レビュー
「ThinkPad Stack」を野外フェスに持ち込んでみた
~複数人での旅行・出張のお供に最適なデバイス
(2015/8/10 06:00)
レノボ・ジャパンの「ThinkPad Stack」は、Bluetoothスピーカー、モバイルバッテリ、ワイヤレスルーター、ポータブルHDDで構成された重箱タイプのアクセサリで、それぞれ単体でも機能するが、縦に積み重ねて設置・利用もできるちょっと変わった周辺機器だ。
「ThinkPad」という製品名が示すように、ビジネスマンがThinkPadシリーズと一緒に会社や出張先などに持ち運んで使うことが想像される。実際、Bluetoothスピーカーは別として、ポータブルHDDやワイヤレスルーターはビジネスマンが持っておくと重宝するだろう。
だが、本製品は、ThinkPad以外の製品とも組み合わせて使えるし、ビジネス以外、例えば複数人での旅行のお供として使うのにも非常に便利に使えそうなことが分かった。
今回、ThinkPad Stackを評価用に借用したのだが、個人的に野外音楽フェスティバルに友人と行く機会があったので、そこに持ち込んで使ってみることにした。
各モジュールの機能
前述の通り、ThinkPad Stackには、Bluetoothスピーカー、モバイルバッテリ、ワイヤレスルーター、ポータブルHDDの4種類のモジュールが用意されており、いずれも単体でも動作するし、最大で5つまでを縦に重ねて使うことができる。各モジュールにはマグネットが内蔵されており、それぞれを近づけると、ぴたっとくっつく。また、全て縦横の寸法は136×76.8mmで統一されているので、きれいに重なる。
単体利用の場合、モバイルバッテリは当然充電時以外、電源はいらない。Bluetoothスピーカーも1,500mAhのバッテリを内蔵しており、単体で約8時間の連続再生が可能だ。ポータブルHDDは、基本的にホスト端末に繋いで使うことになるが、その際ホストのUSBが電力を供給する。ワイヤレスルーターは、PCと組み合わせて使う際は、ポータブルHDD同様、PCのUSBから給電できる。スマートフォンやタブレットと組み合わせる際は、別途USB ACアダプタが必要になる。
ここで面白いのが、これらをスタックさせた際の電源供給の柔軟さだ。それぞれのモジュールの上面、底面には接点があり、他のモジュールに電流を流せるようになっているのだ。これにより、モバイルバッテリモジュールがある場合は、ほかのモジュールはその上下にくっつけるだけで電力を得られる。一方、ポータブルHDDとワイヤレスルーターというバッテリを内蔵しないモジュール同士の組み合わせの場合、ポータブルHDDをPCに繋げば、USBからポータブルHDDの接点を経由してワイヤレスルーターにも給電できるようになっている。
機能については、いずれのモジュールも名前が示す通りの単機能製品だ。Bluetoothスピーカーは、出力2W+2Wで、音声入力端子があり、有線スピーカーとしても機能する。マイクも内蔵しており、電話/ビデオ会議のスピーカー兼マイクとしても利用できる。このあたりはThinkブランド製品らしい。
モバイルバッテリは、容量10,000mAhで、2つのUSBポートから合計2Aまで出力可能。スマートフォンなら3~4回充電できる。
ポータブルHDDは1TBで、インターフェイスはUSB 3.0となる。初期フォーマットはNTFS。
ワイヤレスルーターも、基本的にはただのIEEE 802.11a/b/g/n/ac対応無線LANルーターだ。ホテルなどの有線LANに繋いで、アクセスポイントとして使う。多くの場合、設定を変更しなくとも、そのまま使えるだろう。設定変更が必要な場合は、専用のThinkPad Stack Assistantアプリから細かな設定変更ができる。アプリはiOS/Android/Windows版が用意されている。
野外に持ち出したり、ホテルで使ってみた
さて、ここからは実際に野外フェスで使ってみた感想を述べる。
モバイルバッテリは、野外の会場にも持ち込んだ。やはり、こういったイベントでは写真の撮影枚数も、SNSにアップする回数も増える。それに併せてスマートフォンのバッテリはどんどん減っていく。本製品のモバイルバッテリモジュールは、充電速度も速く、容量も大きいので、バッテリ切れを気にせず写真や動画を撮影できた。こういうイベントに限らず、普段使いで持ち歩きたいアイテムだ。他のモジュールの電源にもなるのは、前述の通り。ただし、ThinkPadの名前は付いているが、ThinkPadのノートPCの充電はできない。
スピーカーは、率直なところ音質についてはあまり期待しない方が良い。これを使ってゆっくり音楽を楽しむというのには向いていない。とは言え、スマートフォンやタブレットの内蔵スピーカーよりは音質もよく、何より音量が大きい。宿に帰ってきてから、フェスの間に撮影した友達の動画や、アーティストのライブを思い返しながら、みんなでYouTubeを観るといった用途において十分活躍してくれた。参考までに、AV Watchのスタッフに音質について意見を求めたところ、良いとは言えないが、高域も低域も同じように削れているので、長時間聞いても不快にはならないとのことだった。
