レビュー

国内発売が決まったNVIDIA純正タブレット「Tegra Note 7」を試す

Tegra Note 7
12月4日 発売

価格:オープンプライス

 米NVIDIAは2日、Tegra 4を採用した7型Androidタブレット「Tegra Note 7」の国内発売を発表した。NVIDIA自らがタブレットのリファレンスプラットフォームとして発売するもの。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は25,800円前後の見込み。12月4日の発売に先立ち、短期間ながら本製品を試用する機会を得たので、そのインプレッションをお届けする。

NVIDIAによるタブレットプラットフォーム

 NVIDIAによれば、Tegra Note 7は単にタブレットの1製品としてだけでなく、“NVIDIAによるタブレットプラットフォーム”として位置付けられているという。Tegra 4の特徴を活かしてどのような体験を提供できるか、その性能をどう使うか、といったことの1つのサンプルとして、タブレットメーカーにハードウェアと独自のソフトウェアを提示する目的を持った製品というわけだ。

 その意味では、ハードウェア自体も見せたいという点に違いはあるものの、GoogleのリードデバイスであるNexusシリーズやMicrosoftのSurfaceシリーズに近い性格といって差し支えないだろう。ただし、製造/販売はパートナー企業が行なう。国内では香港ZOTAC製品が発売される予定だ。

ZOTACの日本向けパッケージ
ちゃんとローカライズされており、説明文も日本語で書かれている

 主なハードウェア仕様は、すでに9月に発表されているが、改めて下記表にまとめておく。

【表1】NVIDIA「Tegra Note 7」の仕様
プロセッサTegra 4
(Cortex-A15、4+1コア、1.8GHz)
メモリ1GB
ストレージ16GB
OSAndroid 4.2.2
ディスプレイ1,280×800ドット対応7型IPS液晶
ネットワークIEEE 802.11b/g/n無線LAN、Bluetooth 4.0 LE、
インターフェイスMicro USB、Micro HDMI出力、microSDカードスロット(最大32GB)、30万画素前面カメラ、500万画素背面カメラ、音声入出力、ステレオスピーカー
バッテリ駆動時間最大10時間
サイズ/重量199×119×9.6mm(幅×奥行き×高さ)/320g

 採用例がそれほど多くないTegra 4の搭載と、スタイラスを標準装備していることが目立つぐらいで、メモリ、ストレージ、液晶解像度、画素密度など、お世辞にも他社製品と比べて飛び抜けて優秀なスペックとは言えない。

 とはいえ、価格帯はNexus 7(2013)など7型タブレットとして主流の価格帯に投入しており、その本気度は伺える。また、上記のようなスペック以外の点でさまざまな価値を提供しようとしているのも興味深い。

 細かい機能については後述するとして、とりあえずハードウェアの主要なポイントから見ていきたい。

 液晶ディスプレイは1,280×800ドット表示に対応する7型のIPS液晶を採用。光沢タイプで、映り込みは少々きつめ。また外光が強いところで使うと、タッチセンサーの筋がわりと目立つ傾向にあるのは気になったポイントだ。

 ちなみに、液晶の左右に大きめのスピーカーが搭載されており、その部分の色合いが違うことで、正面から見ると本体が大きく映るかも知れない。しかしながら、Tegra Note 7の199×119mm(幅×奥行き)に対して、Nexus 7(2013)は200×114mm(同)、Nexus 7(2012)は198.5×120mm(幅×奥行き)と、標準的なサイズと言って良い。ただし厚みについては、Nexus 7(2013)より厚く、Nexus 7(2012)よりほんの少し薄いサイズになる。Nexus 7(2012)を触ったことがある人なら、同じようなサイズをイメージしておけば、大きく外れることはない。

正面。1,280×800ドットの7型液晶と、左右にスピーカーがレイアウトされている
背面は黒をベースに独特のデザインを施している
左から「Tegra Note 7」、「Nexus 7(2013)」、「Nexus 7(2012)」。フットプリント、厚みともにNexus 7(2012)に近い印象

 液晶の左右に設けられたスピーカーはTegra Note 7のポイントの1つで、5ccの空気室を持つバスレフスピーカーとなっている。バスレフポートは本体右側面には単独のポートを持つ。一方の本体左側面は、内部に基板があって専用ポートを備えられないため、Micro USBポートのコネクタを空気が流れる仕組みにしてバスレフポートと兼用しているという。

