特集
【パワレポ連動特別企画】
改造バカもMt.Gox使ってました! コイン盗難にもあった!
~自作PCで採掘する高橋敏也が、仮想通貨の実態を緊急レポート
(2014/3/1 00:00)
2014年2月25日、東京・渋谷にあるMt.Gox(マウントゴックス)という「Bitcoin」の取引所が活動を停止した。このニュースはTVなどでも大々的に取り上げられ、すでに多くの人が知っていることと思う。だが、筆者の場合は報道などでそれを知ったのではなく、Mt.Goxのサイトにアクセスしトップページが真っ白なのを見て、画面蒼白になったクチなのである。不肖・高橋、改造バカ。何を隠そう、Mt.Goxにアカウント登録していた利用者なのである。
Mt.Goxが扱うBitcoinは、世界で最も普及している仮想通貨。そしてMt.GoxはそのBitcoinをリアルなお金で売買、すなわち取り引きをする場所。Bitcoinが世界一の仮想通貨なら、Mt.Goxはほんの少し前まで世界一のBitcoin取引所だった(最近ほかの取引所に抜かれた)。Mt.Goxの利用者は全世界にいるし、Bitcoinの取り扱い量も大きい。もちろん利用者からの預かり金(リアルなお金の方)もかなりの額に達しているだろう。そんなところが活動を停止すれば世界規模のニュースになるのも当然の話だ。
さてさて。この辺で「仮想通貨って何?」という話に触れなければならないだろう。これがですね、やってみれば簡単なのだけど、説明したり理解するのが大変難しいという、なんともライター泣かせの存在なのだ。なので敢えてここでは「サトシ・ナカモトという匿名の人物が発表した論文に基づき、2009年ぐらいにその運用が始まった」とか、そういった話は省く。たぶんその辺りは親切な一般向けのメディアさんがやってくれているに違いない。
ここではそういった一般メディアとは違った切り口で、Bitcoinを始めとする仮想通貨に関してレポートを行なってみたい。テーマは大きく分けて2つ、“マイナー”(Miner)すなわち採掘者と、“マイニング”すなわち採掘に関してである。仮想通貨というものは「鉱山(インターネット)に入って、採掘すなわちマイニング(計算処理)をすると入手できる」のだ。そして採掘をする人々、あるいはグループのことを採掘者(マイナー)と呼ぶのである。ちなみに我らがアイドル、ま※んちゃんはまったく関係ないので悪しからず。
マイナーはプールでマイニングする、これ仮想通貨の常識
Bitcoinを始めとする仮想通貨を入手するにはどうしたらいいか? 大きく分けて2つの方法がある。まず1つはMt.Goxのような取引所にリアルなお金を入金し、そのお金で購入する方法だ。ちなみに取引所では逆のこと、すなわち自分の持っている仮想通貨を売って、それをリアルなお金に換金することでもできる(その取引所が止まっちゃったんだよね……)。
もう1つの方法が、これまた大変ややこしい話になる。Bitcoinなどの仮想通貨とはネット上に分散されたデータであり、発行(採掘に成功すること)や取引データの認証や記録は、マイニングという高度な計算処理によって支えられているのだ。
もう少しかみ砕くと、マイナーはBitcoinが存在し流通するのに必要な計算処理を、自分のPCなどで提供する。これがマイニングだ。そしてその提供度合いに応じて、報酬として新規発行分のBitcoinを手に入れるのである。ではなぜにマイナーとか、マイニングとか、ややこしい呼称を使うのか? 実はBitcoinのような仮想通貨の創出が、金や銀などの採掘に似ているからなのである。
金や銀は価値がある。もし欲しいと思うなら、鉱山で採掘すればいい。しかし、採掘するには高度な技術が必要だろうし、苦労も伴うだろう。また、多くの人々が採掘にチャレンジするようになれば、1人が入手できる機会はどんどん減っていく。より高度な技術や経験を持った人々だけが、採掘に成功するようになる。しかし、山に埋蔵されている金や銀は有限なので、最後まで掘りつくされてしまえば、それ以降は採掘することができなくなる。
他方、Bitcoinにも価値がある。もし欲しいと思うなら、計算処理能力を提供して、ネットから手に入れればいいが、それには高性能なプロセッサが必要だし、消費電力も膨大になるだろう。また、多くの人々が計算処理を提供するようになれば、入手機会は広く分散してしまう。よりハイエンドの処理能力を持った人々だけがBitcoinを入手できるようになり、最終的にはBitcoinの発行上限に至り、それ以降は入手できなくなる。
