レビュー
最新版GCNを搭載したミドルハイGPU「Radeon R9 285」
(2014/9/2 21:01)
AMDより、Radeon R9シリーズの新GPU「Radeon R9 285」を搭載したビデオカードを借用する機会を得られた。今回はベンチマークテストにより、Radeon R9 285の性能をチェックしてみた。
最新のGCNアーキテクチャを採用するミドルハイGPU
Radeon R9 285(以下R9 285)は、新設計のGPUコア「Tonga」を採用するミドルハイGPUだ。28nmプロセスで製造されるTongaコアは、最新版のGraphics Core Nextアーキテクチャを採用しており、DirectX 12およびMantleをサポートする。R9 285は、1,792基のStream Processorと112基のテクスチャユニットを備え、256bitのメモリインターフェイスで5.5GHz動作のGDDR5メモリと接続されている。
R9 285は、既存のミドルハイGPUであるRadeon R9 280/280Xのうち、R9 280を置き換える形でラインナップに加わることになる。両GPUのStreaming Processorやテクスチャユニットの数は同じだが、メモリインターフェイスはR9 280の384bitから削減された。
GPU自体のスペックとしては、R9 280から若干スペックダウンしているR9 285だが、Radeon HD 7900シリーズの設計を流用していたR9 280/280Xとは違い、最新版のGraphics Core Nextアーキテクチャへとアップデートされたことで、R9 280/280XがサポートしていなかったTrueAudioをサポートしたほか、動画デコーダの「UVD」が、4K解像度のH.264動画対応へと強化されている。
Radeon R9 285 | Radeon R9 280 | Radeon R9 280X | |
---|---|---|---|
製造プロセス | 28nm | ||
GPUクロック(最大) | 918MHz | 933MHz | 1,000MHz |
Streaming Processor | 1,792基 | 2,048基 | |
テクスチャユニット | 112基 | 128基 | |
メモリ容量 | 2GB GDDR5 | 3GB GDDR5 | |
メモリクロック | 5.5GHz | 5.0GHz | 6.0GHz |
メモリインターフェイス | 256bit | 384bit | |
TrueAudio | 対応 | - | - |
Mantle | 対応 |
今回、AMDより借用したR9 285搭載ビデオカードはリファレンスボードではなく、Powercolor製の「AXR9 285 2GBD5-TDHE」だった。同製品は、2基のファンを搭載した2スロット占有仕様のGPUクーラーを備え、R9 285を945MHzにオーバークロックして搭載している。
AXR9 285 2GBD5-TDHEの基板上部にCrossFire端子は存在しないが、R9 285はRadeon R9 290シリーズ同様、最新版のCrossFireに対応しており、CrossFireコネクタ無しでのマルチグラフィックス動作が可能となっている。
テスト機材
今回、R9 285の検証を行なうにあたって、Radeon R9 280X(以下R9 280X)と、GeForce GTX 760(以下GTX 760)を用意した。
なお、R9 285を含め、今回用意したビデオカードがいずれもGPUをオーバークロックしたモデルであったため、テスト実行時は、各GPUのリファレンスクロックまでダウンクロックしている。
GPU | R9 285 | R9 280X | GTX 760 |
---|---|---|---|
CPU | Intel Core i7-4790K | ||
マザーボード | ASUS MAXIMUS VII GENE | ||
メモリ | DDR3-1600 4GB×4(9-9-9-24、1.50V) | ||
ストレージ | 120GB SSD(Intel SSD 510シリーズ) | ||
電源 | Antec HCP-1200(1,200W 80PLUS GOLD) | ||
グラフィックスドライバ | 14.30.1005Beta2 | Catalyst 14.7 Beta | GeForce 340.52 Driver |
OS | Windows 8.1 Pro Update 64bit |
ベンチマーク結果
それではベンチマークテストの結果を確認していく。実施したベンチマークテストは「Battlefield 4」(グラフ1、2)、「3DMark」(3、4、5、6、7)、「3DMark11」(グラフ8)、「ファイナルファンタジーXIV」(グラフ9)、「MHFベンチマーク【大討伐】」(グラフ10)、「PSO2ベンチマーク ver 2.0」(グラフ11)。
まずは、DirectX 11に加え、AMD独自APIのMantleに対応したBattlefield4でのベンチマーク結果だ。描画設定毎にグラフ化している。
DirectX 11で動作させたR9 285は、極端に低いfpsを記録した3,840×2,160ドット(最高設定)を除き、ライバルのGTX 760を10%以上上回り、上位モデルとなるR9 280Xを12~15%程度下回った。3,840×2,160ドットで描画設定を最高にした場合のfpsについては、メモリバスが削減された影響もあってか、R9 280Xの半分以下という結果に終わっているが、そもそも比較製品はいずれも30fpsを大きく下回っており、満足にプレイできないという点では差のない結果と言える。
APIをMantleに変更した場合、R9 285についてはDirectX 11を下回るfpsになってしまっている。これについてAMDは、現在のゲームがサポートしているMantleが、R9 285が採用した最新版のGraphics Core Nextアーキテクチャに最適化されていないためであるとしている。なお、R9 280Xがほぼ横ばいの結果だが、これはCPUが非常に強力であるため、DirectX 11でもGPU性能をフルに活用できているためだろう。
Radeonが有利な傾向のある3DMarkに関しては、4つのベンチマークテストともR9 285がGTX 760を上回った。3DMark11ではGTX 760に逆転されているが、その差はごくわずかであり、R9 285はGTX 760と互角以上の性能を発揮していると言って差し支えない。
そのほかのベンチマークでも、R9 285はGTX 760と互角以上という傾向が見られており、 PSO2キャラクタークリエイト体験版 Ver.2.0以外はR9 285がGTX 760を上回った。また、R9 280Xに比べ、メモリ帯域が削減されているものの、画面解像度を上げても急激に性能差がひらくような傾向は確認できない。
最後に、各ベンチマークテスト実行時にシステムが消費した最大電力を測定したので紹介する。消費電力の測定は、サンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)で行なった。
アイドル時の消費電力が最も低かったのはGTX 760が記録した54Wで、R9 285は2W差でそれに続く56W。これはR9 280Xより4W低い結果でもある。
ベンチマークテスト実行中の消費電力については、テストによって優劣がはっきりしているものがあるものの、R9 285とGTX 760はほぼ同程度の消費電力となっており、ベンチマークスコアや消費電力を含め、ライバルに相応しい結果であると言えよう。
R9 280Xとの比較でも、ベンチマークテスト実行時はおおむね20~30%。最大で60Wもの消費電力差がついており、新GPUコアの採用で、確実に消費電力は削減されているようだ。
R9 280シリーズよりGTX 760対抗モデルらしさの増したR9 285
R9 285は、前世代のハイエンドGPUをミドルハイにスライドさせたR9 280/280Xよりも、ミドルハイGPUらしいスペックのGPUであると言える。ライバルとなるGTX 760に対しても、性能と消費電力の両面で張り合えるようになっており、遅れてやってきたRadeon R9シリーズ真のミドルハイGPUであるという認識で良いだろう。
最新版のGraphics Core Nextアーキテクチャの採用でミドルハイGPUらしい製品に仕上がったR9 285だが、Mantle利用時に性能が低下してしまった点は気がかりだ。Mantle抜きでもGTX 760の対抗モデルとなり得るGPUではあるが、今後の改善を切に期待したいところである。