 また、基板や部品のレイアウトの関係で、左右の空気室の形状が異なるため、左右で微妙に違う特性を持っているという。そのため、同社が「PureAudio」と呼ぶソフトウェアレベルの処理を施して左右のバランスを取っているそうだ。ここもTegra 4のプロセッサパワーを示す1つのポイントというわけだ。

 7型タブレットのスピーカーがどれだけ活用されるかという点に疑問はあるものの、設計と技術のサンプルとしては非常に面白い。今回比較用に用意しているNexus 2モデルはいずれもスピーカーが背面側にあるという条件の差は大きく、普段あまり音質にこだわらない筆者でも、違いははっきり分かる。

本体右側面のバスレフポート
本体左側面はMicro USBポートがバスレフポートを兼用
スピーカーの内部構造

 インターフェイスは本体左側面に集中しており、Micro USB、Micro HDMI、ヘッドセット端子を備える。また背面に500万画素、前面に30万画素のカメラを内蔵する。

 最近のスマートフォン/タブレットはMHLやSmartPort経由で画面出力を可能としている製品も少なくないが、専用のアダプタを介することなく画面出力ができるMicro HDMI出力を装備したのはNVIDIAのこだわりのようだ。

本体左側面にMicro USB、Micro HDMI、ヘッドセット端子。電源ボタンもここにある
本体右側面は先述のバスレフポートのみ
裏面には500万画素カメラ
前面に30万画素カメラ。脇に照度センサーも見える

 このほかにハードウェアで特徴的な部分は、専用のカバーをスライドして取り付けられるミゾを設けていることだ。専用のカバーはオプション(店頭予想価格:3,980円前後)のため、出荷時には目立たないようにするためのパーツが差し込まれている。このパーツをスライドして抜き取り、専用のカバーを取り付けるわけだ。

 現状、サードパーティからアクセサリが登場する予定はないとのことなので、純正カバー専用の仕組みとなってしまうが、厚みを最小限に抑えつつ、一体感のあるカバーになる。磁石を利用して3段階に角度調整可能なスタンドとしても使えるほか、カバーの開閉によって自動的にディスプレイをオン/オフする機能も持っている。

底面側に専用カバーをスライドして取り付けられる
脇には“TEGRA NOTE”のロゴが刻印されている
カバーを閉じた状態。開閉とディスプレイオン/オフの連動もする
磁石を利用して3段階に立てられるスタンドにもなる

 Androidについては、テスト時点で4.2.2となっていたが、NVIDIAは「OTAアップデートを頻繁に行なうことを約束する」としており、実際、1週間足らずの試用期間中にも2回、OTAアップデートが行なわれた。また、具体例は後述するが、現時点で有効化していないものの、OTAアップデートで実装することを前提にアナウンスしている機能もある。

 ホーム画面などは特にチューニングされていないが、設定画面にはTegra 4の省電力機能が統合されている。バックライトの動的調整のほか、アプリケーションごとにアクティビティ(動作率と言い換えていいだろう)を調整できる「nSaver」機能、使用コア数や表示のフレームレートキャップを設けられる機能を搭載する。

テスト時点のAndroidのカーネルバージョンなど
設定画面にはNVIDIA独自の省電力機能が統合されている
nSaverはアプリごとにアクティビティレベルを調整して省電力化する
プロセッサ(Tegra 4)の動作コア数や最大クロック、表示フレームレートに制限を設けて、3段階に省電力化する機能も用意されている

Tegra Note 7に最適化され、低遅延で動作するスタイラスペン

 では、Tegra Note 7に搭載されたユニークな機能をいくつか試していきたい。まずはスタイラスペンの機能だ。このスタイラスは「NVIDIA DirectStylus」と名付けられており、NVIDIAによれば“アクティブスタイラスの操作感をパッシブスタイラスのコストで実現したもの”としている。

本体上部側にスタイラス収納スペースを設ける
付属のスタイラス
ペン先は楕円形の断面が特徴で、先端は2~5mm程度と非常に細い

 ハードウェアとしては、静電容量方式のタッチパネルとスタイラスの組み合わせで、電磁誘導方式などではない。しかしながら、「Direct Touch 2.0」と呼ばれる高速なスキャンレートで認識させるタッチパネル技術とTegra 4を組み合わせることで、300Hzのスキャンレートで動作。非常に繊細なペン操作を認識できるという。

