GK104ベースのミドルハイ「GeForce GTX 660 Ti」を試す


 NVIDIAは8月16日、Keplerアーキテクチャ採用GPUの新製品「GeForce GTX 660 Ti」を発表した。今回、同GPUを搭載したMSI製ビデオカードを借用できたので、ベンチマークテストを用いてその性能を探ってみた。

●ハイエンドと同じコアを持つミドルハイGPU

 GeForce GTX 660 Ti(以下GTX 660 Ti)は、初のKeplerアーキテクチャ採用GPUとして登場したGeForce GTX 680と同じGK104コアをベースにしたGPUだ。製品のポジションとしては、GeForce GTX 560 Ti(以下GTX 560 Ti)の後継にあたり、GeForce GTX 670(以下GTX 670)の下位に位置するミドルハイGPUだ。

 ハイエンド製品と同じGK104コアを持つGTX 660 Tiでは、フルスペック版GK104からSMXが1基無効にされたほか、メモリインターフェイスが256bitから192bit、ROPユニットは32基から24基、L2キャッシュは512KBから384KBへとそれぞれ削減されている。GPUコアとしては、CUDAコアの数やテクスチャユニットは上位モデルのGTX 670と同数搭載する一方で、メモリ周りの機能が削減された形だ。

 GTX 660 TiのGPUコアは915MHz(GPU Boost時980MHz)で動作し、メモリに6,008MHz相当で動作するGDDR5メモリを2GB搭載している。これはGTX 670と同等のスペックであり、GTX 660 TiはGPUコアからメモリ周りの機能を削減したGTX 670ともいえるスペックのGPUである。

【表1】GeForce GTX 660 Tiの主な仕様

GeForce GTX 660 Ti GeForce GTX 670 GeForce GTX 680
アーキテクチャ Kepler Kepler Kepler
プロセスルール 28nm 28nm 28nm
GPUクロック 915MHz 915MHz 1,006MHz
Boostクロック 980MHz 980MHz 1,058MHz
シェーダクロック
CUDAコア 1,344基 1,344基 1,536基
テクスチャユニット 112基 112基 128基
L2キャッシュ 384KB 512KB 512KB
メモリ容量 2GB GDDR5 2GB GDDR5 2GB GDDR5
メモリクロック(データレート) 1,502MHz(6,008MHz相当) 1,502MHz(6,008MHz相当) 1,502MHz(6,008MHz相当)
メモリインターフェイス 192bit 256bit 256bit
ROPユニット 24基 32基 32基
消費電力 150W 170W 195W

●MSI製のオリジナルオーバークロックモデル

 機材調達の都合上、今回のテストではリファレンス仕様のGTX 660 Tiではなく、MSI製のGTX 660 Ti搭載ビデオカード「N660Ti PE 2GD5/OC」を使ってベンチマークテストを行なった。

 この「N660Ti PE 2GD5/OC」は、GTX 660 TiのGPUコアを1,020MHz(GPU Boost時1,098MHz)にオーバークロックした製品だ。2基のファンを搭載した2スロット占有の大型GPUクーラーを搭載し、ブラケット部のディスプレイ出力にはDVI-I、DVI-D、HDMI、DisplayPortを各1系統ずつ備える。また、基板上部には2基のSLI端子と補助電源供給用の6ピンコネクタを2系統用意している。

GTX 660 Tiを搭載したMSI製ビデオカード「N660Ti PE 2GD5/OC」 補助電源コネクタは6ピン2系統 ブラケット部のディスプレイ出力

●テスト機材

 それではベンチマークテストの結果紹介に移りたい。GTX 660 Tiの比較対象として、GTX 670、GeForce GTX 560 Ti(以下GTX 560 Ti)、Radeon HD 7950(以下HD 7950)、Radeon HD 7870 GHz Edition(以下HD 7870)の4GPUを用意した。ただ、今回用意した比較製品がいずれもMSI製のオーバークロックモデルであったため、それぞれリファレンス仕様相当にダウンクロックしてベンチマークを行なっている。

 なお、先述の通りオーバークロックモデルであるGTX 660 Ti搭載ビデオカードの「N660Ti PE 2GD5/OC」については、比較製品と同様にリファレンス仕様までダウンクロックした際の結果と、製品スペック通りの2パターンでベンチマークテストを行ない、それぞれ「GTX 660 Ti」、「GTX 660 Ti OC」としてデータを掲載している。

【表2】テスト環境
GPU GTX 660 Ti GTX 670
GTX 560 Ti
HD 7870
HD 7950
CPU Intel Core i7-3820
マザーボード ASUS SABERTOOTH X79 (BIOS:2002)
メモリ DDR3-1600 4GB×4
(9-9-9-24、1.5V)
ストレージ Western Digital WD5000AAKX
電源 Silver Stone SST-ST75F-P
ディスプレイ解像度 1,920×1,080ドット
グラフィックスドライバ GeForce 305.37
Driver BETA
GeForce 304.79
Driver BETA
Catalyst 12.7 Beta
OS Windows 7 Ultimate SP1 64bit

MSI製GTX 670搭載ビデオカード「N670GTX Twin Frozr IV PE OC」 MSI製GTX 560 Ti搭載ビデオカード「N560GTX-Ti Twin Frozr II OC」
MSI製HD 7870搭載ビデオカード「R7870 Twin Frozr III OC」 MSI製HD 7950搭載ビデオカード「R7950 Twin Frozr 3GD5/OC」

●DirectX 11対応ベンチマークテスト

 まずはDirectX 11(DX11)対応ベンチマークテストの結果から紹介する。実施したテストは「3DMark 11」(グラフ1、2、3)、「Unigine Heaven Benchmark 3.0」(グラフ4)、「Lost Planet 2 Benchmark DX11」(グラフ5)、「Stone Giant DX11 Benchmark」(グラフ6)、「Alien vs. Predator DX11 Benchmark」(グラフ7、8)だ。

