レビュー
メカニカル風メンブレンキーボード「Razer Ornata」を試す
2017年1月31日 06:00
Razerより、“メカニカル風メンブレンスイッチ”を採用したキーボード「Ornata」の日本語版が本日より発売となった。
税別価格は、Chromaライティングシステムを備えた「Ornata Chroma 日本語レイアウト版」が13,800円、グリーンLEDバックライト搭載の「Ornata 日本語レイアウト版」が9,800円となっている。発売に先立って前者のサンプルを入手できたので、使用感をお伝えしたい。
Razerのペリフェラル製品は、マウスがヘビ、キーボードがクモから名前を採っている。2016年末に新たに発表された本製品とて例外ではなく、Ornataもクモの一種のようである(ただし、オオツチグモの一種とされるPoecilotheria Ornataなのか、アシナガグモの一種とされるMenosira Ornataなのか不明)。いずれにしても、普通の人からすれば危険動物だ。
本製品の最大の特徴は、Razerが独自開発した「メカ・メンブレン」キースイッチを搭載していることだ。キースイッチはオーソドックスなメンブレンを採用しているが、プランジャー構造で安定性を増し、軸に小さな突起、外枠に金属の板バネを設けることで、「カチッ」と音が鳴る“メカニカル風”--もう少し具体的に言うと“Cherry MX青軸風”--の音を出す構造を実現した。
メカニカルキーボードにおいて、音でしっかりタイプをしたことを確認したいユーザーにとって、青軸などの構造は唯一無二ではあるのだが、Ornataの“音がするポイント”は“アクチュエーションポイント(キーが実際に入力されるポイント)”というわけではない。キーによって若干の誤差はあるが、アクチュエーションポイントは概ね音がするポイントよりやや下に位置する。これはメンブレンの仕組みとキーの構造上致し方ないところではある。とは言え、よほど軽く慎重に押さない限りは「音がしたのに入力されない」状況にはなりえないはずだ。
ちなみに“青軸風”とは言っているが、これはあくまでも音とカチッとするポイントの感触の話であり、タイピング感は青軸と大きく異なる。Ornataはメンブレンなので、底打ちした時は非常にソフトな印象を受ける。また、キーの戻りもメカニカルと比較すると若干遅い印象を受けるが、あくまでも印象的な話であり、実際はかなりの連打も問題ないレベルだ。
Ornataはキーの高さを半分程度に抑えているが、ストロークは実測4mmほど確保されており、そのほかのキーボードと遜色ない。ただ見た目的に薄い方がスマートな印象を受ける。キートップは滑り止め加工がされたようなラバーに近い感触で、これは斬新だと感じた。
本製品のもう1つの特徴はChromaライティングだろう。実は筆者は初めてキーボードのChromaを試すが、自由度の高さに驚いた。設定はほかの製品同様、「Razer Synapse」上から行なう。「呼吸音」、「ファイア」、「反応性」、「波紋効果」、「スペクトラム サイクリング」、「ストレート」、「静的」、「ウェーブ」という8種類のエフェクトに加えて、「カスタム設定」では、複数のエフェクトレイヤーを組み合わせて、キー1つずつのエフェクトを設定できる。
例えば、押下した時にそのキーを中心として波紋のようなエフェクトが広がる「波紋効果」をキートップ全体に設定しつつ、押下していない時のW/A/S/Dは青に、そのほかの左手主要キーは「ファイア」、数字キーは「静的」な固定色、残りのキーは左から右に色が変化していく「ウェーブ」を適用する、と言ったことが可能だ。
このカスタム設定は「CHROMAコンフィグレーター」上から行なう。設定したいキーは左上ペインからエリアごとに一括選択できるほか、キー個別をクリック、またはCtrlを押しながら複数を選択できる。その後エフェクトを選んで、「エフェクトレイヤー」の下の「+」を押すと、そのエフェクトが選択したキーに適用される、と言った具合だ。
エフェクトレイヤーは上にあればあるほど優先されるので、1つのキーに2つの押下フェクトを設定した場合、上の方にあるレイヤーの方が優先して設定される。そのため「波紋効果」と「応答性」と言った押下時のエフェクトは、上に持ってくると良いだろう。
このほかにも、Chromaライティングに対応したアプリやゲームがあれば、それと連動したライティングも可能になっている。残念ながら筆者は1つも対応ゲームを所持していないので今回試せなかったのだが、そのほかのChroma対応デバイスと組み合わせることで、ゲームへの没入感を高められそうだ。
さて、そのほかのポイントについても抑えていこう。本製品はゲーミングキーボードらしくアンチゴースト機能が付いているが、同時押しは10キーまでとなっている。USBケーブルはファブリックタイプだが、同社製マウス「DeathAdder Elite」ほどは柔らかくはない。キーボードは大きく動かすものではないので問題はないだろう。底面には排水口があり、多少水をかぶっても大丈夫だと思われる。
本製品には大きなパームレストが付属しているのも特徴。弱い力ながら磁石で本体手前とくっつくようになっている。写真で見るとパームレストの方が若干高いのだが、まるで空気のような柔らかいクッションでふわっと沈み、ちょうど良い高さとなる。表面は革となっており、手触りは良い。これだけでも欲しくなるぐらいだ。
底面のケーブルは真ん中と左右の3方向からケーブルを出せるように溝を用意しているほか、チルトスタンドも装備している。キートップが見にくいといった場合は調整すると良いだろう。
試していて気になったのはRazer Synapseの日本語訳で、先ほど述べたライティングエフェクトの名前はやや不自然で、一考の余地があるだろう。また、「CHROMAコンフィグレーター」は明らかに誤訳(誤表記)で、本来「コンフィギュレーター」とすべきだ。またその音引きも、片方は「ー」であるのに対し、最後は「―」になっている。この辺りはアップデートで改善を望みたい。
本製品は確かにRazerの言い分通り、これまでにない新しい感覚のキーボードだ。もっとも、同時押しは10キーまでだし、メンブレンスイッチを採用している関係上、エントリー向けという域は出ないのだが、Chromaライティングで視覚的にも楽しめる製品に仕上がっている。
ちなみに「キーボードなんてタッチタイピングできないからイチイチ見ないよ」というユーザーでも、一度はChromaライティング付きのキーボードを試してみて欲しい。ディスプレイとの距離が一般的な環境では、意外にも目に入って来るものだ。その光を邪魔だと見るか楽しいと見るかは人それぞれだが、光り物好きの筆者は後者である。