特別企画:子供とPC

子供のプログラミング教育、具体的にはどうするべき? 自主学習のためのWebサイトから無償の教室まで

以前の記事でも取り上げたように、子供のプログラミング教育が話題となっている。文部科学省が昨年4月に小学校でのプログラミング教育の必修化の検討を発表したことでも注目が一気に集まり、現在では子供を対象としたプログラミング学習教材や関連書籍が多数登場しているほか、子供向けのプログラミング教室も急増している。

子供にプログラミングを教えることの利点については、以前の記事で詳しく解説したが、今回は実践編として、実際に子供にプログラミングを学んでもらうにあたり、自分で教える時間や自信はないという親のために、どんな方法があるのかを紹介していきたい。

保護者の間で注目が集まるプログラミング教育。では、実際にはどのように取り組めばよいのだろうか

子供が独学で学べる!お勧めプログラミング学習サイト

プログラミングを学ぶ方法にはいろんな方法がある。40代後半の筆者の世代では、プログラミングを学ぶ方法として真っ先に思い浮かぶのは書籍である。もちろん、子供向けに書かれたプログラミング参考書も多数出版されているので、ある程度慣れている子供なら、書籍を見ながら自分で実際にプログラムを作成していくことで、より深くプログラミングを学べるだろうが、プログラミング経験が全くない子供が書籍だけを頼りに学ぶのはなかなか難しい。

そこでお勧めしたいのが、子供向けのプログラミング学習サイトだ。多数用意された課題をひとつずつクリアしていくことで、一歩一歩ステップを踏んでプログラミングを学習することができる。ゲームやパズル感覚で気軽にプログラミングを学習できるものが多く、子供の興味をひきやすいことも利点だ。

子供向けのプログラミング学習サイトは、主に入門者・初級者をターゲットとしているので、それだけでプログラミングの上級者になるのは難しいが、プログラミング学習の第一歩としてはお勧めだ。

子供向けプログラミング学習サイトもさまざまなものがあるが、ここではその中から、「Code Studio」「CodeMonkey」の2つを紹介する。

マインクラフトやSTAR WARSの世界でプログラミングを学べるCode Studio

「Code Studio」は、非営利団体のCode.orgが運営している無料のプログラミング学習サイトであり、子供向けから大人向けまで数多くのコンテンツが用意されている。その中でも、初めてプログラミングに取り組む子供にぴったりなのが「Hour of Code」。「マインクラフト」や「STAR WARS」、「アナと雪の女王」、「モアナと伝説の海」などのコンテンツを題材にプログラミングを学習できることが特徴だ。

プログラミング学習サイト「Code Studio」のコンテンツの一つ「Hour of Code」では、マインクラフトやスター・ウォーズといったお馴染みの世界で、プログラミングを学習できる

ここでは例として、「マインクラフト」をフィーチャーした「Minecraftデザイナー」を紹介しよう。マインクラフトでお馴染みのニワトリやゾンビ、羊、クリーパーといったキャラクターが登場するだけでなく、BGMとして流れる音楽や効果音もマインクラフトのものが使われているので、マインクラフト好きな子供なら、喜んで課題に取り組んでくれるだろう。

Hour of Codeでは、いくつかのパズル(課題)をクリアしていくことで、段階的にプログラミングを学習できるようになっている。画面は大きく2つに分かれており、左側がゲームスペース、右側がワークスペースと呼ばれる。パズルの目的はワークスペースの上部に表示されており、中央にはそれぞれのパズルを解くのに必要な命令ブロックが並んでいる。命令ブロックを、マウス操作で右側のワークスペースに並べていくだけでプログラミングを行えるようになっている。

命令ブロックはそれぞれのパズルを解くのに必要なもののみが並んでいるので、初心者でも迷わずにパズルを解いていくことができる。パズルがクリアできなかった場合は、ヒントがもらえるので、自分のペースにあわせて、独学でプログラミングを学べる。また、最後のパズルは特に目的は与えられておらず、全ての命令ブロックを使って、自由にマインクラフトの世界をデザインできる。

Minecraftデザイナーの場合、全部で12種類のパズルが用意されているが、すべてのパズルをクリアした後、自分の名前を入力すると、名前入りの修了証が画面に表示される。プリントアウトして子供に渡せば、励みになるだろう。

最後のパズルでは、自由にマインクラフトの世界をプログラミングできる

全てのパズルをクリアすると、名前入りの修了証が表示される

本格的なスクリプト言語を学習できる「CodeMonkey」

ビジュアルでのプログラミングが一通り使えるようになり、次はJavaScriptなどのスクリプト言語に挑戦したい、というお子さんにお勧めしたいのが、「CodeMonkey」である。

CodeMonkeyは、イスラエルのCodeMonkey Studiosが開発したプログラミング学習ゲームだ。世界中で利用されており、ユーザー数は130万人を超えている。日本では、ジャパン・トゥエンティワンが総代理店となり、販売を行っている。

CoffeeScriptと呼ばれるスクリプト言語を利用していることが最大の特徴。CoffeeScriptはJavaScriptに似たスクリプト言語であり、JavaScriptへの変換も可能だが、構文がよりシンプルで分かりやすいため、スクリプト言語の学習用として最適だ。

CodeMonkeyはWebブラウザ上で動作するため、インストール作業は不要だ。製品版は有料のライセンス制(1年間6,480円、2年目以降は4,320円)となっているが、最初の30ステージ分を遊べる無料体験版が用意されているので、まずはその体験版を試してみることをお勧めする。