 静電容量方式に対応するスタイラスペンは、ペン先がパネルに触れた際の静電容量の変化を検出し、一定以上の変化があれば“触れた”と判定して入力させる。逆にいえば、物理的には触れていても静電容量に一定以上の変化を作れなければ入力に繋がらない。

 Tegra Note 7のタッチパネルは、静電容量の変化として検知できる範囲がほかの製品に比べて広いことを特徴としている。実際、付属のスタイラスは非常にペン先が細いが、Tegra Note 7では強い力をかけなくても認識する一方で、ほかのタブレットでは力をかけなければ入力できない。これは、静電容量の変化が少なくても確実に検知することを示している。

 さらに、専用スタイラスは反対側もラバー状になっており、こちらを押しつけると消しゴムとして動作するようになっている。もちろん素材はペン先も反対側も同じであるが大きさが異なっており、このサイズで押しつけた際に発生する静電容量の変化が検出されたら消しゴムモードとして認識するようにしているのだ。ここでいう消しゴムモードとは、Android SDKで提供されている機能なので、当然アプリ側が対応している必要はある。

 このように、Tegra Note 7と付属スタイラスは、最適化してソフトウェアもチューニングされており、だからこそ電磁誘導方式のアクティブスタイラス並みの操作感を目指すことができたといえるだろう。

【動画】右からTegra Note 7とNexus 7(2013)で、Tegra Note 7付属のスタイラスを使って同程度の力をかけたときの反応の違い

 もう1つの特徴として、ペンで触れてから実際にOS上で入力として処理されるまでの遅延(Pen to Ink Latencyと呼ばれている)が高速な点が挙げられる。(国内未発売製品だが)Galaxy Note 8と比べて3倍速いとしている。実際に使ってみても、劇的とは言えないものの、確かにペン操作に対するレスポンスは悪くない。これは専用スタイラスでなくても、ほかのタブレットとは違うことを感じ取れる。

 この反応も含めて、ペン入力そのもののトータルの使い勝手は「電磁誘導式ほどではないが、普通の静電容量対応のスタイラスよりは良好」が率直な印象だ。ペン先が細いことから当然、細めの字が書きやすいほか、筆圧もわりと素直に反映される。

 ちょっと気になったのは過敏すぎる点で、力をかけた状態から一気にペンを離すときに、わずかな感触を感知してしまっている挙動を示した点だ。習字で例えるならば、“はらい”や“はね”は綺麗に表現できるものの、“とめ”を表現するときに、筆のわずかなブレに思っている以上に敏感に反応してしまっている感覚だ。技術的に解決できるならば望みたいが、このような場合にはタッチパネル面に対して正確に垂直にペンを動かすようにユーザーが心がける必要があるかも知れない。

 ソフトウェア面では、まず本体からスタイラスを取り出したことを検知して、自動的に起動する専用ランチャーが用意される。このランチャーにはユーザーがアプリを登録することもできる。

 また、下部のメニューバー部分に2つのアイコンが追加される。1つは「手のひら」の形をしたアイコンで、これはペン操作のみに反応し、タッチ操作を禁止するモードにするためのものだ。有効にするとタッチ操作が禁止されることになる。通常時でもパームリジェクション機能は働いており、ペンで文字を書くときなどに手のひらが触れても反応はしないが、そのほかの誤操作を防ぎたいユーザーには有効な機能だろう。

 もう1つは画面キャプチャ機能で、表示されている画面を取得し、専用のアプリが起動する。このアプリでは、キャプチャした画面への文字や図の追加、特定範囲の切り抜きを行なえる。

 このほか、ドロー系アプリの「Tegra Draw」も用意されている。

スタイラスを本体から抜くと自動的にランチャーが表示される(設定による)。また下部のメニューに2つのアイコンが追加される
ドロー系アプリの「Tegra Draw」
メニューバーに追加された右端のアイコンを押すと、画面キャプチャアプリが起動する。図/文字の書き込みや切り抜きが可能
設定画面にもDirectStylusの項目が設けられる
DirectStylusが削除された際のデフォルト動作を設定する画面(削除は誤訳と見られる)

動体にも適応するHDR撮影機能を搭載(予定)

 続いて特徴的なのが独自のカメラアプリだ。先述の通り、Tegra Note 7には前面に30万画素、背面に500万画素のカメラを内蔵している。このカメラアプリに、さまざまな機能を盛り込もうというチャレンジだ。

 その特徴として挙げられているのが、「Always-On HDR」撮影機能、「Tap-to-Track」機能、「Slo-mo(Slow-motion) Video」機能の3つだ。

