AMDデスクトップ版Trinityベンチマークプレビュー
~グラフィックス性能をチェック


 AMD未発表の次世代APUであるTrinityの正式発表に先立ち、「A10-5800K」と「A8-5600K」の2製品についてグラフィックス性能を検証する機会を得たので、ベンチマークテストによって最新APUが備えるGPUのパフォーマンスについて確認する。なお、今回はグラフィック関連のベンチマークしか実行できないため、システムベンチの結果については、別途レビューをお届けする。

AMD A10-5800KAMD A8-5600K
A10-5800K(左)とA8-5600K、A8-3870K(右)。CPUのサイズに変更は無いが、裏面のピン配置が異なる

●テスト機材

 それでは早速ベンチマークスコアの紹介に移りたい。今回、A10-5800KとA8-5600Kの比較対象として、デスクトップ向けLlanoの最上位モデルA8-3870Kと、Intel Core i3-3225(以下i3-3225)を用意した。

【表1】比較製品のスペック比較
 A10-5800KA8-5600KA8-3870KCore i3-3225
モジュール数22
CPUコア数4442
スレッド数4444
CPUクロック3.8GHz3.6GHz3.0GHz3.3GHz
Turbo COREクロック4.2GHz3.9GHz
GPUコアRadeon HD 7660DRadeon HD 7560DRadeon HD 6550DIntel HD Graphics 4000
AMD Radeon Core384基256基400基
Execution Units16基
GPUクロック(定格)800MHz760MHz600MHz650MHz
GPUクロック(最大)1.05GHz
【表2】テスト機材
APU/CPUA10-5800K
A8-5600K
A8-3870KCore i3-3225
マザーボードASUS F2A85-M PRO
(BIOS:5014)
ASUS F1A75-M PRO
(BIOS:2206)
ASUS MAXIMUS V GENE
(BIOS:1204)
メモリDDR3-1866 4GB×2
(9-10-9-28、1.5V)
VRAM1GB
ストレージWestern Digital WD5000AAKX
電源Silver Stone SST-ST75F-P
ディスプレイ解像度1,920×1,080ドット
グラフィックスドライバCatalyst 12.815.26.12.64.2761
(8.15.10.2761)
OSWindows 7 Ultimate SP1 64bit

●DirectX 11対応ベンチマークテスト

 まずはDirectX 11対応ベンチマークテストのスコアから紹介する。実施したテストは「3DMark 11」(グラフ1、2、3)、「Unigine Heaven Benchmark 3.0」(グラフ4)、「Lost Planet 2 Benchmark DX11」(グラフ5)、「Stone Giant DX11 Benchmark」(グラフ6)、「Alien vs. Predator DX11 Benchmark」(グラフ7、8)だ。

 Radeon HD 7660Dを備えるA10-5800Kは、下位モデルのA8-5600Kより2~3割ほど高いスコアを記録し、これまでデスクトップ向けAPUで最高のグラフィックス性能を誇っていたA8-3870Kに対しては概ね3~4割前後、テストによっては8割近い差をつけている。新旧A8シリーズのスコア差は1~2割程度とさほど大きくないものの、Trinity世代で追加されるA10シリーズのグラフィックス性能は確実に強化されていることが見てとれる。

【グラフ1】3DMark 11 Build 1.0.3
【グラフ2】3DMark 11 Build 1.0.3(Graphics Score)
【グラフ3】3DMark 11 Build 1.0.3(Combined Score)
【グラフ4】Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX11、1,280×720)
【グラフ5】Lost Planet 2 Benchmark(DX11・テストタイプB)
【グラフ6】Stone Giant DX11 Benchmark(1,280×720)
【グラフ7】Alien vs. Predator DX11 Benchmark(1,280×720)
【グラフ8】Alien vs. Predator DX11 Benchmark(1,920×1,080)

●DirectX 9/10対応ベンチマークテスト

 続いてDirectX 9世代とDirectX 10世代のベンチマークテストのスコアを紹介する。実施したテストは「3DMark Vantage」(グラフ9、10)、Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX10)」(グラフ11)、「3DMark06 Build 1.2.0」(グラフ12、13)、「MHFベンチマーク 【大討伐】」(グラフ14)、「ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク」(グラフ15)、「Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX9)」(グラフ16)、「Lost Planet 2 Benchmark DX9」(グラフ17)、「ファンタシースターオンライン2 ベンチマーク」(グラフ18)だ。

 これらのベンチマークテストでは、A10-5800KとA8-5600Kのスコア差は2割前後、A10-5800KとA8-3870Kは3割前後の差となった。僅かに差が縮まってはいるものの、各製品の傾向はDirectX 11世代のテストと同様で、A10-5800Kのスコアが頭一つ抜け出しているグラフが多くみられる。

 Ivy Bridge世代の最上位内蔵GPU「Intel HD Graphics 4000」を備えるCore i3-3225との比較では、描画負荷が大きくなるほどTrinityがスコア差を広げており、A10-5800Kが2~3倍、A8-5600Kでも1.5~2.5倍程度の差をつけている。Ivy Bridge世代になってLlanoとの差を詰めたIntel製CPUの内蔵GPUだったが、A10シリーズの登場によりその差は再び大きく開くことになるようだ。

【グラフ9】3DMark Vantage Build 1.1.0
【グラフ10】3DMark Vantage Build 1.1.0(Graphics Score)
【グラフ11】Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX10)
【グラフ12】3DMark06 Build 1.2.0
【グラフ13】3DMark06 Build 1.2.0(1,920×1,080、8x AA、16x AF)
【グラフ14】MHFベンチマーク 【大討伐】
【グラフ15】ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク
【グラフ16】Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX9)
【グラフ17】Lost Planet 2 Benchmark(DX9)
【グラフ18】ファンタシースターオンライン2 ベンチマーク

●消費電力測定

 最後に、サンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)を利用して測定した、各テスト実行中の最大消費電力を測定した。

【グラフ19】システム全体の消費電力

 消費電力については、アイドル時は各製品がほぼ横並びの結果となった一方で、ベンチマークテスト実行中の最大消費電力については最大で60Wと、大きく差のつく結果となった。もっとも消費電力が高かったのはA10-5800Kで、以下A8-5600K、A8-3870K、i3-3225と続く。

 全体的にみて、Lost Planet2の実行時にA10-5800KとA8-5600Kとの消費電力差が40W近く開いているなど、A10-5800Kの消費電力の高さが目立つ結果となっているのだが、それぞれCPU側のスペックが異なっている。この消費電力測定結果が、単純にA10-5800KとA8-5600KのGPU消費電力が大きく異なっているということを示しているわけではない点に注意いただきたい。

●順当に強化されたGPU、グラフィックス性能ではIvy Bridgeを圧倒

 今回のベンチマーク結果から、Trinity世代のデスクトップ向けAPUのグラフィックス性能がLlanoベースの第1世代AMD AシリーズAPUから順当に強化されていることが確認できた。CPU側のパフォーマンス次第でもあるが、CPU内蔵GPUの使用を前提としたエントリー向けPCや省スペースPCにおいて、Trinity世代のAPUが魅力的な選択肢となりそうな結果と言えよう。

 Trinityのシステムベンチやより詳しい製品情報については、製品の正式発表を待ってお届けする。今しばらくお待ちいただきたい。

(2012年 9月 27日)

[Reported by 三門 修太]