ポータブルHDDについては、これ単体を野外フェスのようなイベントで使うことは少ないかもしれない。ただし、ワイヤレスルーターを組み合わせると一気に便利になる。と言うのも、ポータブルHDDとワイヤレスルーターをスタックすると、簡易NASとして使えるようになるのだ。
この簡易NASにアクセスする際も、専用のアプリを使う。このアプリでは、ルーターとスタックしている他のモジュールの状況、例えば繋がっているか、充電しているかどうかなどを確認でき、スピーカーの音量調節もできる。つまり、各モジュールの接点は電気だけでなく、なにがしかのデータ信号も送っているということだ。思ったより作り込まれている。
さて、大量に撮影した写真や動画をその場で友人にも渡したい場合、メールに添付したり、SNSに全部アップロードするのもやや非現実的だし、デジカメのSDカードを渡してコピーしてもらおうと思っても、相手がPCを持っていないといろいろ困難がつきまとう。
だが、このNASに保存しておけば、後は好きなものを友人たちにWi-Fi経由で自由にダウンロードしてもらうことができるようになる。友人にもThinkPad Stackのアプリをインストールしてもらう必要があるものの、前述の問題に比べれば、遙かに楽だ。
アップロード保存の方法は2種類あり、スマートフォンの全画像/動画をHDDに完全同期するか、任意のものを選んでアップロードできる。前者については、同期が終わった後に、共有したくないものをHDDから削除してから、友人と共有するという作業が必要になるし、削除する枚数の方がが多いだろうから、通常は後者を使うことになるだろう。いずれの場合も、ThinkPad StackアプリでWi-Fi経由でアップロードする。
ここで1つ紹介したい裏技(?)が、ワイヤレスルーターのUSBポートは、microSDカードリーダやUSBメモリを認識可能なのだ。持ち運ぶ機器が1つ増えてはしまうが、ワイヤレスルーターにmicroSDカードリーダを接続すると、そこに挿入したmicroSDカードのデータもThinkPad Stackアプリからアクセス可能になり、任意のものをダウンロードできるようになるので、HDDへのコピーの手間が省ける。もちろん、HDDへのコピーもできる。スマートフォンのmicroSDカードに写真を保存しているなら、この方法を使うのも手だ。
残念ながら、現時点では通常のSDカードには非対応なのだが、現在対応を進めているという。それが実装されれば、デジカメで撮影した写真についても、PCがなくともUSB SDカードリーダを使って、容易にみんなと共有できる。
ちなみに、細かい点だが、ルーターとHDDをスタックして、PCに繋いでいる場合、HDDはPCからのみアクセスでき、簡易NASとしては使えなくなる。また、スマートフォンにHDDをUSBで直結させられれば、より楽にデータ転送できると思ったのだが、標準のNTFSフォーマットでも、FAT32にフォーマットしても、スマートフォンからはストレージとして認識されなかった。
ワイヤレスルーターのUSB繋がりでもう1つ紹介したいのが、ここにはLTE USBドングルを接続することも可能となっている。利用できるのは、NTTドコモの「L-03F」1機種に限られるため、かなりニッチなものとはなるが、これによって、Wi-FiルーターをLTEルーターに変身させられる。最近は、旅行にタブレットを持って行って、スマホより大きな画面で写真を観たり、地図を確認したりということもかなり多くなってきている。タブレットにはLTEはないものが多いが、これを使えば、タブレットでも野外フェス会場などで通信できるようになる。
また、最近のデジカメは、Wi-Fiを内蔵し、各種SNSに直接写真をアップロードできるものもある。そういう機種と、このLTEルーターを組み合わせれば、屋外からもデジカメで撮影した高精細な写真をSNSに公開できる。
将来性にも期待できる多機能周辺機器
以上のように、ThinkPad Stackは、各モジュール単体で見ても、他の競合製品に劣らない十分な機能、性能を有している。そして、本製品は重ねることで、コンパクトにまとまるだけでなく、さらなる能力を発揮するようになる。
ちょっと惜しいのは、やや値段が高い点。スピーカーは11,000円、バッテリは7,500円、HDD+ルーターセットは27,000円する。一応、バラで買うより6,000円ほどお得な4点セットもあるが、36,000円という値段は、1つの周辺機器として見るとかなり高額だ。
とは言え、表面からは分かりにくい作り込まれた細部まで見てみると、ThinkPad好きのマニアなユーザーなら、これだけの価格になることは納得できるだろう。
一方、そうでないユーザーについても、例えばモバイルバッテリを買おうとしているなら、本製品のモジュールも選択肢に入れておくといいのではないだろうか。その上で、他のモジュールの機能が気になることがあれば、逐次、買い足していくといいだろう。
レノボ・ジャパンによると、将来的に別の機能のモジュールも予定しているそうなので、今後の機能拡張にも期待が持てる。