Bitcoinはこのように設計されているのだ。発行枚数の上限が決まっていて、その上限枚数に近付けば近付くほど、マイニングの難易度は高まっていく。Bitcoinが登場した当初は、個人のそこそこのスペックのPCでもマイニングができた。それが高性能PCでないと難しくなり、やがてハイエンドビデオカードを使うようになり、消費電力の増大を回避するため、ASICというマイニングを専門とするチップまで誕生した。もっとも最近ではそのASICチップですら、大量に並列動作させないと、Bitcoinの採掘は難しいのである。
現時点においてごく普通の個人が、かけたコストに見合う量のBitcoinをマイニングするのは不可能なのである。では例えば筆者、改造バカはいったい何をマイニングしているのか? 実はBitcoinではなく、別の仮想通貨をマイニングしているのである。
Bitcoin以降、仮想通貨は雨後の筍
まさに、雨後の筍状態。仮想通貨の世界ではよく「Bitcoinは金、Litecoinは銀」と言われている。仮想通貨は何もBitcoinだけではないのだ。Bitcoinはあくまで世界一の仮想通貨というだけで、唯一の存在ではない。例えば世界第2位の仮想通貨はLitecoinと呼ばれるもので、仕組はBitcoinとほぼ同様、ただしマイニングのためのアルゴリズムが異なっている。
ほかも有名どころを並べるとPeercoin、DogeCoin、Ntx、Mastercoin、Feathercoinなどなど。筆者が仮想通貨のマイニングを始めた頃は、50~60種類だった仮想通貨(有名どころだけで)が、今や有名無名を合わせると1,000種類を軽く突破すると言われている。中には日本発、しかも2ちゃんねる発のモナーコイン(モナコイン、Monacoin)などというのもある。もちろんこれらの仮想通貨は、その人気度などに応じて価値がまちまち、マイニングの難易度もまちまちである。
しかし、飛び抜けたBitcoin以外の仮想通貨は、なんとか個人でマイニング可能な難易度にある。それもPCベースのマイニングマシンでだ。もちろん処理能力の高いPCを使えば、それだけマイニングのペースはアップする。ただし人気度の高い仮想通貨となると、CPUによるマイニングはかなりつらい。そこで個人のマイナーがよく使っているのが、ハイエンドビデオカードを装備したマイニングマシンである。要するにGPUの計算能力を活用するのだ。
いや、長かった! 本当に長かった! ついに自作PCの出番である。そう、より高性能なマイニングマシンを用意したいなら、筆者のテリトリーである自作PCが一番なのである。1台のPCでハイエンドのビデオカードを複数枚使用するとなると、市販のPCでは難しい。さらに市販のPCにビデオカードを増設しようとしても、今度は電源ユニットの容量が追い付かない。それならいっそのこと、自分でパーツを用意して、自作PCとして組んでしまうのが一番という流れである。
しかも自作PCなら、パーツコストのバランスを取るのが容易だ。例えば本体ケースやHDDなどのストレージ、CPUやマザーボード、メモリなどは低価格路線で構わない。マイニングマシンはハイエンドビデオカード複数枚装備の一点突破PCなのである。ビデオカード以外に気を使うのは電源ユニットだけで、ビデオカード構成に見合った容量で、安定動作するものを選びたい。
マイニング用の自作PCが用意できたら、あとはターゲットとなる仮想通貨を決め、マイニングプールにアカウントを作り、マイニングを開始するのだ。マイニングプールというのは、複数のマイナーが共同してマイニングを行なうサーバーのようなものだ。個人でマイニングを行なうことも可能で、それはソロマイニングと呼ばれているのだが、それは相当パワフルな環境を整えないとつらい。そこでマイニングプールに参加するプールマイニングが一般的になっている。
マイニングを始めたら、自分のPCにターゲットとした仮想通貨の財布(Wallet)をインストールして、プールからのペイアウト(支払い)を待とう。設定に間違いがなければ、マイニングに参加した報酬としてプールから仮想通貨が送られてくるはずだ。難易度と価値の高い仮想通貨をじっくり掘るか、逆にマイナーな仮想通貨をザクザク掘るか? この辺りを考えるのも、マイニングの楽しみの1つである。
実録! 仮想通貨を盗まれた! Mt.Gox停止で青ざめた!