Always-On HDR撮影と一般的なHDR撮影の比較(NVIDIAの資料より)

 Always-On HDR撮影とは、露出の異なる画像を合成することで、センサーのダイナミックレンジを超えて明暗部のレベルを引き上げるHDR撮影の1種だ。昨今はデジタルカメラだけでなく、スマートフォンやタブレットのカメラアプリでも、HDR撮影機能を持つ製品が増えている。一般的にHDR撮影は、露出の異なる写真を連続して撮影し、合成処理をして保存する。デジカメやモバイル端末でも同様で、自動的に連続撮影し合成処理まで行なってくれている。Tegra Note 7のカメラアプリも、この機能を搭載してはいる。

 この手法の欠点は、動きのある被写体に対応できないことだ。一般的にHDR合成用の画像内容に違いがあると、その違いの部分の合成結果は半透明になったり、不自然な色になったりする。

 「Always-On HDR」撮影機能は、動きのある被写体に対してもHDR撮影ができることを売りとする機能で、撮影の段階で“同じタイミングで露出の異なる2枚の画像を取得する”のだという。動きのある被写体が問題なるのは、1枚を撮影して、その後に次の画像を撮影するのが原因なので、同時に取得すればOKというわけだ。

 この手法により、HDR画像の連続撮影や、HDR動画の撮影も可能であるとしている。

 詳しい内部処理は不明だが、可能性として考えられるのは、1度の露光を行なう際に、途中で1枚の画像を保存し、露光終了時に2枚目の画像を取得する、といった方法だ。技術的にこの方法が可能かは分からないが、この方法では動きが激しい場合には、やはり被写体の動きが画像にも出てしまう可能性が残る。

 このほかには、1枚の画像を撮影してソフトウェア的にレベル補正を行なった2枚の画像を生成、それを合成する手法も考えられるが、カメラ(イメージセンサー)のダイナミックレンジの限界を超えることはできず、HDR“風”の画像は作れても、本当の意味でHDRな画像を作ることはできない。

 なぜ、このような推測を重ねたかというと、本機能は残念ながら未実装で、実際に試すことができなかったためだ。本機能については、早い段階でOTAアップデートにより提供するとしている。

 次の「Tap-to-Track」は、いわゆる追尾オートフォーカスのことで、指定した被写体が移動しても、追従してピントを合わせ続ける機能だ。この機能もそれほど珍しくなくなっており、筆者が所有しているパナソニックのELUGA X(P-02E)も同様の機能がある。

 こちらの機能はすでに実装されており、Tegra 4による画像解析に基づき、被写体を検出。それを追尾して合焦させるものとなる。使い方は、タップ&スワイプで対象の被写体を矩形指定する。主に動きのある被写体に向けた機能なだけに、もう少しシンプルに対象を指定できた方が好ましいように思う。

 また、実際に試してみると精度は高くない印象だ。背景が急変したときに追尾を外れる傾向が見られたので、おそらく指定した矩形内全体を画像解析して、前後比較をさせているのだろう。逆に背景に左右されないような状況であれば、動きが速くても追従してくれる。

 現時点で機能としては満足できるものとは言えないが、ソフトウェアレベルで実装しているだけにアップデートに期待したい。また、この部分の機能をライブラリとして公開するなど、半導体メーカーならではの発展のさせ方もありそうだ。

【動画】Tap-to-Trackの例。ゆっくり歩いた被写体を追尾さえているが、背景に木が登場した途端に途切れる。そこを通り過ぎたあと、再度追尾しようとしていることも分かる
【動画】Tap-to-Trackの例。こちらは背景に影響されない状況だが、動きが速くても、ちゃんと追尾できている

 「Slo-mo Video」機能は、いわゆるハイスピード撮影だ。この機能を持つデジカメ、モバイルデバイスもあるが、Tegra Note 7は、720p(1,280×720ドット)で120fpsの動画を撮れることを売りにしている。720p/60fpsはiPhone 5Sが対応しているものの、「タブレット端末では現時点で唯一」としている。

 このほか、複数のパターンから選べるグリッド表示機能、水準器の表示機能、画面の2点をタッチすることで露出の測定に用いるポイントと合焦するポイントを分離する機能、ISO/ホワイトバランス/露出の調整機能などの撮影機能を搭載。撮影モードもセルフタイマーや連続撮影のような一般的なものから、インターバル撮影やパノラマ撮影機能まで、わりと網羅的に機能を搭載している。

