意味では、GeForce3 Ti(そして今後登場するであろうGeForce4 Ti)やRADEON8500には劣っているが、3Dゲームはたまにやる程度というユーザーであれば充分すぎる性能を持っており、一般的なユーザーがビデオカードを買いかえる時に検討してみたい製品と言っていいだろう。
□「GeForce4」関連記事リンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/link/geforce4.htm
(2002年2月15日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]