iPadのタッチ操作を用い、手書きによる文字入力に対応したiPadアプリ「7notes(セブンノーツ)」。ジャストシステム創業者である浮川和宣氏と初子氏が立ち上げた株式会社MetaMoJiによる新たな日本語入力システムへの取り組みとして、2月の発表時に注目を集めたことは記憶に新しい。
本誌でもこのアプリのファーストインプレッションをお届けしたが、手書き文字の変換システム「mazec」は確かに革新的ではあるものの、全体としてみると機能面の不足や、独特のインターフェイスに戸惑うところがあったのも事実だ。
その「7notes」が今回、ver.2.0へとバージョンアップを果たした。さまざまな機能に手が加えられているが、中でも目玉となるのは「後から変換」のサポートだ。いったん確定させた手書き文字を後からまとめてテキストデータに変換できるという、従来のバージョンにはなかった機能だ。いち早く試用する機会を得たので、その詳細をお届けする。
iTunes Storeでの配信は4月7日の予定で、バージョンアップに合わせて価格も1,500円から900円に値下げされる。
●すでに入力済みの手書き文字を変換できる「後から変換」に対応「7notes」の手書き入力には2つの種類がある。手書き文字をそのまま縮小してビットマップデータとして行に並べていく「書き流し入力モード」と、テキストデータに変換してから行に並べる「交ぜ書き入力モード」だ。
従来であれば、前者の「書き流し入力モード」で入力したのち確定させた手書き文字を、あとからテキストデータに変換することはできなかったが、今回リリースされたver.2.0はこの「後から変換」機能をサポートした。これにより、スピード重視でひたすら手書きで入力したのち、時間に余裕ができたところでテキストデータに一括変換するという使い方が可能になった。これは大きな進化だ。
「書き流し入力モード」により、手書きで入力したテキスト。ちなみに本記事の冒頭の1段落分にあたる | 画面右上のメニューボタンから「後から変換」を選択する |
入力時の文節ごとに画面下部に呼び出され、問題がなければ候補をタップして確定、問題があれば修正を行ったのちに確定させる | テキストデータへの変換が完了したところ |
ともあれ、手順で説明するより動画を見ていただいたほうが早いだろう。書き溜めておいた手書き文字を、タッチ操作で次々と変換していけることがお分かりいただけるはずだ。一気に全文を置換するのではなく、入力したテキストを冒頭から順に置換していく形になるが、特にまどろっこしさは感じない。
【動画】入力済みの手書き文字をテキストデータに変換している様子。入力時の文節ごとに画面下部に呼び出され、問題がなければ候補をタップして確定、問題があれば修正を行ったのちに確定させる。この動画では後半の「取」と「り」で修正が発生しているが、それ以外はほぼそのまま確定できている |
もし仮に手書き文字変換の精度が低ければ、候補文字を選び直したり修正したりと多大な手間がかかってしまうはずだが、そこは本製品の特色でもある文字変換エンジン「mazec」の認識率の高さもあって、ストレスのない変換が可能だ。極端にクセがある文字でなければ、延々と候補パレットをタップしていくだけでビットマップ文字がテキストデータに置き換わっていく。
また、部分的に手書き文字で、残りはすでにテキストデータ化されている場合であっても、手書き文字だけを拾い上げてテキストに変換してくれる。いずれにせよ「1から書き直したほうが速い」というレベルではなく、実用的なスピードで変換できるのは秀逸だ。
●手書き入力したテキストデータをメール本文に貼って送信可能にもう1つは、入力したテキストデータをメールの本文として送信できるようになったことが挙げられる。従来のver1.2では「Evernote」や「GoodReader」にPDF形式で送ることができたが、テキストデータとして送ることはできず、PDFに変換しなければ受け渡しができないという不自由さがあった。今回は、メールの本文にテキストデータとして貼り付けて送れるようになったことで、自由度はかなり向上した印象だ。
順序としては、メール送信画面を立ち上げて手書き入力するのではなく、従来と同じくユニット内に手書き入力を行なってテキストデータに変換したのち、それを「送る」形になる。
画面右上のメニューボタンから「送る」を選択する | 「メールに送る」を選択する |
「テキスト(フォーカスユニット)」を選択する | ユニット内にあったテキストが、新規メールの本文に貼り付けた状態で表示された |
多少気になったのは、送信対象となるのは選択中のユニット内のテキストデータだけなので、うっかり別のユニットを選択したまま「送る」を選択してしまい、意図しないテキストがメール本文に貼り付けられることがあることだ。「送る」メニュー選択時に対象ユニットを強調表示するといった表示の改善はあってよいのではないかと感じる。
●「入力に失敗してもあとからリカバリーできる」という安心感このほか、テンプレートを自由にダウンロードできる「ギャラリー」の提供、従来は不可能だったローカルでの文書削除のサポート、ユーザーインターフェイスの見直しなど、改良点は多岐にわたっている。ことUIについては、従来バージョンにあった独特のクセはかなりなくなっており、他のアプリと同じように操作したら意図と異なる挙動をしたり、あるいは他のアプリと同じことができないといった欠点は広い範囲で解消されている。
1カラム文書の作成画面の上半分を、従来バージョンと比較したところ。上が従来バージョン(ver1.00)、下が新バージョン(ver2.00)。アイコン類が整理され、デザインもわかりやすく変更されている | 同じく、1カラム文書の作成画面の下半分を比較したところ。上が従来バージョン(ver1.00)、下が新バージョン(ver2.00)。アイコンが集約されていることが分かる |
従来バージョンと使い比べてみて感じたのは、やはり「後から変換」のサポートは大きいということだ。従来は、うっかり「書き流し入力モード」で入力した文字を泣く泣く消さざるを得ないことがあったが、今回の改善によってそれがなくなった。単純な機能の追加だけでなく「入力に失敗しても後でリカバリーできる」という安心感を得たのは、何より大きいと感じる。
一部のアイコン配置が直感的でないといったユーザビリティ上の問題点は残るのと、かなり改善されたとはいえ起動時間および画面遷移時の反応が依然鈍いといった点は気になるが、慣れでカバーできる範囲にまで到達したことは間違いない。従来バージョンの使い勝手がしっくり来なかったユーザーでも、あらためて使ってみる価値はあるだろう。4月7日をもって価格も1,500円から900円に改訂されたので、コスト面で見送っていたユーザーにもおすすめしたい。
(2011年 4月 7日)
[Reported by 山口 真弘]