さて、筆者のマイニング状況はどうなっているか? 筆者の場合、生まれて初めてマイニングにチャレンジした仮想通貨はLitecoinだった。5枚のハイエンドビデオカードを3台の自作PCに分散搭載してマイニング、1日に1枚と少しLitecoinを入手できた。ちなみに入手したLitecoinは海外の取引所を利用して、Bitcoinに交換する。そのBitcoinをMt.Goxに移動、日本円に換金して出金という流れを「1度だけ」試してみた。そして少しだけ資金がMt.Goxに残った状態で、そのMt.Goxが活動停止してしまった。
筆者の場合、換金よりもマイニング自体に興味があったので、換金を体験した後は比較的枚数を稼げるFeathercoinにチャレンジし、現在はDogeCoinをマイニングしている。換金は主目的ではないので、枚数をたくさんゲットできる方が楽しいからだ。
そしてここでまた悲惨なトラブルが発生した。ビデオカードを揃え、電気代を費やし、苦労して入手したDogeCoinをクラッカーに盗まれてしまったのである! その手口は極めて単純。バージョンアップ版と称して偽の財布を掴ませ、それが起動するのと同時に全コインを任意のアドレスに送金してしまうというものだった。こんな単純な手に引っかかったのは、筆者のセキュリティが甘かったからであり、自己責任の掟にのっとって、罵詈雑言を発するのはグッと我慢した。
仮想通貨はまだまだ歴史の浅いテクノロジであり、システムである。安全性が十分に確保されているわけではなく、さまざまなトラブルと危険が潜んでいる。自作PCと同様、仮想通貨は「自己責任」が基本である。財布を分散して安全性したり、信用できるマイニングプールを探したり、クラッカー対策を行なったり……。マイニングそのものだけでなく、その環境にも十分配慮しなくてはならない。それを理解した上で、興味が湧いたなら、楽しむ感覚でマイニングをしてみてはいかがだろうか?(セキュリティを確保した上でね)。
最後に私見を申し上げるなら、仮想通貨を投資として考えるのはリスクが大き過ぎる。ぶっちゃけた話、友人、知人から「仮想通貨ってさ(マイニングも含めて)、儲かるかな?」と聞かれたら速攻で「労多くして実り少なし!」と答えるだろう。投資など考えずに、ゲーム感覚でマイニングを楽しむ。自作PCユーザーとしては、マイニング効率と省電力性を考慮したパーツ選びがたまらない。特典は入手した仮想通貨の枚数、そうやって入手した仮想通貨が将来どう化けるかはお楽しみでよいじゃないかと。そう思いながら、Mt.Goxに関する報道をネットでチェックする高橋でありました。
最後に宣伝。自作PCをベースにしたマイニングマシンや、使用するソフト、マイニングプールに関しては、「DOS/V POWER REPORT 4月号」の「高橋敏也の改造バカ一台」でレポートしている。興味のある方は是非そちらも参考にしていただきたい。