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三菱、海水の水柱を利用した送受信アンテナ「シーエアリアル」
~小規模な構造で海上へのアンテナ設置が可能に
(2016/1/27 11:55)
三菱電機株式会社は27日、導電性のある海水を空中に噴出し、それによって生じた水柱を送信アンテナとして利用する「シーエアリアル(SeaAerial)」を発表した。
海水中には電流を流さず、アンテナ送受信部だけに高周波電流を効率よく流す給電機構(絶縁ノズル)を開発。ポンプと給電構造のみでアンテナを構成でき、海岸や海上など、海水があればどこにでも工事を行なうことなく大型アンテナを設置可能。装置がコンパクトなため、船などで移動させることができる。
一般的にアンテナは波長に応じてサイズが決定され、低い周波数では数m~数十mの高さが必要となり、これを支える基礎を含めた場合、大規模構造物が必要だった。このため土地の確保が難しい場所への設置や移設には大規模工事が必要だった。今回、海水柱をアンテナとして利用することでこの問題を回避した。
噴きあげられた海水柱は海水面と物理的に繋がっているため、そのままの形状では電流が海中に流れてしまいアンテナ効率が低下する。今回、電波を遮断しやすい4分の1波長の長さを持った筒状の絶縁ノズルを開発し、電源部から海中への電流を遮断することで送受信を実現した。
また、海水は金属と比較して電流が流れにくいためアンテナ効率が低下するが、今回、海水の抵抗値を下げるために水柱を太くして導電率を補う構造とし、必要十分な太さをシミュレーションによって設計。実用レベルのアンテナ効率70%を実現したという。
以上の対策をもとにアンテナのプロトタイプモデルを試作/評価したところ、世界で初めて地上デジタル放送の受信を確認した。
今後は従来の低周波用大型アンテナの置き換えや、コンパクトさを活かした新事業に展開するとしている。