日本AMD株式会社は9月27日、デスクトップPC向けAPUの新製品「AMD A4-3400」(推奨小売価格6,480円)と「AMD A4-3300」(同5,980円)を日本国内に投入することを発表し、10月2日よりAMD A4-3400を発売した。両製品はAMD A4 シリーズの製品で、既に発売されているデスクトップ向けAPUとしては、AMD A8 シリーズとAMD A6 シリーズの下位モデルにあたる。
今回はAMD A4-3400を借用できたので、既存のデスクトップ向けAPUと比較しながら、AMD A4-3400のベンチマーク結果を紹介する。
●内蔵GPUのSP数はAMD A6内蔵GPUの半分にAMD A4-3400は、CPU部分に2.7GHz動作のCPUコアを2つ備える。L2キャッシュは1MB(512KB×2)となっており、CPUコアあたりのL2キャッシュ容量は、AMD A8/A6 シリーズの半分に削減されている。AMD A6-3500でサポートされていた自動オーバークロック機能のTurbo COREには対応していない。
GPUコアには、DirectX 11対応の「Radeon HD 6410D」を備えている。動作クロックはAMD A8 シリーズの「Radeon HD 6550D」と同じ600MHzながら、ストリーミングプロセッサ数はAMD A6 シリーズの「Radeon HD 6530D」の半分となる160基に削減されている。なお、下位モデルのAMD A4-3300にも「Radeon HD 6410D」が内蔵されているが、動作クロックは444MHzとなっている。
このほか、上位モデルではDDR3-1866に対応する内蔵メモリコントローラがDDR3-1600までの対応となった。「AMD Dual Graphics」や動画の手ブレ補正を行なう「AMD Stedy Video」は、上位モデル同様サポートしている。
【表1】仕様比較CPU | AMD A6-3500 | AMD A6-3650 | AMD A8-3850 |
コア数 | 3 | 4 | |
CPU動作クロック | 2.1GHz | 2.6GHz | 2.9GHz |
TurboCORE(最大クロック) | 2.4GHz | ─ | ─ |
L2キャッシュ | 3MB | 4MB | |
内蔵GPU | Radeon HD 6530D | Radeon HD 6550D | |
GPU動作クロック | 443MHz | 600MHz | |
GPU Streaming Processor | 320 | 400 | |
AMD Dual Graphics | ○ | ||
対応ソケット | Socket FM1 | ||
TDP | 65W | 100W |
CPU | AMD A4-3400 | AMD A4-3300 |
コア数 | 2 | |
CPU動作クロック | 2.7GHz | 2.5GHz |
TurboCORE(最大クロック) | ─ | ─ |
L2キャッシュ | 1MB | |
内蔵GPU | Radeon HD 6410D | |
GPU動作クロック | 600MHz | 444MHz |
GPU Streaming Processor | 160 | |
AMD Dual Graphics | ○ | |
対応ソケット | Socket FM1 | |
TDP | 65W |
CPU-Zの画面 | GPU-Zの画面 |
●テスト環境
それではAMD A4-3400のベンチマーク結果を紹介していく。テスト環境については表2の通り。
なお、前回「AMD A6-3500」のテストに利用したテスト環境をそのまま利用しているため、以前測定したAMD A8-3850、AMD A6-3650、AMD A6-3500のテスト結果を比較対象に利用した。
また、スペック上ではDDR3-1600までの対応となっているAMD A4-3400の内蔵メモリコントローラだが、テストに使用したASUS F1A75-V PROではDDR3-1866まで設定することが可能だった。この状態でベンチマークテストを実行しても安定して動作したため、参考データとしてテスト結果を紹介する。
【表2】テスト環境CPU | AMD A4-3400 | AMD A6-3500 | AMD A6-3650 | AMD A8-3850 |
マザーボード | ASUS F1A75-V PRO (BIOS:1102) | |||
メモリ | DDR3-1600 2GB×2 (9-9-9-24) | DDR3-1866 2GB×2 (9-10-9-27) | ||
内蔵GPU | Radeon HD 6410D | Radeon HD 6530D | Radeon HD 6550D | |
ストレージ | Western Digital WD5000AAKX | |||
グラフィックスドライバ | 8.86-110512a-119838C (Catalyst 11.8) | |||
電源 | Silver Stone SST-ST75F-P | |||
OS | Windows 7 Ultimate x64 SP1 |
Memory FrequencyでDDR3-1866が設定できる | OS上でもDDR3-1866で動作していることが確認できた |
●CPU処理中心のベンチマークテスト
まずは、CPU処理とメモリ周りが中心のテスト結果から紹介する。テストは「Sandra 2011.SP4c 17.77」(グラフ1、6、7、8)、「PCMark05」(グラフ2、3)、「CINEBENCH R10」(グラフ4)、「CINEBENCH R11.5」(グラフ5)、「PCMark Vantage」(グラフ9)、「PCMark 7」(グラフ10)だ。
