レビュー

AMDのミドルレンジGPU「Radeon R9 380X」を試す

 AMDは11月19日、Radeon R9 シリーズの新GPU「Radeon R9 380X」を発表した。今回の発表に先立ち、同GPUを搭載したビデオカードを借用する機会が得られたので、新GPUの性能をベンチマークテストでチェックしてみた。

2,048基のStream Processorを備えるRadeon R9 380X

 Radeon R9 380Xは、Graphics Core Next(GCN)アーキテクチャを採用し、28nmプロセスで製造されたGPU。ラインナップ上では、TongaコアベースのRadeon R9 380と、HawaiiコアベースのRadeon R9 390の中間に位置する。

 Radeon R9 380XのGPUコアは、32基のCU(Compute Unit)で構成されており、2,048基のStream Processor、128基のテクスチャユニット、32基のROPユニットを備える。AMDのレビュアー向け資料では、Radeon R9 380Xが採用するGPUコアについての情報は明らかにされていないが、スペックから察するに、下位モデルのRadeon R9 380と同じく、Tongaコアをベースにした製品であると思われる。

 VRAMには5.7GHz相当で動作する4GBのGDDR5メモリを採用。GPUとVRAMを結ぶメモリインターフェイスは256bit。ビデオカードが消費する電力の指標であるTypical Board Powerは190W。メモリインターフェイスやTypical Board Powerについては、下位モデルのRadeon R9 380と同等の仕様となっている。

【表1】Radeon R9 380Xの主な仕様
Radeon R9 380X Radeon R9 380 Radeon R9 390
アーキテクチャ GCN GCN(Tonga) GCN(Hawaii)
製造プロセス 28nm 28nm 28nm
GPUクロック(最大) 970MHz 970MHz 1,000MHz
Stream Processor 2,048基 1,792基 2,560基
テクスチャユニット 128基 112基 160基
メモリ容量 4GB GDDR5 2GB/4GB GDDR5 8GB GDDR5
メモリクロック 1,425MHz(5.7GHz相当) 1,425MHz(5.7GHz相当) 1,500MHz(6GHz相当)
メモリインターフェイス 256bit 256bit 512bit
ROPユニット 32基 32基 64基
Typical Board Power 190W 190W 275W

Radeon R9 380Xを搭載するASUS STRIX-R9380X-OC4G-GAMING

 今回、Radeon R9 380X搭載ビデオカードとして借用したのは、ASUSの「STRIX-R9380X-OC4G-GAMING」だ。

 ASUS STRIX-R9380X-OC4G-GAMINGは、ASUSのゲーマー向けブランド「STRIX」シリーズに属するビデオカード。セミファンレス機能を備えたGPUクーラー「DirectCU II」を搭載し、GPUコアはRadeon R9 380Xのリファレンスクロックである970MHzから1,030MHzまでオーバークロックして搭載されている。

ASUS STRIX-R9380X-OC4G-GAMING。独自の基板とGPUクーラーを備え、Radeon R9 380Xをオーバークロックして搭載した、ASUS STRIXシリーズのビデオカード
ディスプレイ出力ポート。DisplayPort、HDMI、DVI-I、DVI-D
補助電源コネクタ。PCI-E 6ピンを2系統必要とする
GPU-Z実行画面

テスト機材

 ベンチマークテストの実行環境には、Intel Core i7-6700Kを搭載したIntel Z170環境を用意。また、Radeon R9 380Xの比較用として、Radeon R9 380、Radeon R9 390、Radeon R9 390XのAMD製GPU3製品と、GeForce GTX 960、GeForce GTX 970のNVIDIA製GPU2製品の計5製品を用意した。

【表2】テスト環境
GPU R9 380X/380/390/390X GTX 960/970
CPU Core i7-6700K
マザーボード ASUS Z170-A
メモリ DDR4-2133 8GB×2(15-15-15-35、1.20V)
ストレージ 256GB SSD(CFD S6TNHG6Q)
電源 Antec HCP-1200(1,200W 80PLUS GOLD)
グラフィックスドライバ Catalyst 15.11.1Beta GeForce 358.91 Driver
OS Windows 10 Pro 64bit

 なお、比較のために用意した5つのGPUについては、Radeon R9 380Xと同じくASUSのSTRIXシリーズ製品で統一した。

 いずれもオーバークロック仕様のビデオカードであり、通常であればリファレンスクロックに調整してベンチマークテストを行なうところだが、同一メーカーの同一シリーズで機材を統一したこと、また、市場に存在するリファレンス仕様の製品の少なさから、今回は借用したASUS STRIXシリーズの製品仕様のままベンチマークテストを行った。各ビデオカードの動作クロックについては以下の表の通り。

【表3】テストを行なったビデオカードの動作クロック
GPU GPUクロック Boostクロック メモリクロック VRAM
R9 380X 1,030MHz - 1.425GHz(5.7GHz相当) 4GB
R9 380 990MHz - 1.375GHz(5.5GHz相当) 2GB
R9 390 1,050MHz - 1.5GHz(6.0GHz相当) 8GB
R9 390X 1,070MHz - 1.5GHz(6.0GHz相当) 8GB
GTX 960 1,228MHz 1,291MHz 1.8GHz(7.2GHz相当) 2GB
GTX 970 1,114MHz 1,253MHz 1.75GHz(7.0GHz相当) 4GB
Radeon R9 380搭載のASUS STRIX-R9380-DC2OC-2GD5-GAMING
Radeon R9 390搭載のSTRIX-R9390-DC3OC-8GD5-GAMING
Radeon R9 390搭載のASUS STRIX-R9390X-DC3OC-8GD5-GAMING
GeForce GTX 960搭載のASUS STRIX-GTX960-DC2OC-2GD5
GeForce GTX 970搭載のSTRIX-GTX970-DC2OC-4GD5

