KT266Aを超えられるか!?
~VIA Apollo KT333を試す



 2月20日、VIA Technologiesは、DDR333/333MHzのDDR SDRAMをサポートしたAthlon XP/Duron向けチップセット「Apollo KT333」をリリースした。

 VIAのApollo KT266Aを搭載したマザーボードは人気が高かったこともあり、その後継となるApollo KT333には大きな注目が集まっている。本記事ではそうしたApollo KT333の魅力や性能について考えていきたい。



●基本的にはKT266Aのアップグレード版となるKT333

 今回発表されたApollo KT333(以下KT333)は、従来モデルのApollo KT266A(以下KT266A)をリファインした改良版と言える。その最も大きな違いは、KT266Aのメモリバスが266MHzまでしかサポートしていないのに対して、KT333は333MHzに設定することができることだ。これにより、メモリのピーク時帯域幅がKT266Aの2.1GB/secに対して、KT333では2.7GB/secに達し、メモリの帯域幅が問題になるようなアプリケーションでは若干のメリットがある。

 ただ、システムバスの仕様に関しては、従来通り266MHz(Athlon XP)、200MHz(Athlon XP/Duron)となっており、266MHz時であっても最大で2.1GB/secとなっている。このため、メモリバスの方の帯域幅があがっても、システムバス側の帯域があがっていないので、実際のアプリケーションでのメリットはあまり大きくない(この点に関してはのちほどベンチマークの部分で解説していく)。なお、AGPの仕様もKT266Aと同じで、AGP Specification 2.0に対応し、最大で4Xにまで対応可能となっている。

 ノース・サウスを接続するバスも、KT266Aと同じV-Link 4xとなっており、8bit幅/266MHzで動作しているため、266MB/secのピーク時帯域幅を実現している。このため、サウスブリッジに関してもVT8233、VT8233C(3ComのMACを内蔵)、VT8233A(Ultra ATA/133対応)という3つのチップが利用できる。先月、台北で行なわれたDDR333 Summitで各マザーボードベンダが公開したKT333搭載マザーボードはVT8233Aを搭載した製品がほとんどで、事実上KT333はVT8233Aとの組合せで利用されると考えていいだろう。


●メモリバスの帯域幅は上がったが、システムバスがボトルネックに

 今回はKT333のパフォーマンスを確認するために、いくつかのベンチマークを行なうことにした。実行したのはSYSmark2001、3DMark2001、Quake III Arena、Video2000、Stream for DOSの5つだ。今回利用したのはVIA Technologiesのリファレンスマザーボードで、比較として用意したのは、KT266A、AMD-760、SiS735、ALi MAGiK1、nForceの各チップセットを搭載したマザーボードだ。テスト環境は表1の通りで、チップセット以外はまったく同じ環境でテストを行っており、解像度は特に注意がないかぎり1,024×768ドット/32bitカラーで行なっている。なお、全ベンチマーク結果は膨大な量となっているので別ページに掲載しておいたので参考にしていただきたい。

【テスト環境】
CPUAthlon XPAthlon XPAthlon XPAthlon XPAthlon XPAthlon XP
チップセットnForceSiS735ALi MAGiK1AMD-760KT266AKT333
マザーボードMSI K7N420 ProECS K7S5AASUS A7A266-EGIGA-BYTE GA-7DXREPoX EP-8KHA+VIAリファレンス
チップセットドライバNVIDIAバージョン2.03SiS AGPドライバ 1.07Integrated Driver V1.06XP標準4in1 V4.374in1 V4.37
メモリDDR266(PC2100,CL=2.5)DDR333(PC2700,CL=2.5)
容量256MB
ビデオチップNVIDIA GeForce3(64MB、DDR SDRAM)
ビデオドライバNVIDIA Detonator XP(v23.11)
ハードディスクIBM DTLA-307030
フォーマットNTFS
OSWindows XP Home Edition

■ベンチマークテスト全結果
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0308/bench.htm

グラフ1 グラフ2 グラフ3

グラフ4 グラフ5 グラフ6

 グラフ1はメモリの帯域幅を計測するテストのStream for DOS(StreamD)の結果だ。CPUからメモリに対してデータの転送を行ない、その転送にかかった時間を計ることで、システムバス+メモリバスの帯域幅を計測するベンチマークだ。結果は、DDR333を利用したKT333が、他のDDR266を搭載したマザーボードを上まわった。2チャネルのDDR266をサポートしているnForceをも上まわっており、KT333のメモリコントローラが優秀であることを示している。ただ、あくまでこの結果はシステムバス+メモリバスの帯域幅を計測しただけのことであり、実アプリケーションで意味があるかどうかは別次元の話だ。

 そこで、実アプリケーションにおけるベンチマークを見ていこう。グラフ2、グラフ3はBAPCOのSYSmark2001を利用したテスト結果だ(余談だが、BAPCOは既にSYSmark2002( http://www.madonion.com/products/sysmark2002/ )をリリースしている。来月あたりからは本コーナーでも新バージョンに切りかえていきたい)。

 グラフ2はOffice Productivityテストの結果だ。Office Productivityでは、MS-OfficeやNetscape Communicatorなどの実在のビジネスアプリケーションを自動実行して実行時間を計測することにより総合性能を計測するベンチマークだ。見てわかるように、KT333はnForceなど他のチップセットは上まわったものの、KT266Aには劣っている。これは、ビジネスアプリケーションでは、帯域はあまり重要ではないためだろう。だが、帯域幅が性能にあたえる影響が大きいコンテンツ作成系のアプリケーションを実行して速度を計測するInternet Contents Creationでは、KT333がKT266Aを若干上まわった。だが、差はほんの僅かだ。

 3Dでの結果はグラフ4(3DMark2001)、グラフ5(Quake III Arena)で、メモリの帯域幅の差が出やすいVGA(640×480ドット)/32bitカラーの結果を取りあげたい。結論から言えば、KT333はどちらでもKT266Aや他のチップセットを上まわった。また、MPEG-2エンコーダテストを行なうVideo2000/MPEG2エンコーダテストでも、KT333が他のチップセットを若干上まわった。


●KT266Aの代替えとしては充分なスペックを持つが乗りかえるほどではない

 以上のような結果から、KT333はビジネスアプリケーションに関してはKT266Aに劣るが、コンテンツ作成系や3Dアプリケーションなどでは若干の性能向上があることがわかる。ただ、すべての結果に言えることだが、パフォーマンスのプレミアムは僅かであるのは事実だ。このため、既にKT266AとDDR266のメモリモジュール(PC2100)を所有しているユーザーが高価なDDR333メモリモジュール(PC2700)とマザーボードに買いかえるメリットはあまりないと言えるだろう。こうした性能向上があまり大きくない理由は、やはりシステムバスが変わっていないためだろう。そうした意味では、AMDが早期にシステムバス333MHzのAthlon XPを出荷してくれることを期待したい。

 これからAthlon XPやDuronとマザーボードを購入しようと考えているユーザーには、KT333はよい選択肢となるだろう。KT333はベンチ結果からわかるように、K7用チップセットの中では最高性能となっている。今後各ベンダよりKT333を搭載したマザーボードが多数登場することが予定されており、そうした選択肢の豊富さもあいまって、これからK7マザーボードを購入するユーザーには最もよい選択肢となるだろう。

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(2002年3月8日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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