マイクロソフト「Arc Touch Mouse」ファーストインプレッション
~胸ポケットにも収まる“曲がる”モバイルマウス

Arc Touch Mouse

2011年1月28日 発売
価格:6,930円



 マイクロソフトが20日に発表した、新機軸のモバイルマウス「Arc Touch Mouse」を、発売に先立って試用する機会を得たので、ここに簡単なレビューをお届けしたい。

●仕様をおさらい

 仕様についてはニュース記事で紹介しているが、細かな部分を含め、説明しておこう。製品名の「Arc」とは「弧」を意味する。シリーズ初代である「Arc Mouse」同様、Arc Touch Mouseは、横から見た時、弧を描いた形状で、かつ本体が薄いのが特徴である。

 また、このシリーズは、モバイル向けという位置付けも持ち合わせる。初代Arc Mouseでは、もともと小ぶりだが、本体を2つに折りたたむことで、さらにコンパクトになる機構が話題を呼んだ。

 これに対し、Arc Touch Mouseは、折れ曲がるのではなく、真っ平らになる他に類を見ない機構に様変わりした。もちろん奥行きでは初代の方が短くなるが、平らにした時の厚さは、厚いところで約15mm、薄いところでは7mmしかない(ちなみに初代は約9~21mm。いずれも実測)。

使わないときはこのように真っ平ら。銀色の部分が後述のタッチストリップ側面から観たところ。一番薄いところは7mm程度
正面から見たところ裏面

 この折れ曲がる部分の中には、90個程度の小さなラッチ付き磁石がアルマジロの鱗のように詰まっている。これにより、下向きに曲げると、「パキッ」と音を立てて、滑らかな弧を描くように変形する。ちなみに、この機構は曲げ伸ばしを繰り返しても、理論上壊れないようになっており、同社の試験でも4万回の曲げ伸ばしをパスしているという。ちなみに、本体の曲げ伸ばしにより、電源がオン/オフされる。

 通常、マウスの表面はプラスチック素材が用いられているが、本製品の曲がる部分は、ゴム状の素材になっている。ゴム状と言っても、触るとすべすべしており、不思議な触感が気持ちいい。また、指に触れる面積は少ないが、ホールド感の向上にも役立っているものと思われる。

 とりあえず、この製品を知らない人の目の前で、パキパキさせてみるだけで、職場で少なくとも5分間は人気者になれるだろう。

折り曲げたところ側面から観ると、弧というよりは「へ」の字に近い
背面から観たところ正面から見たところ折り曲げによって電源が入る。LEDはBlueTrack
電源投入時に電池残量がLEDで表示電源は単4系アルカリ乾電池×2名のレシーバは、本体裏面に磁石でくっつけられる

【動画】折り曲げるところ

 もう1つ、この製品で初めて取り入れられたのが、「タッチストリップ」と呼ばれるタッチセンサー式のスクロール用パッドだ。通常、ホイールがある位置は、銀色のパッドになっており、ここをなぞることでスクロール操作ができるのだ。

 タッチストリップは、両脇の左右ボタンと高さや感触がほぼ同じだが、周辺と中央部分に切り込みがあるので、手探りでも瞬時に探り当てられる。

 おもしろいのが、タッチストリップの下にはバイブレータが内蔵されており、ここをなぞったり、タップ機能を使った時、カリカリと振動し、微弱ではあるがクリック感が得られるようになっている。

 同社のマウスのホイールはおそらく、クリック感のないものが多数派だと思うが、Arc Mouseはクリック感がある。なぜ、Arcシリーズにクリック感を持たせたのかは知らないが、Arc Touch Mouseについては、物理的な回転が無いので、タッチを検出していることを知らせる意味で、搭載させているのだと思われる。

【動画】タッチストリップをなぞった時のクリック音

 また、タッチストリップは、なぞる以外に、両端と中央に対するタップ(両端はシングル、中央はダブルタップ)および、フリックも認識する。標準では、上端がPgUp、下端がPgDn、中央はホイールクリック(スクロールモード)が割り当てられている。フリックすると、高速スクロールモードになり、タップで停止する。ちなみに、高速スクロール中もずっとクリック感が返ってくる。

 中タップには、ユーティリティを使って、広範な機能から好きな物を割り当てることができる。本製品は、初代にあった戻るボタンが廃されたが、タップに割り当てることで、戻るボタンが必須というユーザーでも問題ないだろう。また、マクロを割り当てることも可能だ。

IntelliPointを入れると、中タップの設定などができるおもしろいのが、ドライバインストールが終了すると、自動的にチュートリアルサイトへの誘導が表示される。移動先はここ

 センサーには、同社のフラグシップ機を始め、徐々に搭載例が増え始めている、BlueTrackを採用。この青色LEDはレーザーを超えるトラッキング性能を謳い、利用場所をほとんど選ばないのが特徴。ただし、本製品はゲーミング向けではないので、分解能は1,000dpi、スキャン速度は8,000fpsと、一般的マウスよりやや高い程度に抑えられている。