「PCMark05」のシングルタスク版CPUテストなどでは、AMD A8-3850(2.9GHz)に次ぐ2.7GHzという動作クロックが効いて、A6-3500やAMD A6-3650を上回るスコアを記録しているテストがいくつか見られる。一方、CPUコアの数が結果に反映されやすいCINEBENCHなどでは、クロック差の大きいトリプルコアのA6-3500との差こそ小さいものの、AMD A6-3650やAMD A8-3850などクロックの高いクアッドコアモデルには2倍近い差をつけられている。
「Sandra 2011.SP4c 17.77(Memory Bandwidth)」の結果を見ると、DDR3-1600とDDR3-1866で1GB/sec弱の帯域差がついている。ただ、CPU関連のテストではこの帯域差はあまり結果に影響していないようで、ほとんどのテストで同等か僅かにDDR3-1866設定時のスコアが高いという程度にとどまっている。
●GPU処理中心のベンチマークテスト
続いて、3Dベンチマークテストの結果を紹介する。検証したテストは「3DMark06」(グラフ11)、「ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク」(グラフ12)、「MHFベンチマーク【絆】」(グラフ13)、「Lost Planet 2 Benchmark DX9」(グラフ14)、「3DMark Vantage」(グラフ15、16、17)、「3DMark11」(グラフ18、19、20)、「Lost Planet 2 Benchmark DX11」(グラフ21)、「Unigine Heaven Benchmark 2.5」(グラフ22)だ。
AMD A4-3400の結果をAMD A6シリーズのAPUと比較すると、大体のテストで7割前後の結果を記録している。この差は、ストリーミングプロセッサの数とGPUクロックの差と大体一致しており、半減したストリーミングプロセッサの数を動作クロックの高さで補った結果のスコアと言えるだろう。
一方、最上位のAMD A8-3850に対しては、GPUクロックの優位性がないため、2.5倍のストリーミングプロセッサ数を持つAMD A8-3850に、多くのテストで2倍以上の差をつけられている。同じLlanoベースのAPUとはいえ、AMD A8-3850のRadeon HD 6550Dと、AMD A4-3400のRadeon HD 6410Dでは、ディスクリートGPUのミドルレンジとローエンド程度の差があることは意識しておきたい。
なお、DDR3-1600動作時とDDR3-1866動作時の差については、CPUテストに比べれば差がついているテストが多くみられるものの、DDR3-1600設定時との差は1割未満に留まっている。AMD A4-3400に関しては、DDR3-1600以上のメモリを搭載したとしても、それによる恩恵はさほど大きくないと言えるだろう。
●消費電力の比較テスト
最後にシステム全体の消費電力を測定した結果を紹介する。
消費電力の測定は、サンワサプライのワットチェッカー「TAP-TST5」を利用して行なった。アイドル時の消費電力のほか、ストレステストツールの「OCCT Perestroika 3.1.0」で、CPUに負荷を掛ける「CPU:OCCT」、GPUに負荷を掛ける「GPU:OCCT」、CPUとGPUの両方に負荷を掛ける「Power Supply Test」をそれぞれ実行した際の消費電力を測定した。
アイドル時の結果は上位モデルと変わらず43Wとなったが、コア数が少ないこともありCPUロード時の消費電力は86~87Wで、最上位のAMD A8-3850より47W程度、同じTDP 65WのAMD A6-3500より13W程度低い結果となっている。一方、GPUロード時の消費電力差はスペック差の割に小さく、CPU・GPU両方に負荷を掛けるPower Supply Test実行時の電力差も、大半はCPU側の電力差によるものと見ることができる。
【グラフ23】システム全体の消費電力 |
●消費電力と価格の安さに魅力を見いだせるかがカギとなる製品
ここまでのテスト結果から、上位モデルとの間に生じたパフォーマンス差が決して小さくないことが見えてくる。強力なGPUを内蔵したことを全面に押し出してアピールしてきたデスクトップ向けAPUとしては、GPU性能がAMD A8-3850の半分以下に留まっているというのは気になるところだ。
600MHz動作のRadeon HD 6410Dを内蔵しているAMD A4-3400でこれなら、GPUクロックが444MHzのAMD A4-3300のグラフィックス性能はさらに低くなる。同じTDPのAMD A6-3500より低い消費電力や、内蔵GPUの動画再生支援機能を活かして、小型のHTPCを製作するといった用途には好適だが、ゲームプレイなどを考慮するとAMD A4シリーズのグラフィックス性能は心もとない。
既存のラインナップより性能面で劣るのは仕方のないことだが、性能に決定的な差があるにも関わらず、上位モデルの販売価格も安いため、コストパフォーマンスの面でも魅力が薄い。ワットパフォーマンスやコストパフォーマンスではなく、純粋に消費電力の低さや価格の安さに魅力を見いだせるかどうかが、AMD A4シリーズを選ぶポイントになりそうだ。
(2011年 10月 4日)
[Reported by 三門 修太]