アナログ感覚がおもしろいデジタルメモパッド「Boogie Board Rip」を試す

12月2日 発売
価格:14,800円



 「Boogie Board Rip」は、米Kent Displaysによるデジタルメモパッドで、日本ではキングジムなどが取り扱う。発売は12月2日で、価格は14,800円だ。

 Boogie Boardにはいくつかの派生品があり、以前より国内でも流通している。共通する特徴は、黒い表面をスタイラスなどでなぞると、その部分が白くなり、メモを残すことができる。Eraseボタンを押すと、そのメモはキレイに消えてなくなるので、何度でも繰り返し使うことができる。使い勝手としては、先が磁石になってるペンで表面をなぞると、砂鉄が浮かび上がって絵を描いたりできる子供用の玩具と酷似している。

 違うのは、メモが残る仕組みで、反射型の感圧式プラスチック液晶を採用している。圧力が加わるとその部分が白く反転し、Eraseボタンを押すと、瞬時に元の黒い画面になる。また、液晶でありながら、電子ペーパーのように表示の持続には電力を消費せず、消去の時にだけ通電するので、消費する電力量は小さい。実際、Boogie Board Ripの場合では、1回の充電で約1週間使用できる。

 こういった手軽でエコな仕様、そして5千円前後という価格から、従来品は国内でも一定の人気を博しており、Kent Displaysによると、これまで世界で約100万台が出荷され、その内20~25%が日本で販売されたという。

●新たに保存機能を搭載

 今回ラインナップに加わったBoogie Board Ripは、こういった仕様に、メモを保存する機能を追加したものだ。

 使い方は至って簡単で、Save/Wakeボタンを1度押して、保存待ち受け状態にしておき、メモを書き終わったら、もう1度Save/Wakeボタンを押す。これで、本体内のメモリに480×640ドットのベクターPDFとして保存される。メモリ容量は8MBで、100枚程度保存できる。

 保存待ち受け状態という、説明書にも書かれていない、ややまどろっこしい表現をしたのは、この製品はメモを書く際も電力を必要としないので、メモを書いている時に、実は電源がオフになっているということがあるからだ。具体的には、USBケーブルを抜いた後、消去ロックスイッチをオフにした後、保存待ち受け状態のまま60分アイドル状態が続いた後などだ。この状態でもメモは取れるが、そこでSave/Wakeボタンを押しても、保存はなされない。つまり、わざわざSave/Wakeボタンと表記されてるのは、保存に先だって本体を起こしてやる必要があるからだ。保存待ち受け状態の時は、Status LEDが緑色に点滅し、スタイラスが画面に触れている間は点灯するようになっているので、確実にメモを残したい時は、それをチェックする必要がある。

 もう1つ注意点として、Boogie Boardの画面は、感圧式なので爪の先や、他のペンなどでも同じように書くことができる。しかし、メモを保存できるのは、付属のスタイラスで書いた時のみとなっている。というのも、このスタイラスはコイルを内蔵しており、電磁誘導でペンの軌跡を検出しているためだ。

 USBでPCに繋ぐと、一般的なリムーバルディスクとして認識されるので、PDFファイルをPCへコピーすれば良い。OCR機能などはないので、メモを保存してもそこからテキストを抽出することはできないが、ベクター形式なのでイラストでは特に便利に活用できるだろう。ただし、Boogie Board Rip上では、筆圧によって線の太さがある程度変化するが、保存データでは線幅は一定になる。

 ちなみに、一度メモを書き、保存した後、画面を消去しないでメモを追加し、保存すると、Boogie Board Rip上の見た目同様、以前のメモに新しいメモが上書きされた状態で保存される。ただし、保存待ち受け状態になってない状態でメモをとり、Save/Wakeボタンで保存待ち受け状態にしてから、メモを追記して保存した場合は、追記部分だけしか保存されないようになっている。つまり、描画だけでなく、ペンの軌跡データもEraseボタンを押すまでは消去されないようだ。