 PCとの接続は、2.4GHz帯の無線。USBレシーバはナノタイプなので、普段はつけっぱなしにしていても邪魔にならない。また、初代同様、磁石でマウス本体の底面にくっつけて持ち運ぶことができる。無線の到達距離は約5m。一般的には約10mというものが多い(実際本製品の米国での仕様は30フィート=約9m)。それと比べると半分だが、PCと5m以上離して利用することはまずないので、問題にはならない。

 1つ仕様について気になるのが、本体サイズ。日本の製品情報では、約128×55×13.5mm(幅×奥行き×高さ)となっている。一方、米国の情報では約130.6×58×15mm(同)で、2~3mmの開きがある。実際に手元で測ったところ、約129×57×15mm(同)と、その中間の数値が出た。目くじらを立てるほどじゃないが、なぜこのような差異が出るのか、やや気になる。ちなみに、重量は実測で90g。

手元のデジタルノギスでのサイズ計測

●使う人を選ぶ形状?

 実際に使ってみた印象だが、センサーなどが内蔵された先端部分は、曲がる部分よりも肉厚にこそなっているが、ホイールなど目立った出っ張りがないため、平らにした際は、ポケットやカバンにスムーズに入る。総合的な携帯性は、初代よりも向上していると言って良い。

このように上着や、ズボンのポケットにも無理なく収められる

 使っている時に、不意に平らになったりするのではという懸念もあるが、よほど力を込めない限りは平らにならないので、その心配はない。

 BlueTrackの性能もモバイルマウスとして申し分ない。

 タッチストリップの使い勝手はおおむね気に入った。振動によるクリック感は、きちっとホイールを1単位回転させたのと同期しているなど、想像以上に芸が細かい。ただ、操作に若干のコツがいる。

 まず、下スクロールするのに、あまり上端にまで指を伸ばして、手前になぞろうとすると、一メモリ分ほど上にスクロールしてから、下スクロールという症状が発生する。これについては、中央当たりからなぞり始めればそういったことは起きない。また、あまり小刻みになぞると、中央のダブルタップと誤認識されることもあるが、これも使っているうちにコツがつかめるだろう。

 ボタンは、ストロークが初代より若干浅くなっている(見た目による)が、スイッチはだいぶ固くなった。これまで使ってきたマウスが、比較的スイッチが柔らかいものだったこともあり、当初は指を下げるというより、押し込むように押さないと、うまくクリックできなかった。

 ただ、これは持ち方に寄る部分が大きい。筆者は、いわゆるかぶせ持ちをするタイプで、かつかなり後ろの方を持つ癖がある。さらに筆者は手が小さいため、この状態だと、指先はボタンのやや手前に位置し、さらにクリックが重くなるのだ。

 そして、Arc Touch Mouseの分解能が、普段筆者が使っているマウスよりやや高いこと、ソールが滑りやすいことも手伝い、クリックの弾みで、マウス本体がずれてしまうことが少なからずあった。

 これについては、かぶせ持ちに近い形に変えることで、違和感の無いレベルにまで落ち着くことができた。この製品のセンサーは先端に位置するので、その方がカーソルの操作との相性も良いだろう。

筆者にとってもっとも自然な持ち方だと、指先がボタンの根本に近づくので、クリックがかなり重くなるクリックがしやすいのは、このような先端に近いところをつまむ持ち方

 一方、最後まで馴染めなかったのが形状だ。小ぶりなモバイルマウスは、いつも最初慣れるまでに時間がかかるのだが、Arc Touch Mouseの場合、根本的な形状が手に馴染まなかった。

 極端な小型製品を除き、基本的にマウスの表面は、手の平と接する面積が大きい方が載せた手が安定する。だが、この製品の場合は、その面積がきわめて小さい。そのため、持っていて落ち着かないのだ。

 これはArc Touch Mouseが小さいからではない。なぜなら、Arc Mouseはぴったり手の平にフィットするからだ。

 両製品を見比べると、初代は表面が球状になっているのに対し、新製品は前後方向にこそ弧を描いているが、左右方向には直線になっている。つまり、そもそも手の平に密着させる設計になっていないのだ。

 といっても、これは、個人的な馴染む、馴染まないの問題であり、慣れでカバーできる範囲だとは思う。そもそも、この2つを比べなければ、フィット感の違いに気づかないこともあるだろう。また、本体重量が軽いこともあり、つまみ持ちしている人であれば、なんら差し障りなく使いこなせるのではと思う。

初代Arc Mouseとの比較アーチ状なのは同じだが、曲がり方は大きく異なる
Arc Mouseだと手の平にフィットするArc Touch Mouseだと手の平との間に隙間ができる

 というわけで、利用時の形状については、個人的な好みが分かれそうな本製品だが、その最大の特徴は、平らにして、すっと持ち運べる可搬性の高さにある。先にも述べたとおり、この点について本製品には高い評価を与えられる。特に、モバイルマウスは普段使いしないこともあるので、フィット感に満足できなくても、さほど支障はないはず。

 いずれにせよ、マイクロソフトのマウスは、基本的に大手量販店の店頭にデモ機が設置されるので、そのあたりを確認してから購入するか判断すると良いだろう。

(2010年 12月 22日)

[Reported by 若杉 紀彦]