ベンチマーク結果

 それでは、ベンチマークテストの結果を紹介する。今回実施したベンチマークテストは、3DMark(グラフ1〜6)、3DMark11(グラフ7)、The Witcher 3: Wild Hunt(グラフ8)、ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド(グラフ9)、ベンチマーク MHFベンチマーク【大討伐】(グラフ10)。

 3DMark Fire Strikeでは、1,920×1,080ドットの無印と2,560×1,440ドットのExtremeにおいて、Radeon R9 380Xが、Radeon R9 380に10%前後、GeForce GTX 960には15〜18%程度の差をつけて上回った。この差は3,840×2,160ドットで実行される「Ultra」ではそれぞれ約40%と約70%にまで拡大しているが、これはRadeon R9 380とGeForce GTX 960のVRAMが2GBと、4K解像度の高負荷ベンチマークを実行するには不足していることによる影響が大きい。

 一方、上位GPUとの差は下位GPUとの差にくらべ大きく、Radeon R9 380XのスコアはRadeon R9 390には30%前後、GeForce GTX 970には20%前後の差をつけられている。

 3DMark11では、Radeon R9 380との差は変わらず10%前後だが、GeForce GTX 960にスコアを逆転されている。逆転されたとは言え、その差は2%程度と僅差であり、ベンチマークテストの得手不得手はあるにせよ、GeForce GTX 960に対して、Radeon R9 380Xは同等以上の性能を持っているという認識で良いだろう。

【グラフ1】3DMark - Fire Strike(1,920×1,080ドット)
【グラフ2】3DMark - Fire Strike Extreme(2,560×1,440ドット)
【グラフ3】3DMark - Fire Strike Ultra(3,840×2,160ドット)
【グラフ4】3DMark - Skyac Diver
【グラフ5】3DMark - Cloud Gate
【グラフ6】3DMark - Ice Storm Extreme
【グラフ7】3DMark11 [Extreme]

 The Witcher 3: Wild Huntでは、3DMark Fire Strikeでは劣勢だったGeForce GTX 960がRadeon R9 380を僅かに上回るフレームレートを記録しているが、Radeon R9 380Xは、両GPUより10%以上高いフレームレートを記録した。

 3,840×2,160ドットの最高描画設定では、メモリ不足でRadeon R9 380とGeForce GTX 960が大きくフレームレートを落としており、相対的にRadeon R9 380Xの優位が拡大しているが、上位GPUを含め、この設定はゲームとしてプレイ可能なフレームレートでは無い。

【グラフ8】The Witcher 3: Wild Hunt

 ファイナルファンタジーXIVでは、1,920×1,080ドットの画面解像度において、Radeon R9 380に対し10%弱の差をつけているRadeon R9 380Xだが、DirectX 11の最高描画設定ではGeForce GTX 960とほぼ同等のスコアとなっている。

 ただし、3,840×2,160ドットの画面解像度ではRadeon R9 380XがGeForce GTX 960に20〜30%の差をつけて逆転している。メモリ帯域の差が効いているという面もあるが、同画面解像度のDirectX 11の最高描画設定は2GBのVRAMでは不足する傾向がみられ、Radeon R9 380も大きくスコアを落としている。

【グラフ9】ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク

 MHFベンチマークでも、Radeon R9 380XはRadeon R9 380に10%弱の差をつけている。GeForce GTX 960に対しては、1,920×1,080ドットでは約3%の差に留まるが、3,840×2,160ドットでは約15%差に拡大している。モニタリングした限り、このベンチマークではVRAMの不足は確認できておらず、このスコア差の拡大はメモリ帯域などによるものだろう。

【グラフ10】MHFベンチマーク【大討伐】

 最後は各GPU搭載したシステムの消費電力を測定した結果の比較だ。消費電力はサンワサプライのワットチェッカーを使用し、アイドル時と各ベンチマーク実行中の最大消費電力を測定した。

 Radeon R9 380Xのアイドル時の消費電力は51Wで、これは比較した6製品の中で3番目に高い結果で、下位のRadeon R9 380の50Wとは1W差。ほぼ同等の結果と言ってよいだろう。一方、GeForce勢はGeForce GTX 960が43W、GeForce GTX 970は47Wをそれぞれ記録している。アイドル時の消費電力についてはGeForce搭載製品の方がやや優位なようだ。

 ベンチマーク実行中の消費電力については、Radeon R9 380Xは210〜240W前後を記録。これは下位モデルのRadeon R9 380とほぼ同じ結果だ。ベンチマーク時消費電力が100W台に収まっているGeForce GTX 960の電力対性能比には及ばないが、電源ユニットに求められる出力は、それほど大きいわけではないようだ。

【グラフ11】システム全体の消費電力

Radeon R9 380X

 以上の通り、Radeon R9 380Xを搭載したSTRIX-R9380X-OC4G-GAMINGの性能をベンチマークテストでチェックしてみた。Radeon R9 380の上位GPUとして、消費電力の増加は抑えつつ、おおよそ10%程度上回る性能を実現したのがRadeon R9 380Xだ。

 この性能向上により、GeForceが得意とするタイトルでも、GeForce GTX 960を上回ることが可能となっており、フルHD(1,920×1,080ドット)を超える画面解像度であれば、256bitのメモリインターフェイスによるメモリ帯域のアドバンテージが効いてくる。さすがに3,840×2,160ドットの4K解像度は厳しいが、フルHDと4Kの中間でゲームを楽しみたいなら魅力的なGPUとなりそうだ。

(三門 修太)