正面上部の中心にあるのがSave/Wakeボタン、その左がEraseボタン、その左はStatus LED背面はややでこぼこしている
側面。おおむね大学ノートなどより同程度の厚さ電磁誘導式のスタイラスが付属上部に収納可能
右側面にUSB端子と充電LED左側面に消去帽子のロックスイッチ。電源オフスイッチでもあるUSBでPCに繋ぐと、リムーバルディスクとして認識され、保存したPDFデータにアクセスできる
メモを書いた様子イラストとそれをPDFに保存したもの

【動画】メモを書いているところ

【動画】メモを消去するところ

●PCに繋いで簡易タブレットにも

 本製品のもう1つの新しい機能は、PCタブレットとしても利用できる点だ。本製品の充電はUSBで行なうが、アプリを入れて、PCにつなぐとBoogie Board Ripを模した画面が表示され、Boogie Board Ripに書いたのと同じようにメモが書け、Save/Wakeボタンを押すと、PCにデータを保存できる。こちらも、付属のスタイラスを使う必要があり、筆圧は再現されない。ただ、単体で使う時と違って、PC接続時は保存待ち受け状態にしておく必要はないようだ。

 なお、タブレットのように使えるのは、専用アプリ上のみ。一般のタブレットのように、他のソフトで絵を描いたり、ポインティングデバイスの代わりにすることはできない。

専用アプリでPC上でBoogie Board Ripを再現し、リアルタイムに描画できる。画面上のボタンもクリックすると、本体と同じように機能するSave/Wakeボタンを押すと、PDFをPCに保存か、メールに添付して送信できる
ウインドウサイズは3段階に変更可能。画面サイズはいずれも1,920×1,200ドットを縮小している

【動画】専用アプリを使っているところ

 ちなみに、このアプリは別途ダウンロードする必要があるのだが、この機能の存在について製品の説明書には一言も書かれていない。8日に製品発表を行なった代理店のキングジムの製品ページにも書かれていない。この点は改善が望まれる。

 最後にスペックを記す。本体サイズは179×282×13mm(同)、重量は325g(スタイラス除く)。入力エリアのサイズは9.5型(141.4×204.8mm)。対応OSは、Windows XP/Vista/7、Mac OS X 10.5以降。

●機能はおもしろいが、価格に難ありか

 さて、やや話が前後した感もあるが、Boogie Board Ripの書き心地は、すこぶる良い。従来品を使っていないので、それと違いがあるかは分からないが、液晶表面の軽くざらついたコーティングとペン先との間に、丁度良い摩擦があり、描画の遅延は全くないので、文字はだいぶ太くなるが、紙に鉛筆で書いているのと同じような書き心地を味わえる。コントラストは必要十分で、視野角も拾い。

 また、ペン先で軽く触れただけでも反応するので、書き損じも発生しない。一方で、手の腹などがあたっても、反応することはない。よほど意図的に押しつけて、やっと反応する程度なので、手を浮かせたりする必要はない。

 ただし、PCに繋いで描画する場合および保存目的で書いている場合、かすれる程度の筆圧だと認識されない。

 総合的な感想だが、手軽で便利でエコなことから、基本的にBoogie Boardは、広くお勧めできると思う。ただし、既存モデルとの値段の差を考えた時、新製品の保存機能に1万円近くを余分に払えるかというと、判断は分かれるところだろう。

 筆者のように、電話メモくらいしか用途がない人にとっては、1万円というのは高く思えるし、どうしてもそのメモを残したければ、ケータイなりで写真を撮ればいいと思ってしまう。一方で、クリエイティブな仕事をしてる人なら、保存機能は便利に映るかもしれない。また、学生が板書を取るのにはかなり向いていると思われる。

 ということで、価格と仕様から判断すると、本製品は一時的な備忘録用というより、本格的なノート代わりとして使いたい人に好適だろう。

(2011年 11月 9日)

[Reported by 若杉 紀彦]