2点をタッチすることで露出と合焦の場所を分けられる。丸が露出を決めるポイントで、四角が合焦ポイント
グリッド線は3分割法や黄金比など4種類を用意する
シャッターボタンを取り囲むように撮影モードが一覧表示されるUI
写真サンプル1、2,592×1,944ドット(※クリックすると800×600ドットの画像を表示します。元画像はこちら)
写真サンプル2、2,592×1,944ドット(※クリックすると800×600ドットの画像を表示します。元画像はこちら)

ゲームの最高クオリティ設定を利用可能

 ところで、NVIDIAといえばGPU、GPUといえばゲームという連想をする人も多いだろう。Tegra Note 7でもゲームプレイも訴求されており、例えばMicro HDMIの搭載は、大画面TVでゲームをプレイすることも想定しているようだ。とはいえ、現時点でTegraシリーズがAndroidタブレットの主流とはいえないため、ゲームの品質もターゲットは別のSoCになってしまう。そのため、Tegra 4のCPU/GPU性能を活かしきったゲームは少ないのが現状といえる。

 それでも、いくつかのゲームでは独自のクオリティを表示できるようになっている。例えばFPSゲームの「Dead Trigger 2」では、Tegra Note 7で実行するとグラフィックスの設定が「超高」に自動設定される。単に自動設定されるだけでなく、Tegra 3を搭載したNexus 7(2012)や、Snapdragon S4 Proを搭載するNexus 7(2013)では、この「超高」という項目すら表示されず、「低」と「高」の2段階になる。また、レースゲームの「アスファルト8」ではグラフィックス設定が自動的に「HIGH」に設定される。Nexus 7(2012)ではこれが「MEDIUM」になった。

 Tegra 4でのプレイ時にのみ上位の設定が用意されるDead Trigger 2のようなタイトルは現状では特別な存在と言えるが、対応アプリを集めた「Tegra Zone」を展開してAndroidでのゲーム利用をプッシュし続けており、ゲームデベロッパとの繋がりを活かした発展には期待したい。

「Dead Trigger 2」ではグラフィックス品質が自動的に「超高」に設定される。Nexus 7などではこの設定そのものが出てこない
「超高」設定の画面。反射を反映した水たまりや、風になびく草などが特徴。上から滴る水や、街灯の光の拡散も表現されている
「高」設定の画面。水たまりや草が表示されない
「低」設定では、水のしたたりが消え、街灯の光の拡散もなくなる
「アスファルト8」の設定画面とゲーム画面の例。画質は自動的に「HIGH」に設定される

Nexus 7(2013)より1.2~2倍のベンチマーク結果

 最後に、ベンチマークテストによるパフォーマンス測定結果を紹介する。テストは「3DMark Ver.1.1.0.1179」、「AnTuTu Benchmark Ver.4.1」、「Basemark X Ver.1.0」、「Quadrant Professional Ver.2.1.1」を使用した。

 比較用に、7型Androidタブレットの主流製品になっていて価格帯が近いNexus 7(2013)と、1世代前のTegra 3を搭載したNexus 7(2012)でも同ベンチマークをテストした。

 なお、3DMarkの一部テストでは、フレームレートが高すぎるためにスコア「Maxed out」となってしまった部分がある。そのため、各テストのフレームレートの値も併せて掲載している。

