レビュー
MSI初のゲーミングmicroATXマザー「Z87M GAMING」フォトレビュー
(2013/12/4 06:00)
エムエスアイコンピュータージャパン株式会社は、microATXフォームファクタのゲーミング向けmicroATXマザーボード「Z87M GAMING」を発売した。実売価格は19,800円前後だ。今回1枚お借りできたので、写真を中心にレポートする。
Z87M GAMINGは、同社初のゲーミングブランドを冠したmicroATXフォームファクタのマザーボードである。実はこれまでも、型番の中に「G」を入れたモデルがゲーミング向けという位置づけであったのだが、それは単純にPCI Express x16スロットが2本以上あり、マルチGPU構成ができるからという意味でゲーミング向けであった。
しかしIntel 7シリーズチップセットとともに広がった「GAMING」ラインナップは、分離したオーディオ回路やQualcomm Atheros製の「Killer」ネットワークコントローラを備えるなどゲーミング機能をさらに注力しており、名実ともにASUSの「R.O.G.」シリーズやGIGABYTEの「G1-Killer」シリーズ、ASRockの「Fatal1ty」シリーズへの対抗となっている。
そのGAMINGシリーズだが、これまでZ77チップセットを採用した「Z77A-GD65 GAMING」、「Z77A-G43 GAMING」、B75チップセットを採用した「B75A-G43 GAMING」、Z87チップセットを採用した「Z87-GD65 GAMING」、「Z87-G45 GAMING」、B85チップセットを採用した「B85-G43 GAMING」という6つのラインナップを用意してきたが、どれもATXフォームファクタだった。初めてmicroATXフォームファクタを採用したのが本製品なのだ。
質実剛健な基本設計
まずはパッケージを見ていこう。化粧箱はよくあるマザーボードの箱そのものであり、これといって凝ったデザインはない。しかし内容物は比較的豊富であり、マザーボード本体とマニュアル、ドライバDVD、バックパネルI/O、SATAケーブルといった基本的なものに加えて、フロントパネルのヘッダピンを統一して容易に接続できるようにした「M-Connector」、SLIケーブル、そしてGAMINGロゴをあしらった盾状のエンブレムが付属する。
マザーボード本体はmicroATXフォームファクタそのものであり、244×244mmの正方形。あらゆるパーツが本来搭載されるべき位置に搭載され、部品の実装密度が低くスッキリしている。またコンデンサからメモリスロット、拡張スロットまですべてブラックで統一され、ヒートシンクの赤がアクセントとなっていることもあり、見ていて気持ちいい。PCBも一般的なものとは異なり光沢がないマットなブラックで、開発者のこだわりが伝わってくる。
まず手にして気になったのが本体の重さ。microATXのマザーボードは比較的軽いものが多いのだが、本製品は搭載されるヒートシンクの大きさに似合わず一般的なATXモデル以上の重量がある。それもそのはずで、基板をよく見てみると実は6層基板となっていた。microATXは基本的にコストパフォーマンス志向で作られることが多いため、4層基板採用モデルのほうが多いと思うのだが、本製品はさすがGAMINGブランドを謳っているだけあって、より品質の高い6層基板を採用している。
オンボード電源/リセットスイッチ、POSTコード表示用7セグメントLEDの搭載もポイント。オンボードボタンの機能はオーバークロック向けやゲーミング向けマザーボードとしてはさほど珍しくはないが、フロントピンヘッダからの配線が楽からか、下部に装備してしまうモデルも少なくなかった。ところが2スロット占有するビデオカードでマルチGPUを構成すると、下部がヒートシンクに隠れてしまうため使いにくくなることが発生する。便利な機能が不便になってしまっては本末転倒だ。その点本製品はATX24ピン電源コネクタ付近に装備されているため、そのようなことは生じない。
電源は8フェーズで、PWMコントローラは「uP1649P」。特にデジタル方式への対応が謳われていないが、以前のオーバークロックの記事でも紹介したように、Haswellは電圧レギュレータを内蔵しているため、外部電源の違いによる安定性への影響はそれほど大きくないと思われる。とは言え、microATXフォームファクタで8フェーズというのは十分評価に値するし、大電流/コイル鳴きを抑えた「Super Ferrite Choke」の採用や固体コンデンサ「Dark CAP」の採用で、ゲームの性能向上を目指すオーバークロック程度なら、十分な安定性を提供できると思われる。