CodeMonkeyでは、CoffeeScriptと呼ばれるスクリプト言語で、本格的にプログラミングを学ぶことができる

CodeMonkeyの画面は2つに分かれており、左側が実行エリア、右側がコードエリアと呼ばれる。ゲームの目的は単純で、サルのモンタを操って画面内のバナナをすべて食べさせてあげればクリアになる。モンタを前に進めるには「Step」という命令を使い、Stepの後ろに数字を書くことで、その数だけモンタが進む。「Turn」という命令を使えば、モンタの向きを変えることができる。ステージが進めば、モンタを助けてくれる仲間のカメや敵のキャラクターも登場し、繰り返し命令や条件分岐などのより高度な命令を利用できるようになる。

バナナをすべて食べさせればクリアだが、★を3つもらうには、最少行数でプログラムを書く必要がある

命令はキーボードから入力するが、コードエリアの下に並んでいるアイコンをクリックすることでも入力できるので、タイピングがあまり得意ではない子供でも気軽に遊べる。製品版では合計400ものステージが用意されているので、ボリューム感はかなりある。失敗したらヒントをもらえるので、小学校高学年以上なら十分独学でプログラミングを学ぶことができるだろう。

一緒に学ぶ仲間を探したいならプログラミング教室がお勧め

プログラミングは独学に向いており、ある程度できるようになったら、あとは自分で文献やネットなどを見て、さらに腕を磨いていけばよい。

しかし、子供達の学習には、仲間とのコミュニケーションも重要である。一緒にプログラミングを学ぶ仲間を探したいとか、学習サイトで基本は覚えたが、より高度なプログラミングを達人から学びたいというのなら、子供向けのプログラミング教室に通わせることを検討してみてはいかがだろうか。プログラミング教育の盛り上がりとともに、子供向けの教室も急増しているが、教室によって指導方針や指導内容はかなり違う。無料体験教室などを実施しているところも多いので、実際に子供を体験教室に通わせてみて、子供の反応を見てから決めることをお勧めする。

子供向けのプログラミング教室は、無料の教室と有料の教室に大別できる。今回は、筆者と筆者の娘が実際に参加、あるいは見学したことがある3つの教室を紹介していこう。

CoderDojo

無料のプログラミング教室の代表が、「CoderDojo(コーダー道場)」という非営利のプログラミング道場だ。

CoderDojoは、2011年にアイルランドの青年達によって誕生したムーブメントだが、その後世界中に広がり、今では世界70カ国で1200もの道場が運営されている。日本でも2017年1月時点で、全国に70以上の道場があり、その数は年々増えている。いわゆるプログラミング教室とは異なり、明確なカリキュラムがあるわけではなく、子供達が自分たちでやりたいことに取り組み、分からないことや困ったことがあったら、Mentor(メンター)と呼ばれる指導者に訊いて、一緒に考えていくというのが、CoderDojoのコンセプトだ。そのため、子供達には教えられるのを待つのではなく、主体的に学ぶ姿勢が求められる。

道場によって、対象年齢や学べる内容は異なるが、おおよそ7~17歳の子供が対象で、Scratchを採用している道場が多い。その他、HTMLやJavaScriptなどを活用したWebサイトの作成やArduinoやChibi:bitなどを使った電子工作とプログラミングの組み合わせを学べる道場もある。もちろん、初めてプログラミングに挑戦する子供にはScratchの基礎から教えてくれるので、全くの初心者でも大丈夫だ。また、児童館や科学館などでも、無料で学べるプログラミング教室を実施しているところがあるので、Webサイトなどをこまめにチェックしておくとよいだろう。

CoderDojo守谷の様子。PCは貸し出し用のもあるが、半数くらいのNinjaが自分のPCを持ち込んでいる

道場によって進め方は違うが、最後に自分で作成したゲームなどのプレゼンテーションを行わせるところが多い

TENTO

しっかりしたカリキュラムに基づいた、体系的なプログラミング学習を受けさせたいというのなら、やはり有料のプログラミング教室がお勧めだ。

例えば、2011年から子供向けプログラミング教室を運営している草分け的な存在である「TENTO」は、講師のほとんどが業務経験を持つプログラマー。プロから指導が受けられることにこだわっており、子供達の高度な質問にも対応できることが魅力だ。なお、TENTOは有料のプログラミング教室だが、子供達が自分でやりたいことを選んで学ぶという寺子屋方式を採用しており、学習の進め方はCoderDojoに近い。プログラミング仲間を作るための「場」を提供するというコンセプトもTENTOの特徴だ。TENTOでは、随時無料体験講座を実施しているので、ご興味を持った方は問い合わせてみてはいかがだろうか。

TENTOさいたまの講座の様子。開放的で明るい雰囲気である

子供達の希望に応じていくつかのグループに分かれ、学習を行っている。このテーブルはScratchを学ぶグループだ

秋葉原プログラミング教室

UEIが運営している「秋葉原プログラミング教室」も、ユニークなプログラミング教室である。ここでは9分間メソッドと名付けられた独自の学習方式を採用している。これは、1枚9分以内に解ける10~20枚程度のプリント教材を使い、1つのテーマ(シューティングゲームを作るなど)を学んでいくという方式だ。プリント教材で基礎を学んだあと、PCを使ったプログラミング実習という流れで進むので、基本をしっかり押さえることができ、プログラミングの楽しさと論理的思考が無理なく学べる。CoderDojoと同じく、秋葉原プログラミング教室でもPC持参が推奨されているので、子供をプログラミング教室に通わせたいと考えているのなら、子供が自由に使えるノートPCや2in1 PCなどを用意することが望ましい。


このほかにも、無料、有料を問わず、さまざまなプログラミング教室があり、それぞれ特徴がある。興味をお持ちの方は一度、近くにどんなプログラミング教室があるのか、調べてみることをお勧めしたい。

WDLC(Windows Digital Lifestyle Consortium)では、お子様へのパソコン訴求を強化するための長期的活動を行っています。詳しくは「My First PC」をご覧ください。