【表2】仕様比較
Tegra Note 7Nexus 7(2013)Nexus 7(2012)
プロセッサTegra 4
(Cortex-A15、4+1コア、1.8GHz)
Snapdragon S4 Pro
(APQ8064、クアッドコア1.5GHz)
Tegra 3
(Cortex-A9クアッドコア、1.3GHz)
GPU(プロセッサ内蔵)ULP GeForce(72コア)Adreno 320ULP GeForce(12コア)
メモリ1GB2GB1GB
ストレージ16GB32GB16GB
OSAndroid 4.2.2Android 4.3.1Android 4.3
【表3】3DMarkの結果
Tegra Note 7Nexus 7(2013)Nexus 7(2012)
Ice Storm UnlimitedIce Storm score16,00110,7333,248
Graphics score16,74810,4892,814
Physics score13,84111,6827,055
Graphics test 192.1 FPS52.9 FPS12.4 FPS
Graphics test 257.4 FPS39.5 FPS12.1 FPS
Physics test44.8 FPS36.4 FPS22.4 FPS
【表4】AnTuTu Benchmarkの結果
Tegra Note 7Nexus 7(2013)Nexus 7(2012)
UXMultitask7,5483,2742,903
Dalvik2,6151,4521,075
CPUInteger3,4232,2681,947
Float-point4,1571,8361,308
RAMOperation1,6141,0411,534
Speed1,9801,522432
GPU2D graphics1,6391,636773
3D graphics9,8704,8912,359
I/OStorage I/O1,9581,187470
Database I/O665630135
【表5】Basemark Xの結果
Tegra Note 7Nexus 7(2013)Nexus 7(2012)
1,280×720ドットOn-Screen20.999 FPS7.741 FPS6.164 FPS
Off-screen21.536 FPS15.423 FPS6.139 FPS
1,980×1,080ドットOn-Screen21.195 FPS7.904 FPS6.094 FPS
Off-screen10.857 FPS7.648 FPS3.070 FPS
【表6】Quadrant Professionalの結果
Tegra Note 7Nexus 7(2013)Nexus 7(2012)
Total15,5584,5023,545
CPU59,01713,44211,636
Memory7,7815,0382,080
I/O7,5031,6241,260
2D1,000251247
3D2,4872,1542,503

 こうしてみると、Tegra Note 7のパフォーマンスは非常に良好であることが分かる。GPUだけでなくCPUの性能でもNexus 7(2013)を上回っており、Quadrantは少しインフレ気味の印象はあるものの、そのほかのベンチマークソフトでもおおむね1.2~2倍程度の結果を出せている。

 Tegra 3を搭載するNexus 7(2012)と比べると、スコアは2~5倍程度高いスコアをマークした。3DMarkのGraphics Testでは最大で7.5倍ほどのフレームレートを出しているところがあり、1世代差とはいえ、その性能差は非常に大きいと言える。

 バッテリ駆動時間のテストは、720pのH.264動画を「MX動画プレーヤー」を用いてループ再生し、「Battery Mix」を用いて1秒間隔でバッテリ状態を監視して、そのログより駆動時間を算出した。ディスプレイは輝度最大、Wi-Fiはオンにした状態で、BluetoothやGPS、NFCはオフにした。音量は小さめで「2」にして、スピーカーで鳴らしている。

 結果、Tegra Note 7が6時間38分、Nexus 7(2013)が5時間7分、Nexus 7(2012)が8時間28分という結果。Nexus 7(2013)が思ったより伸びなかったことが気になる結果だが、こちらよりは1時間30分ほど長い結果になった。ただ、Nexus 7(2012)と比べるとて2時間ほど短い。ちなみに、Tegra Note 7はビデオ再生時の公称バッテリ駆動時間を10時間としているが、本稿のテストは輝度を最大にしてのものなので条件は厳しい。輝度最大で6時間30分以上であれば、絶対値としては、まずまずの駆動時間といって差し支えないだろう。

荒削りだがユニークなタブレットの登場を歓迎

 短期間のため機能をなぞる程度になってしまったことはご了承いただきたいが、Tegra Note 7で特徴的な部分のインプレッションを紹介してきた。

 7型Androidタブレットとして、画面解像度やストレージ容量などのスペックは平凡なものとなっているが、機能面でさまざまなアプローチを試みている製品となっている。特にスタイラスの挙動は、静電容量式としては良好で、ペンを使ってみようという気も沸く。ここで言う“静電容量式としては”というのは、“この価格で出せるものとしては”というニュアンスも含んでいる。25,800円前後という予想価格は、同ジャンルでも競争力のある価格だ。

 文中でも触れてきたとおり、個々の機能についてはまだまだ荒削りで満足できない部分もあるが、ソフトウェアアップデートで改善できそうな部分も多い。頻繁にOTAアップデートするというNVIDIAの主張も、1週間足らずで2回もアップデートが届くと信用しようという気にもなる。

 このセグメントはGoogleのリードデバイスとしての価値、スペックに対する価格性能比からNexus 7が非常に強い。一方で、レノボ・ジャパンの「YOGA TABLET」シリーズのように違う価値を提供することで訴求しようと試みるメーカーも出てきた。Tegra Note 7は、言い換えればNVIDIAのリードデバイスではあるが、後者のような姿勢で臨んでいる製品と言えるだろう。

 この製品でしか得られない機能(価値)は確かに存在しており、ほかのタブレットとはひと味違う製品の登場をまずは歓迎したい。

(多和田 新也)