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時間反転波で光の時間を逆戻りさせ光信号を長距離伝送

~NTTが技術開発と実証に成功

位相共役変換による歪み補償の概念図

 日本電信電話株式会社(NTT)は1日、位相共役変換を用いた新開発の光回路により、大容量光信号の伝送距離を大幅に長距離化できる技術を開発し、世界で初めて原理実証実験に成功したと発表した。

 光信号を伝送すると距離によって信号の劣化(非線形歪み)が生じる。これを補償する技術としてデジタルコヒーレントと呼ばれる技術が実用段階に入っているが、補償性能を上げるにつれ、信号処理回路規模が大きくなるトレードオフがある。

光ファイバ通信における伝送距離制限の要因

 他方、電気的なデジタル信号処理を用いずに非線形歪みを補償する手段として、位相共役変換により時間反転波を生成する方法がある。これは、光をあたかも時間が逆戻りしたかのように振る舞わせる技術で、伝送路の中間地点で位相共役変換を行なうことで、伝送路の前半で受けた波形歪みを伝送路の後半で修復できる。しかしこの方法にも、変換の際に異なる信号チャネルに光信号が移動して2倍の信号チャネルを占有し、チャネル帯域が半分以下に減少する課題があった。

 今回、NTT未来ねっと研究所とNTT先端集積デバイス研究所は、周期的分極反転ニオブ酸リチウム導波路デバイスを開発。これを用いて波長チャネルを無駄に占有することなく位相共役変換が可能な新規回路構成を実現し、光ファイバの大容量性を損なわずに波形歪みを補償できる位相共役変換器を開発した。

 検証では、変換器を用いない場合に比べ、高い光送信パワーで送信した際の波形歪みを最大で半減させることに成功。また、デジタルコヒーレント技術との親和性を保ちながら、デジタル信号処理量を少なくとも10分の1以下にできる可能性を示した。

位相共役変換器の有無による信号歪み特性の比較

(若杉 紀彦)