本製品の肝でもある「Killer E2200」は、VRMヒートシンクの下に隠れている。また特徴的なオーディオ回路はPCBを半透明にして切り分けており、背面のLEDの光が透けて見えるようになっている。オーディオのコーデックはRealtekの「ALC1150」で、これも電磁波の影響を受けないようシールドされている。そのシールドには「Audio Boost」の文字が描かれ、これまた基板上のピンク色のLEDで透けて文字が光るギミックとなっている。
搭載されるヒートシンクにはすべて、GAMINGシリーズの象徴でもあるドラゴンのデザインがあしらわれている。チップセットのヒートシンクにドラゴンが描かれているだけでなく、VRMのヒートシンクも側面から見ると実はドラゴンの頭部の造形になっている。
実はMSIは以前からヒートシンクの形状にはこだわっており、ジェットコースターのようにノースブリッジ上でぐるっと一周するようなものから、最近ではフィンのピッチ間隔が実はモールス信号で「MSI」の意を示すものまであるのだが、そのDNAは本製品にも受け継がれていると思う。
なお、本製品のPOSTコードやオンボード電源/リセットスイッチは緑、チップセットは白、オーディオコーデック部はピンク、オーディオ回路分離帯は黄色に光るため、電源を入れていない時の黒赤の印象とはずいぶんと異なる。ケースにしまう場合は暗くなってヒートシンクの赤色が目立たなくなり、LEDの色のほうが目立つので、全体コーディネートする場合はそれらに合わせてやったほうが統一感が出せるだろう。
赤を基調とした「Click BIOS 4」
BIOSはUEFIに基づき、マウスでクリック操作できる「Click BIOS 4」を採用。Z87 MPOWERシリーズと同じ画面レイアウトで、テーマがGAMINGシリーズの赤をベースとしたものになっている。
上のペインではOC GENIEの動作有無、システム温度、時間、BIOSバージョン、CPUやメモリなどの情報が表示されているほか、ブートデバイスの順番をマウスのドラッグ&ドロップで変更できるようになっている。オーバークロック用途でもない限り、BIOSに入ってもっとも最初に変更するのはブートするデバイスの順番であろうから(DVDなどのメディアからのOSインストール)、この設計思想は正しいと言えるだろう。
本製品の用途と位置づけを考えると、ゲーム性能向上を目的にオーバークロックをするユーザーも多いだろうから、オーバークロック関連の設定を見てみたが、上位のMPOWERシリーズに劣らず、非常に豊富な項目が用意されているのがわかる。CPUの倍率やグラフィックスの倍率、リングバスの倍率、ベースクロックに加え、EIST/Turbo Boostの有無、X.M.Pメモリプロファイルの選択が可能だ。
また、Haswellで強化されたメモリのオーバークロック周りにも注力しており、タイミングの多くが変更できる。ユーザー手持ちのメモリの性能を極限に引き出すことも可能だ。さらに、MSIがオーバークロックに適切と想われるタイミングセットがいくつかプリセットで用意されており、もちろん自己責任となるが、チップの種類さえ分かればそれをロードしてすぐにメモリのオーバークロックを体験できるようになっている。
OC GENIEの機能と合わせて、「初心者に配慮しながらも、上級者にも十分応えられるBIOS」に仕上がっているのではないかと思う。
microATXゲーミングの新しい選択肢
これまでZ87でゲーミング向けmicroATXマザーボードと言えば、ASUSの「MAXIMUS VI GENE」とGIGABYTEの「G1.Sniper M5」しかなかった。いずれも登場してからある程度時間が経っているが、実売価格は未だ2万円を超えており、「値頃感」が少なかったのも確かだ。
MAXIMUS VI GENEにはM.2コネクタ、G1.Sniperは交換可能なオーディオオペアンプがあるが、これらの付加価値に目を瞑り、実売2万円を切っている本製品は、なかなかコストパフォーマンスが高いと言える。BitFenixの「PRODIGY-M」のようなユニークなmicroATXケースも最近増えており、これからゲーミングマシンを組むといったユーザーにとってなかなか良い選択肢ではないだろうか。