 DirectX 11系のベンチマークテストにおいて、GTX 660 Tiは上位モデルのGTX 670に対しておおよそ1割前後低いスコアを記録した。GTX 670とのスコア差については、3DMark 11のPerformanceプリセット以下のように負荷の軽いテストでは数%差に迫る一方で、Unigine Heaven Benchmark 3.0のアンチエイリアシング適用時には20%近くまで差が開くなど、メモリへの負荷によってその差が増減している傾向がみられる。

 旧製品のGTX 560 Tiに対しては、多くのテストで1.5倍ほど高いスコアを記録しており、後継製品として大幅なパフォーマンスアップを実現していることが伺える。また、競合製品となるHD 7870に対しても優勢なテストが多く、その上位製品であるHD 7950をも上回るスコアを記録しているテストも少なくない。AMD系GPUとの比較でも、GTX 660 Tiのアンチエイリアシング適用時のパフォーマンス低下が目につくが、DirectX 11系ベンチマークテストであればAMDのハイエンドGPUとも対抗し得るパフォーマンスを持っているようだ。

【グラフ1】3DMark 11 Build 1.0.3
【グラフ2】3DMark 11 Build 1.0.3(Graphics Score)
【グラフ3】3DMark 11 Build 1.0.3(Combined Score)
【グラフ4】Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX11、1,920×1,080)
【グラフ5】Lost Planet 2 Benchmark(DX11・テストタイプB)
【グラフ6】Stone Giant DX11 Benchmark(1,920×1,080)
【グラフ7】Alien vs. Predator DX11 Benchmark(1,280×720)
【グラフ8】Alien vs. Predator DX11 Benchmark(1,920×1,080)

●DirectX 9/10対応ベンチマークテスト

 続いて、DirectX 9世代とDirectX 10世代のベンチマークテストの結果を紹介する。実施したテストは「3DMark Vantage」(グラフ9、10)、Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX10)」(グラフ11)、「3DMark06 Build 1.2.0」(グラフ12、13)、「MHFベンチマーク 【大討伐】」(グラフ14)、「ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク」(グラフ15)、「Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX9)」(グラフ16)、「Lost Planet 2 Benchmark DX9」(グラフ17)だ。

 DirectX 9/10のテストでもDirectX 11のベンチマークテスト同様、メモリがボトルネックとなってGTX 670とのスコア差が開いているテストが見受けられる。3DMark06の高負荷設定時(グラフ13)や、Unigine Heaven Benchmark 3.0の結果ではそれが顕著に表れている。また、Unigine Heaven Benchmark 3.0ではHD 7870にも18〜28%の差をつけられており、全体的にはGTX 660 Tiが優勢ではあるものの完勝とはいかないようだ。

【グラフ9】3DMark Vantage Build 1.1.0
【グラフ10】3DMark Vantage Build 1.1.0(Graphics Score)
【グラフ11】Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX10)
【グラフ12】3DMark06 Build 1.2.0
【グラフ13】3DMark06 Build 1.2.0(1,920×1,080、8x AA、16x AF)
【グラフ14】MHFベンチマーク 【大討伐】
【グラフ15】ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク
【グラフ16】Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX9)
【グラフ17】Lost Planet 2 Benchmark(DX9)

●消費電力の比較

 最後に消費電力の測定結果を紹介する。消費電力はサンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)を利用して、各テスト実行中の最大消費電力を測定した。なお、消費電力のテスト結果については、今回テストに使用したビデオカードがMSI製のオーバークロックモデルをダウンクロックしたものであるため、リファレンス仕様のビデオカード同士を比較した結果とは異なる可能性があることにご注意いただきたい。

【グラフ18】システム全体の消費電力

 GTX 660 Tiの消費電力はGTX 670より順当に低いものの、テストによってはAMDのハイエンドGPUであるHD 7950より高く、競合製品であるHD 7870と比べると5〜27W程高い数値を記録している。比較製品中2〜3番手の数値ではあるが、ワットパフォーマンスという観点から見た場合、DirectX 11系ベンチマークとDirectX 9系ベンチマークのどちらのスコアを基準とするかで印象が変わりそうな結果だ。

 もっとも、比較製品中最も高い消費電力を記録したのは1世代前のミドルハイGTX 560 Tiであることからも、28nmプロセス世代のGPUがいずれもワットパフォーマンスに優れたGPUであることがお分かりいただけるだろう。

●高いパフォーマンスを持ったミドルハイGPU。最大のライバルはGTX 670か

 アンチエイリアシング適用時のスコア低下や、DirectX 9系のベンチマークテスト結果から伺えるように、GPUコアから削減されたメモリ周りの機能がボトルネックとなっていることは明らかだが、ミドルハイGPUであることを考えるとGTX 660 Tiのパフォーマンスは優秀なものだ。NVIDIAはGTX 660 Tiについて、1,920×1,080程度の解像度でゲームを楽しむユーザーをターゲットにしているとしているが、GTX 660 Tiはまさにそうした用途に適したGPUであると言えるだろう。

 GTX 660 Ti搭載のビデオカードは3万円台前半から中盤程度の価格で発売されるとみられており、ミドルハイGPUに求められる価格・性能・消費電力の3拍子が揃った製品として市場に登場することになる。ただ、この価格帯には既に上位のGTX 670を搭載した製品も展開している。パフォーマンスから考えれば高すぎる価格設定というわけではないのだが、上位モデルとの価格差が気になる製品となりそうだ。

(2012年 8月 16日)

[Reported by 三門 修太]